作詞家の売野雅勇が、J-WAVEで亀田誠治とトークを展開。売野が人生に寄り添ってきた音楽を紹介した。
売野が登場したのはJ-WAVEで放送中の『DEFENDER BLAZE A TRAIL』(ナビゲーター:亀田誠治)。毎回音楽を愛するゲストを迎え、その人生に寄り添ってきた音楽のお話をうかがうプログラムだ。ここでは11月17日(日)のオンエアをテキストで紹介する。
この番組では、そんな売野の人生に寄り添ってきた音楽、そして困難な場面で勇気をもらった曲などを紹介しながら、そのエピソードをうかがっていく。
今回は売野が手掛けた楽曲から選曲することに。まず売野は1曲目に稲垣潤一の『夏のクラクション』をセレクトした。
売野:これは僕が作詞家に成り立てで。僕は遅かったんですね。広告業界からアウトサイダーとして来たのですごく居づらかったんです。アウェー感が強くて。作詞家を初めてから1年半くらいで中森明菜の『少女A』を書いたんです。それもちょっとアウトサイダー系の歌じゃない。
亀田:確かに。攻めてるって感じがしました(笑)。
売野:だから様子見みたいな感じで注文が来ないのよ。業界の人もプロデューサーもちょっと触らないでおこうって感じだったんですけど、CBS・ソニーの酒井政利さんがまず声を掛けてくれて。
亀田:山口百恵さんとか松田聖子さんなどを(見出した音楽プロデューサーですよね)。
売野:そうしたら酒井さんと仲良しの筒美京平さんが声を掛けてくださったんです。一緒にやらないかって。最初は野口五郎さん、河合奈保子さんと立て続けにやったんです。それをやったら現場で「今度は稲垣潤一くんをやるけど、やらない?」って言われて「やらせてください」ってことで書くことにしたら詞先で書いてと、締切は2週間後って言うからものすごく焦って。大筒美京平先生のプレッシャーがすごかったですね。それで一生懸命に書きましたね。
筒美とは馬が合ったそうで、売野は筒美に連れられていろんな場所を訪れたという。
売野:ご飯を食べましょうって言われて行くと、レストランじゃなくてブティックに連れられたりして。ブティックで「売野くん、買いものはこういうところでしなさい」って、そういうことを教えてくれるんです。全部が必要って。あの方の哲学が我々、こういう書く商売の人は原材料を輸入したり買ったりそういうことはできないから、全ては自分の体験だから旅行に行きなさい、映画を観なさい、本を読みなさい、芝居を観なさいって。作詞家の勉強をしなくていいから生活を充実させなさいっていう教えでした。そうするとそれが血となり肉となり、やがてあなたのペン先から返ってくるんだと。
亀田:カッコいい!
売野:すごいなと思ってシビれちゃって。その教えをずっと守っています。
売野:矢沢さんのことをずっと好きだったの。ともかくキャロルのファーストコンサートを観に行ってるの。そんなのけっこうめずらしいと思うんだけど。矢沢さんが左側にいてジョニー(大倉)が右手にいて真ん中が内海(利勝)さんっていうシフトを知っている人っていないのよ。途中から自然に変わってきて。最初はビートルズのまんまだったんですけど、矢沢永吉が大好きで『成り上がり』(『矢沢永吉激論集 成りあがり How to be BIG』角川文庫)も買って覚えるくらい読んでこの人すごいなって思って。いつか僕が作詞家として名前が出れば注文がつくだろうと予想していたんです。でもいつまで経っても来ないので、しょうがないから自分からお願いしたうえで書かせていただきました。
亀田:自分から売り込みに行ったんですか。
売野:それは初めてのことで。書きたかった人が2人いて、矢沢さんと南 佳孝さん。この2人はめちゃくちゃファンだったので、この人たちの歌を絶対に書きたいと思っていたのにどっちも来ないの。矢沢さんなんか当然な感じがしたけど、矢沢さんとも書かせていただいて、南さんはそれから10年くらいかかって書かせていただきました。だから本当に書きたい人に書くっていうのはものすごく幸せなことで尽くす感じがするのよ。
売野は「この機を逃したら二度と書けないかもしれない」と矢沢に打診したところ、その1カ月後くらいに「お願いします」と返事が来て喜びをかみしめた。
