J-WAVEがいま注目するさまざまなトピックをお届けする日曜夜の番組『J-WAVE SELECTION』。毎月第3日曜は、震災復興プログラム『Hitachi Systems HEART TO HEART』(ナビゲーター:重松 清)をお届けしています。1月20日(日)のオンエアでは、小説家の真山 仁さんをお迎えしました。
真山さんは阪神・淡路大震災に神戸市で被災し、東日本大震災の後、このふたつの震災を結ぶ小説『そして、星の輝く夜がくる』、その続編『海は見えるか』を執筆。さらに東日本大震災を取材する人たちを主人公にした『雨に泣いてる』を発表しました。
1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災から24年が経ちましたが、頻度は減ったものの、今でもそのときの気持ちが蘇ってくるという真山さん。この日は真山さんとともに、「阪神・淡路大震災から始まったもの」について考えました。
■地域との繋がりが薄くなってきた
今回、重松が神戸で取材した方のひとりに、現在、神戸市立なぎさ小学校の先生をしている中嶋早苗さんがいます。中嶋さんは震災当時、小学校の先生を志す高校1年生でした。自宅の市営住宅が半壊し、避難所生活を送っていたとき、避難所の小学校で子どもたちが手書きで被災者に発行し続けた「避難所新聞」の編集長を務めました。のちに先生になる夢を叶えた中嶋さんに、伝え続けていきたい震災のこと、そしてその難しさを伺いました。
中嶋:当時のほうが、地域力は強かったかなと思います。23年経って街がキレイになって、いろんな方たちが神戸に移り住んでいますが、うちの街、HAT神戸もそうなんですけど、マンションが増えていくと地域との繋がりがすごく薄くなるというのもありますので、ここでまた大きな地震が来たときに本当に助け合えるのか、というのは思いますね。
ご近所さんの顔を知らない、お隣さんに挨拶をしたことがないという子どもたちが増えてきたことで、いざというときに協力し合えるのか不安だと語る中嶋さん。そんな中で、今の子どもたちに伝えていることがあります。
中嶋:私自身の経験が、本当にみんなと協力して震災を乗り切ったと思っています。新聞もそうですし、私ひとりで何かをしたのではなくて、みんなで一緒にがんばってきたこともありますので。やっぱり協力する大切さであったり、他人を思いやる大切さというのは、震災があったからではなくて、隣の人を親切にできる子になってほしいなというのをずっと思っているので、どの学年を担任しても、震災学習の後では協力する大切さであったり、思いやりの重要さというのを考えさせたいなとは思っています。
中嶋さんが編集長を務めた「避難所新聞」は、中嶋さん自身の授業で使用しているほか、神戸市の防災教育の副読本にも選ばれています。
■神戸における、阪神淡路大震災の現在
震災から約四半世紀が経ち、その痕跡がわからないほど復興した現在の神戸。人の心はどうなのでしょうか?
真山:神戸は大阪が隣にある大都会ですから、たとえば神戸で3代、おじいちゃんの代までいる人が意外にもともと少ないんです。そうすると語り継がれなくなりますし、たとえば私が前に勉強会をやった私立の中高だと、ほとんど神戸の子はいないんですよ。大阪(の子)が多い学校で。
その学校では、震災のことを親と語ったことがある生徒はゼロ。そのため他の被災地と交流した際に、いろいろ質問をされても答えられず困っていたそうです。
真山:親からも聞いてないんです。広島の原爆記念館はみんな行って、いろんな知識を持っているんですが、神戸にも「人と防災未来センター」ってありますよね。HAT神戸の側ですけど、行った子はゼロだったんです。
重松:そうですか……。
真山:だから結局、教育でさせられるから余計に行かなくなるんだと思うんですけれども、そういう意味では風化とかいう意味ではなくて、日常生活になってくると、1月17日というのはたぶん、8月15日とか、8月6日、9日より、もしかすると薄いものになってしまっているというのはあると思います。
人々に震災のことを伝え続けるには、何が必要なのかについて、真山さんは、記録を集めて残すだけではなく、未来の災害時に必要な情報を「編集」すべきだと言います。
真山:集めるだけではなくて、後でそれをみんなが何か知りたいときに、検索機能みたいな編集をするということですよね。いろんなフェーズで、それこそ消防は何をやったのかとか、「1日目」ってやれば1日目に何があったかとか全部わかるみたいなことをやらないと、いくら集めてもダメなんですけど、行政は集めることを今、必死にやってる。だから伝わらないんだと思います。
編集作業には民間の協力も必要だと真山さん。「何が必要なのか」という物差しをしっかり持たなければなりませんが、そうすると情報に優劣がついているように見えるという問題もあるそうです。
いつまた大きな災害があるともわからない日本。今後に伝えるべきものについて、深く考えさせるオンエアでした。重松は「記憶を残すことによって未来につながっていく。これは小説にも繋がる」と語りました。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
※PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー
【番組情報】
番組名:『Hitachi Systems HEART TO HEART』
