俳優の佐藤 健が、最新主演映画『護られなかった者たちへ』の舞台裏や、演じる上での意識について、クリエイティブディレクターの高崎卓馬に明かした。
佐藤は10月1日(金)、J-WAVEで放送中の番組『BITS & BOBS TOKYO』に出演。この番組は、高崎のショートストーリーとトークをお届けするという内容だ。
10月のショートストーリーの主演は佐藤 健と長澤 樹。佐藤と高崎の対談は、その特別編としてオンエアされた。
高崎:この映画ってミステリーじゃないですか。
佐藤:原作はミステリーですね。
高崎:こういう作品の役作りってどういうふうにされるんですか? 結末から逆算するとか。
佐藤:ざっくり言うと、「こいつ絶対にヤバいことしてるじゃん」「ヤバい奴なんだ」と印象づけたいなってことはありますね。だからキャラ設定とかも、不器用でうまくいかなくて、本当は優しい奴なんだけどちょっと目つきが悪くて嫌われちゃう人っているじゃないですか、そういう勘違いされやすいような人にしたいということはありましたね。
高崎:すごく純粋ゆえに人と噛み合わないところがあって、それが重なり合ってという。
佐藤:いろいろ下手なだけというか。
高崎:東日本大震災で被災した直後のシーンの(佐藤さんの)目がヤバいですよね。白目がヤバい(笑)。あの白目だけでもスクリーンで観たほうがいい感じですよね。
佐藤:人相を悪くしたかったんですよね。眉毛をつり上げたりとか。
佐藤:顔の半分くらい泥水に入りましたよね。だから飲みましたけど、それくらいのことは普通にやりますよ。
高崎:何テイクかやるんですか?
佐藤:あのシーンは最初、(押し付ける側に)遠慮されるから、あそこまで深くはなくて、監督が「もっとやって!」って怒鳴る。もちろん僕も「遠慮しないでやってくださいね」って言うんですけど、とはいえ最初は遠慮されちゃってたので「全然大丈夫なんで」って言って。
高崎:まさかあそこまでいくとは……。
佐藤:あれを撮ったあとにうわさで海外ではああいうときに泥水の代わりにミルクティーでやるって聞いたんですけど本当ですか? 実は甘くて飲んでも大丈夫っていう(笑)。
高崎:今回はミルクティーじゃないんですね。
佐藤:あれはガチ泥水なので、みんなに心配されましたけど、全く問題なかったですね。
高崎が「この映画は観たあとに話したい作品」と語ると、佐藤も同調して「何が正義なのかも含めて観た人の数だけ意見があると思うので、観終わったあとで話すことに非常に価値があると思います」と語る。
高崎:ああいった問題が本当にあることも映画を観てわかるし、普通の報道だと「こういうことがあったんだな」って少しひとごとに受け取るけど、人がどうやって苦しんでいるのかって、映画で2時間一緒に付き合うと、「ああいうことってあるよね」「人ってそうだよね」ってわかる。誰も悪くないというか。
高崎:佐藤さんっていろんなものを俯瞰気味に捉えていて、そこが色気なのかなって思うんです。それっていつ頃から?
佐藤:たぶん子どもの頃から本質的には変わっていないと思うんです。
高崎:わりとクールめなキャラクターだったんですか。
佐藤:子どもの頃から、キャラクターとして熱量が高めではなかったんですけど。よく「俯瞰して考えるよね」とか「客観的ですよね」と言われるけど、よくよく考えたら、何かをするときに受け手側、ラジオだとリスナーだったり映画を作るときは観客だったり、その人の気持ちにいかになれるかってことであって、決して僕のなかでは俯瞰してるってことではなくて、受け手側の目線に立ってるってことのほうが正しいような気がします。
高崎:視聴者や観客の視点ってことだ。
佐藤:そのときの受け手側ってことなので、いちばん多いのは視聴者ですね。こういうふうに芝居をしたらどう思うんだろうってことを考える時間は大事だなと思ってやってますね。
佐藤:いい作品はたくさんあって、その種類っていろいろあるから一概には言えないですが、いい台本の要素のひとつはキャラクターだと思います。そいつが好きかどうか。そいつに魅力があるかどうか。
高崎:自分の演じるキャラクターにってこと?
