著作家・パブリックスピーカーの山口 周と長濱ねるが、J-WAVEの新番組『NTT Group BIBLIOTHECA ~THE WEEKEND LIBRARY~』(毎週土曜 15:00-15:54)のナビゲーターを務めている。
哲学からテクノロジー、SDGsやエンターテインメント分野まで、よりよい生き方、よりよい社会を照らすヒントとなる多様な本をピックアップし、現代社会を紐解きながら、しなやかに解説する番組だ。
初回となる4月2日(土)のオンエアでは、山口の著書『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す』(プレジデント社)で紹介された「高原社会」について語り合った。その一部をテキストで紹介する。
山口:ねるさん、「高原社会」にどういうイメージを持たれますか?
長濱:山口さんの著書『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す』を拝読したので、少しわかります。ある程度、満たされた状態のまま、それ以上成長もしなければ下降もしない、いまの日本のような社会と受け取りました。
山口:そうですね。
山口は「僕は高原がすごく好き。住んでいる場所は海のすぐそばで、3分歩いたらビーチという場所」と話し、こう続ける。
山口:海と高原・山って真逆のように言われているんですが、実は「開けている場所」という共通項があります。光があふれていて風が抜けていく場所。それは谷間でもないし、あるいは都会ともちょっと違う。実は海と高原はけっこう近いなと思っています。高原っていいイメージですよね? 最近の日本は「停滞」「暗い」「谷間」と言われているんですが、いまの日本の状態はそんなに悪いことなのかなってずっと思っているんです。僕がメンバーになっている世界経済フォーラム、通称「ダボス会議」があります。何度かオンラインで会合があって、高原社会というキーワードがメンバーのなかで話題になったらしいんです。「ものすごくインスパイアされる」と言ってくれて。「日本がヨーロッパ諸国にとって、もしかしたらお手本になるんじゃないか」という議論がダボス会議のなかでされているんです。
長濱:それはテクノロジーの部分以外でも?
山口:そうです。それほど経済成長率が高いわけではないですけど、失業率が低い状態で貧富の格差も北欧諸国と比べて日本は非常に低いんです。若干ここ数年で広がってきているのが心配なんですけれども、貧富の格差もまだまだ少なく治安もいい。幸福度の実感も、これは調査もいろいろですけれども、そんなひどいことにはなっていないということで。いろいろな意味でバランスのとれた成熟社会に日本が先に移行しているんじゃないかということです。彼らが「もしかしたら日本がお手本になるかもしれない」と思っているけれど、日本人はまったくそういうつもりがなくて(笑)。「なにかほかに目指すべきものがあるんじゃないか」とキョロキョロしている状態なんですよね。「そんなに自信をなくさなくていいよ」というか、ここから先、いたずらに経済成長率を求めるのではなく、日本らしい成熟の仕方を考えていくことが必要なんじゃないかな、ということが、『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す』を書いた大きな動機になっています。
山口:特にいまコロナ禍になって家にいる時間が増えて、家のなかをステキな空間にしていきたいと思いますよね。そうすると家具はもちろんのこと「どんな音楽が鳴っているのか」とか、これを全部合わせると何かと言ったら、芸術のジャンルが全部家のなかにあるということです。みんな芸術やクリエイションに興味ないし「それに関係ある仕事じゃないですから」とか言うんです。しかし、誰だって自分が生きていくことを考えると、家事や家を自分らしく作っていくことをやっているわけで、「あなたがやっていることって総合芸術なんですよ」と。それをどれだけ豊かにできるかをみんなが考える時代がきていると思います。ねるさんがフランスの映画館の椅子を買われたように、そこでまさに経済活動がおこなわれているんです。
山口は長濱の行動について「飾ること」を通じて経済が回っていくこと、リサイクルショップでずっと使われていたものを購入することで「脱炭素」につながることなどを説明。それこそが新しい経済のあり方なのではないかと語った。
