
デビュー25周年を迎えたシンガーソングライター・矢井田 瞳が、8月20日(水)に最新アルバム『DOORS』をリリース。これまでの活動を振り返りながら、今後の目標などについて語った。
矢井田が登場したのは、8月20日(水)放送のJ-WAVE『STEP ONE』(ナビゲーター:サッシャ、ノイハウス萌菜)内、音楽以外の「+1」なトピックをゲストに尋ねるコーナー「MUSIC+1」だ。
矢井田:25周年だからこそ、新しいアルバムを出したり記念ライブをやったりというきっかけになるので、とてもうれしいです。
サッシャ:たとえばライブも、いつもはアルバムに沿ったライブをやるのが、周年のときはいつもと違う選曲、構成にしたりという遊びもできますよね。
矢井田:ちょうど先日、東京と大阪でアニバーサリーライブをやらせていただきました。そのライブは、ファンの方々からのリクエストの投票をもとにセットリストを組みましたが、そういうのも25周年ならではだったなと思います。
サッシャ:意外でしたか? 「え、これ?」みたいな。
矢井田:けっこう意外でした。めちゃくちゃ暗い曲とか。
サッシャ:自分じゃ選ばない曲ってこと?
矢井田:「一般受けみたいなのはしないかな」と思いつつも、でも表現したいことだからと書いた曲も選んでくれたり、バラードが上位に入っていたり、シングル曲ばかりという感じではなくて。それが「いろいろなタイプの楽曲を大切に聴いてくれているんだな」という感じがして、うれしかったですね。あと、今回はバンドメンバーがデビュー当時から支えてくれている人を中心に組んでのライブだったんです。たとえば、ギターリフとかもCDのときに弾いてくれた西川 進さんが弾いてくれて「うわ、本物だ」みたいな(笑)。
サッシャ:ギタリストによってリフって個性が出るからね。
矢井田:私自身が楽しかったです。
サッシャ:そして、今日はまさにアルバム『DOORS』のリリース日です。おめでとうございます。『DOORS』というのは扉?
矢井田:「扉たち」ですね。今回は私自身、このアルバムで新しい挑戦がたくさんできたな、新しい扉を開けることができたなという意味もあります。これまで25年、さすがにいいことばかりではなくていろいろな「開けたくない扉」も開けてきたからこその、いまだなという実感もあって。あとは、このアルバムを聴いた人が新しい扉、小さな挑戦でもいいんですが、誰かの扉を開けるきっかけになってほしいなという意味も込めて、このタイトルにしました。
番組ではニューアルバム『DOORS』に収録されている『sigh sigh sigh』をオンエアした。
ノイハウス:なにが大変だったんですか?
矢井田:このころはとにかく時間がなくて。2000年のころって、1年に3枚シングルを出して、1枚アルバムを出すみたいな。
サッシャ:それでライブもあってとなるとね。
矢井田:まだ楽曲が半分ぐらいしか出そろっていない段階で「このときにアルバムを出します」と決まっちゃって。しかも自分が住んでいる日本じゃなくて「ロンドンで仕上げます」みたいな、そこまでスケジュールが先に決まっていて。
ノイハウス:そこまでに曲を作らないといけないということですよね。
矢井田:ロンドンに着いたときも、まだ曲がなくて。私だけめちゃくちゃ焦って、ずっとホテルで缶詰めで書いていたのが『Your Kiss』でした。
サッシャ:ロンドンの街も見られず。
矢井田:みんなは「17時になったらパブ行こう」「サッカー観に行こう」とか言っていて(笑)。恨み節も入りつつですけど、そういう意味も込めて思い出深いです。
サッシャ:クリエイティブはいつ生まれるというものではないから、それは厳しかったですね。
矢井田:いまだったらできないですけど「なにかしらに追われていたからこそ出たもの」みたいなのもあると思うので、あのときしか書けなかった曲だなというのもあります。
サッシャ:じゃあ、いま「来月までにアルバム」と言われたら?
矢井田:嫌だ!
