J-WAVEで放送中の番組『STEP ONE』のワンコーナー「MUSIC+1」(ナビゲーター:サッシャ、ノイハウス萌菜)。4月27日(火)のオンエアでは、RHYMESTERの宇多丸がゲスト出演してトークを展開した。2021年2月、RHYMESTERが世界のトップアーティストたちが出演してきた「MTV Unplugged」でパフォーマンスしたときの感想や、ラジオへの思いを語った。
サッシャ:「MTV Unplugged」といったら、夢の舞台ですよね。
宇多丸:老舗ブランドだし、参加しておいて自分で言うのはあれだけど、一流アーティストの証というのがあるんです。そこにこのタイミングで、しかもかなり特殊なやり方をさせていただいて「MTV Unplugged」の歴史上初の無観客ライブだし、あとヒップホップグループとしても、フルサイズのライブでやるのは1993年のArrested Development以来ということなので。
サッシャ:28年ぶり!?
宇多丸:そうなんですよ、大変よこれ。しかもArrestedはわりとアコースティックな匂いがもともとあるグループなんだけど、もう我々はまったく電気! エレキ!という感じなので。
サッシャ・ノイハウス:(笑)。
宇多丸:電力バンザイ!という感じでやっているので(笑)。でもすごく光栄でした。
宇多丸:すごく光栄でしたし「いまこのタイミングでやれることとして、すごくベストなことができる場だな」と思ったんです。僕ら普段ターンテーブルで、いわゆるヒップホップのライブの一番古典的なフォーマットに乗っ取って、まあロックでいう3ピースバンドみたいな。一番ミニマムな形でやっていたんだけど、それを普段やらないストリングスを入れたりとか、どちらかというと「Unplugged」では珍しいタイプの「足し算」方向の編成を組んだんです。それをやることによって、無観客だけどマイナス感がないみたいな。常に新しい試みもした上で、映像パッケージとして出せるという。いまやれることとしてメチャクチャベストだなと、すごく思いました。
サッシャ:本当にいろいろなことに気をつけながら、模索しながらということですよね。
宇多丸:たとえば舞台上も、いわゆるアクリル板みたいなものも舞台美術の一部として機能するようになったりとか。
サッシャ:それが面白いですよね。
宇多丸:あとは客席も無観客なんですけど、座席にLEDが付いていてバッと点いたりするんですね。結局やっていると観客がゼロってことは、無限と同じなんです。いっぱいいるのと同じなんです。
サッシャ:みんな画面の向こうで観てるしね。
宇多丸:たとえばコールアンドレスポンスは返ってはこないんだけど、聴こえてくるんですよ、全然。
サッシャ・ノイハウス:ヘー!
宇多丸:だからなんの過不足も感じなかった。これ聞いたら普段のお客さんは「俺らいらないのか!」って(笑)。そうじゃなくて、向こう側にみなさんがいるということがちゃんと想像できる、というよりは感じられたというか。なのですごくよかったです。
サッシャ:RHYMESTERは自分たちのライブだけじゃなくてイベントとかに出たときも、ちゃんとヒップホップの普及活動みたいなことをしていて。「どうやってヒップホップは出来上がっているのか」というのをターンテーブルでサンプリングを聴かせてくれたりとか。だから本当に観客ファーストなの。
宇多丸:そうなんです。
ノイハウス:観客なしでやれた、プラスそれ以上になったということがすごいですね。
宇多丸:すごく感慨深かったですね。
サッシャ:ストリングスって最高ですよね。
宇多丸:これは僕らは初めての試みで。ストリングスというのは当然、採譜、つまり楽譜を正確にとって、正確に音符をひくじゃないですか。僕ら普段はそんなことを考えずに、ようするにサンプリングとか、ある種、非音楽的な作り方をしているわけで。非音楽と超音楽側のぶつかり合いというか、そこもスリリングな感じでしたね。
ノイハウス:どうやってそれはアレンジしたんですか? どちらかがちょっとあきらめたりとか……。
宇多丸:(笑)、お互いに歩み寄りで。バンマスはタケウチカズタケというキーボードプレイヤーがいて、彼がまず採譜して。ところがね、ともちゃんカルテットと言われている女性4人のカルテットチームが「採譜が間違ってる」つって、怒られたりしたらしいですけど(笑)。すり合わせですよね。グルーヴも……全員これ、クリック聴いてないんですよ、このライブ。
サッシャ:え!?
