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Pii『カキツバタ』を作ったのは誰? 小沢健二とBIOMANが噂の真相を語る

Pii『カキツバタ』を作ったのは誰? 小沢健二とBIOMANが噂の真相を語る

小沢健二とBIOMAN(バイオマン)が、Piiの楽曲『カキツバタ』にまつわる噂の真相や曲作り、デザインへのこだわりなどについて語った。

トークを展開したのは、J-WAVE(81.3FM)×「MUSIC FUN !」連動企画である、深夜の音楽座談プログラム『WOW MUSIC』。“すごい”音楽をつくるクリエイターが“WOW”と思ういい音楽とは? 毎月1人のクリエイターがマンスリープレゼンターとして登場し、ゲストとトークを繰り広げる番組だ。12月は、PiiことAwesome City ClubのPORIN(Vo)がマンスリープレゼンターを務めている。

ここで紹介する番組のオンエアは12月10日(土)。

Piiの楽曲『カキツバタ』にまつわる“噂”

PORINが2人をゲストに呼んだのは、Piiの楽曲『カキツバタ』について「2人が作曲者なのではないか」という噂があることが理由だと切り出した。しかし実際には2人が関わった楽曲ではないという。

Pii「カキツバタ」Music Video

小沢:そもそも僕がスチャダラパーのBoseくんに『カキツバタ』という名曲を教えていただいて「いい曲だな」と思って表参道の路上でカバーしたんです。そうしたら「これ、小沢健二っぽい」みたいなことを言われたんだよね。これは謎の作曲者だからね。謎の2人が作曲していて、その1人が僕なんじゃないかというのがあって。それと千紗子と純太(バイオマン)がやっているバンドの音に確かに似ているんです。それでバイオマンにも嫌疑がかかって、この謎の作曲者2人が僕らなのではないかという疑惑が立ったんです。

PORIN:おふたりの関係はもともとあったんですか?

バイオマン:僕が千紗子と純太のほかにneco眠るというバンドをやっているんですが、そのライブに来ていただいたんです。

小沢:僕はneco眠るが大好きで、最近も観ました。

PORIN:私も観に行きました。

バイオマン:ありがとうございます。

番組では千紗子と純太の『若光物語』をオンエア。楽曲を聴きつつ『カキツバタ』の共通点について話し合った。

小沢:バイオマンが『カキツバタ』の作曲をしている、音を作っているんじゃないかと言われる理由は、音が似ているから。(『若光物語』と)ドラムが同じじゃない?

バイオマン:実は『若光物語』はプラグインなんです。プラグイン感も言われてみれば……。

小沢:あとバイオマンはもともとドラマーだよね。

PORIN:そうなんですね。

小沢:『カキツバタ』もドラムがけっこうすごいんですよ。

PORIN:かっこいいですよね。

小沢:そのへんが疑惑をかけられる理由。僕に疑惑がかけられる理由は、サビのメロディ感というか、ちょっと変なサビなんですよね。『カキツバタ』がリリースされたときに、けっこうミュージシャン界隈では話題になったんです。SEKAI NO OWARIのSaoriさんが僕にいきなりショートメールで「これ、小沢さんでしょ?」ぐらいの勢いできて。

PORIN:(笑)。

小沢:作曲している側から見ると、確かにあの『カキツバタ』のサビって変なんですよ。

PORIN:具体的に言うと?

小沢:ターンと言って、サビって2回繰り返すじゃないですか。そのサビの繰り返し方が確かに僕っぽくて。早めに切り上げるというか。

バイオマン:小節が足りないというか。2拍多いとか2拍少ないのは、けっこうビートルズとかであるんですけど。

小沢:僕もよくやります。

バイオマン:1小節まるまるというのは小沢さんがよくやっている。

小沢:僕がやりがちな、拍がちょっと多すぎるとか足りなすぎるとか。バート・バカラックという人がそもそもとても上手で、ちょっと長くしたり短くしたり、普通に回らなくて癖があるように作る。それが『カキツバタ』にはあって。だから作曲技術としては僕に似ている。

PORIN:歌詞もけっこう言われていましたよね。

小沢:言われますね。

PORIN:表現が文学的じゃないですか。

小沢:なるほど。文学部卒なのでそれはあるかも。

『カキツバタ』のカバーを表参道で披露した小沢は、この曲がコロナ禍に作られたものであることに注目した。

小沢:すごく困難のなかにいる気持ちを歌っていて。あれは2年前?あの時代PORINさんはどうでした?

