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写真家・川内倫子、娘の成長で直面した悩み「最近あんまり撮らせてくれない」

写真家・川内倫子、娘の成長で直面した悩み「最近あんまり撮らせてくれない」

写真家の川内倫子が、モデルの森 星とJ-WAVEで対談。シャッターを切りたくなる瞬間や家族の姿を写真に残すこと、活動の転機となった写真集の出版、原点に立ち返る1曲について語った。

川内が登場したのは、10月11日(日)放送のJ-WAVE『TOPPAN INNOVATION WORLD ERA』(ナビゲーター:森 星)の「FROM THE NEXT ERA」。さまざまなジャンルのイノベーターを迎え、トークセッションを繰り広げるコーナーだ。

番組は、Spotifyなどのポッドキャストでも聴くことができる。

・ポッドキャストページ

撮影ってちょっとスポーツに似ている

川内倫子は、2001年に刊行した写真集『うたたね』で注目を集め、国内外で高い評価を受けてきた写真家。光や水、小さな命の気配を写し取る作風で知られ、国内外で数多くの個展やグループ展に参加している。

森:私は10年くらいモデルとして歩んできたんですけど、あらためて「撮られる」とか「見られる」っていう意識が仕事柄強くなってきて。ちょっとそこから離れたときに、どんなものを自分が見ているのかっていうところにすごく興味が出てきて、それで写真を撮ることを3月ぐらいから始めたんです。

川内:始めてみて、どうですか?

森:実は、3日坊主なんですけど(笑)、なんだか心地がいいですね。ひとりの時間が好きになりました。

川内:なるほど。なんかこう、カメラを持つとカメラモードになりません?

森:はい。カメラモードになるので、カメラを首からいつもぶら下げて、どれだけモードじゃなくできるのかなって実験中なんですけど、川内さんはいかがですか? いまだにカメラモードになりますか?

川内:そうですね。もう写真を始めてから長いので、自分の中ではどっちのモードもわりと自由に行き来している感じですね。でもやっぱりカメラを持っていないと、見過ごしてしまうこともあったりとかして。カメラをぶら下げながら歩いていると、もうちょっと敏感になるというか、センサーみたいなのが反応しやすいというか、そういうのはありますよね。いったん撮り出すと、今まで見えていなかった景色が迫ってくるようになってくるとか、そういうモードに入ると、どんどん見えてくるというか。

川内は、若いころは毎日写真を撮っていたものの、最近はあまり撮らなくなったという。

森:だいぶストイックなほうだと思いますか? その瞬間、瞬間を押さえるってなると、自分が向かっていくのか、待つのか、そこまでも考えずに委ねるのか、全部あるのか。そのマインドセットというか、向き合い方が気になります。

川内:若いときはわりとストイックにやっていたかもしれないですね。撮影ってちょっとスポーツっぽいところがないですか? 全身、体を使って向かうものというか。なので、心身のコンディションがよくないと、ちょっとうまくいかないというか。何でもそうですけど、特に写真を撮るっていう行為は、どこかに行って撮ったり、身近なものを撮るにしても、身体を動かして機材を通して撮るっていう行為があるので。そういうことを繰り返していくと、アスリートの方でいう“ゾーンに入る”じゃないですけど、ああいった感じになるときはありますね。普段、見過ごしているものがだんだん見えてくる感覚というか。そういったものが撮影の面白さというか。でも撮られる側でもありますよね、きっと。

森:そうですね。

川内:お互いに撮っている人の感じ、バイブスみたいなのが伝わってきて、その場の空気が変わっていったりするじゃないですか。そういったものが、人が人を撮るときじゃなくても、自分と風景とのあいだで、エネルギーの交換じゃないけど、そういったものを感じたりしだすと、だんだん撮影が面白くなっていくっていうか。そういう感覚はありますよね。

娘が成長していく過程は追いかけたい

森は、川内がシャッターを切りたくなる瞬間に、何か規則性があるのか尋ねた。

川内:人を撮影する場合は、その人の“見られてる”っていうよろいみたいなのがふっと抜けたときとか、何でもないときとかですかね。緊張感のある写真を撮るときはいいんですけど、自分の好みで言うと、その人の自然な姿というか、ふとそういう面が見えたりすると。

森:風景ですといかがですか?

川内:風景だと、やっぱり光が大きいですかね。そのときの射している光の具合とか。光に反応して撮ることが多いですね。

森:光も本当にいろんな光があるじゃないですか。

川内:動いているものとかに、けっこう反応しやすいというか。動物とか小さい生き物とか子どもとか、じっとしていないものを追いかけたくなってしまうところがあって。なので、光も夜明けだったり夕焼けだったり「もう消えちゃう」とか「もうなくなっちゃう、この光が」みたいなときの、そういう瞬間がやっぱりきれいだなって思うので、「もうちょっと、もうちょっと」と思いながら撮ることが多いですかね。

