燃え殻と漫画家・おかざき真里が、会社員時代を振り返り、当時の自分たちがほしかったものを語り合った。
このトークをお届けしたのは、J-WAVEで放送中の番組『BEFORE DAWN』(ナビゲーター:燃え殻)。4月19日(火)のオンエア内容をテキストで紹介する。
【関連記事】ドラマ配信を控える『あなたに聴かせたい歌があるんだ』 おかざき真里×燃え殻が制作を振り返る
燃え殻:今週はおかざきさん自身のことをいろいろ聞いてみたいと思います。そもそも、漫画家になろうと思ったきっかけは何ですか?
おかざき:高校生の頃、アルバイトがてらいろんなイラストコンクールに応募していたんですよね。
燃え殻:公募ガイドを見てって感じですか?
おかざき:そんな感じ! 私が高校生の頃はバブルの時代だったので、めちゃくちゃお金がよかったんですよ。
燃え殻:へええ!
おかざき:入賞金10万円とか。高校生の10万円は大きいでしょう?
燃え殻:でかいですね。
おかざき:その一環で、漫画を描いていた気がします。
燃え殻:高校生の頃から漫画も送っていたんですか?
おかざき:とあるイラストをとある出版社に送ったら入賞しまして、「入賞した人には漫画を描いてもらうんです」という連絡が来たんですね。そこで初めて「(漫画を)描きますか?」と言われたので、「描きます描きます!」と。描いたこともないのに(笑)。たしか、高校1年生ぐらいの話だったかなあ。当時は高校生で漫画家デビューって多かったんですよね。
高校3年生で上京したおかざきは、学生でありながら貯金額が200万円あったそうだ。
おかざき:お金持ちだろう(笑)?
燃え殻:えっ、すごいですね。
おかざき:大学に進学してからも、漫画はアルバイトのように続けていました。アルバイトっていう感覚で描いていたから、「一生漫画で食べていく」っていうのは考えてませんでした。
燃え殻:漫画は連載だったんですか?
おかざき:読み切り。いろんなところで読み切りばっかり描いていました。
燃え殻:そのあとに就職するんですよね?
おかざき:そうです。漫画家になれるとも漫画で食べていけるとも思っていなかったので、「ちゃんと就職しなきゃ」と思いました。
燃え殻:僕だったら200万円稼いだ時点で「いけるな」って思っちゃいます。
おかざき:(笑)。
おかざき:作品を作っていくのが一次試験で、二次試験が発想力試験だったんですね。発想力試験を受けた人のなかで、1位だったらしいです。
燃え殻:へええ!
おかざき:入社してから、上司が「漫画を描いていたから発想力が鍛えられたんだ。お前は漫画を続けろ」と言ってくださったんです。いい上司でしょう? 「漫画を続けるならきちんと大きな会社で」と思ったので、集英社に作品を投稿してデビューしました。
会社勤務と漫画制作の両立はハードだったそう。おかざきは朝4時まで会社で働き、帰宅後は朝7時まで漫画を描き、打ち合わせの時間まで仮眠を取るという生活を送っていたと話す。
燃え殻:会社に勤めながら連載もやっていたんですか!?
おかざき:やっていました(笑)。でも、燃え殻さんも会社員をしながら小説を書いていたんでしょう?
燃え殻:たしかに、『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)を書いていたときは僕も会社に勤めていましたね。
おかざき:それと同じ感じですよ。
燃え殻:あの生活ってずっとは続けられないですよね。
おかざき:そうなんですよね。小説の場合、長くても上・中・下巻じゃないですか。漫画って、10巻以上続くときがあるでしょう?
燃え殻:そうですね。
おかざき:それで、「会社員をしながらだと無理かなあ」と思ったんです。人生どうなるかわからないので、最後に長い漫画を描こうかなと考えて会社を辞めました。
燃え殻:おかざきさんの17歳と27歳はどんな感じでしたか?
おかざき:17歳のときは大学受験のための“追い込み漁”でした(笑)。
燃え殻:人生を懸けて、いろんなことを挑戦していたと。
おかざき:そうですね。27歳のときに思っていたことは「タイムマシーンがほしい」でした。仕事も一生懸命にやっていて、ある程度まわせるようになっていた時期ですね。
燃え殻:その頃も広告代理店に?
おかざき:そうです。入社5年目ぐらいかな。だけど、私の時代はまだ、女性総合職に上がほとんどいなかったんですよ。ロールモデルがいないし、こんなに働いている女性もいない状況だったので、周りから「どうするんだ」とすごく言われました。自分も「どうするんだろう?」と思ってましたし。
燃え殻:「こんなに働いてどこに行くんだろう?」と思っていた?
