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日本が世界から「周回遅れ」になった理由は? AI政治の未来を、夏野 剛が考える

日本が世界から「周回遅れ」になった理由は? AI政治の未来を、夏野 剛が考える

参議院選挙を目前に控えています。日本の政治は、テクノロジーによって変化するのでしょうか? J-WAVEで放送中の番組『TOPPAN FUTURISM』(ナビゲーター:小川和也・南沢奈央)では、株式会社ドワンゴ代表取締役社長の夏野 剛さんを迎え、「AI政治の未来」について訊きました。6月30日(日)のオンエアです。


■日本は新しいものを取り入れにくい

「インターネットが登場して人類のスタイルがガラッと変わった」と夏野さん。その流れに合わせ経営スタイルや社会の仕組みも変えなければいけないが、日本だけはあまり変わっていないと指摘。一方で、だからこそこれから日本はますます変われるチャンスがあると言います。

閉塞感があると思われる日本の政治もテクノロジーで変えていけるのでしょうか。

南沢:現在でも政治にテクノロジーは使われているんですか?
夏野:例えば出口調査から当確予想をしていますよね。これは統計学で、開票率1パーセントでも「当確」とか出ますよね。それは過去の選挙の分析をしていて、出口調査のサンプル数がある一定揃うと当確予想をパッと出してしまう。これはテクノロジーです。
小川:日本は公職選挙法の一部を改正し、2013年から選挙でインターネットを活用できるようになりましたけど、アメリカなどは1990年代から使われていますよね。
夏野:そもそも、政治にインターネットを使えない方がおかしかったんです。選挙運動で電話はかけていいけど、メールはダメって意味不明じゃないですか。日本は新しいものが出てくるとルールにはまらなくて、強引にはめようとする。アメリカなど他の国はルールにはまらないものは、とりあえずOKなんですよね。ここの違いで、日本は世界から周回遅れになったのだと思います。


■やっぱりAIに仕事を奪われる?

小川は、「『AI首相』や『AI総理大臣』が出てきたら国はよくなるのか」という空想の議論をよく耳にするそうです。それに対して、夏野さんは「人間が選ぶ政治家はどれだけ共感を得られるかが非常に大事になる」と話します。

夏野:正しい判断か正しくない判断かは結果でしかわかりません。結果を待ち「正しかったね」と言っていたら政治はできないので、最終的にはどうなるかわからないけど、シンパシーを感じて投票してトランプ大統領が生まれたりするわけです。だから、政治におけるAIの役割は、政治家として判断するということではないところに落ち着くのではないかと考えます。
小川:官僚はどうでしょうか?
夏野:今のAIは過去の人間が判断した蓄積とか経験値などを全部学習した上で、一番正しいと思える判断を下すように作られています。そのため、法律を作る側の官僚ではなくて、例えば町役場でいろいろなオペレーションをする人たちの仕事は、AIがやってもいいかなと思います。そうすれば、昼間は人間がやって、夜はAIがやって、24時間役所が開いていることも可能になります。
小川:働き方改革にもなるわけですね。
夏野:「AIに仕事を奪われる」と言っている人がいますけど、そんな事を言ったら、昔はみんなで田畑を開墾していたわけで、農機具が出てきたおかげでみんながそれをやらなくてよくなった。みんな暇になるとまた新しいことを考えますから、AIが出てくれば出てくるほど、人が相対することが最高の価値になるので、AIが出てきても大丈夫です。


■AIを正確に判断するための参考意見として利用する

「市民の不満を人間の政治家よりもAIが緩和させられる日が来るのか」という質問に、夏野さんは「人間なので必ず不満を持つ人はいます。人間の不満をゼロにすることは不可能」と前置きしつつ、こう述べました。

夏野:今世界中で、“共感すると、言っていることはどうでもいいから、その人に投票してしまう”ことが問題になっています。つまり、政策ではなく人で選んでしまっている。僕はAIを使うとそれが阻止できると思っています。例えばAIに「北朝鮮とこういう状況になっているけど、AIだったらどんな政策がベストだと思うか」と問うと3案くらい出してくれる。今は「与党だとこう言っている」「それについて野党はこう言っている」と、与党と野党が違うことを言わなくてはいけない部分があるので、本当にいいのはどれかがわかりにくい。それを与党と野党がそれぞれ言っていること、あるいは政治家2人が言っている異なる意見について、「フラットに考えるAIはこう言っている。それから見ると、こっちの意見の方がよりまともで、あるいはリスクが少ない、あるいは世の中をよりよくしてくれる」と判断できる。AIが言うことは過去の蓄積に基づいているので、新しいクリエイティブなことは言えないんです。だから、比較対象として政策の違いを考える時に、それを正確に判断するための参考意見としてAI政策を聞くことで、この政党や政治家は何を言いたいことがより深く理解できると思います。


■国民が恐れず、まともなことを考える必要がある

最後に「AI政治の未来」を握るカギについて、「恐れないこと」と夏野さん。

夏野:人類は新しいことに対してある一定の恐れを抱きます。それは当然のことです。ただ、その恐れが度を超してしまうと、社会の発展を阻害してしまいます。特に1996年から2019年までにおいて、日本は世界の主要国で唯一経済成長ができていない国で、1996年と2017年のGDPを比べると0.数パーセントしか成長していません。

一方、この間にアメリカは140パーセント、フランスは60パーセント、イギリスは80パーセントも成長している、と続けます。

夏野:この20年間、世界はITがどんどん世の中に入ってきて、法律の施行の仕方や社会のルール、経営のやり方、情報の取り方、教育の受け方など、あらゆる部分にITが入ってきて非常に生産性が上がった。反面、日本だけが上がっていない。その大きな理由が「新しいテクノロジーは怖い」という意識。普通の生活ではスマホとかみんな使っているのに、「それを選挙に入れたら怖い」「教育に入れたら怖い」「Uber入ったら怖い」……とシステムになると恐怖をおぼえる。あくまで政治を動かしているのは国民なので、我々国民が恐れず、まともなことをまともに考える必要があると思います。

AIやテクノロジーを積極的に活用することで、よりよい社会に近づく。そう期待を持てる時間となりました。

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【番組情報】
番組名:『TOPPAN FUTURISM』
放送日時:毎週日曜 21時-21時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/futurism/

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