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尾崎世界観「歌詞を書くとき、いかに楽をしていたか浮き彫りに」アーティストが小説を書く理由に迫る

尾崎世界観「歌詞を書くとき、いかに楽をしていたか浮き彫りに」アーティストが小説を書く理由に迫る

J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。

2月10日(水)のオンエアでは、敏腕編集者、「水鈴社」代表取締役の篠原一朗さんがゲストに登場。「なぜ、アーティストは小説を書くのか」をテーマにお届け。

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■才能があると信じた人としか仕事をしない

芥川賞ノミネートで話題となったクリープハイプの尾崎世界観を筆頭に、実は小説を書くアーティストが多い昨今。番組では、「なぜ、アーティストは小説を書くのか」と題して、その理由と表現の方法に迫った。

ゲストには、ミュージシャンとの仕事も数々担当してきた敏腕編集者、「水鈴社」代表取締役、篠原一朗さんが登場。篠原さんは、RADWIMPS・野田洋次郎のエッセイ『ラリルレ論』、クリープハイプ・尾崎世界観の小説デビュー作『祐介』、SEKAI NO OWARI・藤崎彩織の直木賞候補となった小説デビュー作『ふたご』、ミュージシャン以外にも本屋大賞を受賞した宮下奈都の『羊と鋼の森』、瀬尾まいこの『そして、バトンは渡された』などの話題作の編集を担当している。

あっこゴリラ:篠原さんがミュージシャンと仕事をするようになった経緯は?
篠原:僕は昔、カルチャー雑誌の編集をやっていて、その時ミュージシャンと会う機会が多かったんですけど、そこで会うミュージシャンの方がやっぱり魅力的で才能があきらかにあったので、これはもう取材だけじゃなくて、こっちの文芸の世界に引きずり込んでお仕事をしたいなっていう不純な動機です。
あっこゴリラ:なるほど~。篠原さんは、クリープハイプの尾崎さん、SEKAI NO OWARIの藤崎さんのデビュー作を担当していますが、篠原さんから「小説書きませんか? 」って口説いたんですか?
篠原:これは完全にケースバイケースなんですけど、尾崎さんは僕から話をさせていただきましたし、藤崎さんは正直書ける方だと思ってなくて、たまたまご縁があって向こうから原稿をお預かりして「これはいけるな」って思ったっていうのがきっかけですね。
あっこゴリラ:オファーする人選はどのようにジャッジされてるんですか?
篠原:僕の本業は文芸編集者で、専業作家の人と仕事をしているので、ミュージシャンと仕事をするだけではないので、もう本当に自分の好きな人で才能があると信じた人としか仕事をしないって決めています。

【SEKAI NO OWARI『マーメイドラプソディー』を聴く】

第158回、直木賞候補となったSEKAI NO OWARIの藤崎彩織の小説デビュー作『ふたご』は、ゲストの篠原さんが編集担当されたという。Saoriとは、どんな話をして、どのように作っていったのか訊いてみた。

篠原:元々メンバーのFukaseくんと知り合いだったこともあって、たまに一緒にご飯食べたり飲むくらいだったんですけど、ある日Fukaseくんから「Saoriちゃんが小説書いてるから見てくれない? 」って連絡がきて。
あっこゴリラ:うんうん。
篠原:それで、とりあえず送ってもらって、それはまだ箇条書きのような感じで小説という形ではなかったんですけど、それがすごい良かったんです。それで、これはいけるかもしないってなって、一緒に小説にしていったって感じです。
あっこゴリラ:Saoriさんが書く文章の魅力はどこにあると思いました?
篠原:“文は人なり”ってよく言うんですけど、彼女の人柄そのものみたいな文章で、彼女って基本的にすごく自信がない人なので、すぐ“私、もう書けない“ってなっちゃうんですけど、でもすごく芯があって頑固ですし、言いたいこともはっきりしていて、瑞々しい感性を持っているのが本当に文章にそのまま出ていると思います。
あっこゴリラ:しかもそれがデビュー作にして、直木賞候補にノミネートされたわけですが、その時はどんな気持ちでしたか?
篠原:驚きましたね。僕は直木賞がどのような選考を行うのかをだいたい知っていましたし、本当にきちんと選ばれた結果だというのがわかっていたので、胸を張ってほしいって話はしました。

