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マンガソムリエが「どうしても紹介したい」と推す“今一番アツいグルメ作品”

グルメマンガ『寿エンパイア』<小学館>より(画像出典

マンガソムリエが「どうしても紹介したい」と推す“今一番アツいグルメ作品”

この秋おすすめのマンガを、マンガソムリエとしてユニークな活動を行なっている兎来栄寿(とらい・えいす)さんが紹介した。

兎来さんが出演したのは、J-WAVEで放送中の番組『ALL GOOD FRIDAY』(ナビゲーター:LiLiCo・稲葉 友)のワンコーナー「TOKYO SAVVY」。オンエアは10月14日(金)。
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『ALL GOOD FRIDAY』(ナビゲーター:LiLiCo・稲葉 友)でトーク

スポーツの秋:つるまいかだ『メダリスト』

今回のオンエアでは、兎来さんが「○○の秋」にちなんでおすすめマンガを紹介。まず第1作目、「スポーツの秋」にちなんだ作品として、つるまいかだ『メダリスト』(講談社の青年マンガ誌『アフタヌーン』連載中)を挙げた。



兎来:フィギュアスケートの世界を描いたマンガなんですけども、プロスケーターになる夢に破れた26歳の青年・司と、小学5年生の少女・いのりが、5歳から始めないと遅いと言われるフィギュアスケートの厳しい世界で、2人3脚で金メダルを目指してゆくという物語です。第一話から尋常じゃない熱量を感じて、その日からずっと推しているマンガです。

LiLiCo:熱い絆とかがあるんですね。

兎来:普通のスポーツマンガって主人公が頂点目指して頑張ると思うんですけど、このマンガは夢に破れた青年が再起を図る、少女もオリンピックのメダリストを目指すっていう、それぞれの夢を追いかける2軸の物語があるのが魅力なんです。人生で夢が叶わなかった人間ってたくさんいるじゃないですか。でもその後も人生は続いてゆくわけで。すごく共感できるドラマがいっぱいあるんですよ。

LiLiCo:そっちのほうがリアルだよね。成功するってなかなかいないからね。

兎来:今6巻まで出てるんですけど、悪いことは言わないので全巻買って一気に読んでください。何度もボロボロ泣いちゃいます。

読書の秋:玉川重機『西荻ヨンデノンデ』

続いては「読書の秋」ということで、文芸誌に連載されていた玉川重機『西荻ヨンデノンデ』(講談社『メフィスト』連載)を紹介した。



兎来:こちらはマンガ雑誌ではなくて文芸誌『メフィスト』で連載されていた作品です。物語の舞台は西荻窪にある読書バー「栞(ページ)」。まさに僕もマンガバーをやってたので親近感が湧くんです。読書バー「栞」にはいろんなお客さんがやってきます。それぞれの人生の悩みや人間関係の憂いなんかを、本とお酒を提供することで解きほぐしてゆくという内容になっています。そこで紹介される本は実在する本で、小泉八雲の短編集とか、『異邦人』とか『高野聖』とか、どこかで聞いたことはあるけどあまり読んだことがないような作品です。この本を読むと、小説自体にも興味が出てきて、そちらも読みたくなってしまうというマンガですね。

稲葉:実在の小説を使うことによって、マンガの世界と自分が繋がる感じがしてすごくいいですよね。

兎来:そうなんですよ。おっしゃる通りです。こちら1冊で完結していて、お値段ちょっと高めなんですけど、これ1冊読むだけで、これからの人生に値段以上の価値を与えてくれると思うんです。取り上げる小説もそうなんですが、登場人物のセリフ、たとえばこのバーはお姉さんと妹がやっていて、2人は施設で育ったわけありの人生を歩んできていて、名言が出てきてハッとします。本当に優しくて、癒してくれるようなシーンがいっぱいあって、ちょっと辛いことがあったときに読んでも心を癒してくれるマンガです。

LiLiCo:マンガってイラストがあって吹き出しだと思うんですけど、この作品は文字がとっても多くて、真ん中にちょっとだけ人物が描かれてたりするのねこういうのってなかなか見ないですよね。私の中で、すごく大人なマンガの感じがする。