売野:それで矢沢さんのプリプロに行って曲を聴かせていただいてそこで書くんですね。「SOMEBODY'S NIGHT」ってキーワードはすでに矢沢さんが歌っていて、「ここの『SOMEBODY'S NIGHT』は使っていただても使っていただかなくてもけっこうです。好きにしてください」って言われて。でも「いただかなくても」って声のトーンが落ちていたから(笑)。
亀田:矢沢さんはきっと「SOMEBODY'S NIGHT」で入りたかったんですね。
売野:僕は最初は変えようと思うんだけど、このノリにかなわないの。何も当てはまらない。「SOMEBODY'S NIGHT」って「誰かの夜」、そこでひらめいたのが、これは偽名のサインってことだよと。ホテルにチェックインするときに違う名前を書いて誰かになるわけだと。そこで歌い出しの歌詞ができたので、これはパズルじゃないんだけど、タイトルが1、2行できると大体寝てもいい。歌詞はできたも当然。あとは書くだけってことなので、ちょっと違う脳を使うんですよね。書くのはものすごく職人的に書く。最初の瞬間のそれはちょっとおこがましいけど芸術家っぽいんですよ。切り込み方を考える。作業として作詞家は2つあってコツコツ書いていくのとズバッとひらめくのと。
売野:本当のことを言うと特に意識はしていないんですよね。みんな誰でもそうですけど両性具有のところがあるじゃないですか。だから自分のなかのちょっと女性っぽいところを使って書くだけで全然人格が変わらなかったり、タッチもそんなに変わらないですよね。
亀田:なるほど。情景や心情は乙女目線だとしても、一人称が僕とかにするだけでまた世界が広がっていくと。
売野:中森明菜さんは5、6曲くらいしか書いてないんですけど、荻野目洋子さんと河合奈保子さん、菊池桃子さんはけっこう書いていて、この2人はやっていてすごく楽しかったですね。書きたいことが書けたという感じがあったのかな。今読んでもあまり恥ずかしくない感じで書けている。
亀田:何か普遍的なことが表現されているんですね。
売野:こんなことを書いているんだ。これは人が使いたがるわっていう感じ。
亀田:だからこそたくさんの方に聴かれているわけですよね。それはアイドルのファンもそうですし、ファンじゃなくてもお茶の間で聴いていい歌だねって。
売野は「女性アイドルとか男性でもそうですけど、キラーフレーズが入っているとちょっと違う」と口にしつつ、売野は郷 ひろみの『2億4千万の瞳~エキゾチック ジャパン~』を紹介した。
売野: それまで何百曲と書いてきて、自分を、僕・私・君・あなた・お前とか全部使って書いてきたけど、こういうのを使わずに書きたいなって思ったんですね。歌謡曲でこういうことを書けるのかなと思って。例えば僕たちが高校の教科書とかで読んだ詩って僕とか君とかない詩が多いんです。そういうのを書きたいなって。それにチャレンジしようかなっていう気持ちがあって、人称代名詞を使わないで書いたんです。この曲はいきなり、見つめ合うっていう歌い出しは全然君も誰かもわからない。昔、ペーター佐藤っていうイラストレーターがいたんです。その絵はいつも視線がレーザービームみたいに伸びてるんですよ。それが大好きで、あれを使おうっていうことで始まったんですね。だからこれは視線なんです。
亀田:億千万は最初にあった?
売野:(作曲の)井上大輔さんがのっけてきた。
亀田:うわ、カッコいい! めっちゃクリエイティブですね。
売野:僕はそういうのを書いたつもりはないのにって思っちゃったの。ちょっと若いというか青いというか、ちょっといきがっている部分があったから「ちょっと通俗的じゃないですか?」って言っていたけど、これがあったからめちゃくちゃ売れたんだと思います。
亀田:これは坂本さんから歌詞を書いてくださいっていうお話だったんですか。
売野:そう。坂本さんと組んで2作目だったんですね。1作目はGEISHA GIRLSっていうダウンタウンがやったユニットがあって、それを1曲やったら気に入ってくれたみたいで自分が歌うものを出すからそこに書いてくださいって依頼が来ました。これはむちゃくちゃ緊張しましたね。
亀田:どういう緊張なんですか?
