J-WAVEで放送中の番組『CLASSY LIVING』(ナビゲーター:村治佳織)。10月17日(土)のオンエアでは、東京国際映画祭シニア・プログラマーの矢田部吉彦がリモート出演。「シニア・プログラマー」の仕事内容や映画祭について語った。
村治:「シニア・プログラマー」は、どういうお仕事なんでしょうか。
矢田部:“プログラマー”というとパソコンでプラグラムを組んでいるのかと思われがちですが、映画祭の場合は上映プログラムを決める人のことです。作品選定のキュレーターを指す言葉として、映画祭では“プログラマー"という言葉を使っています。経験もちょっと長くなってきたので、そこにシニアがついて「シニア・プログラマー」という肩書で仕事をしています。
矢田部が2002年から携わっている「東京国際映画祭」。33回目の開催となる今年は、10月31日(土)から11月9日(月)の10日間、六本木ヒルズ、日比谷エリアほかにておこなわれる。
村治:会場は毎回、六本木ヒルズが中心ですか?
矢田部:六本木ヒルズがメイン会場になって久しいです。日比谷でも野外上映をおこなったり、一部六本木以外の場所でもおこなっていきます。
村治:今年は新型コロナウイルスでいろいろな影響を受けていますから、映画祭のプログラムが異なってくるということもありますよね。
矢田部:そうなんです。そもそもやれるのかどうかということを6、7月あたりに悩んでいました。海外の映画祭では、完全にオンラインで作品を観せるやり方に移行したところもあるんですが「東京はどうしようか」と話をしていました。しかし、映画館も再開し始めたので、映画は映画館で観てもらおう、楽しみや喜びをもう一度盛り上げていきたいということで、実際の映画館でフィジカルなかたちで映画祭を実行しようと決めました。
矢田部:とにかく世界中からたくさんの新作を集めてフラットに並べて、お客さんに観てもらうことを第一に考えて実施していこうと。そういうふうに変えた部分があります。
村治:変わらないところはお客さまと「映画の楽しみを分かち合う」というところですね。
矢田部:そうですね。賞はありませんが、ひとつだけ「観客賞」というものを設けました。お客さんに劇場で観てもらって、おもしろかったかどうかを投票してもらい、最終的に1本の観客賞を決めます。その意味でもお客さまに一段と楽しんでもらえるんじゃないかと思います。
村治:一票の重みがありますね。
矢田部:大いにあります。
村治:開催期間は10日間でも、映画祭を作り上げていくプロセスは毎年大変じゃないですか。
矢田部:10日間のイベントですが、残り355日でなんだかんだやることがあります(笑)。そのなかでも上映する作品を選んでいくために「どういう特集をやるか」とか、新しくていい作品を映画祭で上映をするために春先からミーティングを重ねたりしています。今年は出張ができないので、Zoomで海外の映画人とミーティングをしたり、今までと違うかたちで作品選定したりということになってきました。劇場でお客さんに楽しんでもらうため、世界の多くの国からいろいろなジャンルの作品を集めて映画の多様性を楽しんでもらおう、映画の持つ力を再認識してもらおうと思っています。精神論みたいなことでもあるんですが、なるべく幅広いタイプの作品を集めていこうということを意識しました。
【あらすじ】
一度は手にしかけたチャンピオンへの道……そこからはずれた今も“かませ犬(=アンダードッグ)"としてリングに上がり、ボクシングにしがみつく日々をおくる崖っぷちボクサー・末永晃(森山未來)。幼い息子・太郎には父親としての背中すら見せてやることができず“かませ犬"から“負け犬"に。一抹のプライドも粉砕され、どん底を這いずる“夢みる"燃えカスとなった男は、宿命的な出会いを果たす。一人は、“夢あふれる"若き天才ボクサー・大村龍太(北村匠海)。児童養護施設で晃と出会いボクシングに目覚めるが、過去に起こした事件によってボクサーとして期待された将来に暗い影を落とす。もう一人は、夢も笑いも半人前な“夢さがす"芸人ボクサー・宮木瞬(勝地涼)。大物俳優の二世タレントで、芸人としても鳴かず飛ばずの宮木は、自らの存在を証明するかのようにボクシングに挑む。三者三様の理由を持つ男たちが再起という名のリングに立つとき、飛び散るのは汗か、血か、涙か。
(映画『アンダードッグ』公式サイトより)
矢田部:ボクシングと映画はとても相性がよくて、過去にも『ロッキー』や『レイジング・ブル』といったボクシング映画の傑作がたくさんあります。その傑作ボクシング映画の系譜にまたひとつ新たな傑作が加わったな、というのが『アンダードッグ』です。『百円の恋』という安藤サクラさんが女性ボクサーを演じられた作品が2014年にヒットしましたが、同じ監督、同じ脚本家で新たなボクシング映画ができました。今回は男性ボクシングで、主役が森山未來さん。彼が「負け犬ボクサー」で負けがこんでいて引退も間近かという段階で「このまま終わっていいのか」という状況に直面する。そこに同じくマイナスの部分を抱えたふたりのボクサーと対決します。前編・後編に分けて、前編は勝地 涼さん、後編は北村匠海さんが演じるボクサーと対決していくことになります。見事な人間ドラマで、ボクシングシーンも迫力満載で間違いないです。
東京国際映画祭公式サイト:https://2020.tiff-jp.net/ja/
作品選定のキュレーターを指す「プログラマー」
矢田部は20年近く東京国際映画祭の中心スタッフとして運営や作品選定に従事。映画のプロデュースや買い付けなどもおこなっており、趣味も映画というほど映画好きだ。村治:「シニア・プログラマー」は、どういうお仕事なんでしょうか。
矢田部:“プログラマー”というとパソコンでプラグラムを組んでいるのかと思われがちですが、映画祭の場合は上映プログラムを決める人のことです。作品選定のキュレーターを指す言葉として、映画祭では“プログラマー"という言葉を使っています。経験もちょっと長くなってきたので、そこにシニアがついて「シニア・プログラマー」という肩書で仕事をしています。
矢田部が2002年から携わっている「東京国際映画祭」。33回目の開催となる今年は、10月31日(土)から11月9日(月)の10日間、六本木ヒルズ、日比谷エリアほかにておこなわれる。
村治:会場は毎回、六本木ヒルズが中心ですか?
