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aikoに「音楽の魔法」をかけられて…ものんくる・角田隆太の音楽遍歴

aikoに「音楽の魔法」をかけられて…ものんくる・角田隆太の音楽遍歴

J-WAVEで放送中の番組『SAPPORO BEER OTOAJITO』(ナビゲーター:クリス・ペプラー)。9月8日(土)のオンエアでは、独自のサウンドで注目を集める話題のトップユニット・ものんくるの角田隆太さんをゲストにお迎えし、音楽との出会いや、初のセルフプロデュース作品となった新アルバム『RELOADING CITY』について、お話を伺いました。

■音楽的な初恋の人はaiko!

角田さんは、東京・稲城市生まれで、埼玉県・狭山市育ち。ひとりっこで、“鍵っ子”でもあったとか。幼少期に、ある女性シンガーのCDを聴いたところから、音楽に目覚めました。

角田:鍵っ子だったので、友だちと遊んで夕方に家に帰ってきてからがすごい長くて。その時間をどう使おうかなっていうことをずっと考えてましたね。絵描いたりとか、本読んだりとか、ちょっと年齢が進んでくると、カードゲームあるじゃないですか。あれを2デッキ分、2人分作って、それを交代交代で違う人格としてやるみたいな。それをずっとやってました(笑)。
クリス:けっこう、妄想少年だ?
角田:妄想少年でしたね。完璧にそれが今の作詞活動に役立ってるんじゃないかとは思うんですけど。
クリス:音楽にハマったきっかけは?
角田:鮮明に覚えています。友だちの家に遊びに行ったとき、その子のお兄ちゃんが買っていた、aikoのアルバム『桜の木の下』を聴いたんです。1曲目のイントロから、ものすごく引き込まれちゃって。CDを入れたカセットデッキを、腕を組んで眺めながら、アルバムを通して聴いちゃって。「あ、これ、終わったんだ、もう1回聴こう」みたいなことをやって、初めて“音楽の魔法”にかかったなっていう。
クリス:“音楽ファーストラブ”はaikoだったんだ?
角田:そうなんです、初恋の人が。
クリス:どんなところに惹かれたのでしょうか。
角田:テレビCMとかで流れている音楽を買うのとは、まったく違う感じでしたね。あとになって思うと、初期のaikoさんの楽曲は、編曲にちょっとザ・ビートルズっぽいところとかあったり、音にかなりこだわってるなと感じるので、そういうところに無意識のうちに惹かれたのかなと。



クリス:そこから楽器をやるようになったんですか?
角田:はい。最初は「みんながギターを弾いてるから、俺も弾き語りでスピッツ歌おうかな」みたいな、そんな感じでしたけどね。
クリス:これやってるとけっこうイケてる感あるっていうので、「ちょっと俺もギター弾いてやろうかな」みたいな。
角田:そうですね、もっと言うと、好きな友だちがいて、彼がやってたから俺もやろうみたいな感じでしたね。


■大学生の頃、ウッドベースをガッツリ修行!

aikoさんのCDで、初めて“音楽への目覚め”を感じたという角田さんは、その後、同級生たちとバンドを結成。以後、徐々にベーシストとしての素養を身に着けることとなったそうです。

