J-WAVEがいま注目するさまざまなトピックをお届けする日曜夜の番組『J-WAVE SELECTION』。毎月第3日曜は、震災復興プログラム『Hitachi Systems HEART TO HEART』(ナビゲーター:藤巻亮太)をお届け。10月20日(日)のオンエアでは、ノンフィクション作家の奥野修司を迎え、大きな喪失を体験した人たちと東北に残る「魂の癒し」を考えた。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年10月27日28時59分まで)
■被災者の想いをどこかにはき出す場所があれば
今回、藤巻は岩手県陸前高田市のカフェ「森の小舎」の店主・赤川勇治さんを取材。赤川さんは2014年に「震災で大切な人を失った悲しみを受け止める場所を作りたい」と考え、このカフェの敷地に赤い郵便ポスト「漂流ポスト3.11」を建てた。
ポストには、震災などで大切な家族や友を失った人たちが、亡くなった人に伝えたい想いを綴った手紙が届く。
赤川:子どもや家族、大切な友人などを震災で亡くした人の想いを胸に閉まっておくつらさよりも、少しでもどこかにはき出す場所があれば。その思いからこのポストに手紙を書いてみたらどうだろうと考えました。
ポストには、これまでに600通あまりの手紙が投函された。
赤川:東日本大震災から約8年半。2年前くらいから、手紙を書いた人がカフェを訪れるようになり、「以前、ここで手紙を書きました。そのとき手紙を1行書いただけで1歩前へ進めることができた」と報告してくれる人もいました。
藤巻は今回の取材をこう振り返る。
藤巻:大切な人を亡くした人にとって、第三者はどのように向き合えばいいのか。ある日突然大切な人との物語が絶たれてしまったとき、そこには「なぜ?」という大きな問いが生まれる。その「なぜ?」に向き合うことが最も大切なことであり、儀式なのかなと思います。この「なぜ?」に向かう想いを結ぶツールとして、手紙やポストがあるのかなと感じました。
手紙を書くことは、自分と向き合うことでもあり、送り手のことを考えることでもある。手紙を書き、ポストに投函することで、ひとつのかたちを成し、そこにある種の客観性が生まれる。かたちを成した以上は、その想いが漂流することにはならないのではないか、と藤巻は語った。
■亡くした人の存在を感じたい
奥野の著書『魂でもいいから、そばにいて ─3・11後の霊体験を聞く』(新潮社)は、震災の被災者のもとに通い、被災者の霊体験を取材したことから始まった。その取材でどんなことを感じたのだろうか。
奥野:病気で亡くなった人は死者としての存在を感じられますが、津波で一瞬にして亡くなった人は存在が感じられない。だから、津波で亡くなった人たちのまわりは、その存在をなんとか感じたいと思うわけです。そういうときに霊的な体験があれば、その存在を一瞬で感じますよね。
藤巻:残された人たちにとって、霊的な体験がどのような癒しに繋がっていくのでしょうか?
奥野:今まで家族などと生活を続けていた物語が一瞬でなくなると、その物語が完全に断ち切られ、どうしていいかわからなくなる。そこに魂でもいい、先ほどの「漂流ポスト3.11」の手紙でもいいから存在が感じられたら「あの人と一緒に生きていられるんだな」という安堵感につながってくるのだと思います。
奥野は被災者への取材を通して、とにかく話を聞くことが重要だと感じたという。
奥野:私はその取材で被災者へ質問はほとんどしていません。とにかくひたすら話を聞くだけでした。取材前はそうなるとは思っていなかったのですが。1時間だった取材が5時間や6時間になったり、丸2日間話し続けた人もいました。みなさんは話を聞いてもらいたいんだと思うんです。
藤巻:断ち切られた物語の続きを受けとめるわけですね。
奥野:そうです。霊体験は自分だけの体験だからちょっと自信がないけど、それを誰かに聞いてもらい肯定されることで、その霊体験が現実になっていくんです。
霊体験を現実として捉えることによって実体験が戻ってくる、と奥野は話を続ける。
奥野:愛する人が死んでしまったから私も死んだほうが楽だ。ずっとそう思って生きてきたけど、何か理由をつけて「これからも生きていこう」と思う。たとえば、子どもがいれば「子どものために生きてみよう」など、視点が変わりますよね。
藤巻:死者に向かう視点が、生きている世界に向くために奥野さんは話を聞いたわけですね。
藤巻は「震災で大事な人との物語が途切れてしまったときの喪失感は計り知れないものがある。手紙や話を聞くなどのアクションを通して、亡くした人との思い出を結び直し、それが気持ちの再生へとつながっていると感じた」と番組を振り返った。
番組では、震災で大きな喪失を体験した女性たちが写真を撮影し、写真とともにそこに感じた自分の内心を語るプロジェクトや遠野市で民話の語り部を取材した模様も紹介した。
奥野さんの『魂でもいいから、そばにいて ─3・11後の霊体験を聞く』もぜひ手に取ってみてほしい。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『Hitachi Systems HEART TO HEART』
放送日時:毎月第3日曜 22時-22時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/special/hearttoheart/