売野:坂本さんの場合は普通のポップスじゃないので、これはどういう言葉が合うのかとか歌い回しをどういう風にしたらいいのか、どういう風な効果があるのかとか、自分が知っているノウハウはあまり関係ない。坂本さんも何を書けとは言わなくて「本能のまま書いてください」って(笑)。
亀田は「この曲は言葉も楽器のように聴こえてくる」と言葉にする。
売野:坂本さんに使う言葉っていうのは自分の歴史にはない、あまり使わないような言葉を使いました。この頃にこのスタイルができちゃったので、これでいろいろ実験していろんなことを書くんですよ。その最適の曲が東京パフォーマンスドールの『キスは少年を浪費する』っていうわけが分からないやつね(笑)。でもよくディレクターは書かせてくれたなって。
亀田:でも沁みる言葉ですけどね。意味を持ちますよね。想像の余地というか。
12月13日(金)、14(土)、15日(日)には東京・よみうり大手町ホールで、売野の3日間にわたるトーク&ライブ・イベント「売野雅勇 MIND CIRCUS RADIO SHOW 2024」が開催される。
13日のトークはNight Tempoと売野雅勇、ゲストアーティストはNight Tempo、綾小路 翔(氣志團)、松本伊代、早見優、FANCYLABO、Max Lux。14日のトークは横山 剣と売野雅勇、ゲストアーティストは横山 剣、南 佳孝、荻野目洋子、Max Lux。15日のトークは芹澤廣明と売野雅勇、ゲストアーティストは芹澤廣明、鶴久政治、中西圭三、星乃夢奈、Max Luxと豪華なメンバーが出演する。
売野:トークとライブの二部構成で、作詞はどういう風にやるのかとかトークします。僕は聞き手ですけど、作曲はどうやってやるのかとか、どういうことをやると人の心に響くのかとか細かなノウハウとか曲の誕生秘話とかそういうことを根掘り葉掘り僕が訊きます。その後に生バンドが入ってのライブがあります。
亀田:これは勉強になるし楽しいし、昭和、平成、令和の全喜び、輝き、うれしみが入っているライブになるんじゃないかと思います。僕も行きたいです。
売野雅勇の最新情報は、DIVINEの公式サイトまで。
売野が登場したのはJ-WAVEで放送中の『DEFENDER BLAZE A TRAIL』(ナビゲーター:亀田誠治)。毎回音楽を愛するゲストを迎え、その人生に寄り添ってきた音楽のお話をうかがうプログラムだ。ここでは11月17日(日)のオンエアをテキストで紹介する。
筒美京平からの教え「全ては自分の体験」
売野は、これまでに中森明菜、チェッカーズ、荻野目洋子、近藤真彦、ラッツ&スター、矢沢永吉、坂本龍一といったさまざまアーティストの作品で歌詞を手がけ、多数のヒットを生んできた。この番組では、そんな売野の人生に寄り添ってきた音楽、そして困難な場面で勇気をもらった曲などを紹介しながら、そのエピソードをうかがっていく。
今回は売野が手掛けた楽曲から選曲することに。まず売野は1曲目に稲垣潤一の『夏のクラクション』をセレクトした。
売野:これは僕が作詞家に成り立てで。僕は遅かったんですね。広告業界からアウトサイダーとして来たのですごく居づらかったんです。アウェー感が強くて。作詞家を初めてから1年半くらいで中森明菜の『少女A』を書いたんです。それもちょっとアウトサイダー系の歌じゃない。
亀田:確かに。攻めてるって感じがしました(笑)。
売野:だから様子見みたいな感じで注文が来ないのよ。業界の人もプロデューサーもちょっと触らないでおこうって感じだったんですけど、CBS・ソニーの酒井政利さんがまず声を掛けてくれて。
亀田:山口百恵さんとか松田聖子さんなどを(見出した音楽プロデューサーですよね)。
売野:そうしたら酒井さんと仲良しの筒美京平さんが声を掛けてくださったんです。一緒にやらないかって。最初は野口五郎さん、河合奈保子さんと立て続けにやったんです。それをやったら現場で「今度は稲垣潤一くんをやるけど、やらない?」って言われて「やらせてください」ってことで書くことにしたら詞先で書いてと、締切は2週間後って言うからものすごく焦って。大筒美京平先生のプレッシャーがすごかったですね。それで一生懸命に書きましたね。
筒美とは馬が合ったそうで、売野は筒美に連れられていろんな場所を訪れたという。
売野:ご飯を食べましょうって言われて行くと、レストランじゃなくてブティックに連れられたりして。ブティックで「売野くん、買いものはこういうところでしなさい」って、そういうことを教えてくれるんです。全部が必要って。あの方の哲学が我々、こういう書く商売の人は原材料を輸入したり買ったりそういうことはできないから、全ては自分の体験だから旅行に行きなさい、映画を観なさい、本を読みなさい、芝居を観なさいって。作詞家の勉強をしなくていいから生活を充実させなさいっていう教えでした。そうするとそれが血となり肉となり、やがてあなたのペン先から返ってくるんだと。
亀田:カッコいい!