クリス:本格的に音楽を志向するというか、ミュージシャンを目指してみようかなと思ったのはいつぐらいなんですか?
角田:中3ぐらいのときに、同級生たちにバンドに誘われて。ギターとドラムはいたんで、「なんか(楽器を)どうせ買わなきゃいけないんだから、ベースを買ってください」って言われて、ベーシストになったんです。
クリス:よくあるパターンだよね。くじ引きみたいなもんだよね。
角田:ホントにジャンケンとかくじ引きみたいな。
クリス:最初に買ったベースは何ですか?
角田:もう全然覚えてないんですけど、なんか韓国製の、ちょっとWarwick(ワーウィック) みたいな尖ったやつでしたね(笑)。まだ全然思い入れがなかったですね、ベースには。
クリス:すごく、こないだ僕はプレイを観て、すごい上手いなと思ったんですけども、我流なんですか? それとも教わりましたか。
角田:一応、高校生のときに、先生についたことはあります。2年ぐらいやったかな。
クリス:それはどういうことを教わったんですか?
角田:そのときはR&Bとか、ファンクのリズムパターンみたいのを教えてもらいました。でも、自分の基礎になっているのは、大学に入ってから。ウッドベースを始めて、そこでちゃんと師匠について、4年間ぐらいガッツリ習ったんです。たぶん今、エレキベースにも活きてる感じがあるかもしれないです。
クリス:ウッドベースは、やっぱり当然プラスになるんですよね? エレキを弾いてる人でも。
角田:かなりなると思いますね。エレキベースは板に弦がついてるから、生楽器を鳴らすという意識ができなくて、アコースティック感っていうのをエレキでどう出すかは、自分の中で課題として考えてたりもしますね。
クリス:そうすると、やっぱりベースはフレッドレスが多いんですか?
角田:フレッドレスが意外になくて、フレッド貼ってるのばっかですね。
クリス:こないだライブで拝見したけど、すごいかっこいいベースですよね。
角田:『CARVIN』のベースです。もう60年ぐらいの歴史があるブランドで
クリス:セミアコっぽい感じですよね。セミアコじゃないんですか?
角田:じゃないんですよ。ホールがあるんですけど、ダミーで。
クリス:あ、そうなの!?
角田:中は入ってないっていう(笑)。
クリス:でもケースもピックアップだから「ああ……だな」みたいな感じ。
角田:そうなんですよ。でも、中は穴が開いてないっていう不思議な楽器なんです。
クリス:でもピエゾなんですよね? ピエゾっていうと、だいたいナイロン弦ギターだったりとか、ちょっと独特の、もっとウッディというか、アコースティックな音の振動を拾う感じなんですかね。
角田:エアー感がちょっと入るような感じなんで、ジャズクラブみたいなところに行ってもいい感じに混ざるし、大音量のロックハウスでも割とゴリッとした音が鳴ってくれる。
クリス:ピエゾのわりにはすごい音が、腰が据わった感じが。
角田:そうなんですよね、めちゃめちゃ気に入っちゃって。
クリス:あれ、かっこいいっすよ。
角田:でも全然、中古でも出回ってなくて。『CARVIN』も潰れちゃったんで、次のサブ機をどうにかして探そうと思ってるんですけど。
クリス:弦は何を張ってるんですか?
角田:フォスファーブロンズっていうブロンズ弦ですね。
クリス:なるほど、それはラウンドなんですか? フラットなんですか?
角田:ラウンドですね。
クリス:なるほど。話は戻りますけど、音楽家を本格的に目指したのは、大学からということでしょうか。
角田:高校生の頃は、若者だから、漠然と「いける」っていう感じがずっとしてて。全然イケてなかったのに、「いつかイケるだろう」みたいな感じの高校生だったんで(笑)、あんまりプロになろうとは考えてなかったんですよね。「なれるでしょ?」みたいな感じで。
クリス:「就職失敗したらミュージシャンやってやろうか?」ぐらいな?
角田:高校生のときだから、就職っていう言葉すら知らなかったぐらいかもしれないですね。大学になってウッドベースを始めてから、在学中からお仕事を始めて。
クリス:それはどういう仕事したんですか?
角田:ホントにジャズクラブとか、バーとかレストランとかホテルとかそういうところで演奏するっていう感じだったんですけど、この流れでプロになれるだろうとか思って、それこそ就職はしなかった感じでしたね。


