大きく変化している世界の音楽シーンについて、音楽業界のリサーチ並びにコンサルティング業務を手掛けている東京谷口総研代表の谷口 元さんが解説した。
谷口さんが登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『ACROSS THE SKY』(ナビゲーター:玄理)のワンコーナー「WORLD CONNECTION」。ここでは10月9日(日)のオンエアをテキストで紹介。
先日、BLACKPINKがK-POPのガールズグループとして初めてビルボードアルバムチャートとUKアルバムチャートで1位を記録した。ガールズグループとしては、2001年にDestiny's Childがこの2つのチャートの1位を記録して以来となり、21年振りの快挙となる。
玄理:K-POPは今や世界中で聴かれていますが、何か特別なマーケティング戦略のようなものがあったのでしょうか?
谷口:K-POPは20年以上前から世界展開について色んな施策を打ってきていると思います。私の知る限りでは1997年に韓国の大統領の金大中(キム・デジュン)さんが文化大統領宣言をしまして、ドラマ、映画、音楽を世界に打って出ると発表しました。輸出という意味での文化産業だけでなくて、韓国という国のイメージを高めるブランディング戦略の一環だったと思われます。韓国の市場よりも大きなマーケットを狙うという意味で言うと、音楽に限っては世界で2番目に大きな日本、もっとも大きい市場のアメリカを狙っていって、徐々に世界展開に繋がっていったと思われます。
玄理:世界に出るために特別な戦略があったのでしょうか?
谷口:まず日本を狙うため、日本のマーケットの特性をすごく研究されています。曲づくり、ファンの思考、どういうことをすれば受け入れられるのかを徹底した結果だと思いますし、同じことをアメリカにしたのだと思います。
玄理:調べた結果、アメリカと日本にどんな特性が見えたのでしょうか?
谷口:まず、曲づくりが違いますね。たとえば、アメリカのビルボードチャートのトップに入っている曲のコード展開、イントロの長さ、曲の構成、歌詞の内容、つまりどういうものがウケていて、どういうものが来そうなのかを徹底的に調べ、それに則ったマーケティングをされていると思います。
谷口:音楽を売っている音楽ビジネスと言いながら、実はアーティストを売っていると言ったほうが正しいんじゃないかなと思います。音楽はアーティストを売るための名刺代わりの位置付けです。音楽でビジネスを成立させようとするのではなく、音楽によってアーティストを紹介して、アーティストを使ってどのようなビジネス展開ができるのかまで考えた結果だと思います。
玄理:音楽でアーティストを紹介して、他に何を売っていくのでしょうか?
谷口:アーティストのブランドを成立させた上で、ブランドに付帯するものすべてですね。マーチャンダイジングだったりファンクラブのようなオペレーションだったり、いろんな展開が考えられていると思います。
谷口:韓国のアーティストがアメリカや日本のマーケットに入るときに、現地の文化を知っている人たちとコラボレーションをすることによって、国の特性にあった曲を作ることが充分可能になってきているのかなと思います。
玄理:今の時代、アーティスト側は何に力を入れるべきなのでしょう?
谷口:今までアーティストは音楽業界とかビジネス側と組まないといろんなことができなかったんですね。現在はアーティストが自分で音楽を作れ、世界に流通させることもでき、プロモーションもすることができます。あまりビジネス側に頼る必要がなくなってきて、実際にアーティストが全部作ったものが世界に流通されてみなさんから認知されることが起きています。
一方で、谷口さんはヒットしても一度限りで終わることが多い現状を挙げる。
谷口:表面に出ることは自分でできました。これからは残るためにどうすれば継続できるかを考える必要があります。そこで、今までのビジネスのノウハウを持っている既存の音楽業界とか手を組むというのがお互い都合がいいのかなと思っています。
谷口:今まで、リスナーは音楽を求めるときに音楽以外のものも一緒に求めていたんですね。非音楽的な要素を求めての音楽アトラクションだったと思います。ジャケットだったりライナーノーツのような紹介文だったり、フィジカルのパッケージに含まれるものすべてが音楽として喜ばれていたのだと思います。TikTokやYouTubeが登場する時代になってからは、そういったものが排除され、音楽だけの部分が流通しています。音楽が届いているという感覚は変わらないのだけれども、それに付帯しているものがなくなった。
音楽の付帯要素がなくなったことにより、リスナーは音楽の世界観を自分で構築する必要が出てきたと谷口さんは語る。
玄理:世界観というのはどんなことを指しますか?
