J-WAVEで放送中の番組『GOOD NEIGHBORS』(ナビゲーター:クリス智子)。10月23日(水)のオンエアでは、歌人の東 直子が登場。短歌の面白さや、お気に入りの短歌を紹介した。
■短歌を詠むコツは、自分なりの発見を盛り込んでいくところ
東が短歌を作るようになったのは雑誌の投稿がきっかけだった。
東:童話やファンタジーが好きで、そういった情報が載っている雑誌『MOE』を購読していたら、歌人の林あまりさんの短歌の投稿欄が始まりました。ちょっと短歌をやってみたい気持ちがあったので、作って投稿したらわりと掲載していただけて。そこから面白くなり、育児の合間に作っていました。
東は「短歌は五・七・五・七・七とかたちが決まっているので、そこに言葉を当てはめていく面白さがある」と、その魅力を語る。
東:かたちが決まっているので「これは無駄かな」とか「ここだけは残したい」とか、だんだんと気持ちが整理されたり、言葉と言葉の響き合いを楽しんだり、そういう決まったかたちがあるからこその言葉の面白さの発見があります。
俳句は季語や切れ字を入れた方が良いとされるが、短歌には決まりがなく自由に作ることができることも魅力のひとつだ。
東:個人的な喜怒哀楽を詠んでもいいし、景色がきれいだと思ったらそれを詠んでもいい。決まりがなく、いろんな切り口があります。和歌の時代とは違い、個人に根ざした感覚や感情を表して、人が考えそうなことではなく、私なりの発見を盛り込んでいくところが短歌のコツですね。
■東がおすすめする短歌
東の新刊『短歌の詰め合わせ』(アリス館)が10月31日(木)に発売となる。短歌の歴史や作り方に加え、「食べ物」「動物」「家族」「自然」「喜怒哀楽」「恋」「不思議」「乗り物」と8つの身近なテーマに沿って東が厳選した短歌を紹介した「短歌の入門書」とも言える一冊だ。
今の季節が「食欲の秋」ということで、東はこの本に収録する一首を紹介した。
人生のここがいちばんいいところうきうきとして牛舌(ギウタン)に塩<小池純代>
東:「牛舌に塩」って、素直ですごくおいしそうですよね。大好きな牛タンを今こそ食べるんだって瞬間を、ちょっと大げさに表現しています。「人生のここがいちばんいいところ」と書いてあって、読み手も一緒に牛タンを食べて自分も盛り上がれるようなところが楽しいですし、「今すぐ牛タンが食べたいな」と思いますよね。
「人生のここがいちばんいいところ」という部分は、読み手が「ここがいいな」と思う場面を当てはめることもできると解説する。
東:何か楽しいことやうれしいことがあったときに、「今は人生のいちばんいいところにいるんだ」と置き換えて楽しむこともできるんじゃないかと思います。
東はシンプルな一首として、「動物」をテーマに掲載した短歌も紹介した。
犬はいつもはつらつとしてよろこびにからだふるはす凄き生きもの<奥村晃作>
東:ちょっと文章のようですが、確かに犬って、はつらつとして喜びに体を振るわせているなって。そういった当たり前のようなことだけど、五・七・五・七・七と定型におさめることによって、妙な迫力と説得力が出てくるから、「これでも一首になるんだよ」と教えてくれます。
■恥ずかしいぐらいの内容のほうが、ぐっとくることも
東京新聞「東京歌壇」など、公募された短歌の選者でもある東は、「いい短歌」についてこう表現した。
東:例えば短歌のお題が「犬」だった場合に、よく「犬も歩けば棒に当たる」などそのまま慣用句を入れる人がいますけど、それは決まり文句なので、その人の感性とは言えなくなります。この人しか思いつかないアイデアや感情の動きなど、その人ならではの表現が少しでも入っていると「これはちょっと読みどころがあるので残しておこう」と思います。慣用的ではない何か広がりがある作品を探していますね。
短歌を作るにあたり、「これはこうだ」と説明するように知識を書いてしまう人が多いが、東は「つまらないかもしれないけど、私はこう思った」ということでも、恐れずに思い切って感じたことをぶつけることが大切だと語る。
東:きれいなことやカッコいいことを詠おうとすると表現が浅くなりがちです。ちょっと恥ずかしいくらいの内容の方がグッとくることもあるので、思い切った表現をしてほしいですね。そういう人間らしさが大事かなと思います。
東のアドバイスをもとに、いろいろな視点で自由に短歌を楽しんではいかがだろうか。東の新刊『短歌の詰め合わせ』もぜひ手にとってほしい。
【番組情報】
番組名:『GOOD NEIGHBORS』
放送日時:月・火・水・木曜 13時-16時30分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/neighbors/
■短歌を詠むコツは、自分なりの発見を盛り込んでいくところ
