J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』のワンコーナー「SONAR'S ROOM」。毎週木曜日はmiletが影響を受けたカルチャーや音楽について語る。10月3日(木)は「本を読みながら聴きたい曲」をテーマに選曲した。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年10月10日28時59分まで)
・David Housden『A Time for Change』
milet:この曲は『Thomas Was Alone』というゲームのサウンドトラックの1曲です。ゲームの主要キャラクターは、ただの四角形。縦長の長方形や横長の長方形で、横長のキャラクターは高く飛べないといった特性があって、みんなの特性を使って世界を抜け出すというもの。雰囲気もいいし、ただの四角形だけど情が移っていくような不思議なゲームです。『A Time for Change』は長方形たちの旅をすごくエモーショナルにドラマチックに描いて、情緒的に演出してくれます。少し寂し気だけど強さがあって「ここから抜け出そう」という雰囲気があるんです。
この曲に合う本は、Andy WeirのSF小説『火星の人』(早川書房)だそうだ。
milet:この本は、映画『オデッセイ』の原作で、映画で有名になりました。主人公のマーク・ワトニーが火星にひとり残されて、食料も連絡手段もなく、物資も少なくなって、絶望的な状況を何とか生き延びていく話。映画もいいけど、小説の表現が素晴らしいので、ぜひ原作を読んでほしいです。ページをめくる速度が本当に速い! 宇宙の無感情で真っ暗な感じと、人間の「生きたい」という感情的なものがぶつかり合っている感じがこの曲に合っていたし、雰囲気がすごく広がりました。私の本の読み方は、1〜2回目は音楽なしで読むんですけど、3〜4回目ぐらいからは自分でBGMをつけたりして別の楽しみ方をします。音楽が文章に広がりを持たせてくれます。そんな読み方、聴き方をしています。
・Yann Tiersen『Le Moulin』
milet:フランス映画『アメリ』のサウンドトラック。『アメリ』は色使いも可愛いし、音楽も素敵です。フランスの華やかな面と、ちょっとミステリアスな薄暗い面が魅力的に映されています。この曲は後者の情景にピッタリな音楽。人間でいうと、ちょっと思春期を過ぎた、子どもと大人の狭間の倦怠感や、孤独感、誰かを求めてどこかにいきたいという思いを感じさせます。
この曲には、Francoise Sagan『ある微笑』(新潮社)という本がおすすめ。
milet:20歳の大学生の女性・ドミニックと、40歳既婚の男性・リュックとの、ひと夏の不倫恋愛の物語です。散文詩のようになっていることもあって、フランスの文章はどこか素敵で印象的。幸せと悲しみが同居しているような物語で、この曲もそんな感じがします。喜び切れないし、悲しみ切れないような、どちらにもいけないし、どちらにもいけるような、そんな音と文章が合っていました。この曲は『アメリ』のために作られたサウンドトラックで、『アメリ』もフランス映画で、Francoise Saganもフランス人なので、フランスの情景がマッチします。フランスのハッキリしない空の色のもとで生まれる、情熱的だけど、ときどき臆病な若者と、いい年した40歳の恋愛がすごくリアルで、音楽とピッタリ。文章がなくても、不思議な世界に連れていってくれる音楽です。
・ショパン『バラード 第2番 Op.38 CT3 ヘ長調』(演奏:辻井伸行)
milet:この曲は恩田 陸さんの『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎)に合います。これは本当に面白い読書体験でした。『蜜蜂と遠雷』の映画版には、私が以前テーマソングを担当した映画『バースデー・ワンダーランド』の主人公・アカネちゃんを演じた松岡茉優さんが出るし、音楽のストーリーだし、読むしかないと思って買って読んでみたら、猛スピードで読み終えました。面白すぎて松岡茉優さんに連絡しちゃいました。ピアノコンクールに挑戦する4人の主人公たちと、それを取り巻く人々の話です。小説でピアノの演奏をどういうふうに表現するのかということが一番気になってたけど、主要人物4人が同じ曲を演奏しても全然違う表現なんです。それが本当に面白くて。むしろ"音を聴いていたら聴こえない音"みたいなものが聴こえたような気がしました。それくらい音に溢れた文章たちでした。『バラード 第2番 Op.38 CT3 ヘ長調』 も、本の中でコンクールの曲として演奏されます。私はこの曲を知っていて本を読んだけど、違う曲に感じました。音符が音楽の言葉で、それを文章に変換するとこんなにも聴こえ方が違うんだと、一種の"アハ体験"をしました。演奏シーンはとにかく激しくて、演奏シーン以外では優しいけど、激しい旋律がすごく合っていました。やはりピアノの物語にはピアノ曲がピッタリですね。
