音楽、映画、エンタメ「ここだけの話」
11人に1人が飢餓状態。「魚をあげるのではなく、魚の釣り方を教える」取り組み

11人に1人が飢餓状態。「魚をあげるのではなく、魚の釣り方を教える」取り組み

地球の未来を守るために今できることを考える、J-WAVEで放送中の番組『ENEOS FOR OUR EARTH -ONE BY ONE-』(ナビゲーター:堀田 茜)。

11月27日(金)のオンエアでは、持続可能な開発目標「SDGs(Sustainable Development Goals)の目標2「飢餓をゼロに」について、飢餓のない世界をつくるために活動する国際協力NGO、ハンガー・フリー・ワールドで国内活動を担当する西平久美子さんに話を訊いた。

「11人に1人」が飢餓状態に

ハンガー・フリー・ワールドは、「食料への権利」の実現をめざし、住民の自立を支援する目的で1984年に設立された国際協力NGO。飢餓のない世界をつくるために日本のみならず、バングラデシュ、ベナン、ブルキナファソ、ウガンダの5つの拠点で活動している。

堀田:目標2の「飢餓をゼロに」というのは具体的にどのような目標なんでしょうか。
西平:あらゆる形態の飢餓と栄養不良をなくし、すべての人が年間を通して安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする、という目標になります。
堀田:飢餓にも種類があるんでしょうか?
西平:飢餓には2種類あると考えています。どういう種類があるか想像できますか?
堀田:災害、ということもありますか?
西平:そうです。「突発的な飢餓」という、飢饉(ききん)とも呼ばれるものがあります。これは自然災害、たとえば干ばつや洪水とか、あとは紛争といった突発的に起こったことが原因で食料がない状態になるんです。もう一つあるのが「慢性的な飢餓」という、ずっと飢餓の状態です。この場合はどうしようもない構造的な問題があったりします。よくニュースで出るのは突発的な飢饉のほうなんですが、人数的に多いのは慢性的な飢餓のほうだと言われています。

「突発的な飢餓」と「慢性的な飢餓」の状態にある人たちは、全世界でどれくらいの人数になるのだろうか。

西平:両方合わせた数字になりますが、6億9000万人ぐらいと言われています。世界の人口で比較をすると、11人に1人ぐらいという数字になります。
堀田:そんなに多くの方が……かなりの割合ですね。ハンガー・フリー・ワールドではその改善に向けてどのような活動をされているんでしょうか。
西平:慢性的な飢餓の改善を目指しています。「地域を作る」「仕組みを変える」「気づきを作る」「若い力を育てる」という4つの事業を組み合わせながら、地域の自立を目指しています。
堀田:なるほど、4つはそれぞれ具体的にどのようなことをされているんですか?
西平:その地域の人たちが自らの力で、栄養のある食料を継続して確保できる状態を作るために、地域開発というのをやっています。「気づきを作る」というところだと、飢餓や食料問題を自分ごとにしてもらう、考えてもらうための啓発活動というのをやっています。それから「仕組みを変える」というのは、たとえば法律というのも、その人たちのよく食料が得られるのかというところに関わってきます。国や国際的なルール、法律を変えていくための「アドボカシー(政策提言)」という活動になります。それから「若い力を育てる」というところもありまして、日本ではそうでもないんですが、海外のウガンダとかですと、人口の7割ぐらいが30歳以下だったりするんです。
堀田:「地域を作る」「気づきを作る」という、飢餓に対して食料をあげるということではなくて、そもそもの仕組みを作っていくというところのサポートをしているんですね。

