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『半沢直樹』ナレーションは、いろんな意味で“ギリギリ”だった! 山根基世が明かす

『半沢直樹』ナレーションは、いろんな意味で“ギリギリ”だった! 山根基世が明かす

J-WAVEで放送中の番組『CLASSY LIVING』(ナビゲーター:村治佳織)。12月19日(土)のオンエアでは、『半沢直樹』のナレーションでも注目を集めた、フリーアナウンサー、ナレーターの山根基世をリモートでゲストに迎えて「トークの真髄」について話を訊いた。

『半沢直樹』は大反響! 収録で大変だったことは?

山根は地域づくりと言葉教育、後進の指導、本の執筆、公演など幅広く活躍。NHKのアナウンサーを退職したあともフリーの立場でさらに活動の範囲を広げている。今年は大ヒットしたテレビドラマ『半沢直樹』(TBS系)のナレーションでも存在感をみせた。

村治:いまはリビングにいらっしゃるんですか?
山根:自宅におります。
村治:山根さんのおうちのリビングには本がたくさんあるのかな? と想像してしまいます。
山根:この部屋にはないんですが、2階の自分の部屋と隣の部屋はほとんど本棚で、地震が起こると怖いなと思っていますけど(笑)。
村治:本に囲まれているのはイメージ通りです(笑)。
山根:(笑)。
村治:今年はドラマ『半沢直樹』のナレーションが大きなお仕事のひとつだったかと思います。反応はどのように感じられたでしょうか。
山根:いやあ……『半沢直樹』の反響はものすごいですね。第1シリーズが7年前だったんですが、そのときも日本全国の方が「『半沢直樹』観てます」っておっしゃって、すごいなと。鹿児島でも青森でも「観てますよ」「聴いてますよ」っておっしゃる方がいるんです。今回も反響が大きくてビックリしますね。

『半沢直樹』のナレーション収録は、苦労も多かったのだとか。

村治:ある程度まとめて録られたんでしょうか。
山根:福澤(克雄)監督のやり方なのか、とにかくギリギリなんです。凝って凝って、編集もギリギリまでなさるんだと思うのね。だから映像はまだ観られないことも多かったし、日曜日の放送なのに、最悪のときは土曜日の直前に収録をしました(笑)。
村治:そこまでギリギリに作りこむんですね。
山根:それと、みなさんがお気づきになったかわからないんですけど、第1シリーズにくらべて2回目の7年後のシリーズはものすごいスピード感だったの。ドラマの展開もものすごいスピードなので、ナレーションもものすごく分量があって、ギリギリ入るか入らないかの分量で書いてあるから早口言葉みたいにね(笑)、ものすごいスピードで読まないといけなかったんです。「とにかく意味がきちんと伝わるように」ということと、(タイミング)は高速道路で車線変更するときみたいなね(笑)。
村治:スリリング(笑)。
山根:ものすごいスピードで読んでました。
村治:大役、お疲れ様でございました。

「想いだけでは読めないし、体力だけでも読めない」

声の仕事を長年続けてきた山根だが、今でも「制御不能」と感じることもあるのだとか。

村治:こうして実際にお話をさせただけるのもすごくありがたいんです。
山根:いやいやそれがねえ……こんなに長くやっていても、声というのはいまだに制御不能で、落ち込むことが多いんですよ。
村治:思った通りにいかない!? そんなことが……。
山根:私はこの3月に脊柱管の手術で3週間入院していたのね。今年はコロナのせいもあって、予定していた朗読会とか公演とかが中止になったり延期になったりしたでしょ? そのお休みのあいだに前々から悩んでいた腰痛を解決するために。そのあとも半年近くはお仕事で声を出していなかったのね。そのあとある映画のナレーションの依頼をされて行ったらもうね、声は出ない口は回らない「こんなになっちゃうんだ」と。回復までに3か月くらいかかるわね。
村治:「戻って来た」という感覚が戻るまでに。反対に言えば、それだけ複雑な口や体の動き方があって語り、ナレーションというものになっているんですね。
山根:声というのは全身運動なんですよね。体の3分の2の筋肉を使っているんですって。
村治:多いですね。
山根:だからほとんど筋肉のトレーニングなのね。想いがなければ読めないんだけれども、それを支える体力というのかな。
村治:それは演奏も同じかもしれません。
山根:音楽もまったくそうだと思うのね。
村治:技術が伴わなければ想いがあっても、届かなければあれですし。
山根:想いだけでは読めないし、体力だけでも読めないんです。