・Jóhann Jóhannsson『Flight From The City』
milet:悪い話も美化されてしまいそうな美しい音楽。この曲はひとつのテーマが繰り返し鳴っているけど、アレンジが変わっていって最後に向かっていきます。ドラマチックにしてやろうという感じではなくて、自然と空間が広がっていって最後に人間とリンクしていくような雰囲気があります。そんな曲にピッタリな本がSharon Creech『めぐりめぐる月』(原題『Walk Two Moons』/偕成社)。すごく心が温まる本です。内容はネイティブアメリカンの血を引く女の子・サラが、祖父母と一緒に、いなくなってしまった母を探してアメリカを旅する6日間の物語。ニューベリー賞も受賞していて、小学校の高学年から対象に読めるし、児童書としても有名です。子どもの頃に読んだときよりも、いま読んだほうがグッときました。改めて読んでみたけど、感じ方が全然違いましたね。
最後に、miletが改めて本と音楽の相性を話した。
milet:本と音楽は、合うときは合うけど、合わないときは合わないんですよね。うまく合ったときは文章がより引き立って、音楽も本来の力よりもっと素晴らしい、文章の力を引き出してくれる相乗効果があるんです。1〜2回目は普通に読んで、どんどん音楽でアレンジして、自分なりの面白さを発見していくのも面白い読書の仕方だと思います。
miletが紹介した4曲を、radikoでぜひチェックしてみてほしい。
J-WAVE『SONAR MUSIC』のワンコーナー「SONAR'S ROOM」では、月曜から木曜まで日替わりのアーティストが、今の自分たちの音楽に影響を与えたカルチャーについて語っている。放送は月曜~木曜の22時30分頃から。お楽しみに!
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年10月10日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『SONAR MUSIC』
放送日時:月・火・水・木曜 21時ー24時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarmusic/
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年10月10日28時59分まで)
・David Housden『A Time for Change』
milet:この曲は『Thomas Was Alone』というゲームのサウンドトラックの1曲です。ゲームの主要キャラクターは、ただの四角形。縦長の長方形や横長の長方形で、横長のキャラクターは高く飛べないといった特性があって、みんなの特性を使って世界を抜け出すというもの。雰囲気もいいし、ただの四角形だけど情が移っていくような不思議なゲームです。『A Time for Change』は長方形たちの旅をすごくエモーショナルにドラマチックに描いて、情緒的に演出してくれます。少し寂し気だけど強さがあって「ここから抜け出そう」という雰囲気があるんです。
この曲に合う本は、Andy WeirのSF小説『火星の人』(早川書房)だそうだ。
milet:この本は、映画『オデッセイ』の原作で、映画で有名になりました。主人公のマーク・ワトニーが火星にひとり残されて、食料も連絡手段もなく、物資も少なくなって、絶望的な状況を何とか生き延びていく話。映画もいいけど、小説の表現が素晴らしいので、ぜひ原作を読んでほしいです。ページをめくる速度が本当に速い! 宇宙の無感情で真っ暗な感じと、人間の「生きたい」という感情的なものがぶつかり合っている感じがこの曲に合っていたし、雰囲気がすごく広がりました。私の本の読み方は、1〜2回目は音楽なしで読むんですけど、3〜4回目ぐらいからは自分でBGMをつけたりして別の楽しみ方をします。音楽が文章に広がりを持たせてくれます。そんな読み方、聴き方をしています。
・Yann Tiersen『Le Moulin』
milet:フランス映画『アメリ』のサウンドトラック。『アメリ』は色使いも可愛いし、音楽も素敵です。フランスの華やかな面と、ちょっとミステリアスな薄暗い面が魅力的に映されています。この曲は後者の情景にピッタリな音楽。人間でいうと、ちょっと思春期を過ぎた、子どもと大人の狭間の倦怠感や、孤独感、誰かを求めてどこかにいきたいという思いを感じさせます。
この曲には、Francoise Sagan『ある微笑』(新潮社)という本がおすすめ。
