開発ユニット・AR三兄弟の川田十夢が、「もし自分が五輪の開会式を演出するならこうしていた」と勝手に考えていたという、自身のアイデアを形にした現在開催中のイベントへの思いなどについて語った。
川田が登場したのは、J-WAVEで22年2月23日に放送された特別番組『J-WAVE HOLIDAY SPECIAL TDK presents THE FANG』(ナビゲーター:稲葉友/藤原麻里菜)。TDKのブランドキャンペーン「尖った大胆さ、くれよ。」と連動してお届けした番組で、尖った偉業を成し遂げ、今なお挑戦し続ける各界を代表するトップランナーたちがゲスト出演。また、事前に募集した「尖った夢」をもつリスナーたちが活動資金10万円を懸けて、自身の実現したいことをプレゼンした。
川田:まず、入社の仕方からして尖っていました。学生のとき、周りには「君たちは才能がないから就職活動をするんだろ? 僕ぐらいになると向こうからオファーがくるから」と吹聴していたんですよ。そしたら留年して、それどころじゃなくなっちゃった(笑)。でも1年後、ミシン会社の取締役から「ぜひうちの会社に来てください」と連絡をいただいたんです。
稲葉:えぇ!? このときは普通の学生だったんですよね?
川田:普通の学生でしたけど、当時、色々な会社の広告とかを勝手に作り、自分のHP上で公開していたんですよ。それを、たまたま見つけて気に入ってくれたらしく、ヘッドハンティングという形で誘ってくれました。こうした経緯でその会社に就職することになったわけですが、ただ入社するだけでは面白くない。そこで、僕は天才肌で未来が見えているから、本来過去の経歴を書くべき履歴書に、10年先の未来まで書いたんです。そしたら、すごく引いてましたね(笑)。
稲葉:相当、尖ってましたね(笑)。
藤原:尖り過ぎて嫌われてないか心配になります(笑)。
川田:嫌われてました。入社後は食堂とかで無視されてましたから(笑)。でも、最終的に「未来の履歴書」に書いたことは10年かけて全部実現させたんです。
藤原:それはカッコいい! アニメみたいな話ですね。
川田:先日行われた北京冬季五輪の閉会式で、ARを活用していたんですよ。それを見て、わが国の開会式でもARをやるべきだったんじゃないかと改めて思ったんです。もともと、TOKYO 2020のときからそんなことを考えていて、委員会に何人か知り合いがいたので、きっと僕のところにもお声がかかるだろうなと思っていたら、終わっちゃった(笑)。そこで、「僕がもし五輪の開会式を演出するならこうしていた」と勝手に考えていたアイデアを形にしたのが今回のイベントなんです。
同イベントには、TOKYO 2020閉会式でソロパフォーマンスを披露したダンサーのアオイヤマダ、同大会スケートボード女子ストリート金メダリストの西矢 椛、東京パラリンピック走り幅跳び5位入賞の前川 楓、音楽家でアーティストの蓮沼執太、お笑いコンビの男性ブランコ、舞踏集団・大駱駝艦など、多彩な顔触れが出演。川田は「ジャンルや性別など様々なことを取り払って、一つのパフォーマンスをするというARを作った」と自信をのぞかせる。
稲葉:今並んだ名前が、一つのイベントに出演するということがイメージ付かないですね。
川田:オリンピックで「スポーツを取るか、文化を取るか」みたいな話があったでしょ? 僕はナンセンスだと思っていて。あのとき、スポーツも文化も音楽も、すべてのものが開幕するべきだったんです。
藤原:今回のイベントもそうですが、川田さんのすごいところは、身体的なパフォーマンスも含めてテクノロジーの活用法を提示しているところだと思っていて。テクノロジーとカルチャー、パフォーマンスの区切りをなくそうとしていることがめちゃくちゃかっこいいし、未来に革命を起こす何かになるんじゃないかなと注目しているんです。
川田:テクノロジーと聞くと無機質な印象を持つかもしれませんが、僕は温かいものも表現できると考えているんです。技術は冷たいだけではなく、熱かったり、くだらない方向にも振れる。だからこそ、お祭りを喚起するようなことも可能だと思い、このイベントをやることにしたんです。
藤原:どんどん技術が発達していって、利便性にしか技術が使われなくなると、SFで描かれるようなディストピア的な管理社会になっていく気がします。だからこそ、私たちがその足を引っ張るべきなんです。社会の足を引っ張らないと、平和に楽しくテクノロジーと共存することができなくなると思うんですよね。