■尾崎の書いた文章は、センスの塊だった

【クリープハイプ『モノマネ』を聴く】

ここからは、小説『母影』で初の芥川賞ノミネートを果たした、クリープハイプ・尾崎世界観のインタビューをお届け。篠原さんは、2016年に出版された尾崎世界観の小説デビュー作『祐介』の編集を担当されている。

まずは、尾崎本人に小説を書くことになった経緯を伺った。

尾崎:もともと読むのも文章書くのも好きだったんですけど、自分が小説を書くということは思っていなくて、ちょうど2014、5年あたりに体の調子が悪くなって、そういう一番ひどい時期で、バンドをやめようかなというぐらいひどかった時に、篠原さんが、「小説を書いてみないか? 」と言ってくださって、そこで音楽以外の表現があるなら、逃げ道として、そこに行きたいなと思ったのがきっかけです。でも本当難しくて、全然うまく進まなくて、すごく苦しんだのを覚えていますね。本当苦しかったけど、2016年の頭にようやく小説が書き上がって、少し救われた気がしました。

ここで篠原さんに、尾崎と知り合った経緯について伺った。

篠原:僕が尾崎さんに会いたいと強烈に思ってしまって、尾崎さんと仕事をしている友達を見つけて会わせてほしいと頼み込んで紹介してもらいました。歌詞もそうですが、何かの雑誌に短い文章を書いていて、とにかくセンスの塊みたいな文章だったんです。それで、これは小説を書ける方だなって思ったのと、あと顔が良かったんですよね(笑)。尾崎さんの顔って、すごく情報量が多くて、悲しんでるのか喜んでるのかわからないすごい魅力的な顔をしてるんですよね。
あっこゴリラ:確かに!
篠原:本当に色んなことを想像させるような顔をしていて、“こんな顔をする人は何を書くんだろう”って読んでみたいなって思っちゃったんです。
あっこゴリラ:なるほど~。それで口説きとしたんですか?
篠原:尾崎さんの場合は、ちょうどタイミングも良くて尾崎さんがそういう時期にいてくださったんで、「書いてみませんか? 」と言ったら「やってみたいです」ってすぐに仰ってくださったので、わりとスムーズにいきました。
あっこゴリラ:小説デビュー作『祐介』は、尾崎さんとどんな会話をしながら作っていったんですか?
篠原:尾崎さんには、書きたい世界というのが明確にあったので、変にそれを邪魔しないようにとにかく道筋だけ作ってあげて、あとはもう自由に書いてくださいって舞台を用意しただけですね。

続いて、尾崎に音楽と小説のつながり、関係、影響について伺った。

尾崎:歌詞だったら本当に短いひらめきの連続で積み重ねていくんだけど、小説はもう全部説明しなきゃいけなくて、今まで尾崎世界観って歌詞がいいなと言っていただく機会は多いんですけど、いかに楽をしていたか、いかにズルをしていたかっていうのが浮き彫りになって、やっぱりなんとなくやってたんですよね(笑)。リズムも音もメロディーもない中で、言葉だけで戦うというのは本当に難しくて。やっぱりむき出しで言葉だけで戦うっていうのが、本当にこんなに怖いことで、難しいことなのかと、打ちのめされながらやってましたね。

さらに尾崎は、音楽と小説の関係について全く別物だという。

尾崎:やっぱり自分がミュージシャンでやってきたこと、成し遂げてきたことというのはすごく邪魔になりますね。そこはすごく苦しいところなんですけど、でも、これがないとそもそも書けてないっていう。常に今もですけど、戦いながら、早くそこを引き剥がしたいと思って、何かやっぱ結果を出さないとっていうのはずっと思ってましたね。今も思ってます。小説って本当に難しくて、だから安心して全身を預けられるっていう感覚があります。それぐらい広い受け皿だから、小説に向き合ってるっていうことで音楽にも絶対にいい影響があるんですよ。音楽はもうずっとやってるから、こんな感じだろうってなんとなく思ってしまう瞬間があって、でも小説を書いてるとそんなこと一切思わないから、だから音楽にも良い向き合い方ができると思ってます。