サッシャ・ノイハウス:(笑)。
矢井田:即答で断ります(笑)。
ノイハウス:次の質問が「ターニングポイントになった曲や作品」です。
矢井田:思い返してみると、4枚目のアルバムの『Air/Cook/Sky』というのがあるんですが、このあたりから音楽に取り組む姿勢みたいなものが短期的、点じゃなくて長期的な線で考えられるようになったかなと。
サッシャ:1曲1曲じゃない世界観ということ?
矢井田:1曲1曲を自分の身を削るように、ちぎって捨てるようにそれまでは書いていたんです。だけど捨てるのはもったいないじゃないですか。だからこの曲を書くことによって、たとえば何年後、何十年後かに自分に返ってくるものがあるだろうとか。あとはそのときだけじゃなくて10年後、20年後に歌うときにどんな気持ちで歌うだろう? とか。線で考えて曲を書くようになった時期かなと思います。
ノイハウス:スケジュールに追われている感もあったかもしれない時期なのに、そうやって先を考えられるというのは、そこで変わったんですね。
矢井田:ふと「このまま、このスピードで走り続けたらポキッと折れちゃうな」という、予感みたいなものがあって。これは一度、ペースとかも考え直さねばと思った時期です。
サッシャ:逆に言えば、これ以前の曲はいま歌うとちょっと違和感があるものもあるってこと?
矢井田:なんか“妹”が歌っているみたいな感じです。すごく暗い曲とかもあって、抱え込みすぎているような。それもそのときしか書けなかった曲なのでいいんですけど「そんなに考えすぎて、大丈夫?」みたいな。
ノイハウス:先輩的な目線からね。
矢井田:そんな感覚で過去の曲は歌ったりします。
サッシャ:妹さんの曲を代弁して歌っているみたいな感覚になるんだ。
矢井田:いま思えば考えすぎだったり、自意識過剰で「人と比べられたらどうしよう」とか、あとは「人の曲だから、絶対パーフェクトにやらなきゃ」と、思いつめていた感じがあったんです。そうやって生きていると、どんどん息苦しくなって勝手に自分で自分の限界を作ってしまっていた時期がありました。そのころに先輩ミュージシャンにお酒の場とかで悩み事を相談すると「ひとりで全部やるのは、そりゃ無理よ」と。「音楽のいいところは1+1が100にも200にもなるときもあるから。マイナスになっちゃったときは一緒に笑える誰かを作っておけば楽しいんだよ」というのを教えてもらって。それを聞いてからフェスや作品でのコラボだったりとか、いろいろ自分がわからない、未知数だからこそ飛び込んでみる、というのをやり始めたら本当に音楽の楽しさが広がりました。
サッシャ:意外なことがあったり、それを楽しんでいるのが見えるとファンとしても楽しいというかね。
矢井田:それに気づくことができました。
ノイハウス:最後になりますが「これから新たに挑戦してみたい音楽や表現」はなんでしょうか。
矢井田:これはずっと思っているんですが、コードが少ないオーガニックな音楽です。人間力だけで作るんだけれども、そこに隙間があって。それでいて聴き飽きない「美メロ曲」ですね。
サッシャ:そういう音楽で理想的なアーティストはいるんですか? この人がそれを体現しているみたいな。
矢井田:いっぱいいますが、いまパッと浮かんだのは『ONCE ダブリンの街角で』という映画がありますが、あの『Falling Slowly』という曲とかはものすごくシンプルで。うっすらとしたオケしかないんだけれども、一生聴いていられます。優しさ、オーガニックな感じ、ああいう曲を書きたいです。
サッシャ:今回のアルバムに『星空のクリスマス』という曲がありますが、これも後半はバンドサウンドになりますが、アコースティックで断片を感じます。
矢井田:常に目指していて。そういう曲を音楽人生のなかで、1曲はびしっと書きたいなと思っています。
矢井田の最新情報は公式サイトまで。
J-WAVE『STEP ONE』のコーナー「MUSIC+1」では、ゲストとして毎回話題のミュージシャンが登場する。放送は月曜~木曜の12時30分ごろから。
矢井田が登場したのは、8月20日(水)放送のJ-WAVE『STEP ONE』(ナビゲーター:サッシャ、ノイハウス萌菜)内、音楽以外の「+1」なトピックをゲストに尋ねるコーナー「MUSIC+1」だ。
デビュー25周年のアニバーサリーイヤー
今年でデビュー25周年を迎えた矢井田は、節目となる今年の活動について語った。矢井田:25周年だからこそ、新しいアルバムを出したり記念ライブをやったりというきっかけになるので、とてもうれしいです。
サッシャ:たとえばライブも、いつもはアルバムに沿ったライブをやるのが、周年のときはいつもと違う選曲、構成にしたりという遊びもできますよね。
矢井田:ちょうど先日、東京と大阪でアニバーサリーライブをやらせていただきました。そのライブは、ファンの方々からのリクエストの投票をもとにセットリストを組みましたが、そういうのも25周年ならではだったなと思います。
サッシャ:意外でしたか? 「え、これ?」みたいな。
矢井田:けっこう意外でした。めちゃくちゃ暗い曲とか。
サッシャ:自分じゃ選ばない曲ってこと?
