「自給自足の生活」は、どんなもの? ニュージーランドの大自然で暮らす四角大輔に訊く

「あしたの選択肢」と「3年先の生き方」を探る、J-WAVEで放送中の番組『Diamond head ETHICAL WAVE』(ナビゲーター:坂口真生/豊田エリー)。11月28日(土)のオンエアでは、ニュージーランドの湖畔に暮らす執筆家、四角大輔さんをゲストに招き、ニュージーランドでの生活についてトークを繰り広げた。

スーパープロデューサーの職を捨て、夢だった「大自然の生活」へ

もともとはレコード会社に務めていた四角さん。アーティストプロデューサーとして、絢香、Superfly、平井 堅、CHEMISTRYなどを手がけた。配信を含めると10度もミリオンヒット楽曲を創出したが、2010年にその職を捨て、学生時代からの夢だった「ニュージーランドへの移住」を果たす。現在は原生林に囲まれた湖のほとりで、自給自足をベースに森の生活を営む日々を送り、「地球との共生」をテーマに、ライフスタイルシフトを提唱しながら執筆活動を中心に活動。著書に『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』(サンクチュアリ出版 )などがある。

坂口:ちなみに、今オンラインで音声をつないでいる場所はどういう環境下ですか?
四角:南半球の小さな島、ニュージーランドのものすごくど田舎の山のなかの湖のほとりの自宅です(笑)。

都会で生きるスーパープロデューサーから、大自然の中で暮らす生活へ。坂口は「ここまで極端にライフスタイルシフトをされている方って、そういういないと思います」と、四角さん自身はどう感じているかを訊いた。

四角:こういう暮らしをしたいと思ったのは学生時代だったんです。小さいころから自然がすごく好きで、1人で自然のなかに入っていくということを、小学校からずっとやっていました。いつかこういう場所で自分で食料を調達して、なるべく環境に負荷をかけないで暮らしたいなとずっと思っていて。それがついに実現したのが、レコード会社で15年働いたあとの40歳になる前の歳だったという感じです。だから夢が叶ったという、そんな想いですね。

水は湖から。自給率は8~9割

四角さんが暮らしている場所は、一番近い小さな町からも20キロも離れたところにあるそうで、できる限りの範囲で自給自足の生活を営んでいるという。

四角:目の前の湖が湧き水でできているんです。湖の周りの97、98パーセントが恐らく原生林で、雨が降ったあとに森が水をきれいに浄化してくれて、湖に注ぎ込まれています。そこで水も自分でポンプでくみ上げて飲料水として家で使ったりしながら、自給自足な暮らしをしています。
坂口:四角さんが実践している自給自足の暮らしというのはどういうものなんですか?
四角:一時期「自給率100パーセント」を目指したことがあるんですが、さすがに難しくて。「どこまでやれるのか?」という話だと、僕はまずお肉を食べないので買う必要はありません。タンパク源は植物性のものと自分で釣る魚、そして獲ってくる貝から摂っています。野菜、果実の大半は庭で育てています。また、周りの森から季節ごとの果物が採れるので、それも採取しています。釣りはわりと狩猟的な要素があるので、狩猟、採取プラス、農業みたいな感じです。大体夏だと7、8割、ときに9割ぐらいまで自給率が上がるんです。
坂口:季節によってなんですね。
四角:はい、冬は若干下がります。足りない分は集落での物々交換でいただいたりとか、ファーマーズ・マーケットに生産者さんが直接ものを週末に売りに来るんです。そこは非常にオーガニック・ファーマーさんが多いので、そういった顔が見える人から買わせていただいて、自給できないものを補っています。

