aikoは徹底的に「個」を描く。シアワセなのに別れを思う、歌詞の魅力を紐解く

J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。

3月4日(木)のオンエアでは、シンガーソングライターのさとうもかと恋バナ収集ユニット「桃山商事」の清田隆之さんがゲストに登場。「なぜ人は恋をするとaikoを聴くのか?」をテーマにお届けした。

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aiko「自分にとって曲は、日記のようなもの」

番組では、いつの時代も女子に共感されるアーティスト、aikoを特集。ゲストには、シンガーソングライターのさとうもかと恋バナ収集ユニット「桃山商事」の清田隆之が登場。

あっこゴリラ:さとうもかさんがaikoさんにハマったきっかけは?
さとうもか:中学校くらいのときに、お母さんの友達が『暁のラブレター』というアルバムをくれて、それがきっかけでハマりました。
あっこゴリラ:奇遇! 実は、私も『暁のラブレター』でハマったんです。清田さんは、「桃山商事」の活動を通じ、多くの恋愛相談を受けながら女性の思考を分析されてきたということですが、これまでにどれぐらいの恋愛相談を受けてきたんですか?
清田:もう20年くらいこの活動をやってて(笑)。なので、1200人くらいの恋バナとか相談を受けてきました。
あっこゴリラ:ええ~! すごい! 20年以上答え続けているっていうのがすごすぎる。

今回、番組ではaiko本人からのメッセージを紹介。まずは、aikoの歌詞のこだわりについて訊いた。

aiko:私は恋愛の曲が多いんですけど、いつも曲を書くときに心掛けているのは、“自分に嘘をつかないこと”。本当にあったことや思ったことを言葉にすることが多いですね。なので、「この曲ってどうできたんですか?」って聞かれると本当に起こったことを話さないといけないのでめちゃくちゃ恥ずかしくなります(笑)。自分にとって曲は、日記のようなもので、思ったことや感じたことを形にするということを心がけています。

aikoは、自分自身が恋愛で経験したことを曲にするそうだ。

aiko:自分が恋愛をして辛かったり、不安に思ったりすると曲にするので、デビューしたての頃は、こんな気持ちになるのは私だけなのかなと思って曲を書いてたんですよね。そしたら聴いてくれた人が「私も同じこと思った」、「失恋したときにこんな気持ちになったよ」ってお手紙をくれたり、ファンの人たちに声をかけてもらって“一人じゃないんだ”って思ったのが永遠に続いて、気づいたら22年経っていたっていう感じですね。振り返ってみると、自分自身もそれを思い出すので、言葉と音楽の大事なアルバムをめくっているような感じがします。これからもそのときどきに思ったことを言葉にしていきたいと思っています。

aikoのニューアルバム『どうしたって伝えられないから』も、いまの気持ちが詰まっているという。

aiko:今回は、本当に毎日めちゃめちゃ聴いているアルバムができました(笑)。いまの気持ちがギュッと詰まったアルバムになったなって思います。去年、コロナ禍で家から出れなかったときに曲をかける気力がなくて、でも夏くらいに「やりたいな~」と思えるようになってレコーディングをしたんですけど、時間の限られている中でのレコーディングだったので、前よりも1分1秒を楽しんで大事に過ごそうと思ってレコーディングしました。

このアルバムに込めた想いとは……。

aiko:過去に好きな人に言いたかった言葉とか、緊張して言えなかったことを全部このアルバムで言った気がします。『どうしたって伝えられないから』、私はこのアルバムで歌いますっていう意味を込めてこのアルバムタイトルにしました。めちゃくちゃ楽しい幸せの真ん中の曲もあれば、すごく別れた曲みたいな曲も入っていますので、ぜひみなさんにいろんな曲を聴いてもらえたらうれしいです。

番組では、ニューアルバム『どうしたって伝えられないから』の中から『磁石』をオンエアした。



aiko:磁石にはS極とN極があるけど、S極とS極は絶対にくっつくことがなくて、しかもくっつくことはない上に反発して離れてしまう、それくらい私の気持ちも跳ね返っていま裏を向いてしまったっていう曲です。この人とは流れている血液の色も違うんじゃないかなっていうくらいわかり合えなかったけれど、それに気づいて新しく前を向くことができたよっていう歌です。