放送日時:毎月第3日曜 22時-22時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/special/hearttoheart/
真山さんは阪神・淡路大震災に神戸市で被災し、東日本大震災の後、このふたつの震災を結ぶ小説『そして、星の輝く夜がくる』、その続編『海は見えるか』を執筆。さらに東日本大震災を取材する人たちを主人公にした『雨に泣いてる』を発表しました。
1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災から24年が経ちましたが、頻度は減ったものの、今でもそのときの気持ちが蘇ってくるという真山さん。この日は真山さんとともに、「阪神・淡路大震災から始まったもの」について考えました。
■地域との繋がりが薄くなってきた
今回、重松が神戸で取材した方のひとりに、現在、神戸市立なぎさ小学校の先生をしている中嶋早苗さんがいます。中嶋さんは震災当時、小学校の先生を志す高校1年生でした。自宅の市営住宅が半壊し、避難所生活を送っていたとき、避難所の小学校で子どもたちが手書きで被災者に発行し続けた「避難所新聞」の編集長を務めました。のちに先生になる夢を叶えた中嶋さんに、伝え続けていきたい震災のこと、そしてその難しさを伺いました。
中嶋:当時のほうが、地域力は強かったかなと思います。23年経って街がキレイになって、いろんな方たちが神戸に移り住んでいますが、うちの街、HAT神戸もそうなんですけど、マンションが増えていくと地域との繋がりがすごく薄くなるというのもありますので、ここでまた大きな地震が来たときに本当に助け合えるのか、というのは思いますね。
ご近所さんの顔を知らない、お隣さんに挨拶をしたことがないという子どもたちが増えてきたことで、いざというときに協力し合えるのか不安だと語る中嶋さん。そんな中で、今の子どもたちに伝えていることがあります。
中嶋:私自身の経験が、本当にみんなと協力して震災を乗り切ったと思っています。新聞もそうですし、私ひとりで何かをしたのではなくて、みんなで一緒にがんばってきたこともありますので。やっぱり協力する大切さであったり、他人を思いやる大切さというのは、震災があったからではなくて、隣の人を親切にできる子になってほしいなというのをずっと思っているので、どの学年を担任しても、震災学習の後では協力する大切さであったり、思いやりの重要さというのを考えさせたいなとは思っています。
中嶋さんが編集長を務めた「避難所新聞」は、中嶋さん自身の授業で使用しているほか、神戸市の防災教育の副読本にも選ばれています。
■神戸における、阪神淡路大震災の現在
震災から約四半世紀が経ち、その痕跡がわからないほど復興した現在の神戸。人の心はどうなのでしょうか?
真山:神戸は大阪が隣にある大都会ですから、たとえば神戸で3代、おじいちゃんの代までいる人が意外にもともと少ないんです。そうすると語り継がれなくなりますし、たとえば私が前に勉強会をやった私立の中高だと、ほとんど神戸の子はいないんですよ。大阪(の子)が多い学校で。
その学校では、震災のことを親と語ったことがある生徒はゼロ。そのため他の被災地と交流した際に、いろいろ質問をされても答えられず困っていたそうです。
真山:親からも聞いてないんです。広島の原爆記念館はみんな行って、いろんな知識を持っているんですが、神戸にも「人と防災未来センター」ってありますよね。HAT神戸の側ですけど、行った子はゼロだったんです。
重松:そうですか……。
真山:だから結局、教育でさせられるから余計に行かなくなるんだと思うんですけれども、そういう意味では風化とかいう意味ではなくて、日常生活になってくると、1月17日というのはたぶん、8月15日とか、8月6日、9日より、もしかすると薄いものになってしまっているというのはあると思います。
人々に震災のことを伝え続けるには、何が必要なのかについて、真山さんは、記録を集めて残すだけではなく、未来の災害時に必要な情報を「編集」すべきだと言います。
真山:集めるだけではなくて、後でそれをみんなが何か知りたいときに、検索機能みたいな編集をするということですよね。いろんなフェーズで、それこそ消防は何をやったのかとか、「1日目」ってやれば1日目に何があったかとか全部わかるみたいなことをやらないと、いくら集めてもダメなんですけど、行政は集めることを今、必死にやってる。だから伝わらないんだと思います。
編集作業には民間の協力も必要だと真山さん。「何が必要なのか」という物差しをしっかり持たなければなりませんが、そうすると情報に優劣がついているように見えるという問題もあるそうです。
いつまた大きな災害があるともわからない日本。今後に伝えるべきものについて、深く考えさせるオンエアでした。重松は「記憶を残すことによって未来につながっていく。これは小説にも繋がる」と語りました。
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【番組情報】
番組名:『Hitachi Systems HEART TO HEART』
放送日時:毎月第3日曜 22時-22時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/special/hearttoheart/
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