のん、門脇 麦、大島優子が三姉妹役を演じる、映画『天間荘の三姉妹』が10月28日に全国ロードショー。髙橋ツトムのマンガ『天間荘の三姉妹 スカイハイ』を実写映画化したもので、臨死状態にある人間の魂がたどり着く、天空と地上の間の温泉旅館・天間荘を舞台に、宿を切盛りする天間のぞみとイルカトレーナーの天間かなえの姉妹、そして腹違いの妹・たまえを描く物語だ。
たまえ役を演じたのんは、演じる中で自身との共通点を見出したという。果たしてのんとたまえの似ている部分とは?
また、監督業や音楽活動、アート制作、さらにJ-WAVE『TOPPAN INNOVATION WORLD ERA』で毎月第三週にナビゲーターを務めるなど多岐にわたって活躍するのんに、「ここ最近影響を受けたもの」についても聞いた。
内心キレていても、なんでもなく振舞うところには共感しました。寺島しのぶさん演じる大女将に怒られるシーンでも、たまえは相手を気遣っている素振りを見せるんですけど、私の解釈だと内心カチンときているんです。でも実際には本意ではないことをポロっと言ってしまっている。そういう部分は自分にもあるなって思います。
――そうなんですね。
でも私はたまえよりも「怒り」はカジュアルな感情だと思っているんです。私、アイデアが沸くときは怒りの感情に支配されているときが多いんですよ。悔しさを抱えていたりするときに頭がよく働くんです。そういう意味では創作のエネルギーになっているというか。 怒っているときの方が言葉が溢れてくるし、それが気持ちいいという感覚もあります。たまえくらい思い悩んでしまうときもたまにあるけど、基本的にいっつも怒っています。
――ちなみに最近、どんなことで怒りの感情にスイッチが入りましたか?
昨日、スタッフさんに車で送ってもらって「ありがとうございました」と帰ろうとしたら、「明日取材があるから色々確認しといてね」って言われて「ううー……!」ってなりました。取材が嫌なんじゃなくて、宿題をやろうと思ってたのに「宿題やりなさい!」って言われた子どもの感覚と一緒です(笑)。でも普段から、そんな風にうなっていることが多いんです。前は怒って衝突することばかりだったんですけど、最近はうなることを覚えたので、人と衝突しなくなりました。
この題材をファンタジーに落とし込んで、生き残っている人たちだけの目線ではなく、亡くなった人の視点を描いてるところがすごくいいなと思いました。天界と地上の間にある町、三ツ瀬で暮らす人たちは、現世に残した人をすごく大切に思っているーー。残された人の気持ちが救われるようなストーリーだったので、そこにすごく感動を覚えました。
――完成した映画を観て、何を思いましたか?
生きている人の気持ちに寄り添って想像を働かせたことはあるけれど、亡くなった人の気持ちや、その方々が自分たちをどう見ているかはイメージしたことがなかったので、例えフィクションでも、こういう形で想像を巡らすことができたのがすごく良いなって。この作品を見ることで、気持ちが救われる人はたくさんいると思うし、そういう風に広がっていったら良いと感じています。
――現場で北村龍平監督と交わした印象的な言葉は?
北村監督はあまり演技について演出をしないというか、役者に委ねてくれる方だったんです。シリアスなシーンのときには、最小限の人数で打ち合わせをするなど、役者がやりやすい環境を整えてくれる監督だと感じました。
――では演じやすい部分があった?
私、これまでも演技する上で“演じやすい”と思ったことがないんです。とにかく一生懸命にやってるんで、そういう感覚がないんですよね。でも現場で北村監督は「気になることがあったらなんでも言ってね」と仰ってくれたので、それはすごくありがたかったです。
――そうそうたる俳優陣に囲まれてのお芝居でしたが、そういった環境で刺激を受けましたか?
キャストの皆さん、本当に素晴らしい方ばかり集まっていたので、演技するのが楽しかったです。「このセリフはこういう感じで言うんだ……!」みたいな発見が毎日あって刺激的でした。寺島さんはあの大女将役を怖く演じ、一方でチャーミングな部分も見せていて、勉強になりました。永瀬正敏さんのお父さん役も本当に絶妙で。なので、自分がこの映画を壊してはいけないという緊張感はありました。
――そんな中で撮影中、和んだ時間はありましたか?