『シアワセ』なのに別れを思ってしまう

ここからは、桃山商事の清田がaikoの楽曲の中から恋愛ソングと失恋ソングをそれぞれピックアップして紹介した。まずは、恋愛ソング。

・2001年『ロージー』

あっこゴリラ:この曲を選んだ理由は?
清田:あふれる想いを表現し、「あなたとわたしはひとつ」という感覚を歌っている恋人たちの絶頂感がめちゃくちゃストレートに表れている曲で、“これぞaikoのラブソング”という歌だと思います。最初の歌詞からも、なんとなくその情景が目に浮かぶような、すごく映像的なところが特徴的だなと思い選びました。
あっこゴリラ:なるほど~。他者と同一になりたいくらいめちゃめちゃ愛してるって状態ってあると思うんですけど、でも絶対になれないじゃないですか。そういう切なさが同時にはらんでるっていうところがたまらないんですよね。
清田:そうですね~。
あっこゴリラ:なんかいちいち哲学的だな~って思っちゃいます(笑)。

・2005年『かばん』

あっこゴリラ:この曲を選んだ理由は?
清田:歌詞でも表現されているように“好きで好きでたまらない”というような恋心が爆発する曲なのかなと思いきや、突然暗い歌詞がはさまって、そこから「あなたと知り合うまで何をして生きてきたんだろう」という歌詞がきます。過去にすごく苦しい時間があって、そこからこの恋の爆発なのかなとか、いろいろセットで想像してしまうような歌詞がすごいと思い選びました。

・2007年『シアワセ』

あっこゴリラ:ずばり、この曲を選んだ理由は?
清田:この曲はタイトルに『シアワセ』とあるように、恋人との幸せな絶頂の最中にいながら、なぜか同時に別れたあとのことまで発想してしまう……。しかも終わりというより死までいっちゃってるのかなっていうくらいで。



あっこゴリラ:私もこの曲はそれをすっごい思っちゃうんですよね。「もしかして恋人がもういないのかな」って想像してしまったり……。
清田:なるほど~!
あっこゴリラ:それでタイトルが『シアワセ』っていうのが、ヤバいなってなっちゃうんですよね(笑)。
清田:これはしびれますよね。それでも今の幸せをかみしめるというすごいラブソングだと思います。

番組では『シアワセ』をオンエアした。

aikoの楽曲は徹底的に「個」

続いて、「失恋ソング」をピックアップ!

・2002年『今度までには』

あっこゴリラ:この曲を選んだ理由は?
清田:恋人が心変わりしてしまったことを察知し、別れを決意するまでの物語。冒頭で「きっとそうだあたしはあなたの言う事全てに答えてきたつもりよ いつもあたし素直に心の底から幸せな笑顔をしてきたはずなのに」と歌っていますが、この陶酔している感じと俯瞰(ふかん)している感じが同居してしるのがすごいなと思って。それをたった一行で表現してしまうすごさ。そしてサビの「悲しいけれど切ないけれど あれもこれも忘れるのかなぁ」というところ。いつか忘れてしまうということを、どこかですでに知っている。その二面性がすごく表れているなと思い選びました。
あっこゴリラ:別れて悲しいということより、それを忘れてしまう方の圧倒的な悲しさを歌っているのがめちゃめちゃ切ないですよね。
清田:もう失恋というより人生ですよね。

・2003年『えりあし』

あっこゴリラ:この曲を選んだ理由は?
清田:別れた恋人をいつまでも忘れられない女性の気持ちを歌っていますが、同時にどこかで別れを受け入れている部分もあり、その両義性が奥深い失恋ソング。すごく好きだったし、いろいろ試すようなこともしてしまったけど、もしかしたらどこかでこの人とは合わないかもなっていう気持ちを抱えながらつき合っていたのかなみたいなところがあって。それを「あたしの旅」という言葉で、結局自分は自分でしかいられないっていう覚悟を歌っているように感じて、失恋の歌なのにかっこいいなと思いました。
あっこゴリラ:確かに、aikoさんって徹底的に「個」なんですよね。他者と自分、そこがすごくはっきりされていて、でもつながることをあきらめないっていう私たちの欲望も描いてくれてるから本当にすごいなって思います。

・2021年『ばいばーーい』



あっこゴリラ:こちらは最新アルバムの1曲目。しびれる!
さくらもか:ヤバいですね。
あっこゴリラ:aikoさん、かつてここまでグレた感じのありました?
清田:それが僕も衝撃で。これまでのaikoさんの歌詞世界にはなかったような、相手に対する怒りが感じられる珍しい歌ですよね。“あなたとわたし”の間に明確な線を引いているところに新境地を感じました。
さくらもか:私もこの曲、本当に衝撃を受けて。歌い方もなんですけど、「ばいばい」の一言で全部燃やしてしまうくらいの、当たり前のこの「ばいばい」という言葉の使われ方がすごいなって思いました。

J-WAVE『SONAR MUSIC』は月~木の22:00-24:00にオンエア。
番組情報
SONAR MUSIC
月・火・水・木曜
22:00-24:00

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