
(画像素材:PIXTA)
インティマシーコーディネーターの浅田智穂さんが、仕事の内容やインティマシーコーディネーターになる方法などを語った。
浅田さんが登場したのは、4月18日(金)放送のJ-WAVE『ALL GOOD FRIDAY』(ナビゲーター:LiLiCo・稲葉 友)のコーナー「LISTEN UP!」だ。
浅田:インティマシーコーディネーターというのは、映像制作などにおいてヌードや性的な描写がある際に、俳優のみなさんが精神的にも身体的にも安心・安全に演じることができ、かつ監督が求めている描写を最大限に実現するためにコーディネートするスタッフです。
LiLiCo:いままで、日本ではなかなか聞いたことがありませんでしたね。
浅田:2020年に制作されたNetflixの『彼女』という作品で、初めてインティマシーコーディネーターが導入されました。その作品が2021年に配信になったので、そこからクレジットなどで目にしていただくようになったかなと思います。
LiLiCo:日本のインティマシーコーディネーターは、浅田さんが最初ですか?
浅田:そうですね。当時、インティマシーコーディネーターが日本にいなかったのですが、水原希子さんがそういったシーンを演じるにあたってインティマシーコーディネーターの導入を希望されたので、Netflixが「入れましょう」ということで私に声をかけてくださり、トレーニングを受けました。
LiLiCo:なぜ浅田さんだったのでしょう? それまでは、どのような仕事をされていたのですか?
浅田:私はそれまで、演劇や映画などのエンターテインメント業界で通訳として、スタッフとキャスト間の現場での架け橋になる仕事をしていました。インティマシーコーディネーターのトレーニングは英語で、映像の現場を知らないといけないので、きっとそういった条件が合ってお声がけいただいたのかなと思います。
LiLiCo:すごい! いい仕事だよね。私のなかでは、アメリカから入ってきたお仕事というのがちょっと驚きだった。アメリカ人はなんでも平気で(意見を)言ってしまいそうな感じがするけど、そうではないんですね。
浅田:そうですね。LiLiCoさんは海外経験もたくさんあるのでご存じでしょうが、日本にはあまり同意の文化がないと思います。アメリカは「YES」「NO」がはっきりしていて、また契約文化があるので、逆にインティマシーコーディネーターという立場が必要になります。それが日本に入ってきたときに、俳優のみなさんはまず「自分に『YES』『NO』をいう選択肢があるんだ」というところに驚かれるので、この仕事をしながら、日本には日常的に同意の文化が薄いことを感じています。
浅田:私が把握している限り、資格を保有して、いま日本で活動しているインティマシーコーディネーターは6名です。
LiLiCo:これは、やっぱり少ないですよね?
浅田:決して多くはありませんが、やはり需要に合わせて増やしていくべきだと思っているので、私のほうでも少しトレーニングをしています。しかし、一気に人数が増えて仕事のやり方が個々で違ったりしても現場が困ると思うので、いいかたちで増えていくといいなと思います。
LiLiCo:ちなみに、アメリカだと何人くらいいらっしゃるのですか?
浅田:200人くらいいるかもしれません。アメリカにはSAG-AFTRA(サグ・アフトラ)という俳優組合があって、インティマシーコーディネーターを入れることを現在、努力義務にしています。これがもうすぐ義務になるのではないかという話はずっと聞いているので、それなりの人数が必要なのだと思います。
LiLiCo:日本だと6人……。浅田さんはいま、たぶん日本でいちばん有名なインティマシーコーディネーターなので、すごく忙しいでしょう? 前はテレビと舞台しかなかったけど、配信があったり……。
浅田:本当に忙しくさせていただいていますが、LiLiCoさんと(ミュージカル)『ウェイトレス』でお会いできたり、『ALL GOOD FRIDAY』にも出演することができたりと、楽しいお仕事にもつながっているのでとても充実しています。
稲葉:インティマシーコーディネーターは、決められた日にただ場所に行けばいいわけではありませんよね。コミュニケーションを取るにあたって、事前に演出サイドの意向や俳優が思っていることをシェアしながら進められると思いますが、流れはどのようになっていますか?