旅館のシーンで出てきたご飯が本当においしくて、撮影が終わったあとも、みんなで食べてました。撮影した場所は、有形文化財小樽市指定歴史的建造物にも指定され選ばれている旅館だったんですけど、実際にそこの総料理長が作ってくださったものが出てきたので、感動するくらいおいしかったんです。
――そんな時間には共演者とどんな話を?
麦さんとは本当にいろんなお話をしました。釣りやキノコ狩りが好きみたいでそんなお話を聞いたり、大島さんとはハロウィントークで盛り上がって。2人とも仮装が好きなことが判明したんです。大島さんもコロナ前はハロウィンになると、仮装して外に出ていたみたいで。
――3三姉妹のコミュニケーションがばっちりだったからこそ、その空気感が演技に現れたわけですね。
おふたりのおかげですごくリラックスして臨むことができました。心が通っていると、すごく信頼感を抱きながら演技することができるので、そういう時間が役に立っていたと思います。
亡くなってしまった人とも思いが通じているという部分ですね。死んでしまった人とは言葉を交わすことはできないですけど、向こうも大切に思ってくれていることがわかると、生きることに前向きになれると思うんです。そんなことを感じられるストーリーだと思うので、観てくださる方にそんな思いを受け取ってもらえたらうれしいです。
原作は東日本大震災をテーマにした作品ですけど、震災以降も、熊本地震、最近は大雨の被害も甚大で、コロナという疫病も流行っています。そういった意味でも、たくさんの方たちが“生きていく”ことを応援できるような映画になったらいいなって思っています。
――J-WAVEでは今年の夏「INSPIRE ME!」というキャンペーンを行っていました。最後にここ最近、のんさんがインスピレーションを受けて、印象に残っているものを教えてくれませんか。
布袋寅泰さんのライブに初めて行ったんですけど、めちゃくちゃインスパイアされました。その後「のんおうちで観るライブ」っていう生配信ライブをやったんですけど、めちゃくちゃ布袋さんの動きを参考にしました。
――独特なステップとか?
そうです。ガニ股で前に進んだりする動きとかも真似しました。かっこよかったし、ユーモアがあるし、布袋さん自身が面白がっていろんな動きをしているのが好きだな〜と思えました。
――確かに布袋さんって動きそのものがエンターテインメント性に富んでますよね。
それに加え、生で見る衝撃がありました。手を広げたら「デカッ!」って思ったし、そんなことにいちいち感動しちゃって、布袋さんから大きなエネルギーをもらいました。近年の中でかなりの衝撃度ですね。曲を締めるときにいきなり振り返ることもあって「えっ。そんな曲の締め方ってあり?」っていう、驚きもあって。それを配信ライブでまるっきり真似しました(笑)。
【関連記事】のん、XRを駆使した生ライブで完璧なパフォーマンス披露! いつかは仮想空間でアバターに?
――最後の質問です。『天間荘の三姉妹』では“ひとの生と死”がテーマとなっていますが、のんさんは目標達成のため、人生の終焉を想定し、そこから逆算して人生設計をすることはありますか?
そういう風に目標を掲げたことはないですね。“こういう大人になりたい”とかは想像するんですけど、“何歳までに”と具体的な目標は決めたことがないです。生きている限りは、ずっと自分を向上させていきたいので。
――それは昔から?