【クリープハイプ『キケンナアソビ』を聴く】

あっこゴリラ:尾崎さんのコメントを聞いて篠原さん、いかがですか?
篠原:すごく正直なことを言ってくれてると思います。自分が売れっ子ミュージシャンだというプライドが、彼が小説を書くところで全然邪魔をしていないので、そこに頼らないんですよね。ちゃんと作家だという自負があって、僕ももちろんミュージシャンとしての彼のファンでもありますけど、小説家としての彼と仕事しているので、尾崎さんのそこはすごく信頼していますし、尊敬もしています。
あっこゴリラ:きっと尾崎さん本人も、元々小説が大好きだからこそ、自分自身の肩書だったりとかが邪魔に感じたんでしょね。では、尾崎さんの書く文章の魅力とは?
篠原:彼ってすごくあまのじゃくなんですけど、ものすごくピュアで、これを書かなければ生きていけないっていうようなほとばしっている覚悟みたいなものがあるんですね。だから傾向と対策みたいなものが彼の小説には全くなくて、彼にしか出せない本当にすごく美しくてドロドロした一滴みたいなものがあるんです。これは本物の作家だなって、いつも思います。

そして昨年、デビュー作『祐介』以来、4年半ぶりに発表された初の純文学作品『母影』が最もすぐれた純文学の作品に贈られる「第164回芥川賞」の候補作品に選ばれた。小説『母影』、そして、芥川賞について尾崎に伺った。

尾崎:小学校低学年の女の子の視点で書いた話なんですけど、お母さんがマッサージ店に勤めていて、主人公はお母さんの仕事が終わるのを隣のベッドで待っているっていう設定ですね。隣のベッドで、お母さんが仕事をしているときに何か怪しい雰囲気を感じて、お母さんが変なことをして、お母さんがお母さんじゃなくなりそうな感覚に襲われているという話です。芥川賞候補の電話を受けたときは家にいて、叫ぶくらい本当にめちゃくちゃ嬉しかったですね。あはははは。自分は元々偽物として小説を書き始めたので、これでやっと偽物としてもっとプライド持っていけるなと思って。芥川賞の候補にしていただいたから本物になったっていう気持ちは全くないし、ただなんかもっとプライドを持って偽物でいられるなと、その時にめちゃくちゃ自信になって、嬉しかったですね。

芥川賞について、今回も紛れもない負けという結果が出て悔しい思いをしたが、また早く書きたいと思っているという。

尾崎:今、音楽活動が思うようにできなくて、家にいる機会も増えて、自分の時間がすごく増えた中で、ずっとじっとしてるって大変だと思うんです。クリープハイプのメンバー3人も、何かまたこれで個人の活動で別ユニットを組んだりとか、何か新しいことをやりたくなると思うんですよ、絶対。でも、そこで待ってるってことが大変だと思うんだけど、そうしてくれている凄さをすごく感じているし、だからこそ自分が音楽以外のところに出て何かする時は、必ず結果出さなきゃいけないっていうプレッシャーがあったので、今回は悔しいですけど、でも一つ大きな結果として、それが残ったというのは収穫だったし、バンドにとっても、本当にいい経験をさせていただいたなと思ってますね。

最後に今後、小説家としての尾崎に期待することを篠原さんに訊いてみた。

あっこゴリラ:尾崎さんのコメントを聞いて篠原さん、いかがですか?
篠原:本当にいつまでも満足しない人だなって思いますね(笑)。でも、小説を音楽と同じように大事に思ってくださってるっていうのが伝わってきて、僕としてはすごく嬉しいです。
あっこゴリラ:すごく誠実ですよね。芥川賞ノミネートのニュースを知った時、どんな思いでしたか?
篠原:もちろん嬉しかったですし、正直“当然でしょ! ”って思いました。
あっこゴリラ:おお~!
あっこゴリラ:今後、小説家として尾崎さんに期待することは?
篠原:もうとにかくそれは書いていただくことしかないですね。小説家って、小説家になるのは簡単なんですけど、小説家で居続けることが難しいんですよね。小説を書き続けることも、才能だと思います。彼には明らかに才能があるので、書いていただくことしかないですね。

■黒木「音楽と文学って親和性の高いもの」

ここからは、独特の文学的歌詞で、女性の強さや心理を生々しく歌い上げる、孤高のミュージシャンで小説家の黒木渚のインタビューをお届け。

【黒木渚『ダ・カーポ』を聴く】

黒木渚は、2010年、自らの名前を掲げたバンド「黒木渚」を結成。2012年にシングル『あたしの心臓あげる』でデビュー。SUMMER SONICやCOUNTDOWN JAPANと大型フェスにも出演するが、わずか1年でバンドは解散。2014年からソロ活動をスタート。そして、2015年、小説『壁の鹿』で小説家デビューを果たす。その後も音楽活動を続けながら、これまでに『本性』、『鉄塔おじさん』、『呼吸する町』、『檸檬の棘』と5作の小説を発表している。