浅田:準備がとても大事です。まず、台本をいただいたら「ここはインティマシーシーンかな」というところを自分なりにピックアップして、監督に「ここはどういう描写を考えていらっしゃいますか?」ということを確認します。たとえば、「ふたりは愛を確かめあった」とあっても、ト書きでは全然わからないんですね。それを共通の理解にしていくために、まずどういった描写を考えているかをお伺いして、今度は俳優部のみなさんと時間をかけて話して同意を取っていきます。そこで監督が求めている描写が全部OKなら大丈夫ですが、「ここはちょっと……」という場合は、0か100ではなく「これぐらいだったら」「こういうやり方だったら」といったことを丁寧にお伺いして、監督に提案します。そうして両者が納得するような描写にして撮影日を迎えますが、当日も立ち会いをしてもう一度同意の確認をしたり、「最少人数で撮影しましょう」といったセッティングをしたりします。
浅田:そこを、どう折り合いをつけていこうかというところですね。
稲葉:撮り方なのか、どこまで譲ってもらうのか……。
浅田:そうですね。実際にキスをしなくても、キスをしたように見せることもできます。あとは共演者の仲がよかったりすると、逆に「できない」と言えなくなってしまうということもよくあります。また、撮影期間が長くなってくると、だんだんお互いのことがよく知れて「できる」「できない」と両極端に分かれるなど、本当にいろいろなことがあります。
LiLiCo:こっちは「OK」といったのに、「撮り方で」となったら、相手に断られたのかなと思うよね。
稲葉:そう思わせてしまうかもしれないからうまく言えないところを、そう思わせないような仲介をしてくださるんですね。
LiLiCo:浅田さんのいままでの通訳のお仕事は、英語も日本語もいろいろな言葉を知らないといけなかったから、いまも言葉を操って丁寧に教えてくれる。そう思うと、いままでの人生に何にも無駄はないですよね。
浅田:そうですね。この職業に、いままでのことがすべて生きてきているなと思っています。
浅田さんの活躍から、インティマシーコーディネーターに興味を持つ人も増えてきている。「入り口がわからない」「どうしたらこの仕事に就けるのか」といった疑問に、浅田さんが回答する。
浅田:アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアには、インティマシーコーディネーターのトレーニングをしている団体がたくさんありますが、アメリカの俳優組合のSAG-AFTRAが認めているところは10校ぐらいです。そのうちのひとつが、私も資格を取ったIntimacy Professionals Association(IPA)という団体で、2023年に私が設立した会社とIPAがライセンス契約をして、いまはアメリカのプログラムを日本語で教えています。2024年に、第1回目がありまして、先日第2回目の募集が終わって4月から受講が始まっています。
LiLiCo:みんなが興味を持っているというのを、肌で感じますね。
インティマシーコーディネーターについて気になる方は、浅田さんの公式ホームページ、そして浅田さんの会社・Blanketのホームページをチェックしてみては。
『ALL GOOD FRIDAY』のコーナー「LISTEN UP!」では、さまざまなジャンルの旬の情報をお届けする。オンエアは12時10分ごろから。
浅田さんが登場したのは、4月18日(金)放送のJ-WAVE『ALL GOOD FRIDAY』(ナビゲーター:LiLiCo・稲葉 友)のコーナー「LISTEN UP!」だ。
Netflixドラマをきっかけに広まった、インティマシーコーディネーター
昨今、ドラマや映画の現場、作品のスタッフロールなどで目にする機会が増えているインティマシーコーディネーター。ナビゲーターのLiLiCoと稲葉 友は、日本初のインティマシーコーディネーターである浅田さんに、その仕事内容について訊いた。浅田:インティマシーコーディネーターというのは、映像制作などにおいてヌードや性的な描写がある際に、俳優のみなさんが精神的にも身体的にも安心・安全に演じることができ、かつ監督が求めている描写を最大限に実現するためにコーディネートするスタッフです。
LiLiCo:いままで、日本ではなかなか聞いたことがありませんでしたね。
浅田:2020年に制作されたNetflixの『彼女』という作品で、初めてインティマシーコーディネーターが導入されました。その作品が2021年に配信になったので、そこからクレジットなどで目にしていただくようになったかなと思います。
LiLiCo:日本のインティマシーコーディネーターは、浅田さんが最初ですか?
浅田:そうですね。当時、インティマシーコーディネーターが日本にいなかったのですが、水原希子さんがそういったシーンを演じるにあたってインティマシーコーディネーターの導入を希望されたので、Netflixが「入れましょう」ということで私に声をかけてくださり、トレーニングを受けました。
LiLiCo:なぜ浅田さんだったのでしょう? それまでは、どのような仕事をされていたのですか?
浅田:私はそれまで、演劇や映画などのエンターテインメント業界で通訳として、スタッフとキャスト間の現場での架け橋になる仕事をしていました。インティマシーコーディネーターのトレーニングは英語で、映像の現場を知らないといけないので、きっとそういった条件が合ってお声がけいただいたのかなと思います。
LiLiCo:すごい! いい仕事だよね。私のなかでは、アメリカから入ってきたお仕事というのがちょっと驚きだった。アメリカ人はなんでも平気で(意見を)言ってしまいそうな感じがするけど、そうではないんですね。
浅田:そうですね。LiLiCoさんは海外経験もたくさんあるのでご存じでしょうが、日本にはあまり同意の文化がないと思います。アメリカは「YES」「NO」がはっきりしていて、また契約文化があるので、逆にインティマシーコーディネーターという立場が必要になります。それが日本に入ってきたときに、俳優のみなさんはまず「自分に『YES』『NO』をいう選択肢があるんだ」というところに驚かれるので、この仕事をしながら、日本には日常的に同意の文化が薄いことを感じています。
仕事でもっとも重要なのは「準備」
2020年制作の作品で、日本初のインティマシーコーディネーターとなった浅田さん。LiLiCoは「いま、国内に何人くらいのインティマシーコーディネーターがいるのか」と質問する。浅田:私が把握している限り、資格を保有して、いま日本で活動しているインティマシーコーディネーターは6名です。
LiLiCo:これは、やっぱり少ないですよね?
