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文芸評論家・三宅香帆が考える「推し」「夫婦」とは… 新刊2冊に込めた想いを語る

文芸評論家・三宅香帆が考える「推し」「夫婦」とは… 新刊2冊に込めた想いを語る

文芸評論家の三宅香帆が、自身の仕事の役割やデビューのきっかけ、7月に同時発売した新刊『推したちとどう生きるか』『「夫婦」不在社会』に込めた想いなどについて語った。

三宅が登場したのは、2026年7月25日(土)放送のJ-WAVE『KDDI LINKSCAPE』(ナビゲーター:TENDRE、田中シェン)の「CONNECTORS AVENUE」。エンターテイメントシーンなどで活躍するゲストを迎え、つながることで生まれる可能性やヒントを探っていくコーナーだ。

番組は、Spotifyなどのポッドキャストでも聴くことができる。

・ポッドキャストページ

三宅香帆が1位に挙げる小説とは?

三宅は京都大学大学院を卒業後、文芸評論家として活動をスタート。2024年に発表された『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社)が30万部を超えるベストセラーとなり、読書や言葉をテーマにした発信でも多くの支持を集めている。7月には『推したちとどう生きるか』(新潮社)、『「夫婦」不在社会』(講談社)の2冊の新刊を同時に出版した。

TENDRE:そもそもですが、文芸評論家というのはどういったお仕事になるのでしょうか?

三宅:私の場合は、書評や評論みたいなジャンルを書くことが多くて。たとえば、小説が出版されたら、その小説がなぜみんなに受け入れられているのか、なにが新しいのかって解説する人がいないとわからなかったりするので、そういうことを解説します。「こういう小説が面白いですよ」というのを紹介したりするのを仕事にしています。

田中:本屋さんにあるPOPみたいな役割と考えてもいいのでしょうか?

三宅:本当にそのとおりです。POPを読んで「そんな本なんだ、読んでみようかな」と表紙以上に思ったりしてもらえたらいいなと思って。POPを書くみたいな感じで書評を書いたりしています。

田中:そんな三宅さんの、これまでの活動のなかでの印象的な出会いをお伺いしたいのですが、事前のアンケートでデビュー作を出版されたライツ社との出会いを挙げていただきました。

三宅:2017年に『人生を狂わす名著50』(ライツ社)というデビュー作を出したのですが、それが自分が文芸評論家をやることになったきっかけで。そのきっかけを作ってくださったのが出版社のライツ社というところです。

TENDRE:(タイトルの)切り口がいいですよね。「どんな本なんだろう?」と気になっちゃいますね。

三宅:本というのは人生を豊かにするとか、ちょっと人格を向上するみたいな、いいほうに向かうようなイメージがすごくあるなと思っていたんです。でも、私が自分で読んで本当に面白いと思った本というのは、価値観がひっくり返されちゃったりとか、ちょっと悪いことを言っていたりとか。刺激のある本のほうが好きだと思っていたので、そういう本を紹介したいと思って50冊を選びました。

TENDRE:ちなみに、今まで読んだ本の数とか覚えてます?

三宅:はっ! 覚えてないです(笑)。

TENDRE:そうですよね(笑)。たくさん読まれているなかでの50冊ですもんね。

三宅:選りすぐりの50冊です。

田中:1位はなんですか?

三宅:この本のラストにある『わたしを離さないで』(早川書房)という小説です。カズオ・イシグロという人が書いているんですが、ノーベル文学賞を受賞したイギリスの作家です。その人が書いた小説は何回読んでもすごく新しい発見があって「なんで?」と思っています。

TENDRE:その作品は、三宅さんの人生をどのように変えたのでしょうか?

