岸井ゆきのが主演女優賞! 映像や音響も高評価の映画『ケイコ 目を澄まして』【第77回毎日映画コンクール】

映画『ケイコ 目を澄まして』が、第77回毎日映画コンクールで日本映画大賞をはじめとする5つの賞を受賞した。表彰式は2月14日(火)、めぐろパーシモンホールにて開催。当日は、三宅唱監督や、同作で女優主演賞を獲得した岸井ゆきのが登壇した。

毎日映画コンクールは、1946年に毎日新聞社とスポーツニッポン新聞社によって創設された映画賞。演技、作品が対象となるほか、撮影や美術、録音などスタッフの技術に対しても評価を行う。また、日本映画を代表する女優の一人でもある田中絹代の名を冠する賞など、幅広い部門を設けていることが特徴だ。

各賞は、映画評論家やジャーナリスト、専門家など約80人が選考に関わる。今回は2022年1月1日から12月31日まで14日間以上、国内で劇場公開された作品を対象(※)に全22部門が選出された。

※アニメーションおよびドキュメンタリー部門は、同期間に完成もしくは上映された作品

手話とボクシングでの表現に励んだ『ケイコ 目を澄まして』

『ケイコ 目を澄まして』は、聴覚障害と向き合いながら実際にプロボクサーとしてリングに上がった小笠原恵子の生き方にインスピレーションを得て制作された作品だ。同作は日本映画大賞のほか、女優主演賞、監督賞、撮影賞、録音賞の今回最多となる5冠を獲得。デジタルではなく16ミリフィルムを使った空気感のある映像や、音楽を使わずに音響のきめ細かな工夫で臨場感を作り出すことなど、映画表現における評価を高く受けた。ストーリー表現においては、主人公であるケイコの心の声をもっと知りたかったという声が上がる一方で、「いかに社会が聞こえる人のためのコミュニケーションが前提であるかが描かれていて、内面を必ずしもわかりやすく提示しなくてもいいと感じる」と選考委員で作家の朝吹真理子が語るように、肯定的な意見も見られた。

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女優主演賞を獲得した岸井は、「スタッフさん、監督、誰一人欠けても成り立たなかった作品」と話す。映画を撮り始める3カ月前から、ボクシングと手話の表現を身に付けるためにレッスンに通った岸井。ボクシングの稽古初日には、監督も顔を出したという。当時を三宅監督は「僕自身、ボクシングに詳しくなかったんです。だから一度自分でも経験しないことにはわからないと思いました。岸井さんが初めてテーピング巻いてグローブをするところに立ち会ったときに、僕も同じようにやってみて、隣で『邪魔にならないかな?』と思いつつ、一緒に練習をさせていただきました」と振り返る。

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岸井は準備を含め、撮影に携わった期間を「私はこの制作チームじゃなかったら、もしかしたら『一人で頑張っている』と思って孤独にさいなまれている時間があったかもしれない。だけど、準備期間にも監督が一緒にトレーニングをしてくれたり、スタッフの方々が練習を見に来てくださったりと、『この期間からこの映画は始まっている』ということを本当に実感することができました。だからこそ、自分のやるべきことに専念できたし、それぞれスタッフの映画への愛が言葉にせずとも、ものすごく伝わってきたんです」と語る。

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「映画は総合芸術だと思うのですが、スクリーンの真ん中に映る主演が素晴らしくないとこういう評価はいただけないと思う。そういった意味で、岸井さんに誠心誠意この役に取り組んでいただいたからこその受賞だと思っています」と三宅監督が感謝のコメントを述べるなど、『ケイコ 目を澄まして』制作チームに携わったスタッフ、キャストからは終始、周りへの感謝が語られた授賞式となった。


<第77回毎日映画コンクール 受賞作品>
日本映画大賞:『ケイコ 目を澄ませて』(三宅唱監督)
日本映画優秀賞:『夜明けまでバス停で』(高橋伴明監督)
外国映画ベストワン賞:『ベルファスト』(ケネス・ブラナー監督)
男優主演賞:沢田研二(『土を喰らう十二ヵ月』)
女優主演賞:岸井ゆきの(『ケイコ 目を澄ませて』)
男優助演賞:窪田正孝(『ある男』)
女優助演賞:伊東蒼(『さがす』)
スポニチグランプリ新人賞(男性):番家一路(『サバカン SABAKAN』)
スポニチグランプル新人賞(女性):嵐莉菜(『マイスモールランド』)
監督賞:三宅唱監督(『ケイコ 目を澄ませて』)
脚本賞:早川千絵監督(『PLAN75』)
撮影賞:月永雄太(『ケイコ 目を澄ませて』)
美術賞:今村力、新田隆之(『死刑にいたる病』)
音楽賞:青葉市子(『こちらあみ子』)
録音賞:川井崇満(『ケイコ 目を澄ませて』)
アニメーション映画賞:『高野交差点』(伊藤瑞希監督)
大藤信郎賞:『犬王』(湯浅政明監督)
ドキュメンタリー映画賞:『スープとイデオロギー』(ヤン・ヨンヒ監督)
TSUTAYA DISCAS 映画ファン賞・日本映画部門:『チェリまほ THE MOVIE ~30 歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(風間太樹監督)
TSUTAYA DISCAS 映画ファン賞・外国映画部門:『トップガン マーヴェリック』(ジョセフ・コジンスキー監督)
田中絹代賞:寺島しのぶ
特別賞:中島貞夫監督

(取材・文・撮影=本川由依)

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