尾崎世界観が「歌声のキーの高さ」に気づいたきっかけは?

クリープハイプの尾崎世界観(Vo/Gt)が自身の作品作りや、いまの歌声が生まれたきっかけなどについて語った。

尾崎が登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『GROOVE LINE』(ナビゲーター:ピストン西沢)のワンコーナー「GROOVE LINE TOKYO NEST」の、1月17日(月)の回。クリープハイプの新アルバム『夜にしがみついて、朝で溶かして』は、2021年12月8日にリリースされた。

尾崎の曲の世界観

リモートでの登場となった尾崎は西沢とは久しぶりの再会。まずは名前にちなんでか、曲作りの世界観に関する話題となった。

西沢:尾崎さんの歌声はいつも聴いてます。耳について離れないというかね。印象強いですもんね。
尾崎:ピストンさんが定期的に『ラブホテル』をかけてくださって、ありがたいです。
西沢:当然ですよ。
尾崎:あはは(笑)。
西沢:あの演歌感覚は残していかないといけないですもんね。
尾崎:ありがとうございます。
西沢:着眼点が本当にオリジナルなんですけれども。新しいアルバムが発売になりました。『夜にしがみついて、朝で溶かして』、また意味深でございます。
尾崎:そうですね(笑)。
西沢:基本的にスケベというか暗いというか、部屋のなかに明かりが入ってこない世界観みたいなのが好きなの?
尾崎:クセですね。そもそも僕の部屋に明かりが入ってないというのもあるんでしょうね。
西沢:(笑)。
尾崎:たまに日が入ってくるのを見ると戸惑いますから「大丈夫かなこれ?」って。
西沢:あらあら、吸血鬼か。
尾崎:吸血鬼ですね(笑)。

子どもの頃に住んでいた街は暗いイメージがあったと話す尾崎。西沢は「音楽の世界観って自分の持っているものがストレートに出る人もいるから、そういうことで言ったら、クリープハイプの世界観は君の内面なのかもしれないね」とコメントした。

尾崎:やっぱり中から出てくるものなので、それはすごく入っていると思いますね。
西沢:そういうのが商売になる、お金になるというのもすばらしいことじゃないですか。
尾崎:そういう意味ではものすごく恵まれてますね。基本的に我慢しないといけないことじゃないですか。
西沢:そうそう。
尾崎:それを吐き出して。
西沢:人間の内面が商品になるというは、極めて文化的ですよね。
尾崎:本当にありがたいなと思います。これは絶対に手放しちゃいけないなと思って頑張ろうと思ってます。

キーの高さに気づいた思わぬきっかけ

続いて尾崎の歌声に関する話に。自身のキーの高さについて、思わぬことがきっかけで気づいたのだとか。

西沢:普通にこうやってしゃべっていると普通なのに、なんで歌うとああなるんですか?
尾崎:なんなんでしょうね? 本当に。変な若者だけに聞こえる超音波みたいなものですよね。
西沢:最初からこの声なの?
尾崎:最初、カラオケに友だちと行ったときに「おまえだけ歌声聞こえない」って言われて落ち込んでたんです。マイクを手で覆って、一生懸命ちょっとでもデカい声出そうと思って頑張ったんですけど「全然聞こえないよ」って言われて。そのときにキーが高めのアーティストの曲を歌ってみたときに、初めて「あ、聞こえた」って言われたんです。自分のキーの高さをわかってなかったんですね、そのときはまだ。
西沢:だって普通にしゃべっていると低いもんね。
尾崎:そうなんですよね。もともと声が小っちゃいので、頑張ったときにたぶん高いところに声が届いて、たまたまそのキーが出たんだと思いますね。
西沢:すごいところを見つけたわけですね。
尾崎:はい(笑)。