佐藤:それもそうだし、出てる人たちを好きになれるかどうかってことはすごく大きいですね。たとえば、『護られなかった者たちへ』の原作を初めて読んだときに、僕は演じた利根が好きだったんですよね。世間からは嫌われ者かもしれないけど、芯があって、大切な人は大切にするんだっていう彼の正義があったから魅力を感じたんですね。利根という人に魅力を感じたから、その物語に惹かれていってるとも言える。でも残念だなって思うのは、そうやって台本を読み始めてたのに(作品によっては)後半でキャラが変わっちゃったりすることがあるんですよ。「ええ?」「なんでこういうことになっちゃうの?」みたいな(笑)。
高崎:あはは(笑)。
佐藤:「そういうことしてほしくなかったな」みたいなことになったら、あんまりその本には惹かれない。
高崎:気を付けなきゃ(笑)。
佐藤は「偉そうなことを言える立場ではない」と話しつつ、「ストーリーを動かすためにキャラを動かしてしまっているなと思うことは多い」と明かす。
高崎:それはすごくわかる。キャラクターが動いてストーリーが動くんだよね。
佐藤:そうそう。
高崎:キャラクターがいる理由とか、こういう発言をする理由がぶれなくてぶつかり合った結果しょうがなく物語になるのがいちばん理想ですよね。
佐藤:キャラがストーリーの操り人形になっちゃったときに、せっかく魅力的だったキャラがそうじゃなくなったりするようなことがよく起きるんですよね。現実にはいないキャラが物語で出てくるのはフィクションだから全然いいと思います。その人が魅力的だったら。たとえば『名探偵コナン』のコナンくんとか、『ONE PIECE』のルフィみたいな人って、実際にはいないけど見ていたいからいいんですよ。
高崎:その人の主義がちゃんとあるからね。
佐藤と高崎のスペシャル対談の後編は以下のアドレスで、10月15日(金)まで再生可能。
【radikoで聴く】https://radiko.jp/share/?sid=FMJ&t=20211009010000
J-WAVE『BITS & BOBS TOKYO』は、毎週金曜の25:00-25:30オンエア。
佐藤は10月1日(金)、J-WAVEで放送中の番組『BITS & BOBS TOKYO』に出演。この番組は、高崎のショートストーリーとトークをお届けするという内容だ。
10月のショートストーリーの主演は佐藤 健と長澤 樹。佐藤と高崎の対談は、その特別編としてオンエアされた。
「ヤバい奴だ」と思わせる役作り
佐藤の主演映画『護られなかった者たちへ』が公開中だ。【あらすじ】
東日本大震災から10年目の仙台で、全身を縛られたまま放置され”餓死”させられるという不可解な殺人事件が相次いで発生。被害者はいずれも、誰もが慕う人格者だった。捜査線上に浮かび上がったのは、別の事件で服役し、刑期を終え出所したばかりの利根(佐藤 健)という男。刑事の笘篠(とましの/阿部 寛)は、殺された2人の被害者から共通項を見つけ出し利根を追い詰めていくが、決定的な証拠がつかめないまま、第3の事件が起きようとしていた――。なぜ、このような無残な殺し方をしたのか? 利根の過去に何があったのか? (映画『護られなかった者たちへ』公式サイトより)
高崎:この映画ってミステリーじゃないですか。
佐藤:原作はミステリーですね。
高崎:こういう作品の役作りってどういうふうにされるんですか? 結末から逆算するとか。
佐藤:ざっくり言うと、「こいつ絶対にヤバいことしてるじゃん」「ヤバい奴なんだ」と印象づけたいなってことはありますね。だからキャラ設定とかも、不器用でうまくいかなくて、本当は優しい奴なんだけどちょっと目つきが悪くて嫌われちゃう人っているじゃないですか、そういう勘違いされやすいような人にしたいということはありましたね。
高崎:すごく純粋ゆえに人と噛み合わないところがあって、それが重なり合ってという。
佐藤:いろいろ下手なだけというか。
高崎:東日本大震災で被災した直後のシーンの(佐藤さんの)目がヤバいですよね。白目がヤバい(笑)。あの白目だけでもスクリーンで観たほうがいい感じですよね。
佐藤:人相を悪くしたかったんですよね。眉毛をつり上げたりとか。
「ガチの泥水」に顔を…
高崎は予告冒頭の、佐藤が水たまりに顔を押し付けられるシーンが印象的だと話す。佐藤:顔の半分くらい泥水に入りましたよね。だから飲みましたけど、それくらいのことは普通にやりますよ。
高崎:何テイクかやるんですか?