NHKで最後に実感「こうやって私も育ててもらったんだ」」

山根はもともとアナウンサーになるつもりはなったが「読むこと」は好きだったそう。NHKのアナウンサーになるまでの道のりを語った。

村治:意識的にアナウンサーになろうと思われたのは?
山根:とにかく私は我の強い子だったんです。洋服を買いに行ってもいつも母親が私に着せたいと買う洋服が、私が着たい洋服とズレるのね(笑)。それが悔しくて「私は絶対に自分で稼いで自分のお金で自分の着たい洋服を買いたい」という気持ちがある子だったの(笑)。それでとにかく長く仕事ができる場所を探していました。私が就職をしようとしていたころはまだ、民法のアナウンサーは2年契約で、NHKのアナウンサーは特にそういう制限がなかったみたいだったので「ここなら長くいられるかな」と思って。
村治:長く続くお仕事をされたいと思われていた通りに定年退職までNHKにおられて、初の女性アナウンス室室長、そしてエグゼクティブアナウンサーという要職を務められました。人をまとめるというのはまた、大変なお仕事でしたか?
山根:それはもう私はとても無理だと思って、最初に聞いたときには「無理です」って言下にお断りしたんです(笑)。「きみね、長年アナウンサーとして好きな仕事をやってきたんだろ? 最後に恩返ししてよ」って言われて。
村治:(笑)。
山根:「いやいや、こっちが恩返しをしてもらいたい」というくらいの気持ちだったんです。ですが、やっぱりやってみてよかったと思ったのは、私は36年あそこにいたんですけれども、やっぱり育ててもらっているんですね。一人ひとりを見て「いまこの人になにが必要か?」ということをみんな見ているんです。人を育てないと組織って成り立たないから、そうすると「じゃあこの人にこの仕事をやってもらおう」とか「ここに行ってもらおう」ということを考えるのを見ていると「なるほど、こうやって私も育ててもらったんだ」と思って。最後に感謝の気持ちが湧いてきました。

「隣の人と心を通わせるための言葉」を子どもに教えたい

フリーの立場になっても人を育てる、教育するというテーマを持ち続けている山根は、子どもたちに伝えたいことについて語った。

山根:いま見ていても、本当にひどい、悲惨な状態になっている子どもたちがいっぱいいますよね。虐待とかいじめとか、これはやっぱり親自身が追いつめられているということもあるんだけれども、こういう子どもたちが「自分らしい」と納得できる幸せな人生を切り開いていく力を持つためには、やっぱりその子が周囲の人といい人間関係を築ける言葉の力を持たなきゃだめだなと思っているのね。だから私の目指しているのは「美しい日本語を守る」とか「正しい言葉をきっちり身に着ける」ということよりも「隣の人と心を通わせるには、どういう言葉を使えばいいのか」というような、いわゆる人間力としての言葉の力を子どもたちに持ってほしい、そういう力を持った子どもを育てたいと思っているのね。
村治:すばらしいですね。
山根:いま地域のつながりが希薄でしょ? だからそこで私はもしかしたら「朗読」というのがひとつの手掛かりになって、人をつなぐ力になるんじゃないかと思っているんです。いろいろな年齢層の人たちが一同に集まって、子どもたちと関わっていく。そこで子どもたちはいろいろな大人たちの会話を聞き、人間がどうふるまうべきかというようなね。人としての暮らし方とか、言葉遣いとか、そういうものを頭じゃなくて体で覚えてくれる、そういう場を作りたいなと思っているんですよね。

極上の音楽に包まれるゆったりとした週末の54分のプログラム『CLASSY LIVING』の放送は毎週土曜日20時から。

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2020年12月26日28時59分まで

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番組情報
CLASSY LIVING
毎週土曜
20:00-20:54