藤原の話に共感しつつ、川田は「僕は2045年のシンギュラリティを気にしていている」と切り出した。シンギュラリティとは、AIが人類の知能を上回る「技術的特異点」のこと。2045年にこの転換期が訪れると予測されていることから、「2045年問題」とも呼ばれている。
川田:人工知能へのディープラーニングのために「データを食わせる」という表現があるのですが、そうじゃない。「データを召し上がってもらう」なんです。そういう気持ちでやらないと、いつかAIからしっぺ返しを食らうんじゃないかな。
川田:今年の5月に、伝統芸能の「能」を現代的に拡張するという試みを行う予定です。能には650年の歴史があり、その長い伝統に根差した格式ある美しい動きがある。でも、その動きをもって現代人の行動・気持ちを表現するということは、まだ行われていません。たとえば、スマホ歩きや、婚活アプリで「好みか好みじゃないか」をスワイプするシーンを、能でやってみるとか面白そうじゃないですか? あと、LINEのスタンプが送られてきたときの音が、能の鼓っぽくも聞こえるので、そういったことを踏まえて能を再構築することを考えています。
稲葉:めちゃくちゃワクワクしますね。僕は普段俳優をしていますが、能と同じ伝統芸能の一つである歌舞伎に従事する歌舞伎役者さんと共演することがあるんです。そういう方がコメディなどで、歌舞伎の下地を利用した演技を本気でやると、もう絶対に勝てない。笑いとしても150点だし、俳優の身体表現としてもめちゃめちゃクオリティが高いんです。こんなふうに、今の笑いを昔からの動きを使って表現すると面白いということを目の当たりにしているので、川田さんの発想を聞き、純粋に見てみたいという気持ちになりました。
川田:格式は大事ですけど、そのままにしておくと古くなり、固くなってしまう。現代の空気に触れる箇所を作って、柔らかくすることも必要だと思うんですよね。
この「THE FANG PITCH」はポッドキャストでも楽しめる。現在はVol.4まで配信中。Vol.5は3月18日(金)、Vol.6は3月22日(火)、Vol.7は3月25日(金)に配信予定。
挑戦者は、ネット番組のディレクター・構成作家を務める小林和明さん。小林さんの尖った夢は、世界中の雑学を詰め込んだ雑学辞書を作ること。活動資金の10万円は、雑学本の購入費用などに使う予定だという。小林さんによると、6年半の期間で書き溜めた雑学は既に1万3000ページ分に及んでいるといい、この中には川田に関する雑学もあった。
その雑学とは、川田がピン芸人・マツモトクラブと小学校の同級生であり、2人が卒業アルバムで目立とうとして、写真撮影のときに示し合わせて休んだというもの。しかし、もう一人休んだ生徒がいたために、単なる休んだ生徒が多いクラスになってしまったというオチの話だった。
これを聞いた川田は「すごい! 本人的にももう忘れてたようなことなのに! ヤバいね」と仰天していた。さらに藤原、稲葉に関するコアな雑学を披露し、スタジオの度肝を抜いた小林さん。そんな挑戦者に、雑学により過去を掘り起こされたことで「温かい気持ちになった」という川田は賛辞を送る。
川田:「雑学辞書」という名前から、トリビア的な「明日使える知識」のようなものだと思ったんですけど、全然違いますね。検索したときに100個目に出てくるような、ストライクゾーンが広すぎる辞書ですね。
結果はもちろん、審査員3人全員一致で「マネー成立」だった。
(構成=小島浩平)
川田が登場したのは、J-WAVEで22年2月23日に放送された特別番組『J-WAVE HOLIDAY SPECIAL TDK presents THE FANG』(ナビゲーター:稲葉友/藤原麻里菜)。TDKのブランドキャンペーン「尖った大胆さ、くれよ。」と連動してお届けした番組で、尖った偉業を成し遂げ、今なお挑戦し続ける各界を代表するトップランナーたちがゲスト出演。また、事前に募集した「尖った夢」をもつリスナーたちが活動資金10万円を懸けて、自身の実現したいことをプレゼンした。
就活で「未来の履歴書」を書いた理由
かつてミシンメーカーに10年間勤務していた川田は、面接時に「未来の履歴書」と銘打った“尖った”履歴書を提出したという。川田:まず、入社の仕方からして尖っていました。学生のとき、周りには「君たちは才能がないから就職活動をするんだろ? 僕ぐらいになると向こうからオファーがくるから」と吹聴していたんですよ。そしたら留年して、それどころじゃなくなっちゃった(笑)。でも1年後、ミシン会社の取締役から「ぜひうちの会社に来てください」と連絡をいただいたんです。
稲葉:えぇ!? このときは普通の学生だったんですよね?
