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藤子不二雄Ⓐ、トキワ荘での思い出を語る「手塚先生のオーラが乗り移るような気がして…」

藤子不二雄Ⓐ、トキワ荘での思い出を語る「手塚先生のオーラが乗り移るような気がして…」

J-WAVEで放送中の番組『STEP ONE』(ナビゲーター:サッシャ・寺岡歩美)。10月29日(月)は、スペシャルゲストに藤子不二雄Ⓐさんをお迎えして、トキワ荘の裏話や、六本木ヒルズで開催中の展覧会「藤子不二雄Ⓐ展 -Ⓐの変コレクション-」に注目しました。

展覧会では、先生が漫画を描き始めた頃から現在までの、さまざまな作品が展示されています。

藤子:僕は、一つの作品を続けていると飽きちゃうんです(笑)。別の興味が浮かぶとそっちにいっちゃったりして。そういった意味では、作品の種類が非常に多いのが自慢です。いろんなジャンルを描いてきました。
サッシャ:子供の頃から、いろいろなことに興味がわくタイプだったんですか?
藤子:そうです。漫画はいろいろなことに好奇心を持って、興味を持たないと描けないわけです。作者が一番面白がって「こんな面白いものを描いたから見てくれ」って言って読者と通じると、その漫画に人気が出るわけです。読者と面白さで対決していくのが漫画の魅力です。
サッシャ:なるほど。
藤子:僕は今年84歳で、今はあまり描いてないけど、高校2年生の18歳の時にデビューして、60何年間やっていて、展覧会を開いてくれたのは非常に幸せです。
サッシャ:作品に出会えた私たちが幸せですよ! 今回の展覧会でこだわった点はありますか?
藤子:普通は漫画家の展覧会というと、原稿を展示するのがメインですけど、それだとつまらないから、僕の作品をもとにしていろいろ工夫をしてほしいと頼んだの。そしたらスタッフの人もノッちゃって、スタッフはほとんどが女性なんですが、僕が初めて行った時にビックリしたほどです。自分の作品なんだけど、こんな形で展開してくれるのが楽しくて、4回見に行ってるけど毎回面白いです。原作者が言ってるんだから、間違いないです(笑)。
寺岡:お墨付きですね!
サッシャ:一番好きなところはどこですか?
藤子:昔、描いた『明日は日曜日そしてまた明後日も……』という作品があるんですけど、これは今でいう引きこもりの少年を主人公にしたんです。僕は時代にちょっと先行する癖があって、その漫画を映像にして、いろいろな工夫をして展示してあります。自分の作品だけど、感動して泣きそうになりました。


■大きなプラスになった仕事

サッシャ:先生は人間の裏と表をあぶり出すところが印象的ですが、社会人経験も影響しているそうですね。
藤子:僕は富山にいたんですけど、当時は漫画家を目指して東京に出る時代ではなくて。叔父が富山新聞の重役だったのでコネで入社したんです。新聞記者の学芸部に入って、インタビューなどをしたほか、僕は絵が描けるので、社会部や政治部などいろいろなところからオーダーがきたんです。好き放題にやっていて、こんなに仕事が面白いのかと思って、2年間勤めてたんだけど、東京に出てきました。新聞記者をやったっていうことは、僕の人生経験で非常に大きなプラスになりました。

先生自身はもともと人見知りで、内向的だったそうです。ところが……。

藤子:新聞記者を2年間務めたところ、非常に図々しくなって、平気になっちゃって(笑)。新聞記者をやったおかげで、いろいろな作品を書くときに非常に参考になりました。


■インドで『忍者ハットリくん』が大ヒット

現在では、先生の作品は世界に広まってます。

藤子:僕の作品の『忍者ハットリくん』は、インドでアニメ化されて、5年前に放送したら、インドで放送されている日本の20本以上の作品の中で断トツで良かったんですよ。日本で作った作品がなくなっちゃって、向こうで(『忍者ハットリくん』を)新しく作ることになったんです。
サッシャ:そうなんですか!?
藤子:インドの家庭にハットリくんが来て、インドの少年と活躍する話かと思ったら、日本と全く同じコンセプトでやりたいらしくて、インドで制作してるの。いまだに、なぜインドでハットリくんがそこまで人気なのか、どう考えてもわからないんだけど(笑)、僕はすごく嬉しいです。いくら自分が面白いと思って描いても、読者の支持がなかったら何もないわけですよ。ファンができるっていうことは作家冥利につきて、非常に楽しいですよね。


■お互いに嫉妬をしなかった

「藤子不二雄Ⓐ展 -Ⓐの変コレクション-」の会場では、トキワ荘を再現しています。壊す時に壁に書いたサインも展示されています。そこで、トキワ荘の思い出の話になりました。

藤子:手塚治虫先生もトキワ荘にいらっしゃって、僕らは先生が昭和22年に描いた作品『新宝島』を読んで、大感激して漫画家を目指したの。先生がほかのところに移ることになって、「入るか?」って言われて入れていただいたんです。テーブルも先生が使っていたテーブルをそのまま残していったんで、僕と藤本氏(藤子・F・不二雄)と座ると手塚先生のオーラが乗り移るような気がして、いまだにとってあります。
サッシャ:トキワ荘はどんな雰囲気でしたか?
藤子:赤塚不二夫とか寺田ヒロオとか、みんな売れてないんです。暇だから、みんなで昼間から酒盛りをやってると楽しいんです(笑)。ラーメンが30円だった頃に、そのお金もあるかないかっていう情けない生活をしてたんだけど、毎日が面白くてたまらなかったですね。それはやっぱり一人ではなくて、まわりに夢を持っていた奴らが集まってたから、みんな暗くないんです。赤塚氏はコッペパンを買って、それを3つに切って「朝はこれ」「昼はこれ」「夜がこれ」って言って、コッペパン1つだけで1日を過ごしてたね(笑)。
サッシャ:へえぇ! トキワ荘がなかったら、今のようにはならなかったでしょうね。
藤子:それは分からないけど、地方から優秀な人が集まって。普通は嫉妬するもんだけど、誰かが売れると嬉しいというか、兄弟みたいな感覚で、嫉妬心とか一切なくて、50歳、60歳になろうがその関係が続いたのが嬉しかったですね。


■日本の漫画の進歩のすごさ

さらに、現在の漫画について思うことを語りました。

藤子:日本の漫画もどんどん進化して、僕らは今の若い人が描く漫画を見ると驚いて、「こんな漫画が描けるんだ」と。僕は完全に読者の一人になって見てるくらいで。日本の漫画はすごく進化してますから。特にフランスでは日本の漫画がナンバーワンで、漫画家になりたくて日本にくる外国人が多いのは、すごく嬉しいですよね。

最後に、展覧会を通じて伝えたいことを訊きました。

藤子:僕の漫画は、いろんなキャラクターがいて、作品のテーマもバラバラです。ひとりの人間がいくつもの作品を描いたということを見ていただけるとうれしいですね。
サッシャ:僕も『笑ゥせぇるすまん』の能見野新造みたいな部分があります。ああいった一面を誰しも持っている部分はありますよね。
藤子:人間はどこか弱い部分があるので、それを喪黒福造がそそのかして……。いかにも喪黒は悪そうだけど、実は救っているんですね。そういう要素もあるということを見ていただけるとうれしいです。

「藤子不二雄Ⓐ展 -Ⓐの変コレクション-」は2019年1月6日(日)まで、六本木ヒルズ展望台 東京シティビューで開催されています。ぜひ、足をお運びください。

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【番組情報】
番組名:『STEP ONE』
放送日時:月・火・水・木曜 9時-13時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/stepone/

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