三宅:その小説が好きすぎて、大学生のときに読んで「もうちょっと文学を勉強したいな」「大学院に行きたいな」みたいな気持ちになりました。当時は、就職か大学院か迷っていたんですが、「もうちょっと勉強したい」みたいな気持ちになりました。

独自の視点で書かれた2冊の新著

続いて、三宅が2冊同時に出版した新著に関する話題に。まずは『推したちとどう生きるか』について話を訊いた。

TENDRE:現代ならではのタイトルですが、推しを社会や歴史から読み解いていく1冊になるのでしょうか。

三宅:推しというと、どこか一時的な熱狂だと思われやすいというか。すごくのめり込むものとして推し活があると思います。でも、私の周りで推し活をしている子を見ると、ちょっと日常になってきたというか。「推しが結婚して離婚した」みたいな話を聞いたりとか、そのなかでどうやって推しといい距離感をとっていけばいいのかとか。推している側も推されている側もハッピーになるために、なにが必要なのかということを歴史的に読み解きながら、考えていけたらいいなという本です。

TENDRE:最初だけ読ませてもらいましたが、同じように自分たちも生きているからライフステージも変わるし、たしかにそうだよなと。身近に考えていたことを言語化してくれるのが、すごく面白いなと思いました。

田中:“推し”というネーミング自体も、いつから始まったのかなと。それまではモーニング娘。さんとかは“ファン”だったなと。でも、AKBさんになるともう“推し”になって。あの言葉はどこから生まれたんですかね。

三宅:よく言われるのが、AKB48さんが総選挙というのをやって、投票という行動を生んだと。私は“ただの好き”と“推し”のいちばんの違いは「応援する行動をとっているかどうか」なのではないかと思っていて。ただ“萌え”とか“好き”だけではなくて、そこから行動を取ると“推し”になる。それは“投票する”という行動が生まれてからの言葉だなと思います。

田中:なるほど。

TENDRE:たしかに、CDを買うとかもそういうことですもんね。

さらに、三宅はもう1冊の新著『「夫婦」不在社会』について語った。

TENDRE:これもタイトルだけでも考えさせられるものがあります。この本では「親子の物語は多いのに、夫婦やパートナーシップを描く物語は少なくなっているのではないか」という視点から書かれているということなんですよね。

三宅:私が好きな漫画やアニメ、映画にしても、なんとなくシングルマザーの話が多いなと思っちゃう瞬間があって。

TENDRE:そうですよね。最近は特に。

三宅:それって、あんまり自分のなかで違和感なく観られちゃうみたいな。それが悪いとかではなくて、逆に「それに違和感がないってどういうことなんだろう?」というのをすごく考えて。どちらかというと、「パートナーシップとか夫婦とか、そういう話題というのは今、もしかして話されづらくなっているのでは?」ということが最初に考えるきっかけでした。

田中:いろいろなかたちの選択肢が増えましたよね。

TENDRE:前書きにも書かれていましたが、海外の作品を観ていると、当然のように家族のいろいろなかたちの描写が描かれているものも、自分が観ていても多いなと思います。日本の場合は、そこは発展途上なのか? とか、ちょっと考えるところも多かったので。これからどうなっていくんだ、という考察も含めて大事なテーマだと思います。

三宅:洋画だと、夫婦の「そんな突っ込んだところまで描くんだ」と、自分は観ていて思うときがあって。でも、そう思うこと自体が文化の反映というか、自分のなかで気になるテーマだったんです。

書店は意外と地域ごとに特色がある

三宅はYouTubeで実施している企画や、おすすめの書店について語った。

田中:三宅さんが今、夢中になっていることはなんでしょうか?

三宅:YouTubeチャンネル『三宅書店【本を読むモチベを上げるチャンネル】三宅香帆 Kaho Miyake』をやっているんですが、全国の書店をまわるという企画をやっていて。

【書店爆買い】100万冊のなかから本を選んだら幸せすぎた【コーチャンフォー】

三宅:書店に置いてある本は全国変わらないかと思いきや、意外と地域ごとに特色があったりして、すごく面白いんですよ。たとえば名古屋に行ったとき、すごく理系の本が目立つ位置にいっぱいあったんです。チェーン店自体はどこの地方にもありますけど、名古屋はトヨタが強かったり、名古屋大学が近くにあったりするから理系の学生さんや、理系の仕事をなさっている方が多いのかなとか、専門書とかをしっかり読むのかなとか、勝手に妄想したりして。それを書店員さんに訊いたら「やっぱり売れますね、この地域ではね」と言っていて。