はい。あっ、でも小学校の卒業文集に「1000歳まで生きる」って書いたことがあります。そのとき、12歳だったので「988年後、未来の旦那さんと銅像になる」という目標も掲げました。なので唯一、年齢が関係する目標は「1000歳まで生きて銅像になる」ということです(笑)。
<取材=中山洋平、撮影=藤木裕之、ヘアメイク=菅野史絵(クララシステム)、スタイリスト=町野泉美>
【作品情報】
『天間荘の三姉妹』
10月28日(金)から全国公開中
配給:東映
出演:のん 門脇麦/大島優子 寺島しのぶ 柴咲コウ ほか
プロデューサー:真木太郎(「この世界の片隅に」) 監督:北村龍平 脚本:嶋田うれ葉 音楽:松本晃彦
原作:髙橋ツトム『天間荘の三姉妹-スカイハイー』(集英社 ヤングジャンプ コミックス DIGITAL 刊)
公式サイト:https://tenmasou.com/
©2022 髙橋ツトム/集英社/天間荘製作委員会
また、監督業や音楽活動、アート制作、さらにJ-WAVE『TOPPAN INNOVATION WORLD ERA』で毎月第三週にナビゲーターを務めるなど多岐にわたって活躍するのんに、「ここ最近影響を受けたもの」についても聞いた。
アイデアは、怒りを感じたときに沸く
――本作は、交通事故で臨死状態になったたまえが、天空と地上の間にある温泉旅館・天間荘に導かれ、異母姉ののぞみ(大島優子)とかなえ(門脇麦)のもとで自分の魂の行方を模索していくさまが描かれています。たまえを演じてみて、キャラクターに共感する部分はありましたか?内心キレていても、なんでもなく振舞うところには共感しました。寺島しのぶさん演じる大女将に怒られるシーンでも、たまえは相手を気遣っている素振りを見せるんですけど、私の解釈だと内心カチンときているんです。でも実際には本意ではないことをポロっと言ってしまっている。そういう部分は自分にもあるなって思います。
――そうなんですね。
でも私はたまえよりも「怒り」はカジュアルな感情だと思っているんです。私、アイデアが沸くときは怒りの感情に支配されているときが多いんですよ。悔しさを抱えていたりするときに頭がよく働くんです。そういう意味では創作のエネルギーになっているというか。 怒っているときの方が言葉が溢れてくるし、それが気持ちいいという感覚もあります。たまえくらい思い悩んでしまうときもたまにあるけど、基本的にいっつも怒っています。
昨日、スタッフさんに車で送ってもらって「ありがとうございました」と帰ろうとしたら、「明日取材があるから色々確認しといてね」って言われて「ううー……!」ってなりました。取材が嫌なんじゃなくて、宿題をやろうと思ってたのに「宿題やりなさい!」って言われた子どもの感覚と一緒です(笑)。でも普段から、そんな風にうなっていることが多いんです。前は怒って衝突することばかりだったんですけど、最近はうなることを覚えたので、人と衝突しなくなりました。
プライベートなやりとりも、芝居に役立った
――原作・台本を読んで何を思いましたか?この題材をファンタジーに落とし込んで、生き残っている人たちだけの目線ではなく、亡くなった人の視点を描いてるところがすごくいいなと思いました。天界と地上の間にある町、三ツ瀬で暮らす人たちは、現世に残した人をすごく大切に思っているーー。残された人の気持ちが救われるようなストーリーだったので、そこにすごく感動を覚えました。
――完成した映画を観て、何を思いましたか?
生きている人の気持ちに寄り添って想像を働かせたことはあるけれど、亡くなった人の気持ちや、その方々が自分たちをどう見ているかはイメージしたことがなかったので、例えフィクションでも、こういう形で想像を巡らすことができたのがすごく良いなって。この作品を見ることで、気持ちが救われる人はたくさんいると思うし、そういう風に広がっていったら良いと感じています。
北村監督はあまり演技について演出をしないというか、役者に委ねてくれる方だったんです。シリアスなシーンのときには、最小限の人数で打ち合わせをするなど、役者がやりやすい環境を整えてくれる監督だと感じました。
――では演じやすい部分があった?
私、これまでも演技する上で“演じやすい”と思ったことがないんです。とにかく一生懸命にやってるんで、そういう感覚がないんですよね。でも現場で北村監督は「気になることがあったらなんでも言ってね」と仰ってくれたので、それはすごくありがたかったです。
キャストの皆さん、本当に素晴らしい方ばかり集まっていたので、演技するのが楽しかったです。「このセリフはこういう感じで言うんだ……!」みたいな発見が毎日あって刺激的でした。寺島さんはあの大女将役を怖く演じ、一方でチャーミングな部分も見せていて、勉強になりました。永瀬正敏さんのお父さん役も本当に絶妙で。なので、自分がこの映画を壊してはいけないという緊張感はありました。
――そんな中で撮影中、和んだ時間はありましたか?