東が短歌を作るようになったのは雑誌の投稿がきっかけだった。
東:童話やファンタジーが好きで、そういった情報が載っている雑誌『MOE』を購読していたら、歌人の林あまりさんの短歌の投稿欄が始まりました。ちょっと短歌をやってみたい気持ちがあったので、作って投稿したらわりと掲載していただけて。そこから面白くなり、育児の合間に作っていました。
東は「短歌は五・七・五・七・七とかたちが決まっているので、そこに言葉を当てはめていく面白さがある」と、その魅力を語る。
東:かたちが決まっているので「これは無駄かな」とか「ここだけは残したい」とか、だんだんと気持ちが整理されたり、言葉と言葉の響き合いを楽しんだり、そういう決まったかたちがあるからこその言葉の面白さの発見があります。
俳句は季語や切れ字を入れた方が良いとされるが、短歌には決まりがなく自由に作ることができることも魅力のひとつだ。
東:個人的な喜怒哀楽を詠んでもいいし、景色がきれいだと思ったらそれを詠んでもいい。決まりがなく、いろんな切り口があります。和歌の時代とは違い、個人に根ざした感覚や感情を表して、人が考えそうなことではなく、私なりの発見を盛り込んでいくところが短歌のコツですね。
■東がおすすめする短歌
東の新刊『短歌の詰め合わせ』(アリス館)が10月31日(木)に発売となる。短歌の歴史や作り方に加え、「食べ物」「動物」「家族」「自然」「喜怒哀楽」「恋」「不思議」「乗り物」と8つの身近なテーマに沿って東が厳選した短歌を紹介した「短歌の入門書」とも言える一冊だ。
たくさんの現代短歌を集めた『短歌の詰め合わせ』(アリス館)が出版になります。若井麻奈美さんの絵が全ページに入り、楽しい1冊に、なりました。10月28日頃から店頭に並ぶ予定です。どうぞよろしくお願いいたします! pic.twitter.com/HVYkuPaJok
— 東直子 (@higashin) October 24, 2019
今の季節が「食欲の秋」ということで、東はこの本に収録する一首を紹介した。
人生のここがいちばんいいところうきうきとして牛舌(ギウタン)に塩<小池純代>
東:「牛舌に塩」って、素直ですごくおいしそうですよね。大好きな牛タンを今こそ食べるんだって瞬間を、ちょっと大げさに表現しています。「人生のここがいちばんいいところ」と書いてあって、読み手も一緒に牛タンを食べて自分も盛り上がれるようなところが楽しいですし、「今すぐ牛タンが食べたいな」と思いますよね。
「人生のここがいちばんいいところ」という部分は、読み手が「ここがいいな」と思う場面を当てはめることもできると解説する。
東:何か楽しいことやうれしいことがあったときに、「今は人生のいちばんいいところにいるんだ」と置き換えて楽しむこともできるんじゃないかと思います。
東はシンプルな一首として、「動物」をテーマに掲載した短歌も紹介した。
犬はいつもはつらつとしてよろこびにからだふるはす凄き生きもの<奥村晃作>
東:ちょっと文章のようですが、確かに犬って、はつらつとして喜びに体を振るわせているなって。そういった当たり前のようなことだけど、五・七・五・七・七と定型におさめることによって、妙な迫力と説得力が出てくるから、「これでも一首になるんだよ」と教えてくれます。
■恥ずかしいぐらいの内容のほうが、ぐっとくることも
東京新聞「東京歌壇」など、公募された短歌の選者でもある東は、「いい短歌」についてこう表現した。
東:例えば短歌のお題が「犬」だった場合に、よく「犬も歩けば棒に当たる」などそのまま慣用句を入れる人がいますけど、それは決まり文句なので、その人の感性とは言えなくなります。この人しか思いつかないアイデアや感情の動きなど、その人ならではの表現が少しでも入っていると「これはちょっと読みどころがあるので残しておこう」と思います。慣用的ではない何か広がりがある作品を探していますね。
短歌を作るにあたり、「これはこうだ」と説明するように知識を書いてしまう人が多いが、東は「つまらないかもしれないけど、私はこう思った」ということでも、恐れずに思い切って感じたことをぶつけることが大切だと語る。
東:きれいなことやカッコいいことを詠おうとすると表現が浅くなりがちです。ちょっと恥ずかしいくらいの内容の方がグッとくることもあるので、思い切った表現をしてほしいですね。そういう人間らしさが大事かなと思います。
東のアドバイスをもとに、いろいろな視点で自由に短歌を楽しんではいかがだろうか。東の新刊『短歌の詰め合わせ』もぜひ手にとってほしい。
【番組情報】
番組名:『GOOD NEIGHBORS』
放送日時:月・火・水・木曜 13時-16時30分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/neighbors/