(編注:ライブでは同期音源とのテンポを合わせるために、ヘッドフォンやイヤーモニターから一定のリズムで流れる「クリック音」を基準に演奏することがある)
宇多丸:ドラムだけは聴いているとか、誰かだけは聴いているということがあるんだけど、これは実は誰も聴いてないまま。だからグルーヴがせめぎ合ってるんですよ。
サッシャ:えー!
宇多丸:なんだけど、そこになにかが生まれる。だからそこもすごく稀有なセッションで。
ノイハウス:新しいですね。何人ぐらいなんですか?
宇多丸:10人です。
ノイハウス:すごいですね。
サッシャ:リハーサルからいろいろ、試行錯誤だったということですね。
宇多丸:そうですね。しかも当日のリハーサルまで「ここをもうちょっと、これはむしろ走り気味でやろう」とか、そういうグルーヴ、音楽的な調整は私の相方のMummy-Dが指示して。そうするとギュッと面白くなったりして、これもマジックでしたね、面白かったな。
サッシャ:この1年、世の中がいっぱい変わって、ラジオを担当する身としてはどうですか?
宇多丸:ラジオを聴く方が増えたなんてことも聞きます。「Clubhouse」の流行とかポッドキャストもそうですけど、音声コンテンツそのものの魅力みたいなものが世界的にも広まって盛り上がっているのが、僕らからすれば「我が意を得たり」というか、「だよね」というか、「でしょ?」みたいな、「気づいた?」みたいな。
サッシャ・ノイハウス:(笑)。
宇多丸:ちょっと前まで、よくわかっていない人ほど「ラジオは危機ですが」とか言うんだけど、俺はそういうこと1回も思ったことがなくて。ラジオそのものは「しゃべりコンテンツ」というのかな? この魅力というのは、むしろインターネットとの親和性もいいから「なに言ってるの?」と思っていたんだけど、ついにそれがある種、定着した。だからコロナの時代とのフィット性、そばにいてあげる感じもあるし、あとはフットワークというのかな? ちょうどいいフットワークみたいなところもよくて。
サッシャ:そうなんですよね。
宇多丸:聴いてる人には言わずもがなだよね。「だから聴いてるんだよ!」という話だけど。
サッシャ:『STEP ONE』を聴いている人に、ラジオのよさを説明してもね。わかっているから聴いてくれている素敵な方たちですから。
宇多丸:そういうことですよ。あなた方ですよ、あなた方がえらい!
サッシャ:むしろ「宣伝してね! みんなに教えてあげてね」みたいな。
宇多丸:そうなの。ラジオっていまは聴き方が昔とくらべて大幅に多様化しているじゃないですか。電波をキャッチする聴き方もあるけどタイムフリーもあるしということで、いまだと気楽に聴けるし「こういうことをやっているよ」みたいなのを宣伝してあげる、なんてことも。お互いにウィンウィンなね。それでラジオが盛り上がる、みなさんもより充実した番組が聴ける。そして我々も盛り上がり、お給金が上がり、そしてその分、多く税金を払い……すみません、ちょっと暗い顔になってきましたけど。
サッシャ・ノイハウス:(笑)。
RHYMESTERの最新情報は、公式サイトまたは、Twitterまで。
J-WAVE『STEP ONE』のワンコーナー「MUSIC+1」では、ゲストとして毎回話題のミュージシャンが登場する。放送は月曜~木曜の12時30分ごろから。
「MTV Unplugged」に出演!
