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「黒人」という呼び方は差別か? 日本在住の外国人の意見【Black Lives Matter】

「黒人」という呼び方は差別か? 日本在住の外国人の意見【Black Lives Matter】

世界で広がる「Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター)」の運動。日本在住の外国人に、「黒人」という呼び方をどう思うか、これまでどんな差別を感じたか、話を訊いた。

答えてくれたのは、日本初の黒人経営者によるアニメスタジオ「D’art Shtajio(デ・アート・シタジオ)」のCEOであるアーセル・アイソムさん。6月21日(日)オンエアのJ-WAVE『ACROSS THE SKY』(ナビゲーター:玄理)のワンコーナー「WORLD CONNECTION」にて。


■“色”で呼ばれてきた歴史

アメリカで、黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人の警察官に殺害されたことを受けて広まったBlack Lives Matter。東京では6月15日に初のデモ行進がおこなわれ、黒人差別や人種差別問題を訴えた。

今回の放送で話を聞いた、日本在住の外国人であるアーセルさん。高校生の頃にアニメ作品の『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』を観て心を動かされ、アニメ業界を志すように。現在はスタジオを立ち上げて4年目となり、これまでで『ワンピース』『ジョジョの奇妙な冒険』『進撃の巨人』などの制作に関わったという。

アーセルさんも、東京でのBlack Lives Matterのデモ行進に参加したそうだ。

玄理:アーセルさん以外の黒人のお友だちも、多く参加されていましたか?
アーセル:そうですね。私の友だちはほとんど参加しました。代々木公園が集合場所で、原宿、渋谷をデモ行進しました。3500人ほど参加したそうです。

玄理は「黒人」という呼び方をどう思うか、アーセルさんに見解を聞いた。

玄理:ここ何年かで、「黒人」という呼称が失礼なのではないか、という動きがありますよね。そこで、アフリカ系アメリカ人という呼び方になってきていましたが、Black Lives Matterをきっかけに、また黒人やBlackと呼ばれるようになりました。アーセルさんは、こうした呼称の問題をどうお考えでしょうか。
アーセル:はじめて黒人という呼び方を知ったときは、とてもビックリしました。そのときは、日本人の友だちが「日本ではこういう風に呼ぶ」と教えてくれたんですね。

「他の黒人の方は別のことを考えるかもしれません」と前置きした上で、自分自身は「人を色で呼ぶことに対して、“意識”してしまいます」と続けた。

アーセル:私たちの歴史は、“人”ではなくずっと“色”で呼ばれてきているんですね。人間ではなく、まるで物であるかのように。日本人が黒人と呼ぶことに対して、差別的な意識を向けられているとは思ってはいないです。ですが、リンカーンによる奴隷解放宣言を経て、公民権法が成立したのは1964年のことで、まだ50年ちょっとしか経っていません。だから、母や祖母の世代、私の子どもの頃は、すごくいろんな差別がありました。

アーセルさんが9才の頃、ガールフレンドの誕生日会に行ったところ、こんな思いをしたそうだ。

アーセル:ガールフレンドの家庭は、お母さんが白人で父がスペイン人でした。パーティのなかで黒人は、私と弟の2人だったのですが、親御さんが喧嘩している声が耳に入ってきたんですね。喧嘩の内容は、「なぜ家に黒人を招いたんだ。黒人はいい人ではない」でした。日本に住む黒人も、こうした経験を持っていると思います。また、日本人は区別するために言っているのかもしれないですが、アフリカ人という言い方も適切ではないと思います。アフリカは大陸なので。ですので、黒人やアフリカ人という言葉よりかは、「外国人」や「アメリカ人」と呼ぶほうがいいと思います。
玄理:なるほど。


■黒人に対する理不尽な暴力や差別は世界中で発生している

黒人に対する不当な差別や暴力によって、今なお多くの命が奪われ続けている。

アーセル:2020年のBlack Lives Matterは、ジョージ・フロイドやブレオナ・テイラーらの死が、みんなの心を動かしました。Black Lives Matterというのは、2013年にSNS上で「#BlackLivesMatter」というハッシュタグが拡散されたのがはじまりです。警官が暴力をふるった結果、黒人の命を奪ったんです。
玄理:犯罪行為をせず、ただ普通に生活している黒人に対して、警察からの暴力だったり差別的な偏見からくる殺害だったりが、あまりにも多いから生まれた運動なんですね。ジョージ・フロイドさんが警察官に首を抑えられている動画は、日本でも多くの方が観ました。あの動画を観て、すごくショックを受けた方は多いと思うんですよ。銃を持っていなかったとしても、職質をされてああやって抑え込まれて、結果的に殺害されてしまう。ああいった事件は、アメリカでは日常的に起こることなのでしょうか?
アーセル:そうですね。ジョージ・フロイドの場合、20ドル分のニセ札を使った疑いがありました。だけどそれが、相手の命を奪う理由にはなりませんよね。ありえない話です。

犯罪行為をしていない人も、警官と接触してしまうと命を落とす可能性が高いという。アーセルさんは「それが黒人の日常」だと、自身の経験を語った。

アーセル:私も、危険な目に遭った経験があります。大学生の頃に友だちのハロウィーンパーティに行ったのですが、宿題があったため途中で帰ったんですね。人が並ぶバス停にいたところ、パトカーが通り過ぎたんですね。「自分は黒人だから『怪しい』と思われて、もしかしたらパトカーが戻ってくるかもしれないな」と考えていたら、その通りのことが起こりました。パトカーのライトを私たちに向けて、「黒い皮ジャケットを着た、武器を携帯した黒人を見ましたか?」と聞いてきたんです。そのとき、私はたまたま黒い皮ジャケットを着ていたので、警察の人は私に銃を向けて、手錠を付けられたんです。それが、私が経験した出来事です。
玄理:ご両親から人一倍真面目に生きるように教育を受け、悪いことを一切していないアーセルさんでさえも、警察に銃を向けられたという経験があるんですね。

Black Lives Matterは、遠い国の出来事ではない。「日本には人種差別がないから、関係がない」という意見を持つ人もいるが、それは見過ごしてしまっているだけだ。差別のない社会とはどういうものか、考え続けていきたい。

「WORLD CONNECTION」では、さまざまなトピックの「今」を取り上げる。オンエアは9時20分頃から。

【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年6月28日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

【番組情報】
番組名:『ACROSS THE SKY』
放送日時:毎週日曜 9時-12時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/acrossthesky/

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