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ビートルズ初来日に密着した写真家が初めて語る、ポールの気遣いを感じさせる“タバコ”のエピソード

ビートルズ初来日に密着した写真家が初めて語る、ポールの気遣いを感じさせる“タバコ”のエピソード

写真家の浅井愼平が、ビートルズの初来日公演を撮影した当時を振り返り、その舞台裏を語った。

浅井が登場したのは、6月30日(火)放送のJ-WAVE『MIDDAY LOUNGE』(ナビゲーター:市川紗椰)の「MUSIC EXPLORER」。世界の音楽シーンのムーブメントを“今”の視点で考察するコーナーだ。

『MIDDAY LOUNGE』はグローバルなルーツを持つ国際色豊かなナビゲーターたちが、リスナーと一緒に「新しい自分、新しい世界と出会う」3時間のプログラム。ナビゲーターは、月曜 ハリー杉山、火曜 市川紗椰、水曜 クリス・ペプラー、木曜 ジョン・カビラが日替わりで担当している。

浅井愼平が明かす、ホテルでの撮影秘話

6月の『MIDDAY LOUNGE』では「MUSIC EXPLORER」のコーナーを中心に、ビートルズにまつわるさまざまな話題を取り上げてきた。名曲につけられた日本語タイトルや、“5人目のビートルズ”と呼ばれた影の立役者たち、さらにGLIM SPANKYの松尾レミと夢のセットリストを妄想する企画まで、多彩な切り口でその魅力を掘り下げてきた。

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そして、6月30日は日本のビートルズファンにとって特別な記念日。1966年6月30日、ビートルズは日本で初めての来日公演を行った。今年はその歴史的な日から、ちょうど60年にあたる。

本来は公演2日前の6月28日に来日する予定だったが、台風の影響で飛行機が遅延。羽田空港に到着したのは、6月29日午前3時39分だった。タラップを降りる有名な写真も、実は深夜から早朝にかけて撮影されたもの。さらに、その到着の瞬間から7月3日に日本を離れるまで、4人に密着し続け、シャッターを切り続けた人物がいた。

今回は当時、撮影を担当した浅井愼平をコメントゲストに迎え、来日時の貴重な撮影秘話を聞いた。

市川:浅井愼平さんは今年、写真家としてメジャーデビュー60周年でもあります。さまざまな作品で知られていますが、やはり来日時のビートルズ4人を収めた写真や、写真集『ビートルズ 東京100時間のロマン』でも有名です。当時、公演主催者側の依頼で彼らに密着することになったそうですが、撮影はどのように行われていたのでしょうか。

浅井:主催者がビートルズのためにホテルをワンフロア押さえていて。だから、基本的には一般の宿泊客はいなかったんです。ただ、その階に住んでいた方がいてね。おばあちゃんとお孫さんだったんですよ。それ以外はほとんど空いていて、僕は自分の部屋のドアに枕を挟んで、彼らの動きが廊下の気配でわかるようにして寝てましたね。その甲斐あって1枚だけ、ジョン・レノンが赤いパンツ姿で廊下に出てきたところを撮影できたんです。あれは僕の生涯で唯一の“隠し撮り”ですね(笑)。

市川:今、その写真を観ていますが、本当にジョンが白いTシャツに赤いパンツだけで廊下を歩いていて、何かを取りに来たような自由な空気がありますね。ホテルの誰もいない階だったからこその、すごくアットホームな雰囲気も感じます。それに、おばあちゃんとお孫さんが住んでいたなんて、現場にいた人じゃないとわからない情報ですよね。それにしても赤いパンツ、気になりますね。

ポール・マッカートニーが差し出した1本のタバコ

60年前の来日で、ビートルズは日本武道館で3日間にわたり、計5公演を行った。しかし浅井は、ライブそのものを落ち着いて観る余裕はほとんどなかったという。ホテルと武道館を行き来しながら、メンバーの様子や空いた部屋の風景まで撮影し続け、慌ただしい日々を過ごしていたという。

そんな濃密な5日間を通して、浅井が間近で接したビートルズはどのような存在だったのか。世界的スターの素顔について訊いた。

浅井:彼ら自身、自分たちが置かれている立場にまだ実感がなかったんじゃないですかね。突然、世界的スターになって「なんで俺たち、こんなことになってるんだろう」みたいな感覚だった気がします。長く一緒にいたわけではないけれど、同じ空間にいても4人で熱心に話し合っている姿は見たことがないし、みんなそれぞれ、ぼーっとしている感じでした。「これ、どうなってるんだろうな」みたいな空気でしたね。そんななかで印象に残っているのは、ポールがタバコを勧めてくれたこと。僕は吸う余裕もなくて、もらって胸ポケットに入れたんですが、ラークでした。今日、初めてこのことを話したかもしれません(笑)。胸ポケットに入れたあと、そのタバコをどうしたかは覚えてないんですが、向こうも気を遣ってくれていたんだなと思うんですよ。

