音楽、映画、エンタメ「ここだけの話」
村上春樹にも影響!? ザ・ビートルズ『ノルウェーの森』の名付け親が語る“邦題の舞台裏”

村上春樹にも影響!? ザ・ビートルズ『ノルウェーの森』の名付け親が語る“邦題の舞台裏”

音楽ディレクター/プロデューサーの髙嶋弘之が、ザ・ビートルズ楽曲の邦題にまつわる秘話や、92歳でリリースしたデビューシングル『君のいない朝がくる』の制作エピソード、今後の音楽業界への期待について語った。

この日の放送は7月18日(土)29時ごろまで、radikoのタイムフリー機能で楽しめる。

髙嶋が登場したのは、7月11日(土)放送のJ-WAVE『SAPPORO BEER OTOAJITO』(ナビゲーター:クリス・ペプラー)。ビールを飲みながら、クリスとゲストが音楽談義を繰り広げる番組だ。

この番組では、ゲストがビールに合う“おみや”を紹介する。髙嶋はチーズと、東京・代官山にある「HyLife Pork TABLE」のスペアリブを持参し、ビールとともに楽しんだ。

ザ・ビートルズの邦題を手がけた舞台裏

髙嶋弘之は1934年生まれ、兵庫県神戸市出身。1959年に東京芝浦電気レコード事業部(のちのEMIミュージック・ジャパン)に入社。1960年代には、日本でビートルズの初代担当ディレクターとして日本市場での仕掛け人となり、初期の代表曲の日本語タイトルを命名した。その後、ザ・フォーク・クルセダーズや黛 ジュン、由紀さおりなどのヒット曲を手がけてきた。現在は髙嶋音楽事務所の代表として、Jクラシックアーティストの活動をサポートしている。

【関連記事】ビートルズ来日60周年!『こいつ』『涙の乗車券』『みんないい娘』に宿る“邦題文化”の奥深さを紐解く
【関連記事】ビートルズ初来日に密着した写真家が初めて語る、ポールの気遣いを感じさせる“タバコ”のエピソード

クリス:僕、今68歳なんですけれども、70年代にすごくロックを聴いてきて、そのときの洋楽の邦題は面白いのがいっぱいあったじゃないですか。その“走り”っていうのが髙嶋さんなんですよね?

髙嶋:走りというか、外国曲は基本的に邦題を付けてましたね。もともと原題どおり、カタカナ英語で『ラッキー・リップス』とか『サマー・ホリデイ』とか、そういうのもありますけども、基本的に日本語のタイトルに(変えられている)。映画もそうですよね。

クリス:洋楽の英語のタイトルそのままってのは少ないですよね。『風と共に去りぬ』(原題:Gone with the Wind)とか。

髙嶋:そうそう。ただ、最近の担当者が気の毒だなと思うのは、僕がビートルズをやっているとき、アメリカやヨーロッパからの情報が届くのは2カ月くらいかかりましたから。でも今は、たとえばアメリカで映画が作られるって発表されたら瞬時に日本に伝わって、そのときに原題がもう出ちゃうじゃないですか。原題はひとり歩きするから、日本語タイトルを付けづらいだろうと思うんです。だけども僕は、日本人にはやっぱり日本語タイトルを付けたほうが(いいと思うんです)。

クリス:浸透しますよね。

髙嶋:魅力あるタイトルを付けたほうがね。やっぱり『風と共に去りぬ』なんかは、英語のタイトルよりも一般人にはわかりやすいですよね。

『ノルウェーの森』は誤訳ではない?

髙嶋が命名した代表曲に、ザ・ビートルズの『抱きしめたい』(原題:I Want To Hold Your Hand)がある。

I Want To Hold Your Hand (Remastered 2015)

クリス:「私は君の手を握りたい」を『抱きしめたい』にした。これはなぜですか?

髙嶋:「手を握りたい」じゃ迫力がないですよね。今では、電車の中で抱き合ってる若いふたりもいますよ。だけど、僕がそのタイトルを付けたころは、並んで席に座るのもちょっと恥ずかしかった時代があったわけです。その時代に『抱きしめたい』というタイトルにしたんです。

クリス:そこまで情熱的に行っちゃうぞと。

髙嶋:そう、ポーンと。

クリス:でも、すごく直訳みたいな邦題もありますよね。『Norwegian Wood (This Bird Has Flown)』を『ノルウェーの森』にしたって、これはもう直訳ですよね。

髙嶋:これはジョン・レノンの「Knowing she would」って下品な言葉がもとなんです。それで、ビートルズの他の連中から袋叩きにあったわけです。「Knowing she would」をジョン・レノンが 『Norwegian Wood』に変えたという説と、プロデューサーのジョージ・マーティンが変えたっていう説とふたつあるんです。村上春樹さんがエッセイにお書きになってるけど、彼はジョージ・ハリスンの女性マネージャーからこの話を聞いたと。世間的には髙嶋の英語能力がないので「ノルウェー製家具」もしくは「ノルウェー製材木」というのを「ノルウェーの森」にしたと。

