J-WAVEで放送中の番組『RADIO SWITCH』。この番組は【Listen to the Magazine, Reading Radio 雑誌を聴く、ラジオを読む。】をコンセプトに、カルチャーマガジン『SWITCH』、旅の雑誌『Coyote』、新しい文芸誌『MONKEY』の3つの雑誌とゆるやかに連動しながらお送りしています。
6月8日(土)のオンエアでは、『MONKEY』の編集長・柴田元幸さんが登場。5月9日に発売された、柴田さんと作家・村上春樹さんの対談集『本当の翻訳の話をしよう』について語りました。
【この記事の放送回をradikoで聴く(2019年6月15日23時59分まで)】
■古い翻訳が消えるのはもったいない
『本当の翻訳の話をしよう』の主な対談のテーマは「翻訳」。最初の章では、いつの間にか絶版になってしまった面白い翻訳小説について柴田さんと村上さんが話し合っています。これは、いい翻訳本を復刊させたり、自分たちで新訳を作ったりするふたりのプロジェクト「村上柴田翻訳堂」の所信表明のような対談でした。
柴田:新しい翻訳を出すことはもちろん大事だし、自分たちもずっとそうしてきたわけですけど、古い翻訳が消えるのはもったいないとふたりともいつも思っていたので、村上さんの発案でこういうプロジェクトを立ち上げるに至りました。これまでに絶版になっていた旧訳を6冊復刊させて、自分たちで新訳を2冊ずつ出し、計10冊を新潮文庫から出すことができました。
オンエアでは、その中からウィリアム・サローヤンの短編集『僕の名はアラム』の冒頭に収められた『美しい白い馬の夏』を柴田さんが朗読しました。
「作者のサローヤンはアルメニア系アメリカ人で、小説でもアメリカ西海岸に住むアルメニア系の人たちを描き、その共同体全体を包む喪失感とあたたかさの両方を伝えている」と、柴田さんは解説。『僕の名はアラム』には、朗読では再現できないひとつの特徴があると言います。
柴田:会話にクォーテーションマーク、かぎかっこがついていないことです。視覚的にも生々しいリアルな会話というより、いつか見た夢の中で聴いた会話のような雰囲気が生まれます。『美しい白い馬の夏』の夏も、アメリカの特定の地域の特定の時代の夏というより、誰もが夢で見知った気がする、そんな夏になっていると思います。
■村上春樹との対談で感じること
話は再び『本当の翻訳の話をしよう』へ。柴田さんが村上さんと対談していていつも思うのは、「村上さんは何事に関しても自分の意見をはっきり持っていて、それを明確に言葉にできる」ということだと話します。
柴田:そのこともすごいと思うのですが、それ以上にそうやって自分の意見を言うなかで、違う意見を排除しないこと。「これはあくまで自分ひとりの意見だけれど」と、ごく自然に付け加えられることはもっとすごいと思います。僕自身はどうしても、何かを肯定するためについ何かを否定してしまうので、そういうところは見習いたいといつも思っています。なかなか見習えないんですが。
『本当の翻訳の話をしよう』の中では、ジョン・チーヴァーやグレイス・ペイリーという、当時、村上さんが翻訳中だった作家について話しています。そこで柴田さんが面白いと感じるのは、対象になっている作家について語る一方、「この人はこう書くけれど、僕はこう書く」と、自身の小説作法も明かしているところだそうです。
柴田:対談中も、そういう話になると密かにドキドキします。雑誌の『MONKEY』ではそういう対談と合わせて、ペイリーやチーヴァーの「村上訳」も一緒に掲載させていただいたのですが、翻訳者としての僕の出る幕はないわけです。
村上さんと柴田さんによる翻訳に関する対談集『本当の翻訳の話をしよう』は絶賛発売中です。ぜひ手にとってみてください!