矢田部:六本木ヒルズがメイン会場になって久しいです。日比谷でも野外上映をおこなったり、一部六本木以外の場所でもおこなっていきます。
村治:今年は新型コロナウイルスでいろいろな影響を受けていますから、映画祭のプログラムが異なってくるということもありますよね。
矢田部:そうなんです。そもそもやれるのかどうかということを6、7月あたりに悩んでいました。海外の映画祭では、完全にオンラインで作品を観せるやり方に移行したところもあるんですが「東京はどうしようか」と話をしていました。しかし、映画館も再開し始めたので、映画は映画館で観てもらおう、楽しみや喜びをもう一度盛り上げていきたいということで、実際の映画館でフィジカルなかたちで映画祭を実行しようと決めました。
「映画の持つ力を再認識してもらおう」映画祭への意気込み
今年は海外から審査員を招くことが難しく「公正な審査プロセスを踏めない」という判断からコンペティションは中止となった。矢田部:とにかく世界中からたくさんの新作を集めてフラットに並べて、お客さんに観てもらうことを第一に考えて実施していこうと。そういうふうに変えた部分があります。
村治:変わらないところはお客さまと「映画の楽しみを分かち合う」というところですね。
矢田部:そうですね。賞はありませんが、ひとつだけ「観客賞」というものを設けました。お客さんに劇場で観てもらって、おもしろかったかどうかを投票してもらい、最終的に1本の観客賞を決めます。その意味でもお客さまに一段と楽しんでもらえるんじゃないかと思います。
村治:一票の重みがありますね。
矢田部:大いにあります。
村治:開催期間は10日間でも、映画祭を作り上げていくプロセスは毎年大変じゃないですか。
矢田部:10日間のイベントですが、残り355日でなんだかんだやることがあります(笑)。そのなかでも上映する作品を選んでいくために「どういう特集をやるか」とか、新しくていい作品を映画祭で上映をするために春先からミーティングを重ねたりしています。今年は出張ができないので、Zoomで海外の映画人とミーティングをしたり、今までと違うかたちで作品選定したりということになってきました。劇場でお客さんに楽しんでもらうため、世界の多くの国からいろいろなジャンルの作品を集めて映画の多様性を楽しんでもらおう、映画の持つ力を再認識してもらおうと思っています。精神論みたいなことでもあるんですが、なるべく幅広いタイプの作品を集めていこうということを意識しました。
見事な人間ドラマと迫力のボクシングシーン
今年の東京国際映画祭のオープニング作品は日本映画『アンダードッグ』だ。矢田部が本作への想いを語った。『アンダードッグ』予告編
一度は手にしかけたチャンピオンへの道……そこからはずれた今も“かませ犬(=アンダードッグ)"としてリングに上がり、ボクシングにしがみつく日々をおくる崖っぷちボクサー・末永晃(森山未來)。幼い息子・太郎には父親としての背中すら見せてやることができず“かませ犬"から“負け犬"に。一抹のプライドも粉砕され、どん底を這いずる“夢みる"燃えカスとなった男は、宿命的な出会いを果たす。一人は、“夢あふれる"若き天才ボクサー・大村龍太(北村匠海)。児童養護施設で晃と出会いボクシングに目覚めるが、過去に起こした事件によってボクサーとして期待された将来に暗い影を落とす。もう一人は、夢も笑いも半人前な“夢さがす"芸人ボクサー・宮木瞬(勝地涼)。大物俳優の二世タレントで、芸人としても鳴かず飛ばずの宮木は、自らの存在を証明するかのようにボクシングに挑む。三者三様の理由を持つ男たちが再起という名のリングに立つとき、飛び散るのは汗か、血か、涙か。
(映画『アンダードッグ』公式サイトより)
矢田部:ボクシングと映画はとても相性がよくて、過去にも『ロッキー』や『レイジング・ブル』といったボクシング映画の傑作がたくさんあります。その傑作ボクシング映画の系譜にまたひとつ新たな傑作が加わったな、というのが『アンダードッグ』です。『百円の恋』という安藤サクラさんが女性ボクサーを演じられた作品が2014年にヒットしましたが、同じ監督、同じ脚本家で新たなボクシング映画ができました。今回は男性ボクシングで、主役が森山未來さん。彼が「負け犬ボクサー」で負けがこんでいて引退も間近かという段階で「このまま終わっていいのか」という状況に直面する。そこに同じくマイナスの部分を抱えたふたりのボクサーと対決します。前編・後編に分けて、前編は勝地 涼さん、後編は北村匠海さんが演じるボクサーと対決していくことになります。見事な人間ドラマで、ボクシングシーンも迫力満載で間違いないです。
東京国際映画祭公式サイト:https://2020.tiff-jp.net/ja/
この記事の続きを読むには、
以下から登録/ログインをしてください。