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BE:FIRST『Gifted.』に色濃く出る“美学”とは─SKY-HIとRyosuke“Dr.R”Sakaiが対談

BE:FIRST『Gifted.』に色濃く出る“美学”とは─SKY-HIとRyosuke“Dr.R”Sakaiが対談

音楽プロデューサー・Ryosuke“Dr.R”Sakaiが、BE:FIRSTのデビュー曲の制作エピソードを語った。

J-WAVEで放送中の番組『ACROSS THE SKY』のワンコーナー「IMASIA」(ナビゲーター:SKY-HI)。11月21日(日)のオンエアでは、SKY-HIとRyosuke“Dr.R”Sakaiの音楽対談が実現。BE:FIRSTの楽曲制作についてトークした。

USのメジャーシーンで活躍できるようになったきっかけは?

SKY-HIによるオーディションプロジェクト「THE FIRST」から誕生した7人組ボーイズグループBE:FIRSTが、11月3日(水)にメジャーデビューを果たした。

今回の「IMASIA」では、BE:FIRSTのデビューシングル『Gifted.』の楽曲プロデュースを手掛けたRyosuke“Dr.R”Sakaiが登場。国内のみならずUSのメジャーシーンでも活躍するSakaiだが、本格的にUSでの活動をスタートしたのはいつだったのだろう?

Sakai:元々英語圏の音楽が大好きだったので、そこに飛び込んで向こうのアーティストをプロデュースしてみたいとずっと思っていたんですね。本格的に行動に移したのはおよそ7年前です。そこからアメリカに足げく通っていましたが、最初は鳴かず飛ばずというか。「日本からどこの馬の骨とも知れんプロデューサーが来たわ」みたいな(笑)。
SKY-HI:(笑)。7年前ぐらいだと、少し「まぁ、アジア人ね……」みたいな感覚を向こうも持ってますもんね。
Sakai:そこをまずどうやってこじ開けていこうかって考えると、自分のスキルを上げるしかないんですよね。最初の1年ぐらいはつらかったです。

Sakaiにとっての転機は、YouTube上で活躍していたアメリカの歌手・ポピーのファーストアルバム『Poppy.Computer』のプロデュースを手掛けたことだった。

Sakai:ポピーのファーストアルバムの8、9割ぐらいを僕がプロデュースをして。そのアルバムが全米のiTunesのポップチャートで7位に入ったんですよ。
SKY-HI:これはね、けっこうな結果ですよ。
Sakai:びっくりするぐらいの結果が出ました。そして、ポピーのマネージャーはビリー・アイリッシュとかセレーナ・ゴメスとかが所属するインタースコープ・レコードの人だったんですね。その方が「面白いからRyosukeのことをマネージメントさせてほしいな」と言ってくれて。そこから契約してさらに活動していくようになるんだけど、今はUSで得たサウンド感とか曲づくりとかを日本にどんどん還元していきたい気持ちになっていますね。
SKY-HI:なるほど。

アメリカの音楽活動でミックス技術が向上した

『Gifted.』はUSでの音楽活動で得た経験が多いに反映されている楽曲だとSakaiは語る。

SKY-HI:Sakaiさんはトラックメーカーとかプロデューサーとしてもすごいですけど、毎回ミックスがすごいっすね。
Sakai:ミックス、昔はできなかったんだけどね。アメリカに行くようになって知ったんですけど、向こうのデモって完成度の次元が違い過ぎるんですよ。
SKY-HI:なるほど! リスナーの方に説明しますと、楽曲は制作、音の調整をするミックス、最後にマスタリングという工程があるんですね。なので、デモの段階で音が割れていたりドラムの音が大き過ぎたりしたとしても我々は聴くことができるんですよ。だけど、USだとデモの段階からクオリティが高いと。
Sakai:完全に売り物と同等のレベルです。そんななかで自分の曲のプレゼンをしていくわけですから、「同等以上の音にしないと勝ち目がないな」って思うようになったんですよ。背に腹は代えられないから自分でミックスの研究をして、しこたまやり続けたらいつのまにかミックスがやれるようになっちゃったって感じです。
SKY-HI:そこまでの話、自分も聞いたことがなかったので胸が熱くなりましたね。
Sakai:掘っ立て小屋みたいなスタジオのなかで泣きながら曲を作る、みたいなところからスタートしているからね(笑)。
SKY-HI:(笑)。日本で名のあるアーティストたちをプロデュースしたあとのそれですもんね。さらに言ってしまえば、音楽プロデューサーの前は歯医者さんでしたよね?
Sakai:そうですね。歯科医をやっていました。
SKY-HI:面白い経歴ですね。自分にとっても『To The First』が作れたのは本当に大きいんですよ。マジで心から感謝しています。
Sakai:あの曲、作るのが本当に楽しかったよね。
SKY-HI:気合いを入れている時期は長かったけど、いざスタートって作り出したらあっという間でしたよね。
Sakai:生まれるべくしてできた曲って感じ。
SKY-HI:そこからの『Gifted.』でしたもんね。