佐藤:あのシーンは最初、(押し付ける側に)遠慮されるから、あそこまで深くはなくて、監督が「もっとやって!」って怒鳴る。もちろん僕も「遠慮しないでやってくださいね」って言うんですけど、とはいえ最初は遠慮されちゃってたので「全然大丈夫なんで」って言って。
高崎:まさかあそこまでいくとは……。
佐藤:あれを撮ったあとにうわさで海外ではああいうときに泥水の代わりにミルクティーでやるって聞いたんですけど本当ですか? 実は甘くて飲んでも大丈夫っていう(笑)。
高崎:今回はミルクティーじゃないんですね。
佐藤:あれはガチ泥水なので、みんなに心配されましたけど、全く問題なかったですね。
高崎が「この映画は観たあとに話したい作品」と語ると、佐藤も同調して「何が正義なのかも含めて観た人の数だけ意見があると思うので、観終わったあとで話すことに非常に価値があると思います」と語る。
高崎:ああいった問題が本当にあることも映画を観てわかるし、普通の報道だと「こういうことがあったんだな」って少しひとごとに受け取るけど、人がどうやって苦しんでいるのかって、映画で2時間一緒に付き合うと、「ああいうことってあるよね」「人ってそうだよね」ってわかる。誰も悪くないというか。
「受け手の目線に立つ」ことを大事に
番組後半では、佐藤の演技について高崎が迫った。高崎:佐藤さんっていろんなものを俯瞰気味に捉えていて、そこが色気なのかなって思うんです。それっていつ頃から?
佐藤:たぶん子どもの頃から本質的には変わっていないと思うんです。
高崎:わりとクールめなキャラクターだったんですか。
佐藤:子どもの頃から、キャラクターとして熱量が高めではなかったんですけど。よく「俯瞰して考えるよね」とか「客観的ですよね」と言われるけど、よくよく考えたら、何かをするときに受け手側、ラジオだとリスナーだったり映画を作るときは観客だったり、その人の気持ちにいかになれるかってことであって、決して僕のなかでは俯瞰してるってことではなくて、受け手側の目線に立ってるってことのほうが正しいような気がします。
高崎:視聴者や観客の視点ってことだ。
佐藤:そのときの受け手側ってことなので、いちばん多いのは視聴者ですね。こういうふうに芝居をしたらどう思うんだろうってことを考える時間は大事だなと思ってやってますね。
佐藤が思う「いい台本」の要素とは?
高崎は「いい台本ってどんなもの?」と続ける。佐藤:いい作品はたくさんあって、その種類っていろいろあるから一概には言えないですが、いい台本の要素のひとつはキャラクターだと思います。そいつが好きかどうか。そいつに魅力があるかどうか。
高崎:自分の演じるキャラクターにってこと?
佐藤:それもそうだし、出てる人たちを好きになれるかどうかってことはすごく大きいですね。たとえば、『護られなかった者たちへ』の原作を初めて読んだときに、僕は演じた利根が好きだったんですよね。世間からは嫌われ者かもしれないけど、芯があって、大切な人は大切にするんだっていう彼の正義があったから魅力を感じたんですね。利根という人に魅力を感じたから、その物語に惹かれていってるとも言える。でも残念だなって思うのは、そうやって台本を読み始めてたのに(作品によっては)後半でキャラが変わっちゃったりすることがあるんですよ。「ええ?」「なんでこういうことになっちゃうの?」みたいな(笑)。
高崎:あはは(笑)。
佐藤:「そういうことしてほしくなかったな」みたいなことになったら、あんまりその本には惹かれない。
高崎:気を付けなきゃ(笑)。
佐藤は「偉そうなことを言える立場ではない」と話しつつ、「ストーリーを動かすためにキャラを動かしてしまっているなと思うことは多い」と明かす。
高崎:それはすごくわかる。キャラクターが動いてストーリーが動くんだよね。
佐藤:そうそう。
高崎:キャラクターがいる理由とか、こういう発言をする理由がぶれなくてぶつかり合った結果しょうがなく物語になるのがいちばん理想ですよね。
佐藤:キャラがストーリーの操り人形になっちゃったときに、せっかく魅力的だったキャラがそうじゃなくなったりするようなことがよく起きるんですよね。現実にはいないキャラが物語で出てくるのはフィクションだから全然いいと思います。その人が魅力的だったら。たとえば『名探偵コナン』のコナンくんとか、『ONE PIECE』のルフィみたいな人って、実際にはいないけど見ていたいからいいんですよ。
高崎:その人の主義がちゃんとあるからね。
佐藤と高崎のスペシャル対談の後編は以下のアドレスで、10月15日(金)まで再生可能。
【radikoで聴く】https://radiko.jp/share/?sid=FMJ&t=20211009010000
J-WAVE『BITS & BOBS TOKYO』は、毎週金曜の25:00-25:30オンエア。
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