市川:さすがポール……気遣いの人という感じがします。しかも、60年越しの初出しエピソードとは貴重です。4人で熱く話し込んでいる感じがなく、まだ自分たちの“スーパースター感”に追いついてないような印象だったんですね。同じ現場にいた人じゃないとわからない話、面白いです。そして、本人たちの当時の自覚は置いといて、世界的スターだったビートルズですが、撮影した写真についてマネージャーのブライアン・エプスタインのチェックなどはあったんでしょうか。

浅井:チェックはありませんでした。むしろ、運がよかったのは、僕がブライアン・エプスタイン本人に「インタビューさせてください」とお願いしたらOKしてくれたこと。話してる途中で写真を撮ったら、「なんで俺を撮るんだ。撮らないっていう約束だったじゃないか」と言われて。僕は「写真家なので、それが仕事です」と伝えたら、エプスタインは笑って「まぁ、いいよ」という顔をしてくれましたね。そのときの写真が写真集にも1、2枚入ってますが、彼に会えたことはビートルズを理解するうえで本当に大きかったと思ってます。

続いて浅井は、ビートルズが当時のロックミュージシャンのイメージと違い、その背景にはブライアン・エプスタインの存在があったのではないかと語る。

浅井:当時のロックミュージシャンをわかりやすく言えば、革ジャンにブーツ、ロングヘアの若者というイメージで。でも、ビートルズはスーツ姿で、ヘアスタイルも全然違いましたからね。それは、彼らのバックにブライアン・エプスタインがいたからだと思うんです。彼が目指したアイドル像やスタイルがしっかりとあって、それがビートルズの芯になっていて、僕らが知っているビートルズのイメージにさまざまな影響を与えたんだろうなと思います。ロックミュージシャンというのは当時「不良少年」というイメージでしたけど、それをビートルズが払拭しましたね。

ここで番組では、ビートルズの『Day Tripper』をオンエアした。

Day Tripper (Remastered 2015)

ビートルズと交わった時間が写真家に残したもの

当時、ビートルズには専属カメラマンのロバート・ウィテカーが同行していた。ロバート・ウィテカーは、浅井とほぼ同世代で、今ではビートルズの貴重な記録写真を数多く残したことで知られている。しかし、浅井によると、撮影現場では意外なやり取りもあったという。

浅井:一緒にいたロバート・ウィテカーが、僕に「今、露出いくつだ?」とか訊いてくるんですよ。当時はまだオートのカメラなんてないですからね。でも、僕もそんなに余裕がない状況でしたけど、知らない顔もできないので教えてあげました。

市川:面白いですね(笑)。浅井さん節、もっと聞きたいですね。そして、ビートルズを撮影したことで、浅井さんのなかで何かが変わった感覚はあったのでしょうか。

浅井:特別、僕のなかで何かが変わったということはなかったですね。でも、歴史の端っこに少し顔を出せたような感覚はあります。ビートルズ自身も、自分たちの置かれている状況がどんどん変わっていって、不思議な時間や空間のなかで過ごしていたと思うんです。そこに僕もちょっと縁があったっていうのは、懐かしさもあるし、宿命というか、面白いもんだなって思いますね。僕からビートルズを取ったら、また違う自分が見えてくるというか、違う人になってたかもしれないです。

市川:当時も貴重な体験だって知っていたとは思いますが、まさか60年後、まだこんなにも多くの人に語られているコンサートになるかどうか、もちろんその時点ではわからなかっただろうし……すごいですよね。当時は仕事として向き合っていたものが、あとから歴史的な出来事になったっていうのは、すごい運命だなと思います。

浅井の写真展「浅井愼平60th『星空のハローグッドバイ 浅井愼平写真展』」が、7月8日(水)から20日(月・祝)まで、日本橋三越本店で開催中。会場では、ビートルズ来日時の写真をはじめ、国内外で撮影された作品の数々を展示。60年前の熱気を記録した写真とともに、浅井が長年積み重ねてきた視点やまなざしに触れられる機会となる。

市川:ビートルズ関連の写真は白黒で見る機会が多いですが、実はカラー写真も残っていて、今回の展示では見られるそうです。浅井さんがどんな視点で彼らをフィルムに収めたのか、実際に見てみたいですね。それでは最後に、浅井さんにビートルズのなかで好きな曲を教えていただきました。

浅井:わりと記憶に残ってるのは、『ミッシェル』や『ガール』ですね。本人たちもなぜこういう曲ができたのか説明しきれないような、不思議な魅力がある曲が面白いと思いますね。

Girl (Remastered 2009)

「浅井愼平60th『星空のハローグッドバイ 浅井愼平写真展』」の詳細は公式サイトまで。

J-WAVE『MIDDAY LOUNGE』のコーナー「MUSIC EXPLORER」では、世界の音楽シーンのムーブメントを「今」の視点で考察する。放送は月曜~木曜の14時ごろから。

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番組情報
MIDDAY LOUNGE
月・火・水・木曜
13:30-16:30