J-WAVEで放送中の番組『GROWING REED』(ナビゲーター:岡田准一)。5月13日(日)のオンエアでは、甲冑師・加藤鞆美さんお迎えしお話を伺いました。
戦国時代の武士がまとった鎧を、五月人形や工芸品として再現する江戸甲冑の職人である加藤さん。甲冑作りの技法の伝承が絶えてしまった今、現存する甲冑から材料や当時の加工技術を研究し、名だたる武将の甲冑を再現しています。まずは江戸甲冑とはどのようなものなのか伺いました。
加藤:江戸甲冑と京甲冑というのがありまして、同じやり方ではやっていないんです。京甲冑というのは飾るだけで、江戸甲冑は「○○神社○○奉納の物」というのを目指してやっています。
岡田:実際に使えるということですか?
加藤:ミニチュアにしてお節句用に作っています。
岡田:工芸品として昔の物を再現する、と考えていいですか?
加藤:はい。中には5月の節句関係なしで、自分の好きな鎧をこしらえてほしいという方もいます。
現在、江戸甲冑の職人は10人ほど。加藤さんの兄も弟も同じ職業で、明治時代に祖父の代から代々甲冑職人をやっているそうです。苦労している点を訊くと……。
加藤:まず材料がなかなか手に入らない。
岡田:基本、何時代を作るんですか?
加藤:平安時代から鎌倉時代ですね。源平時代のものは飾ったときに一番飾り映えがします。
例えば菊の鋲を作るときも、室町時代のものは華美にできていますが、源平時代のものは質実剛健で、かなり粗いタッチでできていると説明しました。
父親が体が弱かったために11歳くらいの頃から手伝いをしていたという加藤さんは、84歳になる現在まで甲冑を追い続けています。時代によって大きく違う技法について解説して頂きました。
加藤:平安時代のものと、鎌倉時代から室町初期の南北朝時代は全然違うんですね。組み方も違いますし、素材の厚さも違いますし、小札(こざね)は一片のものですが、そこに13個の穴を開けて革で閉じながらつないでいくんです。紐でからげるんですけど、紐のからげ方も時代で違うんです。
岡田:それは戦い方とか武器が変わったからとか、歴史があるからですか?
加藤:そうですね。平安時代は弓矢の戦いですから、兜のしころが立っています。それが刀が出てくると肩も危ないから段々しころは傘みたいに広がっていくんです。槍が出てきて鉄砲が出てくるとまたがたんと変わります。
岡田:さらに大砲が出てくると甲冑を着なくなりますもんね。僕たち、時代劇で甲冑を着たりするんですけど、あれは見てどう思いますか?
加藤:大鎧、胴丸、腹巻、腹当、当世具足(とうせいぐそく)と5種類あるんですが、大鎧を着るとその下に直垂(ひたたれ)というのを着るんですけど、籠手(こて)をつけるときは左だけしかつけないです。
岡田:両方つけますね……。
加藤:つけるのは国宝が春日大社にあるんですけど、それひとつだけなんですよね。
岡田:加藤さんはどの甲冑がお好きですか? 甲冑をみて萌えるわけですよね、「これはすごいな」と。
加藤:南北朝ですね。青森八戸の南部藩の、後村上天皇から拝領した鎧がふたつあるんです。一つは赤い糸で、もう一つは白い糸で、褄取り(つまとり)という模様が入っています。
岡田:八戸のどこで見られますか?
加藤:櫛引八幡宮です。
岡田:普通の甲冑と何が違うのですか?
加藤:普通のと比べると金物が全部銀色です。その時代に銀でやったとしても、現代までくると真っ黒になっちゃう筈なんですけど、白いままで。しかも磨いてないんです。日本に二領だけあるんです。もうひとつは厳島神社にありますけどね。
岡田:鉄は酸化するし湿度によっては1年もたたずに錆びてきたり、すぐ変わっちゃいますよね。
加藤:金物が白いというのはどうしてなのか未だにわかっていないんです。
岡田:加藤さんが調べに行ったりはしないんですか?
加藤:相手は国宝ですから、削ったりはできませんから。
岡田:それはすごい技術なんですか?
加藤:すごい技術だと思います。そういう地金を見つけたのもすごい努力があったと思いますしね。あとわからないのは紐の組み方がわからない。いっぺん少しほどいたことがあるんですよ、職人を連れていって。そして「そんなのできるよ」と言ってできたものが全く違うものでした。
岡田:同じようにやっても同じようにならない……。
加藤:そういうのが4種類くらいありますね。
長年甲冑づくりに携わってきた加藤さんが大事にしていることは「続けること」だと言います。「続けても続けてもわからなくなっているものがありますから」と語るとおり、何十年追い続けても今でもわからなかい紐の結び方があったり、800年前の紐の色が変わっていないことなど、技法の謎は未だに解明しきれていません。
加藤:江戸甲冑は世界遺産にしてもいいくらい綺麗です。防具兵器で美しい形ですから、お節句用にしてもその時代のにおいは残していきたいと思っています。
加藤さんの甲冑への飽くなき探求心は84歳の現在も続いています。
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【番組情報】
番組名:『GROWING REED』
放送日時:日曜 24時-25時
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/growingreed/
戦国時代の武士がまとった鎧を、五月人形や工芸品として再現する江戸甲冑の職人である加藤さん。甲冑作りの技法の伝承が絶えてしまった今、現存する甲冑から材料や当時の加工技術を研究し、名だたる武将の甲冑を再現しています。まずは江戸甲冑とはどのようなものなのか伺いました。
加藤:江戸甲冑と京甲冑というのがありまして、同じやり方ではやっていないんです。京甲冑というのは飾るだけで、江戸甲冑は「○○神社○○奉納の物」というのを目指してやっています。
岡田:実際に使えるということですか?