長濱:コロナ禍になって初めて「アートを飾ろう」と思って。それもいわゆる有名な作家さんとかではなくて。コロナ禍をきっかけに、いままで撮りためていた写真で個展を開いたり、家で絵を描いたりする友だちが増えていて。その友だちにお金を払って作品を買うことが増えて。自分としてもうれしいし、こういうのっていまだからこそ目が向けられたというか。いままでアートとかまったく見向きもしていなかったのに「家に絵があるだけですごく朗らかな気持になるな」とか、そういったことがここ2、3年で変化しました。
山口:この人は素敵だけど、一緒にいると自分らしくいられないと感じる人っているじゃないですか。あるいはその仕事をやっていると自分らしくいられない、とかね。自分のリズムと違うとか。仕事ってそれぞれリズムがありますから。
長濱:ニュースで観たコアラがかわいくて「コアラを抱っこしたい」と思って1週間後にひとりでオーストラリアに行ったことがあります。
山口:それは内面に忠実なんでしょうね。
長濱:人からは気分屋とかワガママって表現されることもあります。
山口は「僕がイメージする高原社会は、本当に開けた高原の野原で、性別や国籍、能力といった多様な人たちが集まって好きなことをやっていて、相互に依存しながら動いている社会」だと話し、こう続ける。
山口:でも極々一部の人だけがワガママになると、ただのワガママになっちゃうから、多くの人が「自分にとってここだけは譲れない」という部分、ワガママを発揮していただいて、高原社会を呼び寄せるのを手伝ってもらえたらうれしいなと思っています。
J-WAVEの番組『NTT Group BIBLIOTHECA ~THE WEEKEND LIBRARY~』では、哲学からテクノロジー、SDGsやエンターテインメント分野まで、よりよい生き方、よりよい社会を照らすヒントとなる多様な本をピックアップし、さまざまな課題や問題を抱える現代社会を紐解きながら、しなやかに解説していく。放送は毎週土曜日の15時から。
哲学からテクノロジー、SDGsやエンターテインメント分野まで、よりよい生き方、よりよい社会を照らすヒントとなる多様な本をピックアップし、現代社会を紐解きながら、しなやかに解説する番組だ。
初回となる4月2日(土)のオンエアでは、山口の著書『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す』(プレジデント社)で紹介された「高原社会」について語り合った。その一部をテキストで紹介する。
「高原社会」とは何か
この日のテーマは「高原社会」。山口は「いま達成しつつある、あるいはこれから目指すべき社会というイメージ」と言葉の解説をする。山口:ねるさん、「高原社会」にどういうイメージを持たれますか?
長濱:山口さんの著書『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す』を拝読したので、少しわかります。ある程度、満たされた状態のまま、それ以上成長もしなければ下降もしない、いまの日本のような社会と受け取りました。
山口:そうですね。
山口は「僕は高原がすごく好き。住んでいる場所は海のすぐそばで、3分歩いたらビーチという場所」と話し、こう続ける。
山口:海と高原・山って真逆のように言われているんですが、実は「開けている場所」という共通項があります。光があふれていて風が抜けていく場所。それは谷間でもないし、あるいは都会ともちょっと違う。実は海と高原はけっこう近いなと思っています。高原っていいイメージですよね? 最近の日本は「停滞」「暗い」「谷間」と言われているんですが、いまの日本の状態はそんなに悪いことなのかなってずっと思っているんです。僕がメンバーになっている世界経済フォーラム、通称「ダボス会議」があります。何度かオンラインで会合があって、高原社会というキーワードがメンバーのなかで話題になったらしいんです。「ものすごくインスパイアされる」と言ってくれて。「日本がヨーロッパ諸国にとって、もしかしたらお手本になるんじゃないか」という議論がダボス会議のなかでされているんです。
長濱:それはテクノロジーの部分以外でも?