おかざき:そう! 周りからは「嫁に行けないぞ」みたいに言われていたんですけど、私にとって仕事は居心地が悪くなかったんですよね。10年後の自分を見てみたかったんです。そのときの自分が「悪くない」と思えたら、このままでいられるなって思ったんですよ。「やべえ」と思ったら、歴史を変える勢いで舵を切る感じ(笑)。タイムマシーンがめちゃくちゃほしかったですね。
燃え殻:じゃあ、答えが出ないなか一生懸命頑張っていたときだったんだ。
おかざき:そうです。ロールモデルがいなくって、先が全然見えませんでした。
燃え殻:僕もね、小さい会社だったからどうなるかわからないまま仕事をしていましたね。でも、僕も社長も「これでやらないと何も起きないんじゃないか」って思ってました。今思い返すと、僕もタイムマシーンがほしかったかも。
おかざき:ほしいよね。27歳のときにタイムマシーンってほしいです。
燃え殻:「これでよかったよ」って、言ってほしかったですね。言ってくれるんじゃないかと思って頑張っていたかもなあ。
おかざき:いるかいないかわかんない神様から……。
燃え殻:うん。変なことですね(笑)。
おかざき:(笑)。365日とは別に3日だけプレゼントされました。でも、神様は日々のルーティンをしてはいけませんと言いました。燃え殻さんの場合は小説を書くことですね。何をしますか?
燃え殻:う~ん。3日しかないの?
おかざき:3日しかないの。
燃え殻:3日しかないっていうのがちょっとポイントですね。
おかざき:今、一番何がしてみたい?
燃え殻:僕ね、コロナ禍になる直前にニューヨークに行こうと思っていました。
おかざき:ニューヨーク!
燃え殻:ニューヨークで現代アートをやっている友だちとずっとFacebookでやりとりをしていて、「行くよ!」という話をしていたら世の中がこうなっちゃったんです。
おかざき:でも、3日じゃニューヨークに行けないよ。
燃え殻:行けないか。
おかざき:(笑)。でも、外国に行きたいんですね。
燃え殻:外国に行ってみたい。ニューヨーク以外だと、台湾に行ってみたい。僕ね、行ったことがないのに台湾が大好きなの。だいたい同じ場所にいるんで旅に出たいです。おかざきさんは?
おかざき:私はトランクに読んでいない本をいっぱい詰めて、ご飯のおいしい温泉にこもります。3日間、とにかく読みたい本だけを読む。やりたいなあ。
燃え殻:それもいいっすねえ。
おかざき:今ね、本を読んでいても、心のどこかでは「漫画を描かなきゃ」って気持ちがあるんですよ。
燃え殻:僕も同じ感じです。僕は今年の正月に「1ヵ月に1冊は長編作品を読もう」と思ったんですけど、もう挫折しそうになっていますからね。読みたいものがどんどん積まれていく。
おかざき:わかります。(作品に)向かい合うのって、体力がいりますよね。
おかざき:私は子どもがいるので、子どもを見てる。
燃え殻:へええ。
おかざき:自分とは違う人生を送っている人を見る。今抱えているストレスとはまったく関係なく、楽しそうにしている人がいると「自分のストレスで世界が終わるわけじゃないんだな」って思う。
燃え殻:ああ~。
おかざき:私の場合は子どもなんですけども、大事にしている動物だったり、他の誰かだったり家族でもいいと思うんです。見ていると、自分のストレスとは関係なく世界はちゃんと動いているなって感じられるんですよね。
燃え殻:なるほど。
おかざき:もちろん、ストレス自体はあるんですよ。あるんだけど、「世界はちゃんと動いている。大丈夫」って思う。
燃え殻:今、僕ちょっとストレスが減りましたよ(笑)。
おかざき:よかった(笑)! 私みたいにね、のほほんとしている人を見るといいですよ。私の場合、「目の前にいる存在さえ幸せであればいいや」と思う。
燃え殻:思っていたら、自分のことをちょっとどこかに持っていけるってことですか?
おかざき:そうそう! 「今は目の前の存在の幸せを願おうかな」って感じかな。
燃え殻:そう考えると、僕は自分のことを見すぎなのかもしれない。
燃え殻がお届けする『BEFORE DAWN』は、毎週火曜26時から。
このトークをお届けしたのは、J-WAVEで放送中の番組『BEFORE DAWN』(ナビゲーター:燃え殻)。4月19日(火)のオンエア内容をテキストで紹介する。
高校生時代から漫画を描き続けていた
前回に引き続き、漫画家・おかざき真里がゲストに登場。前回のオンエアでは、おかざきと『あなたに聴かせたい歌があるんだ』の漫画版(扶桑社)の制作エピソードや、ドラマ版との違いを語った。【関連記事】ドラマ配信を控える『あなたに聴かせたい歌があるんだ』 おかざき真里×燃え殻が制作を振り返る
燃え殻:今週はおかざきさん自身のことをいろいろ聞いてみたいと思います。そもそも、漫画家になろうと思ったきっかけは何ですか?
