ジャーナリストの堀 潤が、ロシアによるウクライナ侵攻の経緯を解説した。
堀が登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『ACROSS THE SKY』(ナビゲーター:玄理)のワンコーナー「meeth WORLD CONNECTION」。
【オンエア:2022年3月6日(日)】
玄理:ロシアとウクライナは2014年から緊張状態が高まっていましたが、どうして8年経ったこのタイミングで侵攻が起きたのでしょうか?
堀:キーウ(ウクライナ首都)にいるみなさんは口をそろえて「私たちは8年戦争に向き合ってきたんです。今始まった戦争ではありません」とおっしゃっています。ウクライナ東部の親ロシア派武装勢力が統治してきた地域(ドネツク人民共和国およびルガンスク人民共和国)があるんですが、その2つの地域が独立を宣言し、その独立の承認をロシアのプーチン大統領に求めたんですね。この地域は、親ロシア派の武装勢力とウクライナ軍が8年に渡って戦争を続けた地域でもあるんです。
プーチン大統領は親ロシア派に対する弾圧から市民を保護するという名目で、ロシア軍の実行部隊をウクライナに送り込んだ。
堀:当初は東部のみで留まるという見方もあったのですが、蓋を開けてみれば全土でした。首都キーウを手中に収め、ウクライナそのものをロシアへ強烈に引き込む展開が今まさに進行中です。2014年は何があったかと言うと、ウクライナでは親ロシア派、ロシアに近い考えを持つ政権が当時あったんですね。ところが、市民のあいだでは「EUやNATOといった西側の自由主義諸国のアライアンスに入りたい」という声が根強かったんです。市民たちが抗議運動などをおこない、死者も出しながら、ロシアに近い考えを持つ政権を引きずり降ろして、EUやNATOといった西側に近い考えを持つ政権が誕生しました。これをプーチン大統領は「約束が違う」と捉えたんです。
プーチン大統領は「西側の領域に入る国と中間的な役割を担う国はロシアとEUのあいだにあるべきだ、なぜ勝手にそちらにいこうとしているのだ」と、今回の軍事侵攻に拍車がかかったと解説した。
堀:特に首都キーウはロシアにとってアイデンティティそのものというか。日本でいう京都のような存在ですよね。アイデンティティにつながるような街が西側にとられることは、プーチン大統領にとっては避けたい。執念めいたものを感じますよね。
玄理:NATOとは何か、ウクライナがNATOに加盟したい理由を教えてください。
堀:NATOは、いわゆる軍事同盟ですね。北大西洋条約機構と言って、アメリカやヨーロッパが中心となって作った対ロシアの同盟です。つまり、隣国がNATOに加盟すると「目の前で銃を突きつけられている」という感覚をロシアが持つわけですよ。一方で、自由主義を求める国にとっては「ロシア側の脅威から守ってほしい」という思いがあるわけですね。今回の軍事侵略によって、ロシアの隣国によるNATO加盟の申請、表明、検討の動きが相次いでいます。
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の調査によると、ロシアの軍事侵攻からわずか1週間で、ウクライナから避難を余儀なくされた人々が100万を超えたという。
玄理:日本もウクライナからの難民を受け入れるという発表がありました。具体的にはどんな受け入れがおこなわれると思いますか?