山口:そうです。それほど経済成長率が高いわけではないですけど、失業率が低い状態で貧富の格差も北欧諸国と比べて日本は非常に低いんです。若干ここ数年で広がってきているのが心配なんですけれども、貧富の格差もまだまだ少なく治安もいい。幸福度の実感も、これは調査もいろいろですけれども、そんなひどいことにはなっていないということで。いろいろな意味でバランスのとれた成熟社会に日本が先に移行しているんじゃないかということです。彼らが「もしかしたら日本がお手本になるかもしれない」と思っているけれど、日本人はまったくそういうつもりがなくて(笑)。「なにかほかに目指すべきものがあるんじゃないか」とキョロキョロしている状態なんですよね。「そんなに自信をなくさなくていいよ」というか、ここから先、いたずらに経済成長率を求めるのではなく、日本らしい成熟の仕方を考えていくことが必要なんじゃないかな、ということが、『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す』を書いた大きな動機になっています。
新しい経済のあり方
山口から「最近購入したもの」を問われた長濱は、リサイクルショップでばら売りされたフランスの古い映画館の椅子を買ったと回答。これを聞いた山口は、「人間のする仕事が将来、全部機械がやるようになってみんなが豊かになったときに、人間の仕事は何になるのか?」という問いに対して、イギリスのデザイナーで社会主義者のウィリアム・モリスが「飾ることだ」と答えた話を紹介。これこそ「高原社会の予言」だと解説した。山口:特にいまコロナ禍になって家にいる時間が増えて、家のなかをステキな空間にしていきたいと思いますよね。そうすると家具はもちろんのこと「どんな音楽が鳴っているのか」とか、これを全部合わせると何かと言ったら、芸術のジャンルが全部家のなかにあるということです。みんな芸術やクリエイションに興味ないし「それに関係ある仕事じゃないですから」とか言うんです。しかし、誰だって自分が生きていくことを考えると、家事や家を自分らしく作っていくことをやっているわけで、「あなたがやっていることって総合芸術なんですよ」と。それをどれだけ豊かにできるかをみんなが考える時代がきていると思います。ねるさんがフランスの映画館の椅子を買われたように、そこでまさに経済活動がおこなわれているんです。
山口は長濱の行動について「飾ること」を通じて経済が回っていくこと、リサイクルショップでずっと使われていたものを購入することで「脱炭素」につながることなどを説明。それこそが新しい経済のあり方なのではないかと語った。
長濱:コロナ禍になって初めて「アートを飾ろう」と思って。それもいわゆる有名な作家さんとかではなくて。コロナ禍をきっかけに、いままで撮りためていた写真で個展を開いたり、家で絵を描いたりする友だちが増えていて。その友だちにお金を払って作品を買うことが増えて。自分としてもうれしいし、こういうのっていまだからこそ目が向けられたというか。いままでアートとかまったく見向きもしていなかったのに「家に絵があるだけですごく朗らかな気持になるな」とか、そういったことがここ2、3年で変化しました。
高原社会を実現するために
山口は「物質的に満足できる暮らしは、ある程度、予定調和的に見えるけど、その人が本当にその人らしく生きている状態、たとえば仕事や住む場所、一緒にいる人は大事」と話す。山口:この人は素敵だけど、一緒にいると自分らしくいられないと感じる人っているじゃないですか。あるいはその仕事をやっていると自分らしくいられない、とかね。自分のリズムと違うとか。仕事ってそれぞれリズムがありますから。
長濱:ニュースで観たコアラがかわいくて「コアラを抱っこしたい」と思って1週間後にひとりでオーストラリアに行ったことがあります。
山口:それは内面に忠実なんでしょうね。
長濱:人からは気分屋とかワガママって表現されることもあります。
山口は「僕がイメージする高原社会は、本当に開けた高原の野原で、性別や国籍、能力といった多様な人たちが集まって好きなことをやっていて、相互に依存しながら動いている社会」だと話し、こう続ける。
山口:でも極々一部の人だけがワガママになると、ただのワガママになっちゃうから、多くの人が「自分にとってここだけは譲れない」という部分、ワガママを発揮していただいて、高原社会を呼び寄せるのを手伝ってもらえたらうれしいなと思っています。
J-WAVEの番組『NTT Group BIBLIOTHECA ~THE WEEKEND LIBRARY~』では、哲学からテクノロジー、SDGsやエンターテインメント分野まで、よりよい生き方、よりよい社会を照らすヒントとなる多様な本をピックアップし、さまざまな課題や問題を抱える現代社会を紐解きながら、しなやかに解説していく。放送は毎週土曜日の15時から。
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2022年4月9日28時59分まで
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番組情報
- NTT Group BIBLIOTHECA ~THE WEEKEND LIBRARY~
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毎週土曜15:00-15:54
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山口 周、長濱ねる