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長濱ねると山口 周が過程を大事にする考え方「プロセスエコノミー」を考える

長濱ねると山口 周が過程を大事にする考え方「プロセスエコノミー」を考える

山口 周と長濱ねるが、「プロセスエコノミー」をテーマに語り合った。

2人がトークを展開したのは、J-WAVEで放送された番組『NTT Group BIBLIOTHECA ~THE WEEKEND LIBRARY~』(ナビゲーター:山口 周、長濱ねる)。オンエアは5月14日(土)。

プロセスに経済的価値を生み出す

尾原和啓さんの著書『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』(幻冬舎)をもとに、「プロセスエコノミー」をテーマに語り合った。

山口:尾原さんの造語ではなくて、実業家のけんすうさん(古川健介)が最初に言い出した言葉です。ねるさんはこの言葉、知ってましたか?
長濱:知らないです。
山口:「プロセスエコノミー」と対比する言葉は「アウトプットエコノミー」です。商品になるものは大体、最終成果物ですよね。音楽だったらできあがった曲、家具だったらできあがった家具、料理だったらできあがった料理。これらは全部アウトプットで、大体アウトプットがお金になります。でも「プロセスエコノミー」は、アウトプットじゃなく、作るプロセスが経済的価値を生み出すという考え方です。

山口は「こう言われると思い当たるものがありませんか?」と長濱に問いかける。

長濱:アイドルグループはまさに。成長過程や裏側を見せたり、その人の感情や変化を見せたりするのは、プロセスエコノミーに当てはまるのかなと。
山口:秋元 康さんは非常に早かったと思います。「プロセスに価値がある」ということで言うとアイドルグループがそうで、ある意味で完成形がないわけですよね。どんどんメンバーが入れ替わったり卒業したりして、アイドルグループ自体がどんどん変遷していく。そのプロセスに顧客の人たちが関与して、ある意味では一緒に作っているということですよね。プロセスエコノミーの特徴はいくつかあるんですが、「私は作る人」「私は買う人」という関係性ではなくて、お金を出す立場の人たちが一緒に作る過程に、なんらかの形で関与していくことが、ひとつの特徴なのかなと思います。
長濱:オーディションの様子から成長過程を追っていくと、それこそ本当に身内のような感覚で誰かに広めたくなる、しゃべりたくなるというのは、なんとなくわかる気がします。
山口:プロセスエコノミーの特徴は、そのプロセスに関与した人は顧客なのか、こちら側の人なのかよくわからない立場になるんです。通常、広告宣伝とかをやろうとすると、ものを世の中に出す側のほうが費用を負担しないといけないんですけれども、プロセスエコノミーになると、顧客が参加して、参加した顧客がどんどん広めてくれます。作る人から受け取る人に連続するという「バリューチェーン」という言葉があります。一方向の流れではなくて、価値を受け取った人たちがまた応援をする、それでなにか物事が生まれて、それをまた受け取るという、ぐるぐる回る「バリューチェーンからバリューサイクル」。僕がバリューサイクルの話をしたのが、2~3年前ぐらいの話です。尾原さんがそれを受けたわけではないんですが、このタイミングでプロセスエコノミーを、けんすうさんも含めて、より明確化してくれて、価値の出し方が大きく変わってきているなという気がします。