おかざき:高校生の頃、アルバイトがてらいろんなイラストコンクールに応募していたんですよね。
燃え殻:公募ガイドを見てって感じですか?
おかざき:そんな感じ! 私が高校生の頃はバブルの時代だったので、めちゃくちゃお金がよかったんですよ。
燃え殻:へええ!
おかざき:入賞金10万円とか。高校生の10万円は大きいでしょう?
燃え殻:でかいですね。
おかざき:その一環で、漫画を描いていた気がします。
燃え殻:高校生の頃から漫画も送っていたんですか?
おかざき:とあるイラストをとある出版社に送ったら入賞しまして、「入賞した人には漫画を描いてもらうんです」という連絡が来たんですね。そこで初めて「(漫画を)描きますか?」と言われたので、「描きます描きます!」と。描いたこともないのに(笑)。たしか、高校1年生ぐらいの話だったかなあ。当時は高校生で漫画家デビューって多かったんですよね。
高校3年生で上京したおかざきは、学生でありながら貯金額が200万円あったそうだ。
おかざき:お金持ちだろう(笑)?
燃え殻:えっ、すごいですね。
おかざき:大学に進学してからも、漫画はアルバイトのように続けていました。アルバイトっていう感覚で描いていたから、「一生漫画で食べていく」っていうのは考えてませんでした。
燃え殻:漫画は連載だったんですか?
おかざき:読み切り。いろんなところで読み切りばっかり描いていました。
燃え殻:そのあとに就職するんですよね?
おかざき:そうです。漫画家になれるとも漫画で食べていけるとも思っていなかったので、「ちゃんと就職しなきゃ」と思いました。
燃え殻:僕だったら200万円稼いだ時点で「いけるな」って思っちゃいます。
おかざき:(笑)。
漫画家に専業しようと思ったきっかけ
大学卒業後、広告代理店に入社したおかざきは、上司の理解も得られたことで漫画を描き続けることができたそうだ。広告代理店では、美大生専用の入社試験があったという。おかざき:作品を作っていくのが一次試験で、二次試験が発想力試験だったんですね。発想力試験を受けた人のなかで、1位だったらしいです。
燃え殻:へええ!
おかざき:入社してから、上司が「漫画を描いていたから発想力が鍛えられたんだ。お前は漫画を続けろ」と言ってくださったんです。いい上司でしょう? 「漫画を続けるならきちんと大きな会社で」と思ったので、集英社に作品を投稿してデビューしました。
会社勤務と漫画制作の両立はハードだったそう。おかざきは朝4時まで会社で働き、帰宅後は朝7時まで漫画を描き、打ち合わせの時間まで仮眠を取るという生活を送っていたと話す。
燃え殻:会社に勤めながら連載もやっていたんですか!?
おかざき:やっていました(笑)。でも、燃え殻さんも会社員をしながら小説を書いていたんでしょう?
燃え殻:たしかに、『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)を書いていたときは僕も会社に勤めていましたね。
おかざき:それと同じ感じですよ。
燃え殻:あの生活ってずっとは続けられないですよね。
おかざき:そうなんですよね。小説の場合、長くても上・中・下巻じゃないですか。漫画って、10巻以上続くときがあるでしょう?
燃え殻:そうですね。
おかざき:それで、「会社員をしながらだと無理かなあ」と思ったんです。人生どうなるかわからないので、最後に長い漫画を描こうかなと考えて会社を辞めました。
17歳と27歳の自分を振り返る
燃え殻は『あなたに聴かせたい歌があるんだ』の内容を取り上げ、「人って17歳と27歳に人生の分岐点を迎えるんじゃないかな」と語った。燃え殻:おかざきさんの17歳と27歳はどんな感じでしたか?
おかざき:17歳のときは大学受験のための“追い込み漁”でした(笑)。
燃え殻:人生を懸けて、いろんなことを挑戦していたと。
おかざき:そうですね。27歳のときに思っていたことは「タイムマシーンがほしい」でした。仕事も一生懸命にやっていて、ある程度まわせるようになっていた時期ですね。
燃え殻:その頃も広告代理店に?
おかざき:そうです。入社5年目ぐらいかな。だけど、私の時代はまだ、女性総合職に上がほとんどいなかったんですよ。ロールモデルがいないし、こんなに働いている女性もいない状況だったので、周りから「どうするんだ」とすごく言われました。自分も「どうするんだろう?」と思ってましたし。
燃え殻:「こんなに働いてどこに行くんだろう?」と思っていた?