堀:民間企業のみなさんもいち早く声明を発表し、対策を打ち出しています。まず、強制的に祖国に帰すような措置は取らないこと。今までは難民申請が受け入れられないまま帰らずにいたら不法滞在として収監してきました。これが昨今の日本における難民問題の冷たい現状でした。今回の件に関しては、強制送還をせず、まずは一旦受け入れる形を取ると岸田政権が表明しました。
ウクライナ難民に対して、住居や労働環境を提供すると表明している民間企業も出ているそうだ。
堀:さらには寄付金を募り、集まった多額の資金を民間企業がウクライナ現地に送るということも始まっています。
難民支援にとって重要な鍵を握るのは食糧だ。
堀:WFP(国連世界食糧計画)という、ノーベル平和賞を受賞した機関があるんですけども、そちらが食糧の調達・確保に全力を尽くしています。ただ、これまでWFPが世界の紛争・貧困・災害地域に食料を供給した小麦の調達先はウクライナだったんですよ。ウクライナが現在こういう状況なので、WFPとしては小麦の調達に対しても非常に危機感を募らせています。
ウクライナ難民の受け入れが各国で進むなか、堀はこれまでの難民問題にも目を向けてほしいと語る。
堀:これまでの難民のみなさんは、難民キャンプのなかで非常にインフラが弱い、衛生環境も悪い、教育環境も悪い、ある意味、隔離されたような世界で閉じ込められたまま放置されてきたんです。ウクライナ難民に関しては、類を見ない軍事侵攻による犠牲者ということから、各国で理解とともに受け入れられる状況が考えられます。だからこそ、今回のウクライナ難民のことをきっかけに、そのほかの地域の紛争などで苦しんできた方々の難民の受け入れやサポートが進むようになればと思います。
堀は最後に、ロシア国内でもプーチン政権に対して抗議の声を挙げている国民がいると語った。
堀:プーチン政権が起こした戦争であり、ロシア国民やベラルーシ国民が起こしている戦争ではないんです。あくまでも独裁政権が起こしているものなんですね。そういう目線で見ていただければいいんじゃないかなと思います。
『ACROSS THE SKY』のワンコーナー「meeth WORLD CONNECTION」では、ゲストを招き世界の最新カルチャーに迫る。オンエアは9時20分頃から。
堀が登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『ACROSS THE SKY』(ナビゲーター:玄理)のワンコーナー「meeth WORLD CONNECTION」。
【オンエア:2022年3月6日(日)】
今回のゲストである、ジャーナリストの堀 潤
プーチン大統領が軍事侵攻の決断に至った背景を分析
ロシアによる侵攻が現在も続いているウクライナ。2月24日にロシア軍による攻撃が始まって以来、攻撃による被害、ウクライナからの避難民、停戦交渉、ロシアに対する各国の経済制裁、ロシア国内を含む世界中で起きている反戦デモなど、メディアやSNSを通してさまざまな情報が届いている。まずロシアがウクライナ侵攻に至った経緯を堀が解説した。玄理:ロシアとウクライナは2014年から緊張状態が高まっていましたが、どうして8年経ったこのタイミングで侵攻が起きたのでしょうか?
堀:キーウ(ウクライナ首都)にいるみなさんは口をそろえて「私たちは8年戦争に向き合ってきたんです。今始まった戦争ではありません」とおっしゃっています。ウクライナ東部の親ロシア派武装勢力が統治してきた地域(ドネツク人民共和国およびルガンスク人民共和国)があるんですが、その2つの地域が独立を宣言し、その独立の承認をロシアのプーチン大統領に求めたんですね。この地域は、親ロシア派の武装勢力とウクライナ軍が8年に渡って戦争を続けた地域でもあるんです。
プーチン大統領は親ロシア派に対する弾圧から市民を保護するという名目で、ロシア軍の実行部隊をウクライナに送り込んだ。
堀:当初は東部のみで留まるという見方もあったのですが、蓋を開けてみれば全土でした。首都キーウを手中に収め、ウクライナそのものをロシアへ強烈に引き込む展開が今まさに進行中です。2014年は何があったかと言うと、ウクライナでは親ロシア派、ロシアに近い考えを持つ政権が当時あったんですね。ところが、市民のあいだでは「EUやNATOといった西側の自由主義諸国のアライアンスに入りたい」という声が根強かったんです。市民たちが抗議運動などをおこない、死者も出しながら、ロシアに近い考えを持つ政権を引きずり降ろして、EUやNATOといった西側に近い考えを持つ政権が誕生しました。これをプーチン大統領は「約束が違う」と捉えたんです。
