WONKやmillennium paradeでも活躍する音楽家の江﨑文武が、ターニングポイントとなった出会いについて語った。
江﨑が登場したのは、6月24日(土)に放送されたJ-WAVEの番組『BLUE IN GREEN』(ナビゲーター:甲斐まりか)のワンコーナー「LIFE WITH GROOVE」。
江崎は5月31日にファーストアルバム『はじまりの夜』をリリースした。
甲斐:『はじまりの夜』を私も聴きました。いい意味で1曲1曲の境界線がない感じがしました。通して聴くと壮大な1曲にも聴こえるくらい、1枚のアルバムが流れているというか。いろいろな光や温かさも感じられて、すごくじっくり聴いちゃいました。
江崎:ありがとうございます。通して聴いていただくというのは当初の狙い通りです。曲と曲のあいだがシームレスにつながっていくという印象を受けていただいたのは、すごく作り手としてうれしいことかなと思います。
甲斐:本当に心地よくて、1人の時間に聴きたくなるような感じがします。
江崎:まさに1人の時間に聴いてほしいなと思って作った音楽です。音楽はどうしても複数人で聴いて盛り上がるみたい聴かれ方が多いかなと思うので。それよりはじっくり自分と向き合い時間のおともにしてほしいなと。
甲斐:静かな夜にピッタリだなと思いました。
江崎:すごく簡単に言えば、空間の照らし方についての話が導入で書かれているんです。西洋は空間の照明の作り方としてなるべく陰になる場所ができないように照明を作ると。最近の日本のオフィスとかもそうですよね。蛍光灯とかで全部を均一に照らすことが大事とされていますが、かつて日本の家屋のなかでは、むしろ陰影を基調として空間を作っていたと。その考え方が大きく転換してしまったのが明治維新期を経て欧米化していく日本で、そういった日本の空間を照らす感覚みたいなものが変わってしまった、というところから、そこを切り口に、失われてしまった日本の美学みたいなことについて、いろいろな考察をめぐらすというような本になっています。自分自身、いろいろ20代に音楽の仕事をいっぱいやってきて、このあいだ30歳になったんですけど、自分のルーツに向き合うことがすごく大事なことだなと、この10年間ですごく思いまして。そんななかである種、谷崎の『陰翳礼讃』も、自分たちのルーツに向き合うみたいなことをやった本なのかなと思っていて。そこにすごくシンパシーを感じた作品でした。
甲斐:そういった作品から、ファーストアルバムのインスピレーションというか、どういった部分を音に変えられたんでしょうか。
江崎:みんなで盛り上がって聴く音楽、フェスとかで楽しめるような音楽がある種、西洋的というか欧米的な文脈にあるとすると、僕は1人のときにいわゆる影的な気持ちで音楽を聴くことを大事にしたいなと思っていて。そのマインド的な部分を『陰翳礼讃』からかなりインスピレーションを受けました。あとは光について描く音楽作品を作ろうと思って。これに関しては、ドビュッシーの『月の光』や『水の反映』など、光をテーマにした作品の先行事例がたくさんあるんです。そういったものの文脈に自分の音楽を位置づけるという狙いで、『陰翳礼讃』をテーマにしました。
甲斐:そうやって改めて聴くと、また音の聴こえ方が変わってくるかなと思います。
江崎:ぜひアルバムを聴いていただく際に「この曲はこういう光っぽいな」みたいなことを思索してもらえばいいなと。
江崎:電波に乗せて話すのもちょっと恥ずかしいんですけど、やはり荒田と出会ったのは一番大きかったなと思っていて。実はさっきもオンエアにのってないタイミングでお話していたんですけど、僕がすごくお世話になったというか、荒田と出会ったきっかけのジャズサークルの方と甲斐さんが実は共通の友人で。
甲斐:そうなんですよ、つながっていて。
江崎:その早稲田のジャズ研で荒田と出会ったのが、WONK結成のきっかけになりました。「音楽で生きていけるかもしれない」という強い自信につながったのは、WONKの活動があったからなので、本当にすべてにおいて原点だなと思います。
【関連記事】“エグすぎるドラム”とは? WONK・荒田 洸の未来を変えた一曲
甲斐:WONKは今年結成10周年ですよね。おめでとうございます。
江崎:ありがとうございます。
甲斐:お互いの成長や変化は10年前とくらべて変わったり感じたりしていますか?