続いて森は、川内が今後、収めていきたいものや残していきたい写真について問いかけた。

川内:やっぱり娘が成長していく過程は追いかけたいんですけど、最近あんまり撮らせてくれなくて(笑)。

森:そうなんですね(笑)。

川内:写真集を1冊出したんですけど、そのあとはもう激減していて。もうちょっと撮りたいなとは思っているんですけど。

森:そのエピソードを聞いてあらためて『as it is』を見たら、私も親目線で見ちゃいそう。

『as it is』は、川内が出産後の約3年間に、子育てを通して目にしたわが子の姿や身近な風景を撮りため、2020年に刊行した写真集だ。

川内:3歳ぐらいまでは撮られてるって気づいていないから、いくらでも撮れるんですけど、4、5歳、6歳ぐらいかな? だんだん「撮らないで」って言われたりとか。あと、撮ってもピースされたりとかすると、それはそれでいいんですけど、撮られてるっていう自我が芽生えてくると、また違ってきますね。

森:なるほど。

川内:両親ももうけっこうな年なので、もうちょっと撮っておこうかなと思うんですけど、だんだん年齢を経て、撮りながらちょっと寂しいなっていう気持ちもあったりして。でも、昔『Cui Cui』という家族の写真集を出したことがあるんですけど、そのときは祖父母を中心に撮っていて、けっこういっぱい撮ったんですよ。自分がまだ若くて、写真を始めたばっかりだった時期というのもあって、今振り返ると撮っといてよかったなと思って。ありし日の記録として、もう亡くなってしまったんですけど、ふたりの姿をたくさん撮っておいてよかったなと。

2001年の写真集がターニングポイント

最後に、川内が今、活躍しているステージの扉を開いた「突破ストーリー」を尋ねた。

川内:2001年に写真集を出版したんですけど、写真集って海外に行きやすいんですよね。展覧会だと大変なんですけど、写真集は1冊だけカバンに入れて持ち運びができるので。写真集を出版したことで、多くの方に私の写真を見てもらう機会が増えて、それでいろいろなところで展示ができる機会が増えたんです。それが2001年ぐらいだったんですけど、やっぱりそのときがターニングポイントかなと思います。

森:スーツケースに作品集を入れて持ち運べるからこそ、いろんな人に自分の見ている景色をシェアできるということですね。

川内:物理的な意味で自分が持ち運べたという点もありますし、勝手に買って持って行ってくれるとか、誰かが海外の本屋さんに置いてくれたとか、そういうことが増えていったのがすごく大きかったですね。ひとりで配るのではなく、いろんな人が広めてくれたというか。

森:世界でより多くの人が見てくれるっていうふうに、気持ち的には確信していましたか? それとも、多くの人が触れる機会があったことに対して、「あ、びっくりした」とかなのか。

川内:驚きもあるし、納得するところもあるし。ただ、「自分の本を買ってくれるんだ」っていうことに対して、単純に「おおー」っていうふうに思ったところもあります。

森:特に、海を越えた先の文化圏の方たちにも届いていったわけですよね。

川内:海外の方にそんなに受け入れられると思ってなかったところはあったかもしれないですけど、結果的にいろんな国で展示ができるようになったのは、ありがたいなと。

川内はそのころの自身を支えた1曲として、初恋の嵐の『真夏の夜の事』を紹介した。

Manatsuno Yoruno Koto

川内:初恋の嵐さんのジャケットを担当させていただいたんです。それがちょうど自分が写真集を出版したあたりの時期だったんですけど、その制作途中にボーカルの西山達郎さんが急逝されてしまって。まだすごくお若かったので、みんなびっくりして、「どうしよう」ってなったんです。後日、残りのメンバーのおふたりが、途中まで作っていたジャケットのセレクションをもう1回考え直したいということで、私の事務所にいらしてくださったんです。そこでみんなで「この写真がいいかな」って、プリントをいろいろ見ながら選んでくれて。輪になってみんなで選んでいるときに、それが追悼の作業というか。結果的に、できあがったアルバムも素晴らしくて、単純に自分が参加させていただいたからっていうだけじゃなくて、楽曲が本当に素晴らしくて、よく聴いてたんですね、そのとき。

「折に触れ、聴くたびにそのときのことをすごく思い出す」と川内は続ける。

川内:自分がまだ若くて、ちょうど写真集も出せて、これからっていうときだったし、西山さんもきっとそういう時期だったんですね。同じタイミングで作ろうってなっていたんですけど、彼はもういなくなってしまって。でも残された自分は、もっと作っていかなきゃいけないなっていうふうに思ったり、きっと彼が生きていたらもっと素晴らしい歌が生まれていたんだろうなと思ったりすると、勇気づけられるわけじゃなくて、残された自分は何ができるんだろう、みたいに、折々に考えることはけっこうあって。今でもときどき聴くと、原点というか、初心に帰れる歌ですね。

川内倫子の最新情報は公式サイトまで。

『TOPPAN INNOVATION WORLD ERA』は、「新しい時代」を築く“イノベーションの種”を探求するプログラム。ナビゲーターは、第1週・真鍋大度、第2週・森 星、第3週 のん、第4週 小橋賢児が週替わりで担当している。放送は毎週日曜23時から。

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番組情報
TOPPAN INNOVATION WORLD ERA
毎週日曜
23:00-23:54