映画『クレッシェンド 音楽の架け橋』(1月28日から全国公開中)を、J-WAVEの番組『STEP ONE』で紹介。同番組のナビゲーターであるサッシャとノイハウス萌菜が魅力を語った。
【オンエア:2022年1月17日(月)】
ドイツにルーツを持つサッシャとノイハウス。今回の映画は歴史的背景も含めて思うところがあったようだ。
サッシャ:これ、結論に僕は驚きました。
ノイハウス:希望に向かったストーリーだからこそ、ハッピーかなと思いきや、最後もけっこう考えさせられるような終わりでしたね。
サッシャ:まさに衝撃のエンディングという感じなんですけれども、どうでしたか?
ノイハウス:何人かメインキャラクターみたいな方々がいるんですけど、一人ひとりは深堀りしないで、指揮者の方(スポルク)にフォーカスして、どのようにみんなの怒りやトラウマを乗り越えるように進めていくかという、そのプロセスを描いているなと思って。いくつかのステップがすごく興味深かったのと、歴史的、政治的な状況に一人ひとりの想いはあるけれども、それを一緒に乗り越えていけるっていう希望(を感じました)。終わり方は「ああ……」ってなりましたけど、希望を持ち帰ることのできる映画かなと思います。
サッシャは日ごろ、イスラエルとパレスチナの紛争が続いていることについてはニュースなどで観ていて当然知っている、ということを前提に、映画で感じたことについて語った。
サッシャ:ガザやヨルダンの西岸地区とかね、本当に大変な想いをしています。ロケットが飛びあっている映像とかも、もちろんニュースで見ているんですけれども、そのなかの彼らの日常というのは、意外とそんなに知らなかったな。パレスチナというのは自治区だから、さまざまな歴史の紆余曲折があって、イスラエルという国家のなかで自治をしている。だからイスラエル国軍が常駐しているんですよね。そのパレスチナの人たちが、イスラエルの、パレスチナの自治区以外の領土に行こうとすると、すごく大変で。理不尽なことでなかなか検問を通してもらえない、みないなところも映画では描かれるんです。紛争があって、テロがあったりとかっていう話は聞くけど、日常的にどういう苦労があって、どういう不都合があるのか、ということを我々は全然(知らない)。映画はフィクションですけど、実在の楽団をモチーフにしていて、「こんなに若い人たちが直接会っても、家族からのプレッシャーとかもいろいろあって、認め合えないんだ」と。
ノイハウス:そうですねえ。
サッシャ:スポルクというドイツ人の役は、ナチスの遠縁だった両親の息子なんです。イスラエルという国は、第二次世界大戦前のユダヤ人の迫害によって最終的に建国していくことになるんですけど、もともといたパレスチナの人たちもそれによって非常に苦労するんです。だからドイツとかヨーロッパの長い歴史の闇。それがいまになって結実していることがドイツ人を通じて描かれるという、すごく深い話なんです。人生にとって大切なもの、生きることにとって大事なもの、人と向き合う、一人ひとりで向き合う──歴史と向き合うと、本当にいろいろなものが要素としてあるから、1対1で向き合う難しさ、そして大切さというのも、この映画で知ることができると思います。
