音楽、映画、エンタメ「ここだけの話」
18歳で水曜日のカンパネラのスタイリストに。清水文太が振り返る激動の“きっかけ”と未来

18歳で水曜日のカンパネラのスタイリストに。清水文太が振り返る激動の“きっかけ”と未来

アーティスト、スタイリスト、コラムニストとして活動する清水文太さんが、自身の活動内容や、水曜日のカンパネラのスタイリストだった頃のエピソード、さらには、NIKEと制作した絵本「みんなのいろいろ」を通して学んだことなどについて語った。

清水さんは東京生まれの26歳。高校生の頃からスタイリストとしてキャリアをスタートさせ、その後は文筆業やクリエイティブ・ディレクション、子ども服や絵本の制作など、様々な分野に活動の幅を広げている人物だ。

清水さんが登場したのは、俳優の小澤征悦がナビゲーターを務めるJ-WAVEの番組『BMW FREUDE FOR LIFE』(毎週土曜 11:00-11:30)。同番組は、新しい時代を切り開き駆け抜けていく人物を毎回ゲストに招き、BMWでの車中インタビューを通して、これまでの軌跡や今後の展望に迫るプログラムだ。

・ポッドキャストはこちら
https://www.j-wave.co.jp/podcasts/

水曜日のカンパネラと過ごした激動の日々

240228_shimizubunta_jwavenews2_resize.jpg

清水さんを乗せて走り出した「BMW iX xDrive40」。アーティスト・スタイリスト・コラムニストと多彩な活動を展開する理由は何なのか?――車窓に流れる風景を眺めながら、説明してもらった。

清水:僕は夜間部の高校生の頃からスタイリストをしています。そこから雑誌でのコラム執筆、絵本の制作なども行うようになり、最近では、音楽活動として、和太鼓と電子音を使ったユニットのようなものもやっています。活動内容はバラバラですが、自分の中では共通するメッセージを発信していると考えていて。みんながみんな常に元気100%で生きられないし、人によって持っているモノサシ・色も違う。そんな多様な人たちに向けて対話や話し合いをする手段を、その時々で選んで使っているような感覚なんですよね。

このようにマルチに活躍する清水さんが、その活動の起点となったスタイリストとして頭角を現したのは、音楽ユニット「水曜日のカンパネラ」のツアースタッフに加わったことがきっかけだった。

清水:学生時代、水曜日のカンパネラの初代ボーカル・コムアイが着るツアー衣装のスタイリングを担当することになりました。当時僕は18歳。ツアースタッフの中では最年少です。しかも、僕がチームに帯同した頃には既に、ライブの装飾や演出の方向性などが公演ごとで決められていって、それに合わせたスタイリングをしていました。おまけに、車や新幹線で連日移動するなど、当時はバタバタで。そのため、東京に戻って服を買い足すのではなく、現地の古着屋で探して見繕ったりしていました。

当然ながら、チームの方々は全員各分野のプロです。その人たちと同じ気持ちで働くことをいきなり求められるわけですから、人生で経験したことのないタイプの緊張を日々感じていました。一言で表すなら、一回きりが毎回あるような気持ちでした。その後、他のアーティストや、MV、広告、テレビ番組などのスタイリングをやらせていただく機会が増えたので、そのきっかけを作ってくれた水曜日のカンパネラには、すごく感謝をしています。

電子音楽と和太鼓の音楽ユニットも展開

240228_shimizubunta_jwavenews5_resize.jpg

人気アーティストを支える精鋭揃いのチームの中で、少しずつスタイリングの経験を積んでいった清水さん。この大仕事以降、着実に実績を重ねている彼は、自身のスタイリストとして強みをどう捉えているのだろうか?