プーチン大統領は「西側の領域に入る国と中間的な役割を担う国はロシアとEUのあいだにあるべきだ、なぜ勝手にそちらにいこうとしているのだ」と、今回の軍事侵攻に拍車がかかったと解説した。
堀:特に首都キーウはロシアにとってアイデンティティそのものというか。日本でいう京都のような存在ですよね。アイデンティティにつながるような街が西側にとられることは、プーチン大統領にとっては避けたい。執念めいたものを感じますよね。
難民問題を考える。支援の鍵は
ウクライナがNATO加盟を求めるのはなぜだろうか?玄理:NATOとは何か、ウクライナがNATOに加盟したい理由を教えてください。
堀:NATOは、いわゆる軍事同盟ですね。北大西洋条約機構と言って、アメリカやヨーロッパが中心となって作った対ロシアの同盟です。つまり、隣国がNATOに加盟すると「目の前で銃を突きつけられている」という感覚をロシアが持つわけですよ。一方で、自由主義を求める国にとっては「ロシア側の脅威から守ってほしい」という思いがあるわけですね。今回の軍事侵略によって、ロシアの隣国によるNATO加盟の申請、表明、検討の動きが相次いでいます。
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の調査によると、ロシアの軍事侵攻からわずか1週間で、ウクライナから避難を余儀なくされた人々が100万を超えたという。
玄理:日本もウクライナからの難民を受け入れるという発表がありました。具体的にはどんな受け入れがおこなわれると思いますか?
堀:民間企業のみなさんもいち早く声明を発表し、対策を打ち出しています。まず、強制的に祖国に帰すような措置は取らないこと。今までは難民申請が受け入れられないまま帰らずにいたら不法滞在として収監してきました。これが昨今の日本における難民問題の冷たい現状でした。今回の件に関しては、強制送還をせず、まずは一旦受け入れる形を取ると岸田政権が表明しました。
ウクライナ難民に対して、住居や労働環境を提供すると表明している民間企業も出ているそうだ。
堀:さらには寄付金を募り、集まった多額の資金を民間企業がウクライナ現地に送るということも始まっています。
難民支援にとって重要な鍵を握るのは食糧だ。
堀:WFP(国連世界食糧計画)という、ノーベル平和賞を受賞した機関があるんですけども、そちらが食糧の調達・確保に全力を尽くしています。ただ、これまでWFPが世界の紛争・貧困・災害地域に食料を供給した小麦の調達先はウクライナだったんですよ。ウクライナが現在こういう状況なので、WFPとしては小麦の調達に対しても非常に危機感を募らせています。
ウクライナ難民の受け入れが各国で進むなか、堀はこれまでの難民問題にも目を向けてほしいと語る。
堀:これまでの難民のみなさんは、難民キャンプのなかで非常にインフラが弱い、衛生環境も悪い、教育環境も悪い、ある意味、隔離されたような世界で閉じ込められたまま放置されてきたんです。ウクライナ難民に関しては、類を見ない軍事侵攻による犠牲者ということから、各国で理解とともに受け入れられる状況が考えられます。だからこそ、今回のウクライナ難民のことをきっかけに、そのほかの地域の紛争などで苦しんできた方々の難民の受け入れやサポートが進むようになればと思います。
堀は最後に、ロシア国内でもプーチン政権に対して抗議の声を挙げている国民がいると語った。
堀:プーチン政権が起こした戦争であり、ロシア国民やベラルーシ国民が起こしている戦争ではないんです。あくまでも独裁政権が起こしているものなんですね。そういう目線で見ていただければいいんじゃないかなと思います。
『ACROSS THE SKY』のワンコーナー「meeth WORLD CONNECTION」では、ゲストを招き世界の最新カルチャーに迫る。オンエアは9時20分頃から。
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