サッシャ:詳細はネタバレになるので言えませんが、最後のほうで『ボレロ』をみんなで演奏するシーンが印象的でした。この映画のタイトルでもある「クレッシェンド」は音が段々大きくなるというクラシックの用語なんですが、この『ボレロ』というのはまさに、クレッシェンドの曲なんです。この曲はまずドラムの音から始まって、楽器がどんどん増えていって、どんどん音が大きくなっていって、最後に一番大きい音で終わる。だから最初はバラバラだった人たちが、段々とひとつになっていくという。そして実はこれ、2つのパターンのメロディをずっと交互に演奏する15分間の演奏なんです。これもイスラエル、パレスチナという2つの考え方が、右に行ったり左に行ったりして、徐々に音AのパターンとBのパターンが融合していくという。だからこの『ボレロ』を最後に選んでいったというのは、僕はこの映画をものすごく表しているんじゃないかと思って。
ノイハウス:本当ですね。
サッシャ:このクレッシェンドの感じをぜひ楽しんでいただきたいと思います。
番組ではNeue Philharmonie Frankfurtの『Bolero』のショートバージョンをオンエア。サッシャは楽曲のリズムに関して、3つ目の推論を語った。
サッシャ:だんだんとクレッシェンドで楽器が増えていく感じ、そして2つのメロディがある。これは恐らくパレスチナとイスラエルと表しているんじゃないかと。もうひとつの要素として、最初から「ダッダダダダ……」というリズムはひとつなんです。だからイスラエルとパレスチナという2つのメロディはあるかもしれないけれど、人間が生きるという意味では同じリズムを刻んでいる。つまり同じ人間だ、というようなことも、この『ボレロ』に込めているんじゃないかなと思って。ぜひ映画の最後のほうで流れる『ボレロ』に至るまでのストーリーを追っていただけると、非常に映画時代も広がっていく感じになっていきますので、注目していただきたいです。
■映画情報
2019年/ドイツ/英語・ドイツ語・ヘブライ語・アラビア語/112分/スコープ/カラー/5.1ch/原題:CRESCENDO #makemusicnotwar/日本語字幕:牧野琴子/字幕監修:細田和江
監督:ドロール・ザハヴィ
脚本:ヨハネス・ロッター、ドロール・ザハヴィ
出演:ペーター・シモニシェック(『ありがとう、トニ・エルドマン』)
ダニエル・ドンスコイ (「ザ・クラウン」「女王ヴィクトリア 愛に生きる」)
サブリナ・アマーリ
配給:松竹
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/crescendo/
【オンエア:2022年1月17日(月)】
希望に向かう物語は、衝撃のエンディングへ
<あらすじ>
世界的指揮者のスポルクは、紛争中のパレスチナとイスラエルから若者たちを集めてオーケストラを編成し、平和を祈ってコンサートを開くという企画を引き受ける。
オーディションを勝ち抜き、家族の反対や軍の検問を乗り越え、音楽家になるチャンスを掴んだ20余人の若者たち。
しかし、戦車やテロの攻撃にさらされ憎み合う両陣営は激しくぶつかり合ってしまう。
そこでスポルクは彼らを南チロルでの21日間の合宿に連れ出す。
寝食を共にし、互いの音に耳を傾け、経験を語り合い…少しずつ心の壁を溶かしていく若者たち。
だがコンサートの前日、ようやく心が一つになった彼らに、想像もしなかった事件が起きる。
(映画『クレッシェンド 音楽の架け橋』公式サイトより)
ドイツにルーツを持つサッシャとノイハウス。今回の映画は歴史的背景も含めて思うところがあったようだ。
サッシャ:これ、結論に僕は驚きました。
ノイハウス:希望に向かったストーリーだからこそ、ハッピーかなと思いきや、最後もけっこう考えさせられるような終わりでしたね。
サッシャ:まさに衝撃のエンディングという感じなんですけれども、どうでしたか?