加藤:ミニチュアにしてお節句用に作っています。
岡田:工芸品として昔の物を再現する、と考えていいですか?
加藤:はい。中には5月の節句関係なしで、自分の好きな鎧をこしらえてほしいという方もいます。
現在、江戸甲冑の職人は10人ほど。加藤さんの兄も弟も同じ職業で、明治時代に祖父の代から代々甲冑職人をやっているそうです。苦労している点を訊くと……。
加藤:まず材料がなかなか手に入らない。
岡田:基本、何時代を作るんですか?
加藤:平安時代から鎌倉時代ですね。源平時代のものは飾ったときに一番飾り映えがします。
例えば菊の鋲を作るときも、室町時代のものは華美にできていますが、源平時代のものは質実剛健で、かなり粗いタッチでできていると説明しました。
父親が体が弱かったために11歳くらいの頃から手伝いをしていたという加藤さんは、84歳になる現在まで甲冑を追い続けています。時代によって大きく違う技法について解説して頂きました。
加藤:平安時代のものと、鎌倉時代から室町初期の南北朝時代は全然違うんですね。組み方も違いますし、素材の厚さも違いますし、小札(こざね)は一片のものですが、そこに13個の穴を開けて革で閉じながらつないでいくんです。紐でからげるんですけど、紐のからげ方も時代で違うんです。
岡田:それは戦い方とか武器が変わったからとか、歴史があるからですか?
加藤:そうですね。平安時代は弓矢の戦いですから、兜のしころが立っています。それが刀が出てくると肩も危ないから段々しころは傘みたいに広がっていくんです。槍が出てきて鉄砲が出てくるとまたがたんと変わります。
岡田:さらに大砲が出てくると甲冑を着なくなりますもんね。僕たち、時代劇で甲冑を着たりするんですけど、あれは見てどう思いますか?
加藤:大鎧、胴丸、腹巻、腹当、当世具足(とうせいぐそく)と5種類あるんですが、大鎧を着るとその下に直垂(ひたたれ)というのを着るんですけど、籠手(こて)をつけるときは左だけしかつけないです。
岡田:両方つけますね……。
加藤:つけるのは国宝が春日大社にあるんですけど、それひとつだけなんですよね。
岡田:加藤さんはどの甲冑がお好きですか? 甲冑をみて萌えるわけですよね、「これはすごいな」と。
加藤:南北朝ですね。青森八戸の南部藩の、後村上天皇から拝領した鎧がふたつあるんです。一つは赤い糸で、もう一つは白い糸で、褄取り(つまとり)という模様が入っています。
岡田:八戸のどこで見られますか?
加藤:櫛引八幡宮です。
岡田:普通の甲冑と何が違うのですか?
加藤:普通のと比べると金物が全部銀色です。その時代に銀でやったとしても、現代までくると真っ黒になっちゃう筈なんですけど、白いままで。しかも磨いてないんです。日本に二領だけあるんです。もうひとつは厳島神社にありますけどね。
岡田:鉄は酸化するし湿度によっては1年もたたずに錆びてきたり、すぐ変わっちゃいますよね。
加藤:金物が白いというのはどうしてなのか未だにわかっていないんです。
岡田:加藤さんが調べに行ったりはしないんですか?
加藤:相手は国宝ですから、削ったりはできませんから。
岡田:それはすごい技術なんですか?
加藤:すごい技術だと思います。そういう地金を見つけたのもすごい努力があったと思いますしね。あとわからないのは紐の組み方がわからない。いっぺん少しほどいたことがあるんですよ、職人を連れていって。そして「そんなのできるよ」と言ってできたものが全く違うものでした。
岡田:同じようにやっても同じようにならない……。
加藤:そういうのが4種類くらいありますね。
長年甲冑づくりに携わってきた加藤さんが大事にしていることは「続けること」だと言います。「続けても続けてもわからなくなっているものがありますから」と語るとおり、何十年追い続けても今でもわからなかい紐の結び方があったり、800年前の紐の色が変わっていないことなど、技法の謎は未だに解明しきれていません。
加藤:江戸甲冑は世界遺産にしてもいいくらい綺麗です。防具兵器で美しい形ですから、お節句用にしてもその時代のにおいは残していきたいと思っています。
加藤さんの甲冑への飽くなき探求心は84歳の現在も続いています。
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番組名:『GROWING REED』
放送日時:日曜 24時-25時
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/growingreed/
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