クリス:なるほど。「Wood」じゃなくて、「Woods」森にしたということですね。

髙嶋:そういうふうに伝わったんですけど、何年か前にアメリカから来たクラシックのアーティストに訊いたんです。僕は『Norwegian Wood』を『ノルウェーの森』にして間違えたことになってるんだって言ったら、「あなたは間違えてない」って。タイトルに使うとき、『Norwegian Wood』で「森」と訳して大丈夫ですって言われたんです。たとえば、僕が「ノルウェー製家具」とか「ノルウェー製材木」って言ったらね、村上春樹さんの小説『ノルウェイの森』は生まれてませんからね。

Norwegian Wood (This Bird Has Flown) (Remastered 2009)

当時はレコードを大事に扱い、大事に聴いていた

続いて「最初に買ったレコードは?」と尋ねると、髙嶋は『白鳥の湖』と答えた。

髙嶋:中学か高校に行ってたころかなぁ。仲よくしてたお嬢ちゃんがバレエを習ってたんです。やっぱりバレエっていったら『白鳥の湖』だから、ちょっと近づくために「俺、『白鳥の湖』聴いてるよ」とかっこつけるために買ったんじゃないかと。動機がせこいんですね(笑)。



クリス:やっぱりクラシックとか好きになられたんですか?

髙嶋:いや、僕はナポリ民謡が好きだったんです。忘れもしない、地元・神戸の三宮駅前にそごう(現在の阪急百貨店)ってデパートがありまして。そこのレコード売り場のおばちゃんが「あなた、ナポリ民謡好きってことはテノールが好きだと思うからオペラを聴きなさい」って言ったんです。当時、オペラっていったら「勘弁してくださいよ」って感じなんです。だけど、彼女があんまりうるさく言うもんですから「じゃあ、聴いてやろうか」と。それで買ったのがマリオ・デル・モナコの『アリア』でした。



髙嶋:だから初めては、レコード店のおばちゃんに勧められて買ったんです。

クリス:1959年代のレコードですね。2,300円。

髙嶋:僕の最初の東芝の給料が1万2,000円ですよ。だから、当時は大事に扱ってましたし、大事に聴いてましたね。

妻への思いを歌ったデビュー曲

髙嶋は、シンガーとしてデビューシングル『君のいない朝がくる』を6月10日にリリース。作詞をきたやまおさむ、作曲を都倉俊一という、数々の名曲を生み出してきたヒットメーカーが手がけた。



クリス:これは、どういう歌なんでしょうか。

髙嶋:今から9年ぐらい前に家内を亡くしましてね。家内とは、外でもよくしゃべりますし、家に帰ってもよくしゃべるんです。ふたりとも人の悪口言うのが大好きでね、ユーモアも交えながら笑いながらね。その相手がいなくなったんで、亡くなってからふっと思うのは「そうか、もう君はいないんだ」と。

クリス:目覚めて、それを感じるんですね。

髙嶋:それで、この歌の話があったときに、普通はきたやまさんにタイトルも考えてもらうんですけど、このタイトルは私が考えたんです。

クリス:92歳の初々しいデビューですよね。昔から、いつかはデビューしてやろうっていう思いはあったんですか。

髙嶋:いや、全然。僕はディレクターをやっているとき、歌はもちろん好きで、ワンフレーズは非常に上手いんで、歌手の人に「ここは、このように歌ったら」って自ら歌ってたんです。でも、音程が悪いなと思ってたんですよ。ところが92歳になりますと、音程がよくなっちゃったんですよ。

クリス:それはどうしてなんでしょう?

髙嶋:豹変したんでしょう(笑)。チューニングがしっかりして。それで、ときどき事務所で歌っていたら事務所のスタッフが「コンサートやったらどうですか?」って言うんで、「やろうか」ってなったのが、2025年の10月。調子に乗ってね、自分がプロデュースしたコンサート「髙嶋弘之 私の好きな昭和歌謡 in 銀座」をやったら、3日で売り切れたんです。

クリス:3日で! すごいじゃないですか。

髙嶋:それで「CDでも出してみるか」みたいな。幸い、キングレコードのスタッフが乗ってくださいました。

最後に、今後の日本の音楽業界に期待することを問われた髙嶋は、「どんどんこの調子で頑張れ」とエールを送りつつ、「後世に残るような曲を発表してほしい」と語った。

髙嶋:今聴いてて「後世に残る曲あるのかな?」と、偉そうに思ってますけどね。

クリス:世界の人々が聴けて、愛せるような曲ということですよね。

髙嶋:そうです。詞の世界も今はだいぶ違いますけど、やっぱり詞というのは僕は大事だと思うんですよね。万人に通じる詞でなくてもいいし、若い人だけに通じる詞でもいい。ただやっぱり、何年か経ったときに「残ってる、この歌?」というのは期待したいですね。

髙嶋弘之の最新情報は髙嶋音楽事務所の公式サイトまで。

番組の公式サイトには、過去ゲストのトーク内容をアーカイブ。オンエアで扱った音楽の情報も掲載している。

・過去ゲストのアーカイブページ
https://www.j-wave.co.jp/original/otoajito/archives.html

『SAPPORO BEER OTOAJITO』では、毎週さまざまなゲストを迎えてお酒を飲みながら音楽トークを繰り広げる。放送は毎週土曜18時から。

この記事の続きを読むには、
以下から登録/ログインをしてください。

  • 新規登録簡単30
  • J-meアカウントでログイン
  • メールアドレスでログイン
radikoで聴く
2026年7月18日28時59分まで

PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

番組情報
SAPPORO BEER OTOAJITO
毎週土曜
18:00-18:54