まず、黒木が小説を書き始めたきっかけについて伺った。

黒木:きっかけは、そもそも何でも作りたがりな点があって、作れるなら何でも全部作りたいというキャラで。最初に挑戦したのが小説なんですけど、試しに書いてみた一作を読んでくださったスタッフの方が、小説をCDにつけて出したらいいんじゃないかっていうおすすめの声があって、一本長編を書いてみました。元々私は大学で英米文学を専攻していて、大学院では「ポストモダニズム」っていう文学の研究をしていたので、ルーツが音楽よりも文学から吸収したものがすごく多かったんですよね。音楽家としてデビューはしていたんですけど、元の古巣に帰ってきたみたいな感じで最初に小説に手が伸びたっていう感じでしたね。

最初は、小説をおまけにしてCDにつけているみたいな感覚だったという。

黒木:周りの方も音楽家が片手間でちょっと副業として小説を書いているみたいな、私自身も少しその感覚があってやっぱり本業は音楽だって思ってる面があったんです。でも、2作目、3作目あたりで一度喉を壊してしまって、音楽活動がストップしたあたりで、もっと小説に磨きをかけてこちらも主軸にしていきたいという気持ちが芽生えてきたのと同時に、書くことによって、歌えないストレスを払拭できたというか、書くことに救われてる時期があって、その辺から私も周りの方も見る目が変わったというか、意識が変わったのかなという感覚はあります。

そんな黒木は、今ではミュージシャンと小説、どちらも主軸にして活動している。

あっこゴリラ:コメントを聞いて篠原さん、いかがですか?
篠原:小節を書くことにまだ照れみたいなものがあるのかなって思ったんですけど、もう4作、5作書かれているので、本当の作家だと思います。なので、もっと自分は作家なんだって自信を持っちゃっていい気がしますね。
あっこゴリラ:作家って名乗るってすごくハードルが高い気がしますもんね。あはははは。
篠原:これは声を大にして言いたいんですけど、小説を書きたいんじゃなくて、作家という肩書を欲しい人ばかり多くって(笑)。
あっこゴリラ:なるほど~! 確かに私も作家って肩書ほしいもん。あはははは。

続いて、黒木にとっての「音楽と小説の共通点とつながり」について訊いてみた。

黒木:どちらも物語だっていうことは共通している気がしていて、小説はもちろん物語だし、歌詞の中にもやっぱり物語が流れていると思ってて、それを表すのにふさわしい言葉をより分けて、使っているという認識なんですよね。最近はその二つが重なっている部分で遊ぶのがすごい楽しくって、曲にもなれるし、小説にもなれるっていう文章を探すのが好きです。文章に触発されて曲を作るってことは結構あったんですけど、自分が小説を執筆してるときに、ずっと頭の中で鳴ってる変な音があって、それをアルバムの中に『Sick』という楽曲にして入れたことがあって、書いていることとは全く関係のないテーマの音楽が頭の中で鳴るっていう何か不思議な現象を体験したので、それを何かそのまま捕まえて閉じ込めたみたいな新しい体験はありました。

【黒木渚『Sick』を聴く】

そんな黒木が2017年4月に発表した小説『本性』が、昨年、12月に文庫化され、今回の文庫本には、「書き下ろしのあとがき」も追加されているそう。文庫本化された『本性』について伺った。

黒木:『本性』自体は短編小説という程をとっていて、本編は3話収録されています。テーマが『本性』なので、本性の形のなさというか多面的な感じみたいなものを、その構造をうまく利用して描けたかなと思っています。小説を書くミュージシャンって、本当に増えてきたなって思ってて、小説に限らず、絵本を書いたりする方ってすごい多くて、音楽と文学って親和性の高いものだと思います。タレント本の類と思わずに、ぜひ音楽的な楽しみ方をして鑑賞するっていうのをみなさんに試してもらえたら嬉しいなと思います。

J-WAVE『SONAR MUSIC』は月~木の22:00-24:00にオンエア。

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