谷口:自分の人生のBGMとして成立するかどうかという、音楽を選ぶときの感覚のようなものですかね。たとえば、アメリカの人たちは昔から音楽そのものだけを聴く傾向にあるのですが、聴いたときに自分が好きな曲かどうかが自然にできるんです。一方、日本ではCDを買って自宅で何回も聴き込んで好きになるかどうか決めるということが今までなされてきたのですが、それがなくなったんですね。ですので、YouTubeやTikTokでたまたま流れてきた音楽を好きかどうか反応しづらいと思います。
玄理:逆に、サブスクに申し込んでいれば簡単どんな曲も何回でも聴けるじゃないですか。生活に音楽がより入り込みやすくなっていますから、たくさん聴けるぶん好き嫌いははっきりしそうですけどね。
谷口:好きなものと認識できている曲に関しては何回でも聴けると思いますが、好きな曲かどうかという判断が、入口のところでしづらいのかなと思います。耳に入ってきても、アーティストが見えていなかったり映像が伴っていないと判断できない傾向にあると感じています。
『ACROSS THE SKY』のワンコーナー「WORLD CONNECTION」では、ゲストを招き世界の最新カルチャーに迫る。オンエアは9時20分頃から。
谷口さんが登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『ACROSS THE SKY』(ナビゲーター:玄理)のワンコーナー「WORLD CONNECTION」。ここでは10月9日(日)のオンエアをテキストで紹介。
K-POPのマーケティングを分析
SNSやサブスクによって大きく変化する「音楽の世界地図」。谷口さんに、世界の音楽シーンについて話を聞いた。先日、BLACKPINKがK-POPのガールズグループとして初めてビルボードアルバムチャートとUKアルバムチャートで1位を記録した。ガールズグループとしては、2001年にDestiny's Childがこの2つのチャートの1位を記録して以来となり、21年振りの快挙となる。
玄理:K-POPは今や世界中で聴かれていますが、何か特別なマーケティング戦略のようなものがあったのでしょうか?
谷口:K-POPは20年以上前から世界展開について色んな施策を打ってきていると思います。私の知る限りでは1997年に韓国の大統領の金大中(キム・デジュン)さんが文化大統領宣言をしまして、ドラマ、映画、音楽を世界に打って出ると発表しました。輸出という意味での文化産業だけでなくて、韓国という国のイメージを高めるブランディング戦略の一環だったと思われます。韓国の市場よりも大きなマーケットを狙うという意味で言うと、音楽に限っては世界で2番目に大きな日本、もっとも大きい市場のアメリカを狙っていって、徐々に世界展開に繋がっていったと思われます。
玄理:世界に出るために特別な戦略があったのでしょうか?
谷口:まず日本を狙うため、日本のマーケットの特性をすごく研究されています。曲づくり、ファンの思考、どういうことをすれば受け入れられるのかを徹底した結果だと思いますし、同じことをアメリカにしたのだと思います。
玄理:調べた結果、アメリカと日本にどんな特性が見えたのでしょうか?
谷口:まず、曲づくりが違いますね。たとえば、アメリカのビルボードチャートのトップに入っている曲のコード展開、イントロの長さ、曲の構成、歌詞の内容、つまりどういうものがウケていて、どういうものが来そうなのかを徹底的に調べ、それに則ったマーケティングをされていると思います。
“アーティストを売る”という意識
音楽の世界で大成功を収めるためには、アーティストの力が必要不可欠だと谷口さんは語る。谷口:音楽を売っている音楽ビジネスと言いながら、実はアーティストを売っていると言ったほうが正しいんじゃないかなと思います。音楽はアーティストを売るための名刺代わりの位置付けです。音楽でビジネスを成立させようとするのではなく、音楽によってアーティストを紹介して、アーティストを使ってどのようなビジネス展開ができるのかまで考えた結果だと思います。
玄理:音楽でアーティストを紹介して、他に何を売っていくのでしょうか?