milet:20歳の大学生の女性・ドミニックと、40歳既婚の男性・リュックとの、ひと夏の不倫恋愛の物語です。散文詩のようになっていることもあって、フランスの文章はどこか素敵で印象的。幸せと悲しみが同居しているような物語で、この曲もそんな感じがします。喜び切れないし、悲しみ切れないような、どちらにもいけないし、どちらにもいけるような、そんな音と文章が合っていました。この曲は『アメリ』のために作られたサウンドトラックで、『アメリ』もフランス映画で、Francoise Saganもフランス人なので、フランスの情景がマッチします。フランスのハッキリしない空の色のもとで生まれる、情熱的だけど、ときどき臆病な若者と、いい年した40歳の恋愛がすごくリアルで、音楽とピッタリ。文章がなくても、不思議な世界に連れていってくれる音楽です。
・ショパン『バラード 第2番 Op.38 CT3 ヘ長調』(演奏:辻井伸行)
milet:この曲は恩田 陸さんの『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎)に合います。これは本当に面白い読書体験でした。『蜜蜂と遠雷』の映画版には、私が以前テーマソングを担当した映画『バースデー・ワンダーランド』の主人公・アカネちゃんを演じた松岡茉優さんが出るし、音楽のストーリーだし、読むしかないと思って買って読んでみたら、猛スピードで読み終えました。面白すぎて松岡茉優さんに連絡しちゃいました。ピアノコンクールに挑戦する4人の主人公たちと、それを取り巻く人々の話です。小説でピアノの演奏をどういうふうに表現するのかということが一番気になってたけど、主要人物4人が同じ曲を演奏しても全然違う表現なんです。それが本当に面白くて。むしろ"音を聴いていたら聴こえない音"みたいなものが聴こえたような気がしました。それくらい音に溢れた文章たちでした。『バラード 第2番 Op.38 CT3 ヘ長調』 も、本の中でコンクールの曲として演奏されます。私はこの曲を知っていて本を読んだけど、違う曲に感じました。音符が音楽の言葉で、それを文章に変換するとこんなにも聴こえ方が違うんだと、一種の"アハ体験"をしました。演奏シーンはとにかく激しくて、演奏シーン以外では優しいけど、激しい旋律がすごく合っていました。やはりピアノの物語にはピアノ曲がピッタリですね。
・Jóhann Jóhannsson『Flight From The City』
milet:悪い話も美化されてしまいそうな美しい音楽。この曲はひとつのテーマが繰り返し鳴っているけど、アレンジが変わっていって最後に向かっていきます。ドラマチックにしてやろうという感じではなくて、自然と空間が広がっていって最後に人間とリンクしていくような雰囲気があります。そんな曲にピッタリな本がSharon Creech『めぐりめぐる月』(原題『Walk Two Moons』/偕成社)。すごく心が温まる本です。内容はネイティブアメリカンの血を引く女の子・サラが、祖父母と一緒に、いなくなってしまった母を探してアメリカを旅する6日間の物語。ニューベリー賞も受賞していて、小学校の高学年から対象に読めるし、児童書としても有名です。子どもの頃に読んだときよりも、いま読んだほうがグッときました。改めて読んでみたけど、感じ方が全然違いましたね。
最後に、miletが改めて本と音楽の相性を話した。
milet:本と音楽は、合うときは合うけど、合わないときは合わないんですよね。うまく合ったときは文章がより引き立って、音楽も本来の力よりもっと素晴らしい、文章の力を引き出してくれる相乗効果があるんです。1〜2回目は普通に読んで、どんどん音楽でアレンジして、自分なりの面白さを発見していくのも面白い読書の仕方だと思います。
miletが紹介した4曲を、radikoでぜひチェックしてみてほしい。
J-WAVE『SONAR MUSIC』のワンコーナー「SONAR'S ROOM」では、月曜から木曜まで日替わりのアーティストが、今の自分たちの音楽に影響を与えたカルチャーについて語っている。放送は月曜~木曜の22時30分頃から。お楽しみに!
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年10月10日28時59分まで)
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【番組情報】
番組名:『SONAR MUSIC』
放送日時:月・火・水・木曜 21時ー24時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarmusic/
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