MTVで放送された「MTV Unplugged: RHYMESTER」の映像と音源は、4月28日(水)にリリース。サッシャ:「MTV Unplugged」といったら、夢の舞台ですよね。
宇多丸:老舗ブランドだし、参加しておいて自分で言うのはあれだけど、一流アーティストの証というのがあるんです。そこにこのタイミングで、しかもかなり特殊なやり方をさせていただいて「MTV Unplugged」の歴史上初の無観客ライブだし、あとヒップホップグループとしても、フルサイズのライブでやるのは1993年のArrested Development以来ということなので。
サッシャ:28年ぶり!?
宇多丸:そうなんですよ、大変よこれ。しかもArrestedはわりとアコースティックな匂いがもともとあるグループなんだけど、もう我々はまったく電気! エレキ!という感じなので。
サッシャ・ノイハウス:(笑)。
宇多丸:電力バンザイ!という感じでやっているので(笑)。でもすごく光栄でした。
「観客がゼロってことは、無限と同じ」
「MTV Unplugged」にはEric Clapton、Nirvana、Mariah Carey、Oasisといった名だたるアーティストが出演しており、宇多丸は出演依頼を受けたときの心境について語った。宇多丸:すごく光栄でしたし「いまこのタイミングでやれることとして、すごくベストなことができる場だな」と思ったんです。僕ら普段ターンテーブルで、いわゆるヒップホップのライブの一番古典的なフォーマットに乗っ取って、まあロックでいう3ピースバンドみたいな。一番ミニマムな形でやっていたんだけど、それを普段やらないストリングスを入れたりとか、どちらかというと「Unplugged」では珍しいタイプの「足し算」方向の編成を組んだんです。それをやることによって、無観客だけどマイナス感がないみたいな。常に新しい試みもした上で、映像パッケージとして出せるという。いまやれることとしてメチャクチャベストだなと、すごく思いました。
サッシャ:本当にいろいろなことに気をつけながら、模索しながらということですよね。
宇多丸:たとえば舞台上も、いわゆるアクリル板みたいなものも舞台美術の一部として機能するようになったりとか。
サッシャ:それが面白いですよね。
宇多丸:あとは客席も無観客なんですけど、座席にLEDが付いていてバッと点いたりするんですね。結局やっていると観客がゼロってことは、無限と同じなんです。いっぱいいるのと同じなんです。
サッシャ:みんな画面の向こうで観てるしね。
宇多丸:たとえばコールアンドレスポンスは返ってはこないんだけど、聴こえてくるんですよ、全然。
サッシャ・ノイハウス:ヘー!
宇多丸:だからなんの過不足も感じなかった。これ聞いたら普段のお客さんは「俺らいらないのか!」って(笑)。そうじゃなくて、向こう側にみなさんがいるということがちゃんと想像できる、というよりは感じられたというか。なのですごくよかったです。
サッシャ:RHYMESTERは自分たちのライブだけじゃなくてイベントとかに出たときも、ちゃんとヒップホップの普及活動みたいなことをしていて。「どうやってヒップホップは出来上がっているのか」というのをターンテーブルでサンプリングを聴かせてくれたりとか。だから本当に観客ファーストなの。
宇多丸:そうなんです。
ノイハウス:観客なしでやれた、プラスそれ以上になったということがすごいですね。
宇多丸:すごく感慨深かったですね。
グルーヴがせめぎ合うセッション
宇多丸は「MTV Unplugged」での演奏について「整理されたビート感の気持ちよさと、バンドの生感のせめぎ合いの部分」を追求したと告白。Twitterでも「ストリングスがよかったなあ」といった声が寄せられた。サッシャ:ストリングスって最高ですよね。
宇多丸:これは僕らは初めての試みで。ストリングスというのは当然、採譜、つまり楽譜を正確にとって、正確に音符をひくじゃないですか。僕ら普段はそんなことを考えずに、ようするにサンプリングとか、ある種、非音楽的な作り方をしているわけで。非音楽と超音楽側のぶつかり合いというか、そこもスリリングな感じでしたね。
ノイハウス:どうやってそれはアレンジしたんですか? どちらかがちょっとあきらめたりとか……。
宇多丸:(笑)、お互いに歩み寄りで。バンマスはタケウチカズタケというキーボードプレイヤーがいて、彼がまず採譜して。ところがね、ともちゃんカルテットと言われている女性4人のカルテットチームが「採譜が間違ってる」つって、怒られたりしたらしいですけど(笑)。すり合わせですよね。グルーヴも……全員これ、クリック聴いてないんですよ、このライブ。
サッシャ:え!?
