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写真家・荒木経惟、原点を集約した写真集『月光写真』を語る

写真家・荒木経惟、原点を集約した写真集『月光写真』を語る

J-WAVEで放送中の番組『RADIO SWITCH』。この番組では、カルチャーマガジン『SWITCH』、旅の雑誌『Coyote』、新しい文芸誌『MONKEY』の3つの雑誌とゆるやかに連動する。11月30日(土)のオンエアでは、写真家・荒木経惟が登場。写真家・若木信吾と『SWITCH』編集長・新井敏記が聞き手となり、荒木へインタビューを行った。


■大学時代から写真の実験をしていた

東京・新宿区にある荒木の事務所を、刷り上がったばかりの分厚い一冊の写真集を携えた若木と新井が訪れた。まだインクの匂いがする真新しい写真集の印象的な青い表紙には、『月光写真』と墨文字で荒木の手書きのタイトルが記されている。

11月27日(水)に発売された写真集『月光写真』(スイッチ・パブリッシング)は、1964年から71年にかけて荒木が個人的に撮りためた作品を、銀座の老舗画材屋「月光荘」のスケッチブックに自らレイアウトしていた全26冊のスクラップブックから編纂された。まさに“天才・アラーキー=荒木経惟”の原点が集約された渾身の写真集である。

荒木:これまでに撮ったいろんな写真を見ていて、自分の写真の中でもこの『月光写真』を撮った頃が一番だね。修業時代というか。
若木:荒木さんが電通で働いていた時代ですよね。
荒木:俺、間違って科学系の大学に行っちゃって。
新井:千葉大学工学部写真印刷工学科ですよね。
荒木:学科名に「写真」って付いてたから(笑)。当時、日本大学も候補としてあったけど学費が高くて、いろんな大学を探したら、千葉大学に「写真」って項目が出ている。工学部だけど、写真を撮ることもあるだろうと思って入学したら、なかったの。
若木:全然ないんですか(笑)。

荒木は「工学部の実験はしなかった」と振り返る一方で、『月光写真』を見て「当時、写真の実験はしてたんだな」と実感したという。

荒木:俺の『月光写真』は実験時代だね。今、パッと思いついてやっていることは、すでにここでやっちゃってるわけ。だから『月光写真』を見るのはいやなんだよ、俺の集大成みたいで。終わりみたいで。
若木:『月光写真』は荒木さんの原点みたいなものなんですね。
荒木:この写真集を見るとやる気になる。自分自身の復習だね。今見るとやっぱりいいね。この頃から“天才・アラーキー”と名乗っていたからね(笑)。



■なぜスケッチブックでスクラップブックを作ったのか

『月光写真』には、1964年に写真集『さっちん』で第1回太陽賞を受賞した荒木が、72年に電通を退社してフリーになるまでの間に撮られた写真が収録されている。彼の名を世に知らしめた名作『センチメンタルな旅』(1971年)に至るまでの歴史を知るうえで重要な一冊になっている。これまで発表されることのなかった原点であり、その後の彼の写真人生を予告する数々のモチーフが詰まっている。

新井:そもそも、なぜ「月光荘」のスケッチブックでスクラップブックを作ろうと思ったんですか?
荒木:俺、電通にいたじゃない。まわりを見たらレイアウトが下手なやつが多いし、他社の雑誌のレイアウトとか構成がダメだから、俺が自分で一冊ずつ写真集を作ったんだよ。だから、たった一冊の写真集だよ。それがすごくよかった。
新井:ちゃんと紙焼きしてますよね。
荒木:そう、自分で写真をプリントしてる。
若木:かなり大きなサイズですよね。
荒木:スケッチブックの大きさに合わせてプリントしている。これはデカくしなくちゃいけないと思って。これをスクラップブックにすることは、もう一回写真を撮るような感じだよね。

荒木の原点が集約された一冊『月光写真』の詳細については、特設サイトで確認できる。

『RADIO SWITCH』では、スイッチ・パブリッシングの紙面に登場するさまざまな著名人、アーティスト、作家たちのロングインタビューやドキュメント企画をおこなう。オンエアは毎週土曜23時から。お楽しみに。

【番組情報】
番組名:『RADIO SWITCH』
放送日時:毎週土曜 23時-24時
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/radioswitch/

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