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シティ・ポップの定義は? 今なぜ人気? 音楽ジャーナリスト・柴 那典が解説

シティ・ポップの定義は? 今なぜ人気? 音楽ジャーナリスト・柴 那典が解説

音楽ジャーナリストの柴 那典さんが、The Weekndの最新アルバムを取り上げ、シティ・ポップの流行を分析した。

柴さんが登場したのはJ-WAVEで放送中の番組『ACROSS THE SKY』のワンコーナー「IMASIA」(ナビゲーター:SKY-HI)。ここで紹介するのは1月30日(日)のオンエア。

シティ・ポップの定義は?

シティ・ポップが世界的な広がりを見せている昨今。The Weekndが1月7日にリリースしたアルバム『Dawn FM』の収録曲『Out of Time』では、日本のシティ・ポップシンガーである亜蘭知子の『Midnight Pretenders』がサンプリングされており話題を呼んだ。今回のオンエアでは、音楽ジャーナリストの柴さんからシティ・ポップの流行について話を訊いた。

SKY-HI:改めて、シティ・ポップの定義を教えていただけますでしょうか。
柴:実は音楽ジャンルとしてのシティ・ポップの定義って存在していないんですよ。これだけたくさんの人がシティ・ポップって言葉を使っているんですけども、「この特徴があるからシティ・ポップ」というような明確に定義付けるものはないと言っても過言ではないです。
SKY-HI:たしかに。

シティ・ポップという言葉が持つイメージが先行し、波及していると柴さんは分析する。

柴:(シティ・ポップは)70年代から80年代の、日本のブラックミュージックとかAORを下敷きにした、ポップス。時代観と参照先がある日本のかつてのポップスという、ざっくりとした括られ方が一般的ですね。
SKY-HI:山下達郎さんや竹内まりやさんといった方々のアナログがめちゃくちゃ売れていますよね。
柴:そうですね。2010年代ぐらいからその兆候がありますね。
SKY-HI:日本のあの時代の音楽って、サウンドとして他の国との親和性もありながら、コードやメロディーが歌謡曲のフィーリングなんですよね。絶妙なバランスだなと思います。

The Weekndも今、シティ・ポップを取り入れる理由

日本で数々のシティ・ポップが生まれていた当時、世界的な評価は受けていなかったのだろうか?

柴:当時はほとんど聴かれていなかったと思います。理由ははっきりしていて、レコードやCDの形でほとんど流通がされていなかったからです。
SKY-HI:届ける術がなかったんですね。
柴:聴かれていなかったので、存在が認知されていなかったんです。
SKY-HI:そういう意味だと、インターネットが普及したことによっていろんな日本のアーティストがグローバルな形でヒットしましたよね。もしかしたら、この時代のアーティストたちが一番世界に届けられているかもしれませんね。
柴:そうですね。シティ・ポップのブームは数年前から言われ続けていたんですが、ここに来てThe Weekndが『Out of Time』で亜蘭知子さんの曲をほとんどそのまま使用していますし。それによって、シティ・ポップの人気が加速し、より一般的になっていく気がします。
SKY-HI:海外のアーティスト、カニエ・ウェストとかThe Weekndの周りには、面白いものをディグるためだけに雇われている人とかがいて、そういう人たちがYouTubeとかストリーミングサービスから音楽を引っ張ってくるんですよね。「今、このアーティストを使ったら面白いんじゃない?」っていうやりとりがあったりするみたいです。だから、耳の早い人たちが同時期に同じようなサウンドに傾倒することがちょこちょこある。

「音楽はファッション業界に通ずる部分がある」と、SKY-HIはジャンルの流行を語った。

SKY-HI:今回のThe Weekndの取り入れ方ってかなり大胆ですよね。
柴:『Out of Time』もですしアルバム全体もなんですけども、プロデュースにはOneohtrix Point Neverというアーティストが関わっています。この方は最近だと映画『アンカット・ダイヤモンド』の音楽を手掛けていて、いろんな方面で活躍していますね。実は、Oneohtrix Point Neverって海外でシティ・ポップが聴かれるようになった“原点”に関係している人物なんですよ。
SKY-HI:そうなんですか!
柴:10年以上前の話になりますけども、Oneohtrix Point Neverが別名義でやっていた『Chuck Person's Eccojams Vol. 1』というアルバムがあるんですけども、それが2010年代初頭に生まれたヴェイパーウェイヴという音楽ムーブメントの原点になっているんですね。
SKY-HI:なるほど! ヴェイパーウェイヴ、めちゃくちゃ流行っていましたね。
柴:かつての作風は、言ってしまえば80年代とか90年代とかのいろんな音楽をサンプリング、ある種のコラージュのようなものから始まっているんですよ。The Weekndのアルバムは最新鋭ですけども、実は一番原点にいる人と制作しているのが今回のポイントなんですよね。
SKY-HI:すごくきれいなルートでやっていたんですね。

柴さんは2021年11月に『平成のヒット曲』(新潮新書)を発売。『川の流れのように』から『Lemon』まで、30のヒット曲を分析し、平成という時代の実像に迫る1冊となっている。

またSKY-HIは、3月4日(金)にLINE CUBE SHIBUYAで開催される「JFL presents LIVE FOR THE NEXT 2022」に出演。自身が主宰するレーベル「BMSG」に所属するNovel Core、BE:FIRST、Aile The Shotaらとともにパフォーマンスを披露する。詳細は公式サイトまで。

『ACROSS THE SKY』のワンコーナー「IMASIA」では、アジアのヒップホップやさまざまな音楽カルチャーを紹介する。オンエアは10時40分頃から。

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2022年2月6日28時59分まで

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