(編注:ライブでは同期音源とのテンポを合わせるために、ヘッドフォンやイヤーモニターから一定のリズムで流れる「クリック音」を基準に演奏することがある)
宇多丸:ドラムだけは聴いているとか、誰かだけは聴いているということがあるんだけど、これは実は誰も聴いてないまま。だからグルーヴがせめぎ合ってるんですよ。
サッシャ:えー!
宇多丸:なんだけど、そこになにかが生まれる。だからそこもすごく稀有なセッションで。
ノイハウス:新しいですね。何人ぐらいなんですか?
宇多丸:10人です。
ノイハウス:すごいですね。
サッシャ:リハーサルからいろいろ、試行錯誤だったということですね。
宇多丸:そうですね。しかも当日のリハーサルまで「ここをもうちょっと、これはむしろ走り気味でやろう」とか、そういうグルーヴ、音楽的な調整は私の相方のMummy-Dが指示して。そうするとギュッと面白くなったりして、これもマジックでしたね、面白かったな。
ラジオは危機じゃない!
この日の「MUSIC+1」は、宇多丸が『アフター6ジャンクション』(TBSラジオ)のパーソナリティーを務めていることもあり、ラジオ談義を繰り広げることに。サッシャ:この1年、世の中がいっぱい変わって、ラジオを担当する身としてはどうですか?
宇多丸:ラジオを聴く方が増えたなんてことも聞きます。「Clubhouse」の流行とかポッドキャストもそうですけど、音声コンテンツそのものの魅力みたいなものが世界的にも広まって盛り上がっているのが、僕らからすれば「我が意を得たり」というか、「だよね」というか、「でしょ?」みたいな、「気づいた?」みたいな。
サッシャ・ノイハウス:(笑)。
宇多丸:ちょっと前まで、よくわかっていない人ほど「ラジオは危機ですが」とか言うんだけど、俺はそういうこと1回も思ったことがなくて。ラジオそのものは「しゃべりコンテンツ」というのかな? この魅力というのは、むしろインターネットとの親和性もいいから「なに言ってるの?」と思っていたんだけど、ついにそれがある種、定着した。だからコロナの時代とのフィット性、そばにいてあげる感じもあるし、あとはフットワークというのかな? ちょうどいいフットワークみたいなところもよくて。
サッシャ:そうなんですよね。
宇多丸:聴いてる人には言わずもがなだよね。「だから聴いてるんだよ!」という話だけど。
サッシャ:『STEP ONE』を聴いている人に、ラジオのよさを説明してもね。わかっているから聴いてくれている素敵な方たちですから。
宇多丸:そういうことですよ。あなた方ですよ、あなた方がえらい!
サッシャ:むしろ「宣伝してね! みんなに教えてあげてね」みたいな。
宇多丸:そうなの。ラジオっていまは聴き方が昔とくらべて大幅に多様化しているじゃないですか。電波をキャッチする聴き方もあるけどタイムフリーもあるしということで、いまだと気楽に聴けるし「こういうことをやっているよ」みたいなのを宣伝してあげる、なんてことも。お互いにウィンウィンなね。それでラジオが盛り上がる、みなさんもより充実した番組が聴ける。そして我々も盛り上がり、お給金が上がり、そしてその分、多く税金を払い……すみません、ちょっと暗い顔になってきましたけど。
サッシャ・ノイハウス:(笑)。
RHYMESTERの最新情報は、公式サイトまたは、Twitterまで。
J-WAVE『STEP ONE』のワンコーナー「MUSIC+1」では、ゲストとして毎回話題のミュージシャンが登場する。放送は月曜~木曜の12時30分ごろから。
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