音楽、映画、エンタメ「ここだけの話」
映画『ボヘミアン・ラプソディ』はなぜ大ヒットしたのか? 20世紀フォックス担当者がその裏側を明かす

(C)2019 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

映画『ボヘミアン・ラプソディ』はなぜ大ヒットしたのか? 20世紀フォックス担当者がその裏側を明かす

J-WAVEで放送中の番組『TOPPAN FUTURISM』(ナビゲーター:小川和也・南沢奈央)。6月9日(日)のオンエアでは、「音楽映画は映画の未来をどう変える?」をテーマにお届け。20世紀フォックス ホームエンタテイメントジャパン マーケティング本部長の井上倫明さんをゲストに迎え、映画『ボヘミアン・ラプソディ』の大ヒットの理由に迫りました。

【『TOPPAN FUTURISM』(毎週日曜 21時-21時54分)】


■観客はライブを観に来るような感覚

20世紀フォックス配給の映画『ボヘミアン・ラプソディ』の大ヒットもあり、最近は音楽映画が増えている印象があります。しかし、この大ヒットは業界にとっても驚きをもって受け止められました。

井上:元々ミュージカル映画というジャンルは昔からありましたが、ここまで音楽映画が日本人に受け入れられることは、映画業界の人間も予想していなかったと思います。ただ、『ボヘミアン・ラプソディ』が大ヒットして、この先アーティストの半生を描いたような映画が、たくさん続くようになると思います。これまで偉人の半生を描く映画は多くあったと思います。音楽アーティストは知名度があり、彼らの功績が「歌」というカタチでみなさんに親しく残り、あれだけのスーパースターになると、とてもドラマチックで魅力的な人生を送っているので、そのあたりが映画のコンテンツとぴったり合っているのかなと思います。

映画『ボヘミアン・ラプソディ』(C)2019 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

映画『ボヘミアン・ラプソディ』の国内動員数は1000万人を超え、日本人の約10人に1人がこの映画を観ていることになります。なぜ、これほど多くの人が映画館に足を運んだのでしょうか。

井上:おそらく観客はライブを観に来るような感覚だと思います。歌は気持ちを高揚させ、あれだけ有名な楽曲なのでみなさんが知っている。さらにクイーンをリアルタイムで愛していたファンたちは、彼らの歌と自分の何かしらの思い出を関連付けられていて、ノスタルジーな懐かしさもある。彼らの人生を描いたストーリーラインに沿うプロットがありつつ、本当のライブを聴きに来ているような楽しさもあって、映画を観る視聴体験として観客は非常に楽しいんだと思います。それが、最初はクイーンのファンから始まり、どんどん口コミで拡散し、もはやクイーンを知らなかった世代まで広がって、ものすごい現象になりました。

加えて、『ボヘミアン・ラプソディ』でフレディ・マーキュリー役を務めたラミ・マレックの演技も、この映画の魅力のひとつだと井上さんは続けます。

井上:ある意味フレディ・マーキュリーを彼なりに演じて、本物のフレディと変わらないくらいの魅力を生みだしていた部分も、みんなが愛着を持った理由だと思います。

映画『ボヘミアン・ラプソディ』(C)2019 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.


■ここまでのヒットは予想していなかった

続いて『ボヘミアン・ラプソディ』のマーケティングの話題になりました。

小川:この映画が成功したマーケティング裏話などありますか?
井上:実はマーケティングは、音楽映画であること、クイーンであること、そこを最大限に活用しましたが、それ以上に消費者が作った大ヒットだと思っています。本当に口コミで広がって、当初の予想をはるかに超えた成績を収めました。今はSNSがインフラとして整っていて、口コミで社会現象が起きやすい下地があるなか、私たちの意図をはるかに超えるスケールで口コミが広がり、それが世代を超えてあれだけの爆発的なヒットに繋がったと考えています。
小川:ここまでのヒットを予想していましたか?
井上:最初は予想していませんでした。
小川:では、いつ頃から?
井上:年が明けたくらいです。2018年11月に公開して、最初の数字がとても良かったんです。普通の映画は公開初週からどんどん興行収入は落ちてきますが、この映画は途中から上がりはじめ、ものすごく息が長く続くことが途中で見えてきました。それと比例するように、ファンの中でのざわつき感を肌で感じましたし、それを助けるようにいろいろなメディアが取り上げてくれるようになり、その相乗効果だったと思っています。

また、何度も映画館に足を運ぶ人が多かったことも特徴のようです。

井上:ファンはライブ会場でアーティストのパフォーマンスを観るような感覚を持っていたので、何度も映画館に足を運んだんだと思います。
小川:音楽映画はライブ・エンタテインメント的な要素を持ち始めていると思いますが、この流れは映画の楽しみ方が変わるきっかけになっていくのでしょうか?
井上:そうだと思います。今は月額いくらで見放題のような、スマートフォンやタブレットで気軽に映像を消費するスタイルが普及しています。そんな中、映像視聴のスタイルとして一番ハイエンドになるのが映画館だと思います。よりお互いの良さを際立たせるためにも、映画館の視聴スタイルは、視聴体験としてますますリッチなものに傾いてくると思います。興業を観に行く、芝居を観に行く、そんな感じで、ただ映画を観るだけではない何かを求めるようになっていて、その中で音楽映画は「応援上映」というカタチも登場しました。その動きがこれまでの映画の見方の固定概念を変えたと思います。

映画『ボヘミアン・ラプソディ』(C)2019 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.


■みんなのお金と時間の投資先になる環境を

最後に、映画文化のさらなる発展のカギは「ヒット作がきちんとヒットする環境を作ること」だと井上さんは話します。

井上:とてもいい映画がたくさんある中、その映画の良さをちゃんと伝えられるためには、映画をコンテンツとして提供する側の努力が必要であり、映画好きの声が一般の人にも届くような仕組みを作ることも大事です。メディアでいい映画を紹介してもらうことも重要になる。そういうカタチでヒット作が出て、みんなが観て、みんなが話題にして取り上げることがもっと必要だと思います。映画がもっとコンテンツとしてお金と時間の投資先になるような、そういう環境が作れたらと思います。

この記事の放送回をradikoで聴く(2019年6月16日23:59まで)
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【番組情報】
番組名:『TOPPAN FUTURISM』
放送日時:毎週日曜 21時-21時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/futurism/

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