兎来:小説とかに興味がない方でも読むと面白く感じて、逆に登場した小説を読もうと思えるマンガです。同じ作者さんの『草子ブックガイド』(講談社)という前作もありまして、そちらも西荻が舞台で、読書をテーマにした作品になっています。併せて読んでいただくと、もっと本が好きになると思いますよ。

食欲の秋:マンガ・秋鹿ユギリ/原作・ヨコオタロウ『吉野家兄弟』

続いては「食欲の秋」ということで、牛丼で有名な「吉野家」を舞台にしたユニークな作品『吉野家兄弟』(LINEコミックス)を紹介。



兎来:10月14日に紙の本が発売されたばかりの『吉野家兄弟』を紹介します。これはLINEマンガというアプリで連載されていて、原作のヨコオタロウさんという方に注目です。全世界で650万本以上売り上げたゲーム『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』などで名前を馳せている方です。ヨコオさんのゲームってけっこう世界観が残酷で、衝撃的かつ儚く美しい感じなんですけど、この『吉野家兄弟』は雰囲気が完全に違います。たとえばゴリゴリのデスメタルバンドが、ライブでいきなり童謡を演奏するようなものです。

稲葉:ほぼ吉野家が舞台なんですか?

兎来:はい、ほぼ吉野家です。吉野家の回し者が描いているのかっていうくらい、いい宣伝になっているマンガでして、実際に吉野家の方も読むようになったらしく、紙の本には吉野家で使えるクーポン券が付いているそうなんですよ。

LiLiCo:マジで?

兎来:ストーリーの中心になっているのが、38歳のIT企業の社員の兄と17歳の高校生の弟による歳の差がある義兄弟で、けっこうギクシャクしていて。そこから彼らの周りの人物も登場してストーリーが繰り広げられていくという作品です。連載が中断したりしていたので、コミックスの発売で盛り上がって、また続きが読めるようになることを願ってます。

食欲の秋:せきやてつじ『寿エンパイア』

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グルメマンガ『寿エンパイア』(小学館)

最後に紹介するのは、グルメマンガ『寿エンパイア』(小学館)だ。

兎来:せきやてつじさんは、松本 潤さん主演でドラマ化された『バンビ~ノ!』の作者さんです。とにかく今一番アツいグルメマンガだと思っていて、「食欲の秋」(というテーマでの紹介)が続くんですけど、どうしても紹介したかった作品です。日本料理界に燦然と輝く寿司の名店「華山」が舞台で、その寿司の帝国が静かに傾きつつあるということで、亡き母親の足跡を辿ってハワイからやってきた優吾という少年が、「華山」に入って熾烈な後継者争いを繰り広げるというお話です。

LiLiCo:ハワイから来たのにお寿司?

兎来:そうなんです。ハワイの寿司とかも登場します。このマンガは寿司の描写や食べたときのリアクションも料理マンガらしくてすごく面白いです。「SUSHI SINGULARITY」(スシ・シンギュラリティ)って言葉をご存じでしょうか。今、「超未来寿司屋」を日本に作ろうという動きがあるそうで、こういうものともコラボレートしていて、平成では描けなかった最先端の寿司マンガが誕生しています。たとえば、マグロの漁獲量が減って、食料問題も起きているってことで、細胞培養マグロとか、食っていう生命を維持してゆく活動にプラスして文化もテーマに深く掘り下げていて、寿司マンガを超えた食マンガとしてものすごく魅力あるものになっています。

LiLiCo:へーっ、すごいね。

兎来:パワハラとか、最初は読んでいて辛いところもあるんですけど、中盤からは本当に爽やかな熱い戦いが描かれていて、脇役のおじさん一人ひとりの描き方も素晴らしいんです。このマンガの何がすごいって、脇役のおじさんが、一番人気があることなんですよ。かっこいいおじさんが出てくるマンガは名作ですから。

『ALL GOOD FRIDAY』のワンコーナー「TOKYO SAVVY」では、新しい東京、まだ知らない東京をプレゼンテーションする。オンエアは15時30分頃から。

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