旅館のシーンで出てきたご飯が本当においしくて、撮影が終わったあとも、みんなで食べてました。撮影した場所は、有形文化財小樽市指定歴史的建造物にも指定され選ばれている旅館だったんですけど、実際にそこの総料理長が作ってくださったものが出てきたので、感動するくらいおいしかったんです。
――そんな時間には共演者とどんな話を?
麦さんとは本当にいろんなお話をしました。釣りやキノコ狩りが好きみたいでそんなお話を聞いたり、大島さんとはハロウィントークで盛り上がって。2人とも仮装が好きなことが判明したんです。大島さんもコロナ前はハロウィンになると、仮装して外に出ていたみたいで。
©2022 髙橋ツトム/集英社/天間荘製作委員会
おふたりのおかげですごくリラックスして臨むことができました。心が通っていると、すごく信頼感を抱きながら演技することができるので、そういう時間が役に立っていたと思います。
布袋寅泰のライブに衝撃「大きなエネルギーをもらいました」
――のんさんがこの映画を通じて届けたいことは?亡くなってしまった人とも思いが通じているという部分ですね。死んでしまった人とは言葉を交わすことはできないですけど、向こうも大切に思ってくれていることがわかると、生きることに前向きになれると思うんです。そんなことを感じられるストーリーだと思うので、観てくださる方にそんな思いを受け取ってもらえたらうれしいです。
原作は東日本大震災をテーマにした作品ですけど、震災以降も、熊本地震、最近は大雨の被害も甚大で、コロナという疫病も流行っています。そういった意味でも、たくさんの方たちが“生きていく”ことを応援できるような映画になったらいいなって思っています。
布袋寅泰さんのライブに初めて行ったんですけど、めちゃくちゃインスパイアされました。その後「のんおうちで観るライブ」っていう生配信ライブをやったんですけど、めちゃくちゃ布袋さんの動きを参考にしました。
――独特なステップとか?
そうです。ガニ股で前に進んだりする動きとかも真似しました。かっこよかったし、ユーモアがあるし、布袋さん自身が面白がっていろんな動きをしているのが好きだな〜と思えました。
――確かに布袋さんって動きそのものがエンターテインメント性に富んでますよね。
それに加え、生で見る衝撃がありました。手を広げたら「デカッ!」って思ったし、そんなことにいちいち感動しちゃって、布袋さんから大きなエネルギーをもらいました。近年の中でかなりの衝撃度ですね。曲を締めるときにいきなり振り返ることもあって「えっ。そんな曲の締め方ってあり?」っていう、驚きもあって。それを配信ライブでまるっきり真似しました(笑)。
【関連記事】のん、XRを駆使した生ライブで完璧なパフォーマンス披露! いつかは仮想空間でアバターに?
生きている限り、向上していきたい
そういう風に目標を掲げたことはないですね。“こういう大人になりたい”とかは想像するんですけど、“何歳までに”と具体的な目標は決めたことがないです。生きている限りは、ずっと自分を向上させていきたいので。
――それは昔から?
はい。あっ、でも小学校の卒業文集に「1000歳まで生きる」って書いたことがあります。そのとき、12歳だったので「988年後、未来の旦那さんと銅像になる」という目標も掲げました。なので唯一、年齢が関係する目標は「1000歳まで生きて銅像になる」ということです(笑)。
<取材=中山洋平、撮影=藤木裕之、ヘアメイク=菅野史絵(クララシステム)、スタイリスト=町野泉美>
【作品情報】
『天間荘の三姉妹』
10月28日(金)から全国公開中
配給:東映
出演:のん 門脇麦/大島優子 寺島しのぶ 柴咲コウ ほか
プロデューサー:真木太郎(「この世界の片隅に」) 監督:北村龍平 脚本:嶋田うれ葉 音楽:松本晃彦
原作:髙橋ツトム『天間荘の三姉妹-スカイハイー』(集英社 ヤングジャンプ コミックス DIGITAL 刊)
公式サイト:https://tenmasou.com/