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保育園の先生を、子どもが「さん付け」で呼ぶ理由は? “世界と繋がる、これからの保育”をテーマに、小川紗良が聞く

保育園の先生を、子どもが「さん付け」で呼ぶ理由は? “世界と繋がる、これからの保育”をテーマに、小川紗良が聞く

「阿久根めぐみこども園」と「風の丘めぐみ保育園」が実践している、保育への取り組みについて注目した。

この内容をお届けしたのは、J-WAVEで放送中の番組『ACROSS THE SKY』(ナビゲーター:小川紗良)のワンコーナー「WORLD CONNECTION」。9月24日(日)のオンエアをテキストで紹介。

「とおまわり」初のリアルイベントを開催!

小川紗良が主宰する「とおまわり」は、「ときめく遠回りをしよう」をコンセプトに、読みもの・映像作品・暮らしの道具などを届けるプロジェクト。9月18日(月・祝)、プロジェクト初のリアルイベント「出張!道の駅 阿久根」を下北沢BONUS TRACKで開催した。

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小川:私の予想をはるかに超え、たくさんの方に来ていただき嬉しかったです。そこで映像の上映とトークショーをおこないました。映像は私が今作っているドキュメンタリー作品『ちいさなせかい』のパイロット版を上映しました。

『ちいさなせかい』は保育園の先生、保護者、子どもたちの日々を追ったドキュメンタリー作品。保育士資格を取得した小川が、保育園のリアルな日常に迫っている。

小川:保育って外側から見て「遊んでいるだけ」というイメージを持たれちゃったりしますけど、実際はどんなことが起きているのか、保育現場の現状ってどうなっているのかわからないじゃないですか。それを少しずつ世の中に見せて、街、地域のみんなで子どもたちを見守っていく世界が広がっていけばいいなという思いで作っています。

「阿久根めぐみこども園」の保育プログラムに注目

『ちいさなせかい』の上映後、「世界と繋がる、これからの保育」をテーマにトークショーがおこなわれた。ゲストに登場したのは、鹿児島阿久根市の「阿久根めぐみこども園」の理事長・輿水 基さんと、東京都世田谷区の「風の丘めぐみ保育園」の園長・大野じゅんさんだ。ここではトークショーの模様をテキストで紹介する。

全国の保育関係者の関心を集めている「阿久根めぐみこども園」が東京に進出し、世田谷に「風の丘めぐみ保育園」が誕生した。

小川:まずは、めぐみ保育園の保育に対する理念や思いについて。阿久根めぐみこども園」から世田谷の保育園に受け継がれた思いがドキュメンタリー作品にも出てきました。「遊びの中の学び」「結果より過程を」「自然とふれあう」「ケンカや小さなケガ」という受け継がれた思いについて、教えていただけますか?

大野:いわゆる質の高い保育を目指そうとしているたくさんの同志の方々が大事にしていることと重なってくると思います。幼児教育って小学生以降の教育の前倒しである英才教育のようなものではなくって。子どもたちが夢中になって遊ぶなかにこそ、子どもたち生きていくうえで必要な力が身に着くんですよね。遊びのなかに学びがあるというのは、子どもに携わる人にとっては大切な言葉になっています。結果より過程というのも、子ども時代は「上手にできたね」とか「〇〇が綺麗だね」じゃなくて、そこまでの過程をどんな風に過ごしたのかを(重視する)。私たちが普段保育していくなかで、過程こそ目を向けるようにしようと園のみんなとも言っているところです。

東京で暮らす子どもたちは、どのような形で自然と触れ合うことができるのだろう?

大野:阿久根の豊かな自然のなかでの保育を世田谷でやっていくとなったとき、大丈夫かなという思いはありました。でも、大自然のなかだけじゃなくて、街のなかにもたくさん神秘的なものとか自然、生き物と触れ合うことはできるんです。世田谷のメンバーはアンテナを張り巡らせて子どもたちが自然と過ごせるようにしています。「ケンカや小さなケガ」に関してですが、やっぱり都会の保護者の方は子どものケガに敏感でして。ですが、日々保育をして、保護者の方と話していくなかで、小さなケガは遊びのなかの学びに繋がりますし、子どもの成長にとって欠かせないし、すごく貴重な経験だということを伝えていけたらいいなと思っています。

小川:「ケンカや小さなケガ」って一見ネガティブに見えますし、保護者としてはなるべく避けたいと想像します。これがあえて入っているところが面白いなと感じました。こちらはどこかのカリキュラムで入っているものなのでしょうか?