江崎:根っこの部分があまり変わらないというか。最初からわりと仲のいいバンドだなとは思っていたので。メンバーによって「いや、全然仲よくないですよ」とかいうメンバーもいるんですけど、たぶん仲がいいんです(笑)。
甲斐:(笑)。
江崎:みんながそれぞれ10年前に言っていた「深めていきたいところ」みたいなことを着実にやっていっているなという印象があって。ドカンとなにか大きな変化が訪れるみたいなことはいまのところ僕らのなかにはないですけど、かなり潮干狩り的にというか、ちょこちょこいい感じに掘り下げているんじゃないかなと思っています。その地道感が僕らっぽくていいなと思っています。
甲斐:深めていきたいところはどういう部分なんですか?
江崎:それぞれにいろいろあって。うちのボーカル(長塚健斗)だと「食のことも仕事にしていきたい」というのはずっと前から言っていましたし、うちのリーダーはやはりヒップホップがルーツにあって「ビートを突き詰めていきたい」という話はしていました。僕は僕でビル・エヴァンスへの憧れみたいなところはずっと大事にしてきたので「内省的で美しい音楽を作っていきたい」みたいなことはずっと思っています。ベースの井上 幹はWONKを始めたときはまだミキシングエンジニアとしての仕事とかをやっていなかったんですけど「レコーディングとかミキシングとか自分でやりたいんだよね」みたいな話はしていて。それがいまやもう、むしろミキシングとかのほうがボリュームが大きくなってきているんじゃないかなというくらい活躍しているので。
甲斐:みなさん個々の目標を持ちつつも4人で進んで行くという。これからもその姿が見えますね。
江崎:地方公演とかでおいしいものを食べて、なんか、そういうことを繰り返しているだけなんでしょうけどね(笑)。
江﨑の最新情報は、公式サイトまで。
『BLUE IN GREEN』のワンコーナー「LIFE WITH GROOVE」の放送は毎週土曜日の12時55分ごろから。
江﨑が登場したのは、6月24日(土)に放送されたJ-WAVEの番組『BLUE IN GREEN』(ナビゲーター:甲斐まりか)のワンコーナー「LIFE WITH GROOVE」。
江崎は5月31日にファーストアルバム『はじまりの夜』をリリースした。
1人の時間に聴いてほしいアルバム
江崎は4歳からピアノ、7歳から作曲を学び、東京藝術大学音楽学部卒業後、東京大学大学院修士課程修了、WONK、millennium paradeでキーボードを務めるほか、King Gnu、Vaundy、米津玄師など、数多くのアーティスト作品にレコーディング、プロデュースで参加。映画の劇伴音楽も手掛けるほか、音楽レーベルの主宰、芸術教育への参加など、さまざまなフィールドで活動している。甲斐:『はじまりの夜』を私も聴きました。いい意味で1曲1曲の境界線がない感じがしました。通して聴くと壮大な1曲にも聴こえるくらい、1枚のアルバムが流れているというか。いろいろな光や温かさも感じられて、すごくじっくり聴いちゃいました。
江崎:ありがとうございます。通して聴いていただくというのは当初の狙い通りです。曲と曲のあいだがシームレスにつながっていくという印象を受けていただいたのは、すごく作り手としてうれしいことかなと思います。
甲斐:本当に心地よくて、1人の時間に聴きたくなるような感じがします。
江崎:まさに1人の時間に聴いてほしいなと思って作った音楽です。音楽はどうしても複数人で聴いて盛り上がるみたい聴かれ方が多いかなと思うので。それよりはじっくり自分と向き合い時間のおともにしてほしいなと。
甲斐:静かな夜にピッタリだなと思いました。
谷崎潤一郎の随筆をコンセプトに
江崎が『はじまりの夜』のコンセプトにしたのが、谷崎潤一郎の随筆『陰翳礼讃(いんえいらいさん)』だったそうで、その理由を解説した。江崎:すごく簡単に言えば、空間の照らし方についての話が導入で書かれているんです。西洋は空間の照明の作り方としてなるべく陰になる場所ができないように照明を作ると。最近の日本のオフィスとかもそうですよね。蛍光灯とかで全部を均一に照らすことが大事とされていますが、かつて日本の家屋のなかでは、むしろ陰影を基調として空間を作っていたと。その考え方が大きく転換してしまったのが明治維新期を経て欧米化していく日本で、そういった日本の空間を照らす感覚みたいなものが変わってしまった、というところから、そこを切り口に、失われてしまった日本の美学みたいなことについて、いろいろな考察をめぐらすというような本になっています。自分自身、いろいろ20代に音楽の仕事をいっぱいやってきて、このあいだ30歳になったんですけど、自分のルーツに向き合うことがすごく大事なことだなと、この10年間ですごく思いまして。そんななかである種、谷崎の『陰翳礼讃』も、自分たちのルーツに向き合うみたいなことをやった本なのかなと思っていて。そこにすごくシンパシーを感じた作品でした。