売野:すごいなと思ってシビれちゃって。その教えをずっと守っています。
この機を逃したら二度と書けないかもしれない
続いて、売野は矢沢永吉の『SOMEBODY'S NIGHT』を紹介した。売野:矢沢さんのことをずっと好きだったの。ともかくキャロルのファーストコンサートを観に行ってるの。そんなのけっこうめずらしいと思うんだけど。矢沢さんが左側にいてジョニー(大倉)が右手にいて真ん中が内海(利勝)さんっていうシフトを知っている人っていないのよ。途中から自然に変わってきて。最初はビートルズのまんまだったんですけど、矢沢永吉が大好きで『成り上がり』(『矢沢永吉激論集 成りあがり How to be BIG』角川文庫)も買って覚えるくらい読んでこの人すごいなって思って。いつか僕が作詞家として名前が出れば注文がつくだろうと予想していたんです。でもいつまで経っても来ないので、しょうがないから自分からお願いしたうえで書かせていただきました。
亀田:自分から売り込みに行ったんですか。
売野:それは初めてのことで。書きたかった人が2人いて、矢沢さんと南 佳孝さん。この2人はめちゃくちゃファンだったので、この人たちの歌を絶対に書きたいと思っていたのにどっちも来ないの。矢沢さんなんか当然な感じがしたけど、矢沢さんとも書かせていただいて、南さんはそれから10年くらいかかって書かせていただきました。だから本当に書きたい人に書くっていうのはものすごく幸せなことで尽くす感じがするのよ。
売野は「この機を逃したら二度と書けないかもしれない」と矢沢に打診したところ、その1カ月後くらいに「お願いします」と返事が来て喜びをかみしめた。
売野:それで矢沢さんのプリプロに行って曲を聴かせていただいてそこで書くんですね。「SOMEBODY'S NIGHT」ってキーワードはすでに矢沢さんが歌っていて、「ここの『SOMEBODY'S NIGHT』は使っていただても使っていただかなくてもけっこうです。好きにしてください」って言われて。でも「いただかなくても」って声のトーンが落ちていたから(笑)。
亀田:矢沢さんはきっと「SOMEBODY'S NIGHT」で入りたかったんですね。
売野:僕は最初は変えようと思うんだけど、このノリにかなわないの。何も当てはまらない。「SOMEBODY'S NIGHT」って「誰かの夜」、そこでひらめいたのが、これは偽名のサインってことだよと。ホテルにチェックインするときに違う名前を書いて誰かになるわけだと。そこで歌い出しの歌詞ができたので、これはパズルじゃないんだけど、タイトルが1、2行できると大体寝てもいい。歌詞はできたも当然。あとは書くだけってことなので、ちょっと違う脳を使うんですよね。書くのはものすごく職人的に書く。最初の瞬間のそれはちょっとおこがましいけど芸術家っぽいんですよ。切り込み方を考える。作業として作詞家は2つあってコツコツ書いていくのとズバッとひらめくのと。
「女性アーティストだから」などの意識はある?
これまで多くの女性アーティストの楽曲も手掛けてきた売野に「女性アーティストの作詞で特に意識していることは?」と亀田が訊くと……。売野:本当のことを言うと特に意識はしていないんですよね。みんな誰でもそうですけど両性具有のところがあるじゃないですか。だから自分のなかのちょっと女性っぽいところを使って書くだけで全然人格が変わらなかったり、タッチもそんなに変わらないですよね。
亀田:なるほど。情景や心情は乙女目線だとしても、一人称が僕とかにするだけでまた世界が広がっていくと。
売野:中森明菜さんは5、6曲くらいしか書いてないんですけど、荻野目洋子さんと河合奈保子さん、菊池桃子さんはけっこう書いていて、この2人はやっていてすごく楽しかったですね。書きたいことが書けたという感じがあったのかな。今読んでもあまり恥ずかしくない感じで書けている。
亀田:何か普遍的なことが表現されているんですね。
売野:こんなことを書いているんだ。これは人が使いたがるわっていう感じ。
亀田:だからこそたくさんの方に聴かれているわけですよね。それはアイドルのファンもそうですし、ファンじゃなくてもお茶の間で聴いていい歌だねって。
売野は「女性アイドルとか男性でもそうですけど、キラーフレーズが入っているとちょっと違う」と口にしつつ、売野は郷 ひろみの『2億4千万の瞳~エキゾチック ジャパン~』を紹介した。
売野: それまで何百曲と書いてきて、自分を、僕・私・君・あなた・お前とか全部使って書いてきたけど、こういうのを使わずに書きたいなって思ったんですね。歌謡曲でこういうことを書けるのかなと思って。例えば僕たちが高校の教科書とかで読んだ詩って僕とか君とかない詩が多いんです。そういうのを書きたいなって。それにチャレンジしようかなっていう気持ちがあって、人称代名詞を使わないで書いたんです。この曲はいきなり、見つめ合うっていう歌い出しは全然君も誰かもわからない。昔、ペーター佐藤っていうイラストレーターがいたんです。その絵はいつも視線がレーザービームみたいに伸びてるんですよ。それが大好きで、あれを使おうっていうことで始まったんですね。だからこれは視線なんです。
亀田:億千万は最初にあった?