楽曲コンペのスタンスは国によってさまざま

SKY-HIは「もし去年の夏にコンペをしていたとしたら、俺らのことを知らないSakaiさんは『Gifted.』を送ってくれなかったと思う」とコメントする。

SKY-HI:送ったとしても、ちょっと派手にしたりサビを毎回四つ打ちにしちゃうと思うんですよ。そういうのをしたくはなかったので、今回はコンペはせずに直接Sakaiさんと一緒に曲を作ったんですよね。
Sakai:うんうん。そのスタイルで来てもらったほうが、100パーセント、1000パーセントの力をぶつけられる。コンペにすると、どうしても楽曲が丸くなっちゃうんだよね。
SKY-HI:「欲しがっているものを作ろう」と思う時点で、どうしても曲の純度が落ちるんですよね。
Sakai:落ちるし、俺がやりたいことでもなくなっちゃうね。
SKY-HI:そうそう。もしコンペをやるとしたら「聴いたことがなさそうな感じでお願いします」って書いておくしかないかなあ(笑)。
Sakai:たしかにね(笑)。「すごいやつください」みたいなね。
SKY-HI:それこそ、K-POPグループの楽曲コンペとかだと文言に気を遣っている印象がありますね。「寄せに行かないでください」みたいなことを書かれていたりするから。
Sakai:アメリカのコンペシートってすごいですよ。「やべえ曲をくれ」って一文しかないみたいな。
SKY-HI:マジすか!? 面白い。
Sakai:ちゃんと書いてあるやつもあるけど、「このアーティストに似合うと思うヤバい曲をくれ」みたいなもの。ざっくりだなって思うけど、そこの自由度がアメリカの音楽に出ているのかなって気はしちゃうな。
SKY-HI:たしかに。あとね、『Gifted.』を作ったあとだから、今だとコンペをかけられるんですよ。
Sakai:(方向性が)見えるもんね。
SKY-HI:そう。音楽家には意思が伝わっていると思うので、今後コンペができる可能性が生まれたのはすげえ嬉しいですね。
Sakai:「ここまで行っていいんだぞ」ってことを伝えることはできたね。

『Gifted.』の音楽では“抜け感”を重視した



Sakaiは『Gifted.』の制作にあたりこだわった点を挙げた。

Sakai:BE:FIRSTには日本だけじゃなく世界にも羽ばたいてほしいから、いわゆる洋楽という範疇でも聴けるものにしました。
SKY-HI:そうっすね。今までJ-POPが取ってきたマナーからは完全に逸脱した楽曲でしたからね。AメロがあってBメロがあってサビっていうルールとは全然違うものです。
Sakai:あとは“日本ぽさ”とかね。琴みたいな音を単純に入れるってのも、それはそれでいいんだけれど。
SKY-HI:いいけど、ちょっとベタというか安易なフレーバーになりかねないですもんね。
Sakai:そうね。そうじゃなくて、「和の空間」というか「わび・さび」とか。たとえば、ししおどしってあるじゃない?
SKY-HI:「コーン!」って鳴るやつね。
Sakai:そうそう。ああいう引き算の空間の美学というか。
SKY-HI:現行の音楽が大事にしている“間”って、元々日本は持っているものなんですよね。
Sakai:そう! 日本人って本当は空間の音の感じってめっちゃ好きなはずなんですよ。
SKY-HI:そうなんですよね。いい悪いじゃなくて、アニソンとかボカロPみたいなカルチャーっていうのは、足し算の音楽なんですよ。どんだけ音を詰め込むかっていう文化が発達していますよね。とは言え、元々日本は音楽の抜きに美学を持っているわけで。
Sakai:バースではそういう美学が色濃く出せたと思います。スネアのドーンっていう音とかも含めてね。そういうのをリスナーの方がけっこうキャッチしてくれていて、とても嬉しかった。
SKY-HI:ありがたいっすよ。時代が変わったなって感覚もありますし、何人かがキャッチをしてくれたらそこから広がっていくと思うんですよね。そうやってスタンダードが塗り替えられていくんだよなってことを、身を持って感じています。

『ACROSS THE SKY』のワンコーナー「IMASIA」では、アジアのヒップホップやさまざまな音楽カルチャーを紹介する。オンエアは10時40分頃から。

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