「コロナを理由にリセットしちゃいましょう」

忙しく働き、心身ともに消耗していると感じる現代人は少なくない。しかし、ライフスタイルは簡単には変えられないもの。四角さんのもとにも、そうした相談が届くそうだ。

四角:僕の場合は、冒頭でお話をしたように「若いころからの夢」として、こういう暮らしを形にしました。それを発信していると「自分もいつかそういう暮らしをしたい」とか、僕ほど極端な形ではなくとも、東京の都会の真ん中で毎日仕事に追われながら自分の時間を持てない、自然のなかに入っていく時間もないけど、そういう生き方を変えたいという人からの相談を受けたりします。僕はオンラインサロンをやっているんですけれども、そこではよくそういう悩み事が打ち明けられていたりするんです。

四角さんは「アクションを起こす難しさもわかる」と共感を示した上で、コロナ禍に乗じてライフスタイルを変えるのはどうかとアドバイスをした。

四角:「コロナを理由にリセットしちゃいましょう」と。このぐらい大きなきっかけは、なかなか人生でもないので。実際、働く場所もテレワークやリモートワークがどんどん日常化して、「職場の近くに住まないといけない」という概念が崩れつつありますよね。東京からいきなり九州や沖縄のほうに行っちゃう人も、僕の周りではいます。でも、そこまでやらなくても、東京近郊から1、2時間行っただけで本当に自然が豊かなので、今の仕事を維持しながら(都心から離れた)公園の近くの場所に引っ越すとか、コロナを理由に思い切ってリセットしちゃってほしいというのはありますね。

ニュージーランドの環境への取り組み

ニュージーランドは「環境先進国」というイメージがある。四角さんによると、ニュージーランドは原発が1つもなく、電力の81パーセントが再生可能エネルギーになっているという。「昔から変わらずやってきたこと」が、今になって新しく見えているのではないかと解説した。

四角:化石燃料を使う発電所の新設も事実上禁止されていて、ここ数年にできている発電所はすべて地熱発電所ですね。あと、与党はジャシンダ・アーダーンという有名な女性の首相が率いる労働党なのですが、政権のなかに閣外協力で緑の党が入っています。環境関連はすべてその党に任せていて、森林や海、湖、河といった水域の保護、絶滅しそうな原種の野生動物を守るような活動を積極的に行っています。今、SDGsという言葉が浸透し、オーガニックもブームになっていますが、ニュージーランドの環境に対してのアクションや市民の考え方は「新しいトレンド」として行われているという感じはしないんです。昔から変わらずやってきたという。
坂口:トレンドだからではなくて、もともとあったものを加速させたり、当たり前のように前進しているイメージでしょうか。
四角:そうですね。たとえば、プラスチックの容器とかをなるべく使いたくないという意識はずっとあって。一度なにかを使い始めたらそれを自分で修理してなるべく長く使うとか、「リユース」「リサイクル」の発想は基本的に根付いています。僕の場合は高い自給率を目指すということで、かなりの規模で果樹園を庭でやっていたり、菜園をやってたりするんですが、みなさん大小さまざまな形で家庭菜園やコンポストみたいなものを、昔からずっと当たり前のようにやっている。僕の感覚だと、ニュージーランドは昔から変わっていなくて、その変わっていない部分が斬新だと呼ばれたり、ときどき未来の国みたいな形でいろいろな見本にされるという。そこが、僕がニュージーランドを「いいな」と思う部分でもありますね。

四角さんの著書である『LOVELY GREEN NEW ZEALAND 未来の国を旅するガイドブック』でも、サスティナブルな宿やオーガニックなカフェなどを紹介。「これまでのガイドブックとは一線を画す内容だと思います」と語った。

同番組では、「3年先の生き方」を探る。四角さんは、オーガニックやフェアトレード、エシカルなどの言葉が説明がなくても通じる、当たり前のこととして広まっている社会になっていてほしいと望み、「僕の肌感覚ですが、この10年の社会変化を考えると、じゅうぶんありえると思います」と述べた。
radikoで聴く
2020年12月5日28時59分まで

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番組情報
Diamond head ETHICAL WAVE
毎週土曜
18:00-18:54

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