矢井田:「一般受けみたいなのはしないかな」と思いつつも、でも表現したいことだからと書いた曲も選んでくれたり、バラードが上位に入っていたり、シングル曲ばかりという感じではなくて。それが「いろいろなタイプの楽曲を大切に聴いてくれているんだな」という感じがして、うれしかったですね。あと、今回はバンドメンバーがデビュー当時から支えてくれている人を中心に組んでのライブだったんです。たとえば、ギターリフとかもCDのときに弾いてくれた西川 進さんが弾いてくれて「うわ、本物だ」みたいな(笑)。
サッシャ:ギタリストによってリフって個性が出るからね。
矢井田:私自身が楽しかったです。
サッシャ:そして、今日はまさにアルバム『DOORS』のリリース日です。おめでとうございます。『DOORS』というのは扉?
矢井田:「扉たち」ですね。今回は私自身、このアルバムで新しい挑戦がたくさんできたな、新しい扉を開けることができたなという意味もあります。これまで25年、さすがにいいことばかりではなくていろいろな「開けたくない扉」も開けてきたからこその、いまだなという実感もあって。あとは、このアルバムを聴いた人が新しい扉、小さな挑戦でもいいんですが、誰かの扉を開けるきっかけになってほしいなという意味も込めて、このタイトルにしました。
番組ではニューアルバム『DOORS』に収録されている『sigh sigh sigh』をオンエアした。
sigh sigh sigh
苦労したけれど当時だからこそ書けた曲
番組では矢井田に事前アンケートを実施。「制作過程で特に苦労した曲はありますか?」という問いの答えは、1stアルバム『daiya-monde』収録の『Your Kiss』だった。ノイハウス:なにが大変だったんですか?
矢井田:このころはとにかく時間がなくて。2000年のころって、1年に3枚シングルを出して、1枚アルバムを出すみたいな。
サッシャ:それでライブもあってとなるとね。
矢井田:まだ楽曲が半分ぐらいしか出そろっていない段階で「このときにアルバムを出します」と決まっちゃって。しかも自分が住んでいる日本じゃなくて「ロンドンで仕上げます」みたいな、そこまでスケジュールが先に決まっていて。
ノイハウス:そこまでに曲を作らないといけないということですよね。
矢井田:ロンドンに着いたときも、まだ曲がなくて。私だけめちゃくちゃ焦って、ずっとホテルで缶詰めで書いていたのが『Your Kiss』でした。
サッシャ:ロンドンの街も見られず。
矢井田:みんなは「17時になったらパブ行こう」「サッカー観に行こう」とか言っていて(笑)。恨み節も入りつつですけど、そういう意味も込めて思い出深いです。
サッシャ:クリエイティブはいつ生まれるというものではないから、それは厳しかったですね。
矢井田:いまだったらできないですけど「なにかしらに追われていたからこそ出たもの」みたいなのもあると思うので、あのときしか書けなかった曲だなというのもあります。
サッシャ:じゃあ、いま「来月までにアルバム」と言われたら?
矢井田:嫌だ!