TENDRE:たしかに、いちばんわかりやすく地域性が見える場所なのかもしれないですね。

三宅:みんなが知りたいことが棚に反映されるので、そうなんです。

TENDRE:その地域の脳みそを見ているみたいな。

三宅:同じ本が置いてあるのかと思いきや、どの辺に置いてあるかで(地域性がわかる)。「お母さんとお子さんで一緒に来られる方が多いのかな」という地域だと、レシピ本と児童書がすごく近くに並んでいたりとか。

田中:売れ筋がいちばん前に来るわけですよね。

TENDRE:最近、面白かった本屋さんはありますか?

三宅:私がお気に入りの書店が愛媛にあるんです。松山に行った際にはぜひ行ってほしい「本の轍」さんという独立系の書店で。それこそ、以前は他のところでやっていた方が愛媛で独立されて、超オシャレなんです。本当に置いてあるラインナップも私の好みすぎて。自分の本棚にある本と、本棚にある本のあいだに知らない本が挟んであると絶対に買っちゃうみたいな(笑)。

TENDRE:信頼が生まれていますね。

いろいろな人が一緒に本を読む場所を作りたい

三宅に今後やってみたいことを尋ねると「ブッククラブ」だと答え、その理由を語った。

三宅:日本でブッククラブ文化がもっと広まったらいいなと思っていて。自分でもやろうとしているんですが、いろいろな人が一緒に本を読む場というのを作れたらなと思っています。「読書会」といわれているものだと、けっこう同じ本を読んできて感想を言い合うとか、感想をシェアする場という印象が大きいんですけど。私が作りたいのは、同じ本をその場で読んでいる空間というか。一緒に来て読むだけみたいな。そこで音楽がかかっていたりとか、たとえばお子さんがいる方はどこかで預かってもらっていたりとか。読む場所みたいなものがもっとあってもいいなと思っています。

TENDRE:みんな、時間の隙間を見つけてというのが多いですもんね。

三宅:「本を読むイベント」みたいに、イベントとしてできたらいいなと思います。

TENDRE:たしかに、ブッククラブってなかなか自分たちには馴染みがなかったです。ずっと読みたいなと思って溜まるものって、きっとみなさんありますよね。自分もそうだなと思って。ひとりだと集中する時間といえど、周りが気になってしまうことがありますが、みんなで一緒に時間を作るとみんなで集中できるというのが大きいですよね。

三宅:「日曜朝、ここに集まってみんなで本を読む」みたいな感じにできたら、すごく素敵なんじゃないかなと思ったりします。

田中:ただただ本を読むんですよね。

三宅:音楽が流れていたり、寝てもいいみたいな感じの空間だと素敵だと思います。

TENDRE:どのあたりに作りましょうか?

三宅:公園とかでもやりたいですね。

田中:朝のラジオ体操みたいに好き好きに来るみたいな。

三宅:たしかに。ラジオ体操、いいな。

TENDRE:自然を感じられるとかもいいですよね。森のなかではないですけど。

三宅:キャンプ的な。

田中:街のなかにあるのもいいですね。「ここ?」みたいな、六本木の地下とか。

三宅:たぶん、なにもイベントがない日のホールとか、いけると思うんですよね。

TENDRE:それこそ、京都にもいい場所がたくさんありそうです。

三宅:京都は鴨川でみんな思い思いに本を読んでいたりするので、それをやってもたしかに楽しそうです。

TENDRE:お寺とか。

三宅:お寺、いいですね! すごいマインドフルネスな気持ちになっていきそう。

TENDRE:いつか、ぜひ叶えてください。

三宅香帆の最新情報はX公式アカウント(@m3_myk)まで。

人、街、そして、音楽やカルチャーでつながる「ワクワクする未来」を描くプログラム『KDDI LINKSCAPE』の放送は毎週土曜日の16時から。

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