輿水:受け売りのような形ですね。ケガをする権利があるという言葉を、ドイツのバイエルン州の幼児教育カリキュラムのフレーズをいただきました。

大人がいいと思うものを教育過程に詰め込むことは、必ずしも子どもにとっていい成長には繋がらないと輿水さんは語る。

輿水:映像にも出てきましたけども、子どもたちがケンカしたり転んでケガをしてしまうことは避けようがない部分なんですね。逆にそれを避けようとすると、子どもをどこかに押し込めておいて何も動かないようにすることになる。ケンカもケガもしないだろうけども、その代わり子どもは育ちません。そういったところにも意識を向けておいていただかないと、子どもたちの成長の保障ができかねるところがあります。もちろん、大きなケガをさせたいという思いはまったくありません。大きなケガを起こさないよう、子どもたちが気づく力・避ける力を身につけるためには、避けることができないことがあるというのを、大人の私たちも意識を向けたいんですね。

小川:園内研修のなかで、子どもたちが転び方を学ぶ時期でもあるとおっしゃっていて、それはたしかだなと思いました。

子どもが先生を“さん付け”する理由

小川は世田谷の園で子どもたちが先生に対し、「さん付け」で呼んでいたことが印象的だったようだ。

小川:どういう思いでやっていることなのでしょうか?

大野:子どもにとって信頼できる大人であれれば、呼び名は何でもいいと考えています。私たち大人はみんなにとって味方で、偉い人が威張っているのではなくて、一緒に楽しく生活していこうねってことを毎日表現していたんですね。もちろん、先生と呼んでも対等で親しめる人はたくさんいると思うんですけど、「〇〇さん」と呼ぶことで、そばにいつもいる大人みたいなことがわかりやすくなるかなと思い、呼び始めました。呼び名は人の距離感を最初にある程度演出するところがあると思っているので、今はさん付けにしてよかったかなと思っています。

小川:私もですが、呼ばれる側も距離が近付いている感じがします。先生と呼ばれるより、気軽に声をかけてくれる感じがするなと思います。保育と義務教育は地続きの問題なのかなと感じるんですが、基さんはどうお考えですか?

輿水:それこそ呼び方でいくと、世田谷では私は基さんと呼ばれていて、阿久根に帰ると園長先生なんですね。私自身、以前は「先生にちょっと見せてごらん」みたいな物言いだったんです。先生として偉そうに話していたわけではないのですが、先生と“呼ばせてもらえない”状況に身を置いたときに、伝え方が全然変わったんですよ。それが面白かったですし、より対等な形じゃないと言葉が出てこなくなるのがすごく新鮮だったなと思っています。歴史として先生と呼び続けているので、世田谷は世田谷でやってきている面白さから気付くことを、相互にフィードバックできると面白いなと思っていて。

今まで当たり前だと思っていたことを変えてみるとことで、学校教育にも気付きが生まれるのではないかと輿水さんは指摘する。

輿水:幼児教育のアプローチが少しでも義務教育以降とうまく連携できることで、面白い物の見方とか私たちに足りないものを補え合えたりすると、いい連携も含めて見えてくるんじゃないかなと思っております。

小川:トークショーの模様をお送りしました。喧嘩や呼び方など、先生は日々いろんなことを考えて保育をおこなっていることが伝わったら嬉しいです。『ちいさなせかい』も引き続き制作していくので、完成を楽しみにしていただけると嬉しいです!

『ACROSS THE SKY』のワンコーナー「WORLD CONNECTION」では、ゲストを招き世界の最新カルチャーに迫る。オンエアは9時20分頃から。

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