売野:(作曲の)井上大輔さんがのっけてきた。
亀田:うわ、カッコいい! めっちゃクリエイティブですね。
売野:僕はそういうのを書いたつもりはないのにって思っちゃったの。ちょっと若いというか青いというか、ちょっといきがっている部分があったから「ちょっと通俗的じゃないですか?」って言っていたけど、これがあったからめちゃくちゃ売れたんだと思います。
坂本龍一からのリクエスト「本能のまま書いてください」
売野は最後に、坂本龍一の『美貌の青空』をセレクトした。発売後、とある雑誌でムーンライダーズの鈴木慶一が「この歌詞は90年代ポップスにおける最高峰」とコメントを寄せていたそうで、売野は「びっくりして、すごくうれしかった」と振り返った。亀田:これは坂本さんから歌詞を書いてくださいっていうお話だったんですか。
売野:そう。坂本さんと組んで2作目だったんですね。1作目はGEISHA GIRLSっていうダウンタウンがやったユニットがあって、それを1曲やったら気に入ってくれたみたいで自分が歌うものを出すからそこに書いてくださいって依頼が来ました。これはむちゃくちゃ緊張しましたね。
亀田:どういう緊張なんですか?
売野:坂本さんの場合は普通のポップスじゃないので、これはどういう言葉が合うのかとか歌い回しをどういう風にしたらいいのか、どういう風な効果があるのかとか、自分が知っているノウハウはあまり関係ない。坂本さんも何を書けとは言わなくて「本能のまま書いてください」って(笑)。
亀田は「この曲は言葉も楽器のように聴こえてくる」と言葉にする。
売野:坂本さんに使う言葉っていうのは自分の歴史にはない、あまり使わないような言葉を使いました。この頃にこのスタイルができちゃったので、これでいろいろ実験していろんなことを書くんですよ。その最適の曲が東京パフォーマンスドールの『キスは少年を浪費する』っていうわけが分からないやつね(笑)。でもよくディレクターは書かせてくれたなって。
亀田:でも沁みる言葉ですけどね。意味を持ちますよね。想像の余地というか。
12月13日(金)、14(土)、15日(日)には東京・よみうり大手町ホールで、売野の3日間にわたるトーク&ライブ・イベント「売野雅勇 MIND CIRCUS RADIO SHOW 2024」が開催される。
13日のトークはNight Tempoと売野雅勇、ゲストアーティストはNight Tempo、綾小路 翔(氣志團)、松本伊代、早見優、FANCYLABO、Max Lux。14日のトークは横山 剣と売野雅勇、ゲストアーティストは横山 剣、南 佳孝、荻野目洋子、Max Lux。15日のトークは芹澤廣明と売野雅勇、ゲストアーティストは芹澤廣明、鶴久政治、中西圭三、星乃夢奈、Max Luxと豪華なメンバーが出演する。
売野:トークとライブの二部構成で、作詞はどういう風にやるのかとかトークします。僕は聞き手ですけど、作曲はどうやってやるのかとか、どういうことをやると人の心に響くのかとか細かなノウハウとか曲の誕生秘話とかそういうことを根掘り葉掘り僕が訊きます。その後に生バンドが入ってのライブがあります。
亀田:これは勉強になるし楽しいし、昭和、平成、令和の全喜び、輝き、うれしみが入っているライブになるんじゃないかと思います。僕も行きたいです。
売野雅勇の最新情報は、DIVINEの公式サイトまで。
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