ストーリーが重要

山口は「嘘やごまかしがきかない世の中になってきている」として、その理由を解説した。

山口:いままではメディアが発達してなかったので、最終的な製品を知らせるだけで世の中のメディアは手一杯でした。だけどインターネットが出てきて、プロセスを見せようと思ったらいくらでも見せられるようになった結果、プロセスとアウトプットがズレてることに対して、みんなものすごくセンシティブになっている気がします。つまり「アウトプットでこういうことを言ってるけど、作られ方を見ると嘘じゃん」みたいなね。企業からすると「建前と本音」の使い分けができない。アイドルの世界で言うと、プロセスを除外して「こういうキャラで売り出そう」というのが、昔はもっとやりやすかったと思うんです。いまはそれがすごく難しくなっているんじゃないかなと思います。どうですか?
長濱:それは感じます。いまはSNSが普及していますけど、昭和のアイドルさんってなにもなかった時代で、「なにを食べているの?」「どんな私服を着てるの?」「普通に生活しているの?」というのが全然想像つかなかったんです。
山口:そもそも存在しているのか、というね。
長濱:それが逆にいまは、パーソナルな部分をいかに共感してもらえるかがすごく重要というか、大きいのかなと思っていて。歌って踊る姿とは別に、「普段はこんな本を読んでいます」「こんな音楽を聴いています」というポイントから、「あ、自分と同じだ」って、そこが好きになってもらうきっかけだったりもするので。それこそSNSで実際にメッセージのキャッチボールができたり、握手会で実際に触れられたり、すごく近いですね。
山口:すごくナチュラルなイメージで売り出している人が、めちゃめちゃアンナチュラルなライフスタイルだと混乱しちゃうと思うんです。人間って一貫した物語を描けないと共感してくれないので。最終的なアウトプットそのものよりも、ストーリーのところがすごく重要になってきて、そこに共感できないと、なかなかアウトプットのほうにも手を出してくれない、という風になってきているかなと思います。

いまこそプロセスの重要性を

長濱が「企業がプロセスを見せる」という行為について、新しいアイデアを先に見せることで他社に真似をされる危険性はないのかと質問すると、山口は「全体としてストーリーの整合性が重要だ」と回答した。

山口:どんな生活習慣なのか、どういう経歴で育ってきたのか、そういうものがねるさんのファンからすると、「長濱ねる」という世界観を作っているわけです。本が好きで司書になるのが夢で、こういう地域の出身で、こんなライフスタイルだ、とか。その一部分だけ真似しようと思っても、たぶん全然うまくいかないと思います。

山口は「愚行の原因は常に似ても似つかない人の真似をすることから始まる」という格言を紹介し、「まさにプロセスエコノミーについても言えること」だと解説を続ける。

山口:ある一部分のプロセスをほかの人や企業が真似しようと思っても、なかなか真似できないと思うし、逆に言うと、それを真似されちゃうなら、あんまり大した要素じゃないんだと思うんです。ねるさんの周りにいろいろな友だちや知人がいらっしゃると思いますが、じゃあその人たちが出すアウトプットだけで関係性ができているのかと言ったら、そうじゃないと思うんです。すごく困ったときに手を差し伸べてくれたとか、あそこに行ったときに2人で馬鹿笑いして楽しかったなとか、そういう過去の時間がずっと折り重なって、その人固有の意味を作っている。いまその人が出しているアウトプットが、ほかの人に代替されればその人はいらないのかといったら、そうはならないですよね。
長濱:プロセスにきちんと丁寧に取り組んだほうが自分の身になりますよね。評価される、されないにせよ。
山口:おっしゃる通りだと思います。プロセスを自分らしくやれると、成果はおのずとついてくる。逆にアウトプットばかり追いかけてしまうと、プロセスがボロボロになる。プロセスがダメになると最終的にアウトプットもダメになっちゃうし、自分もハッピーじゃない。いまこそプロセスの重要性を見直してほしいなと思います。

J-WAVEの番組『NTT Group BIBLIOTHECA ~THE WEEKEND LIBRARY~』では、哲学からテクノロジー、SDGsやエンターテインメント分野まで、よりよい生き方、よりよい社会を照らすヒントとなる多様な本をピックアップし、さまざまな課題や問題を抱える現代社会を紐解きながら、しなやかに解説していく。放送は毎週土曜日の15時から。

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番組情報
NTT Group BIBLIOTHECA ~THE WEEKEND LIBRARY~
毎週土曜
15:00-15:54