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宇多田ヒカルらの楽曲制作にも参加する坂東祐大、高校生で出会って衝撃を受けた楽曲は?

宇多田ヒカルらの楽曲制作にも参加する坂東祐大、高校生で出会って衝撃を受けた楽曲は?

現代音楽家 / 作曲家の坂東祐大が、自身の音楽のルーツや、土曜ドラマ『17才の帝国』(NHK総合)の主題歌として書き下ろした楽曲『声よ』に込めた想いを明かした。 坂東が登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』内のコーナー「RECRUIT OPPORTUNITY FOR MUSIC」。オンエアは6月27日(月)、28日(火)。同コーナーでは、アーティストたちの自身の楽曲に込めた想いと、彼らのアーティスト人生に大きく影響を与えた楽曲との出会いの話を通じて、音楽との「まだ、ここにない、出会い。」をお届けする。

“正統派なJ-POPを作ろう”とは思っていなかった

東京藝術大学の音楽学部・作曲科を主席で卒業し、現在では米津玄師や宇多田ヒカルといった人気アーティストの楽曲制作にも参加している坂東。ドラマや映画などの音楽を手がけたり、次世代型アンサンブル「Ensemble FOVE」の主宰・代表を務めたりと、各方面で目覚ましい活躍を繰り広げている。

そんな彼が作曲を手掛け、羊文学の塩塚モエカ(Vo, G)がボーカルと作詞を担当した楽曲『声よ』は、「J-WAVE SONAR TRAX」に選出されている。同曲に、坂東はどんな“自分らしさ”を詰め込んだのか。

坂東:『声よ』は、土曜ドラマ『17才の帝国』(NHK総合)の主題歌として作ったものです。ドラマ自体が結構攻めた内容でして、17歳の高校生がAIのバックアップをもとに、衰退した都市の統治を担うという近未来SFです。なかなか日本でSFの作品を作ること自体、難しいと思うんですけど、みんなで力を合わせたので、すごくいいドラマに仕上がっている気がしております。同時に参院選挙前だったということもあり、わりと皆さんが、政治に敏感になっている時期にこういうドラマが出来たというのも、ちょっと面白い偶然だと感じております。

この曲はドラマの主題歌ということもあり、SFの世界観とリンクさせるような内容になっています。歌詞を書いてもらった塩塚モエカさんは本当に素晴らしいアーティストで、魅力的な歌も歌っていただいたんですけど、そんな塩塚さんはドラマにも声優として参加してくださってます。

この曲に込めた“自分らしさ”ですが、前提となっているのが主題歌としてドラマの世界観にいかに寄り添えるかということ。そこから考えて作っていったんですけど、この曲に関して言うと、わりと脱構築を試みたというか、いわゆる“正統派なJ-POPを作ろう”とは、はなから思っていなくて。今までとはまた違ったアプローチを、実験的に試みたことが自分らしさなのかなと思います。

僕はメインフィールドとして「現代音楽」というクラシックの延長戦上のような実験的な音楽をやっていて、自分のことを“J-POPの人”とは1ミリも思っていません。この曲に関しては、ドラマという世界を借りてJ-POPを覗いてみたような気持ちでいるんです。現代音楽というのは実験的な音楽を指すので、音楽家として直球の音楽を投げようとする意識はあんまりなくて。とはいえ、実験的と言ってもそこにはポジティブな意味があって、怖いものではなく「音楽で遊んでみよう・面白いと思うことをやってみよう」という考えがあるんです。そういう意識が自分らしさに繋がっていると良いなと思いながら、日々作曲をしています。

今回、編曲として岡田拓郎さんに入っていただいたんですけど、岡田さんに作っていただいたトラックもすごく実験的で、J-POPではあまり使わないような、効果音が含まれています。それがすごく説得力のある音として現れていて、今作の確かなスパイスになっている気がします。塩塚さんの魅力的なボーカルと相まって、非常に良い感じに仕上がっているのではないでしょうか。

“現代音楽史を塗り替えた作品”に影響

自らのメインフィールドは「現代音楽」で「“J-POPの人”とは1ミリも思っていない」と言い切る坂東。そんな中、ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジテレビ系)の劇伴・挿入歌を手がけたことでも話題を集めた彼の、ルーツとなる楽曲は?

坂東:僕のルーツとなる1曲はルチアーノ・ベリオ作曲の『シンフォニア 第3楽章』です。ルチアーノ・ベリオはイタリアの現代音楽を代表する大作曲家。一方の『シンフォニア』はニューヨーク・フィルハーモニックという名門オーケストラの125周年を記念して作曲された作品です。第5楽章からなる大作で、第3楽章は“現代音楽史を塗り替えた作品”としても有名です。

この曲はマーラーの交響曲第2番の第3楽章をベーシックに、クラシックのたくさんの名曲をコラージュした作品。聴いていると、目眩がするというか(笑)。「そっちにいくの?」とまったく展開が予想出来ないんです。でも紐解いていくと、一本筋が通っている。これはさまざまな研究によっても説明されています。

なぜ、これが僕のルーツかというと、高校生のときに、片っ端からいろんな音楽を聴いていた時に、現代音楽もかなり深いところまで聴いていて。その中で衝撃を受けたひとつという感じです。

楽曲を引用する曲……この時代ではコラージュと言っていたので、サンプリングとはまた違う意味合いですけれど、自分は高校生の時にサンプリングに夢中になっていたので、響くものがありました。それと、僕が高校生だった15年前は、HIPHOPにも名曲があったとはいえ、今みたいな市民権を得られていない状況でした。でも今、このHIPHOPがスタンダードという状況の中で、改めてこの曲を聴いてみると、また新しい発見に出会えるのではという気もしています。

高校時代に片っ端から様々な音楽を聴き漁っていたという坂東。同じ時代にサンプリングに夢中になっていたからこそ、多種多様な曲をコラージュした『シンフォニア 第3楽章』に惹かれ、そして今日の現代音楽家としての姿があるようだ。



アーティストの話を通じて音楽との「まだ、ここにない、出会い。」をお届けするコーナー「RECRUIT OPPORTUNITY FOR MUSIC」は、J-WAVE『SONAR MUSIC』内で月曜~木曜の22時41分ごろからオンエア。Podcastでも配信しており、過去のオンエアがアーカイブされている。

【坂東祐大 出演回のトークを聞く】

・Apple Podcastで聞く
前編後編

・Spotifyで聞く
前編後編

・公式ページ
https://www.j-wave.co.jp/original/sonarmusic/opportunity/

(構成=中山洋平)

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