谷口:アーティストのブランドを成立させた上で、ブランドに付帯するものすべてですね。マーチャンダイジングだったりファンクラブのようなオペレーションだったり、いろんな展開が考えられていると思います。
アーティスト側は何に力を入れるべきか?
インターネットと発展とともにクリエイターとプロデューサーの距離感は縮まったと谷口さんは分析する。谷口:韓国のアーティストがアメリカや日本のマーケットに入るときに、現地の文化を知っている人たちとコラボレーションをすることによって、国の特性にあった曲を作ることが充分可能になってきているのかなと思います。
玄理:今の時代、アーティスト側は何に力を入れるべきなのでしょう?
谷口:今までアーティストは音楽業界とかビジネス側と組まないといろんなことができなかったんですね。現在はアーティストが自分で音楽を作れ、世界に流通させることもでき、プロモーションもすることができます。あまりビジネス側に頼る必要がなくなってきて、実際にアーティストが全部作ったものが世界に流通されてみなさんから認知されることが起きています。
一方で、谷口さんはヒットしても一度限りで終わることが多い現状を挙げる。
谷口:表面に出ることは自分でできました。これからは残るためにどうすれば継続できるかを考える必要があります。そこで、今までのビジネスのノウハウを持っている既存の音楽業界とか手を組むというのがお互い都合がいいのかなと思っています。
サブスクの時代になって変わったことは?
CDが売れていた時代、リスナーはCDを所有したりアルバムのジャケットなどを求めるなど、モノに価値を見出していた。サブスクやTikTokなどの登場によって、リスナーが音楽に求めるものはどのように変化したのだろう?谷口:今まで、リスナーは音楽を求めるときに音楽以外のものも一緒に求めていたんですね。非音楽的な要素を求めての音楽アトラクションだったと思います。ジャケットだったりライナーノーツのような紹介文だったり、フィジカルのパッケージに含まれるものすべてが音楽として喜ばれていたのだと思います。TikTokやYouTubeが登場する時代になってからは、そういったものが排除され、音楽だけの部分が流通しています。音楽が届いているという感覚は変わらないのだけれども、それに付帯しているものがなくなった。
音楽の付帯要素がなくなったことにより、リスナーは音楽の世界観を自分で構築する必要が出てきたと谷口さんは語る。
玄理:世界観というのはどんなことを指しますか?
谷口:自分の人生のBGMとして成立するかどうかという、音楽を選ぶときの感覚のようなものですかね。たとえば、アメリカの人たちは昔から音楽そのものだけを聴く傾向にあるのですが、聴いたときに自分が好きな曲かどうかが自然にできるんです。一方、日本ではCDを買って自宅で何回も聴き込んで好きになるかどうか決めるということが今までなされてきたのですが、それがなくなったんですね。ですので、YouTubeやTikTokでたまたま流れてきた音楽を好きかどうか反応しづらいと思います。
玄理:逆に、サブスクに申し込んでいれば簡単どんな曲も何回でも聴けるじゃないですか。生活に音楽がより入り込みやすくなっていますから、たくさん聴けるぶん好き嫌いははっきりしそうですけどね。
谷口:好きなものと認識できている曲に関しては何回でも聴けると思いますが、好きな曲かどうかという判断が、入口のところでしづらいのかなと思います。耳に入ってきても、アーティストが見えていなかったり映像が伴っていないと判断できない傾向にあると感じています。
『ACROSS THE SKY』のワンコーナー「WORLD CONNECTION」では、ゲストを招き世界の最新カルチャーに迫る。オンエアは9時20分頃から。
この記事の続きを読むには、
以下から登録/ログインをしてください。
radikoで聴く
2022年10月16日28時59分まで
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
番組情報
- ACROSS THE SKY
-
毎週日曜9:00-12:00
-
玄理