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年10月27日28時59分まで)
■被災者の想いをどこかにはき出す場所があれば
今回、藤巻は岩手県陸前高田市のカフェ「森の小舎」の店主・赤川勇治さんを取材。赤川さんは2014年に「震災で大切な人を失った悲しみを受け止める場所を作りたい」と考え、このカフェの敷地に赤い郵便ポスト「漂流ポスト3.11」を建てた。
ポストには、震災などで大切な家族や友を失った人たちが、亡くなった人に伝えたい想いを綴った手紙が届く。
赤川:子どもや家族、大切な友人などを震災で亡くした人の想いを胸に閉まっておくつらさよりも、少しでもどこかにはき出す場所があれば。その思いからこのポストに手紙を書いてみたらどうだろうと考えました。
ポストには、これまでに600通あまりの手紙が投函された。
赤川:東日本大震災から約8年半。2年前くらいから、手紙を書いた人がカフェを訪れるようになり、「以前、ここで手紙を書きました。そのとき手紙を1行書いただけで1歩前へ進めることができた」と報告してくれる人もいました。
藤巻は今回の取材をこう振り返る。
藤巻:大切な人を亡くした人にとって、第三者はどのように向き合えばいいのか。ある日突然大切な人との物語が絶たれてしまったとき、そこには「なぜ?」という大きな問いが生まれる。その「なぜ?」に向き合うことが最も大切なことであり、儀式なのかなと思います。この「なぜ?」に向かう想いを結ぶツールとして、手紙やポストがあるのかなと感じました。
手紙を書くことは、自分と向き合うことでもあり、送り手のことを考えることでもある。手紙を書き、ポストに投函することで、ひとつのかたちを成し、そこにある種の客観性が生まれる。かたちを成した以上は、その想いが漂流することにはならないのではないか、と藤巻は語った。
■亡くした人の存在を感じたい
奥野の著書『魂でもいいから、そばにいて ─3・11後の霊体験を聞く』(新潮社)は、震災の被災者のもとに通い、被災者の霊体験を取材したことから始まった。その取材でどんなことを感じたのだろうか。
奥野:病気で亡くなった人は死者としての存在を感じられますが、津波で一瞬にして亡くなった人は存在が感じられない。だから、津波で亡くなった人たちのまわりは、その存在をなんとか感じたいと思うわけです。そういうときに霊的な体験があれば、その存在を一瞬で感じますよね。
藤巻:残された人たちにとって、霊的な体験がどのような癒しに繋がっていくのでしょうか?
奥野:今まで家族などと生活を続けていた物語が一瞬でなくなると、その物語が完全に断ち切られ、どうしていいかわからなくなる。そこに魂でもいい、先ほどの「漂流ポスト3.11」の手紙でもいいから存在が感じられたら「あの人と一緒に生きていられるんだな」という安堵感につながってくるのだと思います。
奥野は被災者への取材を通して、とにかく話を聞くことが重要だと感じたという。
奥野:私はその取材で被災者へ質問はほとんどしていません。とにかくひたすら話を聞くだけでした。取材前はそうなるとは思っていなかったのですが。1時間だった取材が5時間や6時間になったり、丸2日間話し続けた人もいました。みなさんは話を聞いてもらいたいんだと思うんです。
藤巻:断ち切られた物語の続きを受けとめるわけですね。
奥野:そうです。霊体験は自分だけの体験だからちょっと自信がないけど、それを誰かに聞いてもらい肯定されることで、その霊体験が現実になっていくんです。
霊体験を現実として捉えることによって実体験が戻ってくる、と奥野は話を続ける。
奥野:愛する人が死んでしまったから私も死んだほうが楽だ。ずっとそう思って生きてきたけど、何か理由をつけて「これからも生きていこう」と思う。たとえば、子どもがいれば「子どものために生きてみよう」など、視点が変わりますよね。
藤巻:死者に向かう視点が、生きている世界に向くために奥野さんは話を聞いたわけですね。
藤巻は「震災で大事な人との物語が途切れてしまったときの喪失感は計り知れないものがある。手紙や話を聞くなどのアクションを通して、亡くした人との思い出を結び直し、それが気持ちの再生へとつながっていると感じた」と番組を振り返った。
番組では、震災で大きな喪失を体験した女性たちが写真を撮影し、写真とともにそこに感じた自分の内心を語るプロジェクトや遠野市で民話の語り部を取材した模様も紹介した。
奥野さんの『魂でもいいから、そばにいて ─3・11後の霊体験を聞く』もぜひ手に取ってみてほしい。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
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【番組情報】
番組名:『Hitachi Systems HEART TO HEART』
放送日時:毎月第3日曜 22時-22時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/special/hearttoheart/
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