おかざき:そう! 周りからは「嫁に行けないぞ」みたいに言われていたんですけど、私にとって仕事は居心地が悪くなかったんですよね。10年後の自分を見てみたかったんです。そのときの自分が「悪くない」と思えたら、このままでいられるなって思ったんですよ。「やべえ」と思ったら、歴史を変える勢いで舵を切る感じ(笑)。タイムマシーンがめちゃくちゃほしかったですね。
燃え殻:じゃあ、答えが出ないなか一生懸命頑張っていたときだったんだ。
おかざき:そうです。ロールモデルがいなくって、先が全然見えませんでした。
燃え殻:僕もね、小さい会社だったからどうなるかわからないまま仕事をしていましたね。でも、僕も社長も「これでやらないと何も起きないんじゃないか」って思ってました。今思い返すと、僕もタイムマシーンがほしかったかも。
おかざき:ほしいよね。27歳のときにタイムマシーンってほしいです。
燃え殻:「これでよかったよ」って、言ってほしかったですね。言ってくれるんじゃないかと思って頑張っていたかもなあ。
3日間やりたいことだけをやれたら何をする?
おかざきは燃え殻に「変なことを聞いてもいいですか?」と問いかけた。おかざき:いるかいないかわかんない神様から……。
燃え殻:うん。変なことですね(笑)。
おかざき:(笑)。365日とは別に3日だけプレゼントされました。でも、神様は日々のルーティンをしてはいけませんと言いました。燃え殻さんの場合は小説を書くことですね。何をしますか?
燃え殻:う~ん。3日しかないの?
おかざき:3日しかないの。
燃え殻:3日しかないっていうのがちょっとポイントですね。
おかざき:今、一番何がしてみたい?
燃え殻:僕ね、コロナ禍になる直前にニューヨークに行こうと思っていました。
おかざき:ニューヨーク!
燃え殻:ニューヨークで現代アートをやっている友だちとずっとFacebookでやりとりをしていて、「行くよ!」という話をしていたら世の中がこうなっちゃったんです。
おかざき:でも、3日じゃニューヨークに行けないよ。
燃え殻:行けないか。
おかざき:(笑)。でも、外国に行きたいんですね。
燃え殻:外国に行ってみたい。ニューヨーク以外だと、台湾に行ってみたい。僕ね、行ったことがないのに台湾が大好きなの。だいたい同じ場所にいるんで旅に出たいです。おかざきさんは?
おかざき:私はトランクに読んでいない本をいっぱい詰めて、ご飯のおいしい温泉にこもります。3日間、とにかく読みたい本だけを読む。やりたいなあ。
燃え殻:それもいいっすねえ。
おかざき:今ね、本を読んでいても、心のどこかでは「漫画を描かなきゃ」って気持ちがあるんですよ。
燃え殻:僕も同じ感じです。僕は今年の正月に「1ヵ月に1冊は長編作品を読もう」と思ったんですけど、もう挫折しそうになっていますからね。読みたいものがどんどん積まれていく。
おかざき:わかります。(作品に)向かい合うのって、体力がいりますよね。
おかざき真里流“ストレス発散法”
ストレスに弱い燃え殻は、おかざきから“ストレス発散法”について聞いた。おかざき:私は子どもがいるので、子どもを見てる。
燃え殻:へええ。
おかざき:自分とは違う人生を送っている人を見る。今抱えているストレスとはまったく関係なく、楽しそうにしている人がいると「自分のストレスで世界が終わるわけじゃないんだな」って思う。
燃え殻:ああ~。
おかざき:私の場合は子どもなんですけども、大事にしている動物だったり、他の誰かだったり家族でもいいと思うんです。見ていると、自分のストレスとは関係なく世界はちゃんと動いているなって感じられるんですよね。
燃え殻:なるほど。
おかざき:もちろん、ストレス自体はあるんですよ。あるんだけど、「世界はちゃんと動いている。大丈夫」って思う。
燃え殻:今、僕ちょっとストレスが減りましたよ(笑)。
おかざき:よかった(笑)! 私みたいにね、のほほんとしている人を見るといいですよ。私の場合、「目の前にいる存在さえ幸せであればいいや」と思う。
燃え殻:思っていたら、自分のことをちょっとどこかに持っていけるってことですか?
おかざき:そうそう! 「今は目の前の存在の幸せを願おうかな」って感じかな。
燃え殻:そう考えると、僕は自分のことを見すぎなのかもしれない。
燃え殻がお届けする『BEFORE DAWN』は、毎週火曜26時から。
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2022年4月26日28時59分まで
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番組情報
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