川田:普通の学生でしたけど、当時、色々な会社の広告とかを勝手に作り、自分のHP上で公開していたんですよ。それを、たまたま見つけて気に入ってくれたらしく、ヘッドハンティングという形で誘ってくれました。こうした経緯でその会社に就職することになったわけですが、ただ入社するだけでは面白くない。そこで、僕は天才肌で未来が見えているから、本来過去の経歴を書くべき履歴書に、10年先の未来まで書いたんです。そしたら、すごく引いてましたね(笑)。
稲葉:相当、尖ってましたね(笑)。
藤原:尖り過ぎて嫌われてないか心配になります(笑)。
川田:嫌われてました。入社後は食堂とかで無視されてましたから(笑)。でも、最終的に「未来の履歴書」に書いたことは10年かけて全部実現させたんです。
藤原:それはカッコいい! アニメみたいな話ですね。
「わが国の開会式でもARをやるべきだった」
3月2日からは、川田の手がけるオンラインイベント「バーチャル身体の祭典 VIRTUAL NIPPON COLOSSEUM」が配信。イベント開催の背景には、TOKYO 2020オリンピック開会式への歯がゆさが秘められていた。川田:先日行われた北京冬季五輪の閉会式で、ARを活用していたんですよ。それを見て、わが国の開会式でもARをやるべきだったんじゃないかと改めて思ったんです。もともと、TOKYO 2020のときからそんなことを考えていて、委員会に何人か知り合いがいたので、きっと僕のところにもお声がかかるだろうなと思っていたら、終わっちゃった(笑)。そこで、「僕がもし五輪の開会式を演出するならこうしていた」と勝手に考えていたアイデアを形にしたのが今回のイベントなんです。
同イベントには、TOKYO 2020閉会式でソロパフォーマンスを披露したダンサーのアオイヤマダ、同大会スケートボード女子ストリート金メダリストの西矢 椛、東京パラリンピック走り幅跳び5位入賞の前川 楓、音楽家でアーティストの蓮沼執太、お笑いコンビの男性ブランコ、舞踏集団・大駱駝艦など、多彩な顔触れが出演。川田は「ジャンルや性別など様々なことを取り払って、一つのパフォーマンスをするというARを作った」と自信をのぞかせる。
稲葉:今並んだ名前が、一つのイベントに出演するということがイメージ付かないですね。
川田:オリンピックで「スポーツを取るか、文化を取るか」みたいな話があったでしょ? 僕はナンセンスだと思っていて。あのとき、スポーツも文化も音楽も、すべてのものが開幕するべきだったんです。
藤原:今回のイベントもそうですが、川田さんのすごいところは、身体的なパフォーマンスも含めてテクノロジーの活用法を提示しているところだと思っていて。テクノロジーとカルチャー、パフォーマンスの区切りをなくそうとしていることがめちゃくちゃかっこいいし、未来に革命を起こす何かになるんじゃないかなと注目しているんです。
川田:テクノロジーと聞くと無機質な印象を持つかもしれませんが、僕は温かいものも表現できると考えているんです。技術は冷たいだけではなく、熱かったり、くだらない方向にも振れる。だからこそ、お祭りを喚起するようなことも可能だと思い、このイベントをやることにしたんです。
川田が危惧する「2045年のシンギュラリティ」
“無駄づくり発明家”としての肩書を持つ藤原は、「川田さんはディストピア(暗黒世界)を食い止める人」と称賛する。藤原:どんどん技術が発達していって、利便性にしか技術が使われなくなると、SFで描かれるようなディストピア的な管理社会になっていく気がします。だからこそ、私たちがその足を引っ張るべきなんです。社会の足を引っ張らないと、平和に楽しくテクノロジーと共存することができなくなると思うんですよね。
藤原の話に共感しつつ、川田は「僕は2045年のシンギュラリティを気にしていている」と切り出した。シンギュラリティとは、AIが人類の知能を上回る「技術的特異点」のこと。2045年にこの転換期が訪れると予測されていることから、「2045年問題」とも呼ばれている。
川田:人工知能へのディープラーニングのために「データを食わせる」という表現があるのですが、そうじゃない。「データを召し上がってもらう」なんです。そういう気持ちでやらないと、いつかAIからしっぺ返しを食らうんじゃないかな。