浅田:決して多くはありませんが、やはり需要に合わせて増やしていくべきだと思っているので、私のほうでも少しトレーニングをしています。しかし、一気に人数が増えて仕事のやり方が個々で違ったりしても現場が困ると思うので、いいかたちで増えていくといいなと思います。
LiLiCo:ちなみに、アメリカだと何人くらいいらっしゃるのですか?
浅田:200人くらいいるかもしれません。アメリカにはSAG-AFTRA(サグ・アフトラ)という俳優組合があって、インティマシーコーディネーターを入れることを現在、努力義務にしています。これがもうすぐ義務になるのではないかという話はずっと聞いているので、それなりの人数が必要なのだと思います。
LiLiCo:日本だと6人……。浅田さんはいま、たぶん日本でいちばん有名なインティマシーコーディネーターなので、すごく忙しいでしょう? 前はテレビと舞台しかなかったけど、配信があったり……。
浅田:本当に忙しくさせていただいていますが、LiLiCoさんと(ミュージカル)『ウェイトレス』でお会いできたり、『ALL GOOD FRIDAY』にも出演することができたりと、楽しいお仕事にもつながっているのでとても充実しています。
稲葉:インティマシーコーディネーターは、決められた日にただ場所に行けばいいわけではありませんよね。コミュニケーションを取るにあたって、事前に演出サイドの意向や俳優が思っていることをシェアしながら進められると思いますが、流れはどのようになっていますか?
浅田:準備がとても大事です。まず、台本をいただいたら「ここはインティマシーシーンかな」というところを自分なりにピックアップして、監督に「ここはどういう描写を考えていらっしゃいますか?」ということを確認します。たとえば、「ふたりは愛を確かめあった」とあっても、ト書きでは全然わからないんですね。それを共通の理解にしていくために、まずどういった描写を考えているかをお伺いして、今度は俳優部のみなさんと時間をかけて話して同意を取っていきます。そこで監督が求めている描写が全部OKなら大丈夫ですが、「ここはちょっと……」という場合は、0か100ではなく「これぐらいだったら」「こういうやり方だったら」といったことを丁寧にお伺いして、監督に提案します。そうして両者が納得するような描写にして撮影日を迎えますが、当日も立ち会いをしてもう一度同意の確認をしたり、「最少人数で撮影しましょう」といったセッティングをしたりします。
監督、俳優同士の折り合いをつけるのは大変?
LiLiCo:たとえば、私と誰かがドラマのなかで「愛を確かめあう」となったとき、私は全部大丈夫、でも相手は「すみません、ちょっとキスもできません」となったときって、すごく困りそう。浅田:そこを、どう折り合いをつけていこうかというところですね。
稲葉:撮り方なのか、どこまで譲ってもらうのか……。
浅田:そうですね。実際にキスをしなくても、キスをしたように見せることもできます。あとは共演者の仲がよかったりすると、逆に「できない」と言えなくなってしまうということもよくあります。また、撮影期間が長くなってくると、だんだんお互いのことがよく知れて「できる」「できない」と両極端に分かれるなど、本当にいろいろなことがあります。
LiLiCo:こっちは「OK」といったのに、「撮り方で」となったら、相手に断られたのかなと思うよね。
稲葉:そう思わせてしまうかもしれないからうまく言えないところを、そう思わせないような仲介をしてくださるんですね。
LiLiCo:浅田さんのいままでの通訳のお仕事は、英語も日本語もいろいろな言葉を知らないといけなかったから、いまも言葉を操って丁寧に教えてくれる。そう思うと、いままでの人生に何にも無駄はないですよね。
浅田:そうですね。この職業に、いままでのことがすべて生きてきているなと思っています。
浅田さんの活躍から、インティマシーコーディネーターに興味を持つ人も増えてきている。「入り口がわからない」「どうしたらこの仕事に就けるのか」といった疑問に、浅田さんが回答する。
浅田:アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアには、インティマシーコーディネーターのトレーニングをしている団体がたくさんありますが、アメリカの俳優組合のSAG-AFTRAが認めているところは10校ぐらいです。そのうちのひとつが、私も資格を取ったIntimacy Professionals Association(IPA)という団体で、2023年に私が設立した会社とIPAがライセンス契約をして、いまはアメリカのプログラムを日本語で教えています。2024年に、第1回目がありまして、先日第2回目の募集が終わって4月から受講が始まっています。
LiLiCo:みんなが興味を持っているというのを、肌で感じますね。
インティマシーコーディネーターについて気になる方は、浅田さんの公式ホームページ、そして浅田さんの会社・Blanketのホームページをチェックしてみては。
『ALL GOOD FRIDAY』のコーナー「LISTEN UP!」では、さまざまなジャンルの旬の情報をお届けする。オンエアは12時10分ごろから。
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- ALL GOOD FRIDAY
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毎週金曜11:30-16:00
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