ノイハウス:何人かメインキャラクターみたいな方々がいるんですけど、一人ひとりは深堀りしないで、指揮者の方(スポルク)にフォーカスして、どのようにみんなの怒りやトラウマを乗り越えるように進めていくかという、そのプロセスを描いているなと思って。いくつかのステップがすごく興味深かったのと、歴史的、政治的な状況に一人ひとりの想いはあるけれども、それを一緒に乗り越えていけるっていう希望(を感じました)。終わり方は「ああ……」ってなりましたけど、希望を持ち帰ることのできる映画かなと思います。
紛争やテロ…そのなかで暮らす人々の「日常」を描く
<(C)CCC Filmkunst GmbH>
サッシャ:ガザやヨルダンの西岸地区とかね、本当に大変な想いをしています。ロケットが飛びあっている映像とかも、もちろんニュースで見ているんですけれども、そのなかの彼らの日常というのは、意外とそんなに知らなかったな。パレスチナというのは自治区だから、さまざまな歴史の紆余曲折があって、イスラエルという国家のなかで自治をしている。だからイスラエル国軍が常駐しているんですよね。そのパレスチナの人たちが、イスラエルの、パレスチナの自治区以外の領土に行こうとすると、すごく大変で。理不尽なことでなかなか検問を通してもらえない、みないなところも映画では描かれるんです。紛争があって、テロがあったりとかっていう話は聞くけど、日常的にどういう苦労があって、どういう不都合があるのか、ということを我々は全然(知らない)。映画はフィクションですけど、実在の楽団をモチーフにしていて、「こんなに若い人たちが直接会っても、家族からのプレッシャーとかもいろいろあって、認め合えないんだ」と。
<(C)CCC Filmkunst GmbH>
サッシャ:スポルクというドイツ人の役は、ナチスの遠縁だった両親の息子なんです。イスラエルという国は、第二次世界大戦前のユダヤ人の迫害によって最終的に建国していくことになるんですけど、もともといたパレスチナの人たちもそれによって非常に苦労するんです。だからドイツとかヨーロッパの長い歴史の闇。それがいまになって結実していることがドイツ人を通じて描かれるという、すごく深い話なんです。人生にとって大切なもの、生きることにとって大事なもの、人と向き合う、一人ひとりで向き合う──歴史と向き合うと、本当にいろいろなものが要素としてあるから、1対1で向き合う難しさ、そして大切さというのも、この映画で知ることができると思います。
<(C)CCC Filmkunst GmbH>
作品と『ボレロ』の関係
続いてサッシャは、作中で重要な役割を担う楽曲『ボレロ』について自分なりの考察をした。サッシャ:詳細はネタバレになるので言えませんが、最後のほうで『ボレロ』をみんなで演奏するシーンが印象的でした。この映画のタイトルでもある「クレッシェンド」は音が段々大きくなるというクラシックの用語なんですが、この『ボレロ』というのはまさに、クレッシェンドの曲なんです。この曲はまずドラムの音から始まって、楽器がどんどん増えていって、どんどん音が大きくなっていって、最後に一番大きい音で終わる。だから最初はバラバラだった人たちが、段々とひとつになっていくという。そして実はこれ、2つのパターンのメロディをずっと交互に演奏する15分間の演奏なんです。これもイスラエル、パレスチナという2つの考え方が、右に行ったり左に行ったりして、徐々に音AのパターンとBのパターンが融合していくという。だからこの『ボレロ』を最後に選んでいったというのは、僕はこの映画をものすごく表しているんじゃないかと思って。
ノイハウス:本当ですね。
サッシャ:このクレッシェンドの感じをぜひ楽しんでいただきたいと思います。
番組ではNeue Philharmonie Frankfurtの『Bolero』のショートバージョンをオンエア。サッシャは楽曲のリズムに関して、3つ目の推論を語った。
サッシャ:だんだんとクレッシェンドで楽器が増えていく感じ、そして2つのメロディがある。これは恐らくパレスチナとイスラエルと表しているんじゃないかと。もうひとつの要素として、最初から「ダッダダダダ……」というリズムはひとつなんです。だからイスラエルとパレスチナという2つのメロディはあるかもしれないけれど、人間が生きるという意味では同じリズムを刻んでいる。つまり同じ人間だ、というようなことも、この『ボレロ』に込めているんじゃないかなと思って。ぜひ映画の最後のほうで流れる『ボレロ』に至るまでのストーリーを追っていただけると、非常に映画時代も広がっていく感じになっていきますので、注目していただきたいです。
<(C)CCC Filmkunst GmbH/2022年1月28日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル池袋ほか全国公開中>
2019年/ドイツ/英語・ドイツ語・ヘブライ語・アラビア語/112分/スコープ/カラー/5.1ch/原題:CRESCENDO #makemusicnotwar/日本語字幕:牧野琴子/字幕監修:細田和江
監督:ドロール・ザハヴィ
脚本:ヨハネス・ロッター、ドロール・ザハヴィ
出演:ペーター・シモニシェック(『ありがとう、トニ・エルドマン』)
ダニエル・ドンスコイ (「ザ・クラウン」「女王ヴィクトリア 愛に生きる」)
サブリナ・アマーリ
配給:松竹
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/crescendo/
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