伝統芸能「能」にフォーカスした新たな試み
独自の視点でテクノロジーと人間の未来を見据える川田。しかし一方で、日本古来の文化にも深い興味を持っているようで、これから手掛ける伝統芸能をフィーチャーした新たな企画の構想についても語った。川田:今年の5月に、伝統芸能の「能」を現代的に拡張するという試みを行う予定です。能には650年の歴史があり、その長い伝統に根差した格式ある美しい動きがある。でも、その動きをもって現代人の行動・気持ちを表現するということは、まだ行われていません。たとえば、スマホ歩きや、婚活アプリで「好みか好みじゃないか」をスワイプするシーンを、能でやってみるとか面白そうじゃないですか? あと、LINEのスタンプが送られてきたときの音が、能の鼓っぽくも聞こえるので、そういったことを踏まえて能を再構築することを考えています。
稲葉:めちゃくちゃワクワクしますね。僕は普段俳優をしていますが、能と同じ伝統芸能の一つである歌舞伎に従事する歌舞伎役者さんと共演することがあるんです。そういう方がコメディなどで、歌舞伎の下地を利用した演技を本気でやると、もう絶対に勝てない。笑いとしても150点だし、俳優の身体表現としてもめちゃめちゃクオリティが高いんです。こんなふうに、今の笑いを昔からの動きを使って表現すると面白いということを目の当たりにしているので、川田さんの発想を聞き、純粋に見てみたいという気持ちになりました。
川田:格式は大事ですけど、そのままにしておくと古くなり、固くなってしまう。現代の空気に触れる箇所を作って、柔らかくすることも必要だと思うんですよね。
プレゼン企画では、川田も驚愕する「尖った夢」をもつリスナーが登場!
最後には、「尖った夢」をもつ挑戦者が活動資金として最大10万円を懸け、自身の実現したいことをプレゼンする企画「THE FANG PITCH」が行われた。川田は、藤原、TDK株式会社イノベーション推進部部長・佐藤俊弥さんとともに審査員を務めた。この「THE FANG PITCH」はポッドキャストでも楽しめる。現在はVol.4まで配信中。Vol.5は3月18日(金)、Vol.6は3月22日(火)、Vol.7は3月25日(金)に配信予定。
挑戦者は、ネット番組のディレクター・構成作家を務める小林和明さん。小林さんの尖った夢は、世界中の雑学を詰め込んだ雑学辞書を作ること。活動資金の10万円は、雑学本の購入費用などに使う予定だという。小林さんによると、6年半の期間で書き溜めた雑学は既に1万3000ページ分に及んでいるといい、この中には川田に関する雑学もあった。
その雑学とは、川田がピン芸人・マツモトクラブと小学校の同級生であり、2人が卒業アルバムで目立とうとして、写真撮影のときに示し合わせて休んだというもの。しかし、もう一人休んだ生徒がいたために、単なる休んだ生徒が多いクラスになってしまったというオチの話だった。
これを聞いた川田は「すごい! 本人的にももう忘れてたようなことなのに! ヤバいね」と仰天していた。さらに藤原、稲葉に関するコアな雑学を披露し、スタジオの度肝を抜いた小林さん。そんな挑戦者に、雑学により過去を掘り起こされたことで「温かい気持ちになった」という川田は賛辞を送る。
川田:「雑学辞書」という名前から、トリビア的な「明日使える知識」のようなものだと思ったんですけど、全然違いますね。検索したときに100個目に出てくるような、ストライクゾーンが広すぎる辞書ですね。
結果はもちろん、審査員3人全員一致で「マネー成立」だった。
(構成=小島浩平)
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番組情報
- J-WAVE HOLIDAY SPECIAL TDK presents THE FANG
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2月23日(水・祝)9:00~17:55
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稲葉友、藤原麻里菜