次回15日(土)23時からのRADIOSWITCHは、作家・沢木耕太郎さんへのロングインタビューをお届けします。
【この記事の放送回をradikoで聴く(2019年6月15日23時59分まで)】
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『RADIO SWITCH』
放送日時:土曜 23時-24時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/radioswitch/about.html
6月8日(土)のオンエアでは、『MONKEY』の編集長・柴田元幸さんが登場。5月9日に発売された、柴田さんと作家・村上春樹さんの対談集『本当の翻訳の話をしよう』について語りました。
【この記事の放送回をradikoで聴く(2019年6月15日23時59分まで)】
■古い翻訳が消えるのはもったいない
『本当の翻訳の話をしよう』の主な対談のテーマは「翻訳」。最初の章では、いつの間にか絶版になってしまった面白い翻訳小説について柴田さんと村上さんが話し合っています。これは、いい翻訳本を復刊させたり、自分たちで新訳を作ったりするふたりのプロジェクト「村上柴田翻訳堂」の所信表明のような対談でした。
柴田:新しい翻訳を出すことはもちろん大事だし、自分たちもずっとそうしてきたわけですけど、古い翻訳が消えるのはもったいないとふたりともいつも思っていたので、村上さんの発案でこういうプロジェクトを立ち上げるに至りました。これまでに絶版になっていた旧訳を6冊復刊させて、自分たちで新訳を2冊ずつ出し、計10冊を新潮文庫から出すことができました。
オンエアでは、その中からウィリアム・サローヤンの短編集『僕の名はアラム』の冒頭に収められた『美しい白い馬の夏』を柴田さんが朗読しました。
「作者のサローヤンはアルメニア系アメリカ人で、小説でもアメリカ西海岸に住むアルメニア系の人たちを描き、その共同体全体を包む喪失感とあたたかさの両方を伝えている」と、柴田さんは解説。『僕の名はアラム』には、朗読では再現できないひとつの特徴があると言います。
柴田:会話にクォーテーションマーク、かぎかっこがついていないことです。視覚的にも生々しいリアルな会話というより、いつか見た夢の中で聴いた会話のような雰囲気が生まれます。『美しい白い馬の夏』の夏も、アメリカの特定の地域の特定の時代の夏というより、誰もが夢で見知った気がする、そんな夏になっていると思います。
■村上春樹との対談で感じること
話は再び『本当の翻訳の話をしよう』へ。柴田さんが村上さんと対談していていつも思うのは、「村上さんは何事に関しても自分の意見をはっきり持っていて、それを明確に言葉にできる」ということだと話します。
柴田:そのこともすごいと思うのですが、それ以上にそうやって自分の意見を言うなかで、違う意見を排除しないこと。「これはあくまで自分ひとりの意見だけれど」と、ごく自然に付け加えられることはもっとすごいと思います。僕自身はどうしても、何かを肯定するためについ何かを否定してしまうので、そういうところは見習いたいといつも思っています。なかなか見習えないんですが。
『本当の翻訳の話をしよう』の中では、ジョン・チーヴァーやグレイス・ペイリーという、当時、村上さんが翻訳中だった作家について話しています。そこで柴田さんが面白いと感じるのは、対象になっている作家について語る一方、「この人はこう書くけれど、僕はこう書く」と、自身の小説作法も明かしているところだそうです。
柴田:対談中も、そういう話になると密かにドキドキします。雑誌の『MONKEY』ではそういう対談と合わせて、ペイリーやチーヴァーの「村上訳」も一緒に掲載させていただいたのですが、翻訳者としての僕の出る幕はないわけです。
村上さんと柴田さんによる翻訳に関する対談集『本当の翻訳の話をしよう』は絶賛発売中です。ぜひ手にとってみてください!
次回15日(土)23時からのRADIOSWITCHは、作家・沢木耕太郎さんへのロングインタビューをお届けします。
【この記事の放送回をradikoで聴く(2019年6月15日23時59分まで)】
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番組名:『RADIO SWITCH』
放送日時:土曜 23時-24時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/radioswitch/about.html
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