清水:僕は、担当する人がどんなスタイリングをしたいのか、どんな格好をしたいのか、本人の考えや思いを含めてヒアリングし、ファッションに反映させることを意識しています。 あと、この仕事は何よりも、コミュニケーションが大事だと思っていて。本人のやりたいことがあって、できる範囲であれば自分でやればいい。でも、そこにスパイスを加えたい、客観性を持たせたいとなったときに、その解像度を上げていくことが、僕たちスタイリストの役目だと考えています。

スタイリストとほぼ同じタイミングで雑誌にコラムを連載するなど、清水さんの表現方法は一つのカテゴリーにとらわれない。その旺盛な好奇心の矛先は、音楽活動にも向けられている。

清水:学校でちょっと和太鼓をやったことがあって。広告の音楽などをDTMで作らせてもらっていた時期もあるのですが、その中で、何かもっとお腹からくる低音や生き物のような感触が足りないと感じていたんですよ。そんな感覚を持って過ごしていたのですが、当時水曜日のカンパネラで音響を担当していた方のイベントでhinaと出会いました。そこで彼女が和太鼓をしていると聞いたんです。それで、よかったら一緒にやらないかと誘いました。

hinaは、中学生のときからバンド活動をしていて、グラフィックデザイナー立花ハジメさんのバンドLOW POWERSのドラムにも抜擢されたアーティストです。彼女とはすぐに意気投合して、電子音楽・和太鼓ユニット「清水文太とhina」を結成しました。そして僕らは、東京渋谷のクラブ「contact」で開催されるカウントダウンライブにおいて最初のステージを踏むことになったんです。このとき、そもそもクラブでライブをすること自体初めてでしたから、「どうなるんだろう……」と不安だったんですけど、結果的に楽しかったですね。「またやろう」となり、以来、美術館の展示や展覧会、配信などに呼ばれて演奏しています。ライブハウスに呼ばれてガッツリやるというよりは、様々な空間に招いていただき、音と声を出し、踊る……といった具合にパフォーマンスを披露していますね。

「どこを目指しているの?」と言われたことも……



240228_shimizubunta_jwavenews3_resize.jpg

自由に表現の幅を広げていく若者に対し、眉をひそめる大人もいる。清水さんのもとには数年前まで「なにをやりたい人なの?」「どこを目指しているの?」という、苦言にも似た声が届いていたという。

清水: 20歳くらいの頃、「スタイリスト」という箱みたいなものに入れられている気がして、反発心があったんです。でも今は、スタイリストの仕事に自分なりの誇りがあって、これからも続けていきたいと思っています。だから今は、無理に仕事を変える必要もないというか。自然な流れで「これもやりたい」「あれもやりたい」と挑戦していった結果、仕事がバラバラになっていきました。ただ僕は、同じバラバラでも、根元の栄養素が一緒でそこから広げていった結果としてやりたいことが多様になった人と、やりたいことを探すために色々なことをやって「何を伝えたいんだろう?」と迷っている人の2種類がいると思っていて。僕は多分前者なんです。だから、何を言われても不安はありませんでした。もちろん、鋭角的に「これだけやります」という人より、伝わるのに時間はかかるはずです。また、扱うテーマもすごく広いし、答えを出しているわけでもない。だけど、やっていけば何か伝わるものはあるだろうという希望を抱いて活動しています。そんなわけで、言われても今は何も思いません。その言葉もその言葉でしかないなという受け取り方に変わりつつあります。

最近は子どもに関係するプロジェクトに注力

240228_shimizubunta_jwavenews6_resize.jpg

清水さんはもともと子どもと接する機会が多いそうでかつて児童館で働いていたこともあったという。そんな背景もあって最近は、子どもを対象とした2つのプロジェクトに力を注いでいた。一つは、子ども服ブランドのディレクションだ。

清水:一年半ほど前に、子ども服ブランド「色と生きるを作る服」のプロジェクトに取り組みました。もともと大人の洋服を作ってほしいと依頼されたのですが、それだと僕が関わった意味が……と考え、その会社の方々と話し合いをした結果「子供服を作ろう」となったんです。それで、ロンパースと靴下のほか、大人用のTシャツと靴下も一緒に作りました。この売り上げの一部を、微力ですが子ども関係の施設にドネーションしようと思って話をしています。