PORIN:すごく病みかけてました。生きるのが窮屈すぎてしんどかったです。そもそもこの『カキツバタ』を作るときに2019年ぐらいから動き始めていたんです。作曲者の方に自分の生い立ちとかルーツを全部話して。

小沢:それでああいう歌詞なんだ。

PORIN:だからお父さんが出てきたりするんです。

小沢:あれは実話なんですね。

PORIN:はい。

小沢:そういう切実さがあるんですね。

PORIN:だから私のご先祖さまがすごく大喜びしているようで、出来上がったときに大号泣しちゃって(笑)。

バイオマン:めっちゃいい話ですね。

小沢:苦しさのなかから自分を踏みしめつつ生きるみたいな、そういう切実さみたいなのをすごく『カキツバタ』という曲には感じたんです。カバーするときにはすごく熱が入って。僕がカバーした当時、表参道はライトアップがなくなっていたんです。

PORIN:真っ暗でしたね。

小沢:表参道から光が消えて、街が本当に元気がなくなっているとき。誰もいない表参道に向かって1人で、当時あったオリエンタルバザーという、取り壊されてしまった名物の建物があったんですけど、その前で1人歌って、すごく気持ちが入って。やっぱりコロナ禍ならではの曲という感じがすごくします。

古さを感じさせない小沢の楽曲

PORINは「小沢の楽曲は時代が経っても古さを感じさせない」とコメント。小沢は自身の曲作りに対する考え方について語った。

小沢:90年代というと、90年代の音楽のタイプがあってそれをやるみたいなのがあるじゃないですか。そういうことを僕は一切やらないので。そのときのトレンドを聴くのは好きなんですけど、自分がやっているのはそういうのを追いかけることじゃなくて、なにか書き留めていくというか。もともとわりと文学チックに作っているので、音はシンプルなほうがよくて。なにもやらないから『LIFE』って実はいつ録られたかよくわからないみたいな。

PORIN:時代感がない。

小沢:そういうのがもしかしたらプラスなのかもしれない。90年代の音ってやっぱりあって、「こうするとラジオで音圧があっていいよ」みたいな。

PORIN:今の時代と一緒ですね。

小沢:そのときどきのテクノロジーでこうやるとこうなるよという「最新」はあるんだけど、最新は必ず古くなるんだよ。新しいことをやるのはいいんだけど、ある意味それは古くなることを受け入れざるを得ないというのがあって。僕の曲は90年代に出たなかで一番音圧が低いと思います。無理に詰め込んでないので、わりと空間があって。それで使いやすいというか。

PORIN:新鮮に感じたのかもしれないですね。

PORINは、楽曲のジャケットやグッズのデザインも手掛ける2人にこだわりについて尋ねた。

バイオマン:上から目線になっちゃうんですけど、デザインだけじゃなくて音楽にまつわるもろもろのことを他人に頼んで、あんまりよくなったためしがなくて(笑)。

PORIN:頼んだことはあるんですね。

バイオマン:やっぱり自分ですべてパッケージするほうが、楽曲の価値観とかがガチっと固まるかなと思うので、やりたくなっちゃうんです。

小沢:僕も同じですよ。たぶんバイオマンとか僕のような、ゴツッと本人がある人はどうしても自分でやりたくなることがいろいろあるから。

小沢は「人に頼んだときの喜びもすごく感じる」としながらも、デザインのプロならではの「クセ」のようなものがあると指摘。小沢自身はプロではないからこそできる表現があると語った。

小沢:プロでやっている限りは安全をとるところはある。そのうえでキチンと表現する。だけど僕はそんなにそれを気にしない。どうせ自分のだから自分が納得すればいいんでしょ? みたいな。自分の仕事の環境として、誰かにバッツリ止められるということがないようにしていて。そうである限りは、デザインは冒険して、人が面倒くさくてやらないようなことをやるのが面白いですね。

PORIN:「どうやってこれできているの?」みたいなものがすごく多くて。「CDってこんなパッケージできるんだ」みたいな。

小沢:「ほら、こんなこともやっちゃっていいんだよ」みたいなのって、それこそ素人の立場だからこそやれるなと思って。

バイオマン:確かに。

PORIN:DIY感みたいなのも小沢さんらしいし、かわいいと思う。こちら側も勇気づけられるというか。「こういう表現していいんだ」みたいな。

小沢:それが一番いいんだよ。そこはすごく音楽でもデザインでも思っていて。ちょっと元気になるようなことが出せたらいいなと思っています。すごい労力なんだけど、物販とかも全部自分でデザインして。最近のツアーの物販は、自分が1993年にギターを弾いていた姿をポロみたいに刺繍して、よく見るとオザケンがギターを弾いているというのを作ったんだけど(笑)、そういうニヤッとしちゃうこと。

PORIN:ユーモアがすごいです。

小沢:世の中に対してどこかひっくり返すというか裏返すみたいなことがもともと好きなので、デザインはすごく自分に合っていると思う。

PORIN:技術を身につけるのは大変そうですけどね。

小沢:僕はやっぱり勉強が好きなんです。

『WOW MUSIC』はJ-WAVEで土曜24時-25時にオンエア。また、『MUSIC FUN !』のYouTubeページには、同番組のトーク動画のほか、ミュージシャンやプロデューサーによる音楽の話が数多く配信されている。

・『MUSIC FUN !』のYouTubeページ
https://www.youtube.com/c/musicfun_jp

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