原則「食料の配布を行わない」

日本を含めて5つの拠点で活動をしているというハンガー・フリー・ワールド。堀田はより具体的な活動内容について尋ねた。

西平:全部を紹介すると長くなってしまうので、いくつか抜粋をしてご紹介します。たとえば東アフリカにあるウガンダという国では、農家の協同組合を支援しています。あとは西アフリカにあるブルキナファソだと憲法改正の動きがあるんですけれど、ほかのNGOやメディアと一緒に、みなさんが持っている食料の権利を憲法の条文に入れてもらうように働きかけをおこなっています。
堀田:憲法の条件に含めてもらうように働きかける、そんなことができるんですね。活動をおこなっていて難しいと感じる点はありますか?
西平:ハンガー・フリー・ワールドでは原則「食料の配布を行わない」という活動方針で動いているんですが、それを理解してもらうことがまず難しいです。
堀田:「飢餓のサポート」というとやっぱり、食料の配布をおこなうイメージがあります。飢餓状態でお腹が空いている人からしたら、目の前に食べ物があったら「どうしてそれをくれないんだ」となっちゃいますよね。
西平:それでも「みなさんが地域をよくするんです」と言い続けて、理解を広めていったという経緯があります。NGO業界だとよく使われる表現なんですが「魚をあげるのではなく、魚の釣り方を教える」という言い方があるんです。ハンガー・フリー・ワールドでは後者の「釣り方を教える」に徹しています。

ボランティアも活躍するハンガー・フリー・ワールド

ハンガー・フリー・ワールドの活動は、会員だけではなく学生のボランティアも参加しているという。国内だと大学生や高校生が「伝えるボランティア」をしているとのこと。

今回は学生ボランティアとして活動する大学二年生の甲斐さんが、リモートで登場した。甲斐さんは自身のSNSやオンラインイベントで世界の飢餓問題を伝えたり、ハンガー・フリー・ワールドや伝えるボランティアとは何かを紹介したりしている。

堀田:実際にボランティアに参加をしてみて、世界の飢餓問題についてどう感じましたか?
甲斐:「食」はすごく身近ですよね。多くの人は、食料を確保するということも当たり前に感じていると思います。ですが世界ではそういった当たり前のことがなされていない事実があるということを多くの人に理解をしてもらい、行動を変えてもらうことは簡単じゃないんだな、というのをすごく思います。でもその反面「君がやっているなら行動を変えてみよう」というフィードバックをもらえると、すごくやりがいを感じられます。
堀田:これから私たち個人で、なにかできることはあるんでしょうか?
甲斐:たとえば今、SDGs関連のイベントがオンラインでたくさん開催されています。そういったイベントに参加をしてみたり、そこで得た知識を自身のSNSや「伝えるボランティア」のような活動で発信をしていくことができると思います。あとは日々の自分自身の行動を見直すだけでも、大きな行動になると思うので、小さいことから大きいことまでたくさんあると思います。
堀田:確かに今年はオンラインというものが身近になってきたので、そういった意味でも啓発活動に結び付きやすいですね。若い世代のみなさんが活躍をされていくのは、すごく私にとっても刺激になりました。私ももっと頑張ろうと思います。

目標は「活動地から撤退」すること

最後に西平さんに団体としての目標について尋ねると、その地域の未来を思うからこその回答が返ってきた。

西平:海外の活動地から撤退をすることです。ハンガー・フリー・ワールドは永遠に活動地で支援活動をするのではなく、なるべく早いタイミングで地域の人々が自立をして、栄養がある食料を一年中安定して得ることができる状態を作る、ということを目標に活動をしています。そして本来、住人の食糧への権利を守るべき行政や協同組合などに事業を引き渡すことを目標にしているので、まずはひとつの活動地をハンガー・フリー・ワールドの卒業生として送り出すことがいまの目標になります。直近で言いますと、先ほどお伝えしたブルキナファソで憲法改正の動きが正念場にきています。

ハンガー・フリー・ワールドの公式サイトでは、募金も行われている。ぜひアクセスしてみてほしい。

https://www.hungerfree.net/

『ENEOS FOR OUR EARTH -ONE BY ONE-』は、わたしたちの未来を守るために、いまできることを一緒に考える。放送は毎週金曜日の22時から。

この記事の続きを読むには、
以下から登録/ログインをしてください。

  • 新規登録簡単30
  • J-meアカウントでログイン
  • メールアドレスでログイン
radikoで聴く
2020年12月4日28時59分まで

PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

番組情報
ENEOS FOR OUR EARTH -ONE BY ONE-
毎週金曜
22:00-22:30