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大江千里、名曲『Rain』が「降りてきた」瞬間を明かす…カバーした秦 基博も曲の魅力をコメント

大江千里、名曲『Rain』が「降りてきた」瞬間を明かす…カバーした秦 基博も曲の魅力をコメント

大江千里が「雨ソング」の名曲『Rain』が誕生した経緯や、曲に込めた想いなどを語った。同曲をカバーした秦 基博からのコメントも寄せられた。

大江がZoomインタビューで出演したのは、6月11日(水)放送のJ-WAVE『STEP ONE』(ナビゲーター:サッシャ、ノイハウス萌菜)内、音楽以外の「+1」なトピックをゲストに尋ねるコーナー「MUSIC+1」だ。

一気に歌い始める…当時の曲作りについて

この日は「あの雨ソングはこうして生まれた」と題して名曲を深掘り。J-WAVEでも、雨が降ると、カバーバージョンも含めて必ずと言っていいほどオンエアされる大江の『Rain』。どんなときに、そしてどのようにこの曲が生まれたのか、現在ニューヨークにいる大江本人にZoomインタビューで話を訊いた。

『Rain』は、1988年にリリースされた7枚目のアルバム『1234』の収録曲だが、シングルカットはされていない。当初はファンも含め「知る人ぞ知る名曲」という存在だったが、10年経った1998年に槇原敬之がカバー。そして2013年には秦 基博、2024年には渡辺美里もカバーするなど、さまざまなアーティストに歌い継がれてきた「愛される雨ソング」だ。大江には、まず当時の曲作りについて尋ねた。

大江:当時は覚えたての車でビデオレンタル屋に通って、何本も映画を借りて観ていました。ストーリーや感想ノートをつけて、そこから物語を作って作詞作曲するみたいなことをやっていて。『1234』という『Rain』が入っているアルバムを作っているときに、マランツのカセットレコーダーに120分のテープを入れて「降りてきた!」と思ったら、ガチャッと押して、そのままなりきって。たとえば「今日は松任谷由実さん」「今日はビリー・ジョエル」「今日はホール&オーツ」みたいな、そういう主人公のタイプを決めて一気に歌い始めて、いろいろなタイプの曲を15曲ぐらい一気書きするというのが、「大江ウェイ(方法)」でした。

サッシャ:もちろん、大江さんのフィルターを通るから、その人になるわけではなくて、その人風にという。それがホール&オーツ、ビリー・ジョエル、松任谷由実さん! 意外ですよね。いったい、どの曲が何風に作ったのか? というのも気になるところです。さらに映画を観て感想ノートをつけて、というのが「大江ウェイ」というのでかなり独創的な作詞作曲方法かもしれません。

楽曲に込めたのは、本当に切ない自分の気持ち

続いて、大江は『Rain』の曲が「降りてきた」瞬間について明かした。

大江:レンタル屋があったつつじヶ丘の駅にチカチカと車を止めて。雨が降ってきて“もや”がかかって、会社帰りの人が急いで歩く姿、雨に濡れないように、常夜燈……一気に浮かんできて、そのままビデオを借りずに家まで帰りました。当時はDX7というヤマハのキーボードをオンにして、マランツのカセットをバッと置いて、一気に作ったんですよね。

帰宅後すぐに曲作りを開始したという大江。歌詞はとめどなく出てきたという。

大江:雨に濡れて、ちょっとひんやりしていて。それは気温というよりは、なんかどうしようもない、人に囲まれていても感じる孤独感みたいな。なんでこんなに切ないんだ、という気持ちのまま「言葉にできず凍えたままで」。人前ではソーシャルな感じで「千ちゃん、千ちゃん」と生きていて。だけどなんでこんなに、今日は独りなんだろうと。そうだ、君をなくしたんだみたいなフレーズが出てきて。だから一気にAメロ、Bメロ、Cメロ、そのまま2番と歌詞が出てきて、3番のところまで詞と曲を一緒に書いて。本当に切ない自分の気持ちを吐露したい、誰かに聴いてほしい。同じ気持ちで雨のなかに佇んでいるような誰かに向けて歌ったという、それが曲が生まれた背景というかきっかけです。