甲斐:そういった作品から、ファーストアルバムのインスピレーションというか、どういった部分を音に変えられたんでしょうか。
江崎:みんなで盛り上がって聴く音楽、フェスとかで楽しめるような音楽がある種、西洋的というか欧米的な文脈にあるとすると、僕は1人のときにいわゆる影的な気持ちで音楽を聴くことを大事にしたいなと思っていて。そのマインド的な部分を『陰翳礼讃』からかなりインスピレーションを受けました。あとは光について描く音楽作品を作ろうと思って。これに関しては、ドビュッシーの『月の光』や『水の反映』など、光をテーマにした作品の先行事例がたくさんあるんです。そういったものの文脈に自分の音楽を位置づけるという狙いで、『陰翳礼讃』をテーマにしました。
甲斐:そうやって改めて聴くと、また音の聴こえ方が変わってくるかなと思います。
江崎:ぜひアルバムを聴いていただく際に「この曲はこういう光っぽいな」みたいなことを思索してもらえばいいなと。
WONK結成のきっかけになったリーダーとの出会い
江崎のいまを形作った体験や出会いを訊く。江崎のターニングポイントとなったのはWONKのリーダー荒田 洸との出会いだったという。江崎:電波に乗せて話すのもちょっと恥ずかしいんですけど、やはり荒田と出会ったのは一番大きかったなと思っていて。実はさっきもオンエアにのってないタイミングでお話していたんですけど、僕がすごくお世話になったというか、荒田と出会ったきっかけのジャズサークルの方と甲斐さんが実は共通の友人で。
甲斐:そうなんですよ、つながっていて。
江崎:その早稲田のジャズ研で荒田と出会ったのが、WONK結成のきっかけになりました。「音楽で生きていけるかもしれない」という強い自信につながったのは、WONKの活動があったからなので、本当にすべてにおいて原点だなと思います。
【関連記事】“エグすぎるドラム”とは? WONK・荒田 洸の未来を変えた一曲
甲斐:WONKは今年結成10周年ですよね。おめでとうございます。
江崎:ありがとうございます。
甲斐:お互いの成長や変化は10年前とくらべて変わったり感じたりしていますか?
江崎:根っこの部分があまり変わらないというか。最初からわりと仲のいいバンドだなとは思っていたので。メンバーによって「いや、全然仲よくないですよ」とかいうメンバーもいるんですけど、たぶん仲がいいんです(笑)。
甲斐:(笑)。
江崎:みんながそれぞれ10年前に言っていた「深めていきたいところ」みたいなことを着実にやっていっているなという印象があって。ドカンとなにか大きな変化が訪れるみたいなことはいまのところ僕らのなかにはないですけど、かなり潮干狩り的にというか、ちょこちょこいい感じに掘り下げているんじゃないかなと思っています。その地道感が僕らっぽくていいなと思っています。
甲斐:深めていきたいところはどういう部分なんですか?
江崎:それぞれにいろいろあって。うちのボーカル(長塚健斗)だと「食のことも仕事にしていきたい」というのはずっと前から言っていましたし、うちのリーダーはやはりヒップホップがルーツにあって「ビートを突き詰めていきたい」という話はしていました。僕は僕でビル・エヴァンスへの憧れみたいなところはずっと大事にしてきたので「内省的で美しい音楽を作っていきたい」みたいなことはずっと思っています。ベースの井上 幹はWONKを始めたときはまだミキシングエンジニアとしての仕事とかをやっていなかったんですけど「レコーディングとかミキシングとか自分でやりたいんだよね」みたいな話はしていて。それがいまやもう、むしろミキシングとかのほうがボリュームが大きくなってきているんじゃないかなというくらい活躍しているので。
甲斐:みなさん個々の目標を持ちつつも4人で進んで行くという。これからもその姿が見えますね。
江崎:地方公演とかでおいしいものを食べて、なんか、そういうことを繰り返しているだけなんでしょうけどね(笑)。
江﨑の最新情報は、公式サイトまで。
『BLUE IN GREEN』のワンコーナー「LIFE WITH GROOVE」の放送は毎週土曜日の12時55分ごろから。
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