小説の執筆、バンドにも還元できるはず

尾崎は自身の小説『母影』(新潮社)が第164回の芥川賞候補となり話題となった。小説家として活動することは、バンドとしても意味があるのだという。

西沢:コロナの時期というのは、どんな活動をしていたんですか?
尾崎:僕は小説を書いてましたね。
西沢:ああ、書いてたね。

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尾崎:それは大きかったと思います。普段できないことをやりたいと思って。音楽ができないときは無理に音楽をやる必要はないと思っていたし。
西沢:ほかのメンバーは「尾崎はなにやってるんだ、こっちかまってくんねえじゃねえか」みたいなことにはならないの?
尾崎:普段から本を書いて芥川賞候補になるという目標があったので、そこでひとつバンドに還元できるはずだと思って、それをずっと目標にして書いてましたね。
西沢:プロモーションだと思って、みたいなことだ。
尾崎:名前がまた違った形で世の中に出るというのはバンドにとって絶対にいいと思ったので。
西沢:そういった候補作の小説が書けるような人が書いた歌詞というのは、ありがたみがあるかもね。
尾崎:またちょっと違った意味でとらえてもらえる可能性もあると思って。それは前から思ってましたね。
西沢:尾崎くんは身振り手振りの感じとか、それとか顔の表情がすごく豊かに変わって、しかめっ面とか、そもそも小説家っぽいよ。
尾崎:あ、そうですか?
西沢:目がギョロっと見開いて「おお?」という顔をするときとか。
尾崎:文豪っぽさがありますか?
西沢:なんか普通の人じゃない、切れ者の感じがありますよ。
尾崎:そういうのすごくうれしいです。

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音楽も小説も凝り性「原稿に赤字を入れすぎて…」

ミュージシャンと小説家、二足の草鞋を履く尾崎は、それぞれの作品作りの共通点について語った。

西沢:作家としてはこのあとどうするんですか?
尾崎:いま、ちょっとずつまた書いてますね、空き時間に。
西沢:これ音楽もそうだけど、こういった作家業もいつまで経っても完成がないというか。
尾崎:そうですね。やっぱりやればやるほど、どんどんハマってしまうというか。
西沢:ディテールに合わせて書き足せば足すほど難しくわからなくなって、また戻すとか。
尾崎:メチャクチャ多いですね。本当に毎回推敲をすごくするので、何回も直しますね。
西沢:設定なんか「これいらねえな」とか、そういうことも出てくるんでしょ?
尾崎:そうですね、削って。修正するのはけっこう好きなんですよね。
西沢:(笑)。
尾崎:自分で作ったものを直すというのが。その作業を僕は凝ってやってしまいますね、毎回。
西沢:家から出ないタイプですなあ。
尾崎:もう原稿が真っ赤になるので。原稿に赤字を入れすぎて、血まみれになっている感じがするなと思って(笑)。傷だらけになっているという。
西沢:手書きなの?
尾崎:印刷したものに、修正は手で書いていきます。
西沢:そうなんだ。曲の歌詞なんかも手書きなの?
尾崎:それは全部、iPhoneのメモに書いてます。
西沢:いまだって、けっこうしゃべると忠実に文字にしてくれるじゃない? 音声入力。あれで歌いながらというのはあるの?
尾崎:それはないですね。全部打ち込んでいってます。
西沢:ラッパーの人なんて、もう頭のなかで文字変換がすぐにできる人だったら、もう歌っちゃったほうが歌詞になるよね。
尾崎:即興でやるんでしょうね、きっと。僕はけっこう、何回も確認して直してます。
西沢:じゃあ(ニューアルバムに収録されている)『ナイトオンザプラネット』なんて、すごく時間がかかったんじゃんないの? あれだけの量。
尾崎:あれも時間かかりましたね(笑)。その場で歌っているような感じなんですけど、かなりあれは何回もやってます。
西沢:それが伝わらないところがいいところでもありますな。
尾崎:バレてない……でも、いま言っちゃいましたね。
西沢:まあでも、すごい凝り性、こだわりなのはバレてますよ。
尾崎:(笑)。

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