サッシャ・ノイハウス:(笑)。
矢井田:即答で断ります(笑)。
ノイハウス:次の質問が「ターニングポイントになった曲や作品」です。
矢井田:思い返してみると、4枚目のアルバムの『Air/Cook/Sky』というのがあるんですが、このあたりから音楽に取り組む姿勢みたいなものが短期的、点じゃなくて長期的な線で考えられるようになったかなと。
サッシャ:1曲1曲じゃない世界観ということ?
矢井田:1曲1曲を自分の身を削るように、ちぎって捨てるようにそれまでは書いていたんです。だけど捨てるのはもったいないじゃないですか。だからこの曲を書くことによって、たとえば何年後、何十年後かに自分に返ってくるものがあるだろうとか。あとはそのときだけじゃなくて10年後、20年後に歌うときにどんな気持ちで歌うだろう? とか。線で考えて曲を書くようになった時期かなと思います。
ノイハウス:スケジュールに追われている感もあったかもしれない時期なのに、そうやって先を考えられるというのは、そこで変わったんですね。
矢井田:ふと「このまま、このスピードで走り続けたらポキッと折れちゃうな」という、予感みたいなものがあって。これは一度、ペースとかも考え直さねばと思った時期です。
サッシャ:逆に言えば、これ以前の曲はいま歌うとちょっと違和感があるものもあるってこと?
矢井田:なんか“妹”が歌っているみたいな感じです。すごく暗い曲とかもあって、抱え込みすぎているような。それもそのときしか書けなかった曲なのでいいんですけど「そんなに考えすぎて、大丈夫?」みたいな。
ノイハウス:先輩的な目線からね。
矢井田:そんな感覚で過去の曲は歌ったりします。
サッシャ:妹さんの曲を代弁して歌っているみたいな感覚になるんだ。
音楽は1+1が100にも200にもなる
矢井田は「デビューして3、4年はほかのアーティストとコラボすることが怖かった」と告白。しかし、その想いを変えてくれた先輩の言葉があったことを明かした。矢井田:いま思えば考えすぎだったり、自意識過剰で「人と比べられたらどうしよう」とか、あとは「人の曲だから、絶対パーフェクトにやらなきゃ」と、思いつめていた感じがあったんです。そうやって生きていると、どんどん息苦しくなって勝手に自分で自分の限界を作ってしまっていた時期がありました。そのころに先輩ミュージシャンにお酒の場とかで悩み事を相談すると「ひとりで全部やるのは、そりゃ無理よ」と。「音楽のいいところは1+1が100にも200にもなるときもあるから。マイナスになっちゃったときは一緒に笑える誰かを作っておけば楽しいんだよ」というのを教えてもらって。それを聞いてからフェスや作品でのコラボだったりとか、いろいろ自分がわからない、未知数だからこそ飛び込んでみる、というのをやり始めたら本当に音楽の楽しさが広がりました。
サッシャ:意外なことがあったり、それを楽しんでいるのが見えるとファンとしても楽しいというかね。
矢井田:それに気づくことができました。
ノイハウス:最後になりますが「これから新たに挑戦してみたい音楽や表現」はなんでしょうか。
矢井田:これはずっと思っているんですが、コードが少ないオーガニックな音楽です。人間力だけで作るんだけれども、そこに隙間があって。それでいて聴き飽きない「美メロ曲」ですね。
サッシャ:そういう音楽で理想的なアーティストはいるんですか? この人がそれを体現しているみたいな。
矢井田:いっぱいいますが、いまパッと浮かんだのは『ONCE ダブリンの街角で』という映画がありますが、あの『Falling Slowly』という曲とかはものすごくシンプルで。うっすらとしたオケしかないんだけれども、一生聴いていられます。優しさ、オーガニックな感じ、ああいう曲を書きたいです。
Glen Hansard, Marketa Irglova - Falling Slowly (Official Video)
矢井田:常に目指していて。そういう曲を音楽人生のなかで、1曲はびしっと書きたいなと思っています。
矢井田の最新情報は公式サイトまで。
J-WAVE『STEP ONE』のコーナー「MUSIC+1」では、ゲストとして毎回話題のミュージシャンが登場する。放送は月曜~木曜の12時30分ごろから。
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