もう一つは、NIKEが制作した絵本「みんなのいろいろ」の執筆・制作だ。この本は、スポーツや社会生活におけるジェンダーバイアスへの気づきや理解を深めることがテーマとなっている。

清水:「みんなのいろいろ」は、LGBTQIA+の子どもたちだけが対象というより、むしろ、周りにいる大人たちやいわゆる「マジョリティ」と呼ばれる人たちへの、「こういうマイノリティ性が自分にはあるんだ」という気付きになればいいという想いから、できたお話です。 そこで、学術的な齟齬がない、でも子どもでも理解ができるような文章を書いてくれる人がいないかとなり、僕に声がかかったそうです。 お話の内容は、色が2つに分かれた世界で困ったことが起こり、話し合いをして自分の色に気付くというもの。この物語をきっかけに、子どもだけでなく、読み聞かせする大人や周りのお父さん、お母さん、みんなで話が出来たらいいという願いを込めて作りました。LGBTQIA+がテーマですが、もっとシンプルな話というか。たとえば、「着替えるところがないと困るよね」とか「本当は着たい服があるのに着てはダメと言われるのは嫌だよね」とか。すごく身近でシンプルな話だと思います。

子どもがいるお母さんにこの絵本を渡したら、学校に持って行って「学校にはトイレが男子用と女子用2つしかないけど、どちらにも入れない人たちはどうしたら良いんだろう?」と具体的な話し合いをしていたみたいなんです。あとは、「もっと早くにこの絵本があったら、私が小さいときに困らなかったかもしれない」という言葉をいただいたりして。感慨深かったですし、自分自身の学びにもなりました。

小沢健二さんの講義を受け「最高でした」

様々な分野に表現手段を求め広げていく清水さんだが、そのインスピレーションの源を探ると、ある大物アーティストの名前が挙げられた。

清水: 2023年9月30日に東京大学駒場キャンパスの900番教室で行われた、小沢健二さんの「東大900番講堂講義」を受講しました。小沢さんのお話を聞いて、自分が伝えたいことと共通していると思いましたし、色んなことを知ったうえでどう考えていくべきか、というか……。すごく大きな種と植木鉢とじょうろを一気に渡されたみたいな気持ちになりました。共感もしたし、ちゃんとみんなで育てていって、自分が思う思想の野菜みたいなものをどんどんカラフルに育てていきたいと感じましたね。ここで学んだことを周りの人たちにも伝えたいと思い、講義でもらった教科書を一人ひとりに見せて周ろうとしているところです。すごく刺激を受けたし、自分の中でのやりたいことがより明確化したから、講義を受けていて「やっぱり小沢健二さんってすごいな」と感じました。最高でした。

「考える種を作ってくれる先生」。このように小沢健二さんへの敬愛の念を表現する清水さん。そんな彼にとって、「未来への挑戦=FORWARDISM」とは?

清水:「僕はこう思う」という自分の考えを反映させた絵本を作ってみたいです。「みんなのいろいろ」では、東京や京都をはじめとした様々な街で読み聞かせを行っているのですが、自分が考えたお話の絵本で同じことをやりたくて、そのための準備を進めています。また、絵本執筆に加えて、スタイリストも音楽も続けて、それぞれを混ぜ合わせていきたいです。人生って色んなものが重なって、色んな人たちが集まって希望や願望が混ざり合った結果、出来上がっていると思うので。とにかく、今だからできることを繰り返して生きていきたいです。それが結果的に未来に繋がる気がします。

(構成=小島浩平)

この記事の続きを読むには、
以下から登録/ログインをしてください。

  • 新規登録簡単30
  • J-meアカウントでログイン
  • メールアドレスでログイン
番組情報
『BMW FREUDE FOR LIFE』
毎週土曜
11:00-11:30