番組では大江の『Rain』をオンエアした。

大江千里 - Rain (2022 Remastered) -Official Audio-


大江本人によるジャズバージョンもある。

Arigato

サッシャ:情景が思い浮かびます。

ノイハウス:大江さんの当時の気持ちも交えてお話しいただいて、すごくグッときます。

サッシャ:まるで一緒に旅をしたかのような感じです。

いろいろな案があるなかで決定したタイトルへの想い

『Rain』のなかには、直接「Rain」という歌詞ははっきりとは出てこない。曲名について、大江は当時、納得できていなかったことを明かした。

大江:『Rain』という、あんなシンプルなタイトルになるとは思わなくて。もっと自分としては長ったらしい、誰もつけないような変わったタイトルにしようと思っていて。だけど結局、まっちゃん(当時のスタッフ)と相談していて「シンプルで覚えやすいものがいい」という話になって。だから、僕のなかではいろいろなタイトルの案があって、いつも『Rain』と紹介されたときに「いや、『Rain』なんだけど、『Rain(仮)』なんだよな」と。

サビの頭の部分をタイトルにする案もあったと語る大江。しかし、『Rain』に決めたことは、いまではポジティブに捉えることができているそう。

大江:難しいんですよね。心理描写がいっぱい入っているので、どこを起点に物語を読んでもらうかという、作者の意図によってタイトルも変わってくるので。でも、やっぱり人によって聴き方というのは十人十色なので、『Rain』という抽象的で、誰にも経験があるぼやっとしたタイトルのなかで緩くスタートする入り口だったからこそ、複雑なドラマが人々の気持ちのなかで落ちていったというか。そういうことなのかなと、いまは思いますけどね。

ノイハウス:サビの頭の部分ですけど、これを曲名にしていたらそれはそれでそこからストーリーが始まる感じがありますが、『Rain』だとさらに。タイトルからだと、どんな流れなのかまったく見えないからこそ、もっとじっくり聴くみたいなところもあります。解釈も人それぞれだと思います。

サッシャ:『Rain』にしたことによって、天気が『Rain』なのか、心が『Rain』なのか、いろいろなことを含んで聴ける曲になったのかなと思います。当時のディレクターさんとの相談でシンプルなものにしようということで、タイトルも含めての名曲が完成しました。

秦 基博が語る『Rain』の魅力

幾度となくカバーされてきた『Rain』。そのアーティストのひとりである秦 基博が番組にメッセージを寄せて、曲の魅力を語ってくれた。

秦:実際にこの曲をカバーさせていただいたきっかけは、新海 誠監督の『言の葉の庭』の主題歌としてこの楽曲を新海監督が選ばれて。その歌う人を探していらして、僕の名前を挙げてくださり、カバーしました。この楽曲が持つ、僕がとてもすごいなと思う部分は、圧倒的な情景の広がり方です。歌詞ももちろんですが、メロディの展開──途中で転調したりといった展開を含めて、楽曲の持つイメージ、情景みたいなものがバーッと広がっていく。それがこの曲のすごさというか、圧倒的だなといつも思っています。

秦は同曲を実際に歌ったからこそ、感じたことがあるという。

秦:めちゃくちゃ難しい曲ですね。メロディのいきかたとか転調を含めて、大江千里さんの描くメロディラインというのが歌ってみるとすごく難しいんだなと。聴いているときはすごくポップに聴けると思いますが、歌ってみてすごく感じました。もちろん大江さんの楽曲なので、大江さんバージョンはもちろんですが、ときどき気が向いたら秦バージョンもぜひ聴いてみてください。

Rain

サッシャ:自分のなかで動画が完成するような、情景描写が素敵な曲です。歌ってみると難しいんですね、歌手ならではの視点だと思います。

ノイハウス:カラオケでチャレンジしてみたい。きっとされている方も多いと思います。

サッシャ:でも難しいからこそ、歌いこなしたときにストーリーがグッと心に伝わってくる名曲でもあるんですよね。

大江千里は、7月13日(日)から「大江千里ソロコンサート2025年夏『きみと生きたい~I Wanna Live With You』」を開催する。そのほか、最新情報は公式サイトまで。

J-WAVE『STEP ONE』のコーナー「MUSIC+1」では、ゲストとして毎回話題のミュージシャンが登場する。放送は月曜~木曜の12時30分ごろから。

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