■影響を受けた音楽は

学生時代からベース演奏の仕事をはじめ、いつかは本格的なプロになれると思っていたという角田さん。そんな彼に大きな影響を与えたアーティストについて伺いました。

クリス:自分の記憶の中で、「このアーティストは、聴きまくった!」っていうのはあります?
角田:バンドのthe band apartがすごく好きで。それをもうとにかくずっと聴いてましたね。高校の通学時間とか。
クリス:今のサウンドと全然違いますが、ルーツはロックなんでしょうか。
角田:そうですね、くるりとかもすごい聴いてましたし。
クリス:あ、ホント? ジャズは大学時代にどっぷりと?
角田:そうなりますね。
クリス:そうか、じゃあ自分の中で、いつもロック、ポップスみたいな部分と、ジャズとかの部分が最近は混在してるっていう感じなんでしょうか。
角田:そうですね……ちょっと前というか、たぶん4、5年ぐらい前まではかなり分けてたんですよ、そこを。なんか、一緒にできるようになったっていう感じですね。
クリス:the band apartも、コードが独特ですよね。
角田:そうですね、やっぱりジャズとかフュージョンから流れてきたものがあるんで。
クリス:そうですよね、だからメジャー、マイナーだけじゃないみたいな。やっぱ変わってる部分もありますよね。
角田:一番最初にメロコアを聴いてたんですけど、メロコアの「行け!オラ」っていう押し切りだけじゃなくて、かなりアンニュイなニュアンスが入っているところが、the band apartのすごく好きだったところです。
クリス:そのほかだと?
角田:大学時代は、Herbie Hancockをめちゃめちゃ聴いてましたね。
クリス:そっかー。Herbie Hancockは何を聞いてたんですか?
角田:僕はサイドマン作の方が好きで、Joe Hendersonの『Double Rainbow』っていう、Antonio Carlos Jobimの曲ばかりやってるアルバムがあるんですけど、そのときのHerbie Hancockとかめちゃめちゃ好きでしたね。あとはリーダー作だったら、もちろん『I Thought It Was You』とか。
クリス:Herbie Hancockすごいっすよね。なんでもできちゃうから。ポップスからなんでもね。なんかスクラッチも入れちゃうし、スタンダードから最先端までっていうか。
角田:あれだけブチ切れられるのに、プロデュースみたいなこともできるし。あのバランス感覚ってなかなかないなと思いますね。
クリス:ですよね。かっこいい。ただ前に1回、ブルーノートでHerbie Hancockを観たときに、30分でセットが終わって。「おい! あんたそんな安い人じゃないんだから、もうちょっとやってよ! 30分はないよー!」みたいなことはありました(笑)。
角田:そうですね、たぶんそれ、僕は大学生のときだったと思うんですけど、チャージが高すぎて行けなかったんですね(笑)。
クリス:あとほかにどんな人を聴いてます?
角田:Caetano Velosoがもうめちゃめちゃ好きで。90年代のCaetano VelosoがJaques Morelenbaumっていうチェロの人とずっと一緒にやってるんですけど、その作品たちがホントに好きですね。
クリス:へー。
角田:Jaques Morelenbaumは、アレンジがもうホントに素晴らしくて。素晴らしいオーケストレーションを書くんですよね。
クリス:Caetano Velosoはどこが一番好きですか? そのアレンジ能力なのかな。
角田:『粋な男』(『Fina Estampa』)っていうライブビデオがあって、それを最初に見たときに、ポルトガル語なのにビシビシ歌詞が伝わってきて、こんな人いないなって思ったんですよね。結局、「言葉が違ってもこれだけ伝えられるんだな」っていうことを教えてくれた人ですね。
クリス:それはなぜでしょう。やっぱり思い入れなんですかね。
角田:言葉にどれだけニュアンスを積み込むかっていうところが長けてる人なのかなって思いましたね。その言葉の意味はわからないけど、ニュアンスの方はビキビキに伝わってくるっていうところなのかなと。


■NYで…「ベースをレッスンして」と直談判!

角田さんは、観光でニューヨークを訪れた際に、意外な人物との出会いがあり、影響を受けたと言います。

クリス:Robert Glasperも、とにかくよく聴いていたそうですね。これは何年ぐらいですか?
角田:一番ハマったのは、『Double Booked』っていうアルバムが出た頃だと思うんですけど。1回ニューヨークに遊びに行ったときに、Alan Hamptonっていうベースの人に「レッスンしてくれませんか?」って、ライブに行って言ったら、「あ、いいよ。明日家来て」って言って。
クリス:ホント!? そんな簡単に?
角田:めちゃめちゃラフな感じでしたね(笑)。
クリス:すげえな、それ(笑)。
角田:それで遊びに行ったときに、それこそ「どんなアーティストが好きなの?」って、言われて、Robert Glasperにハマってたんで伝えたら、「今度、Robert Glasper Experimentで、ピンチヒッターでライブをやるから、参考にCDをもらったんだよ。俺、もうこれ聴いたからあげるよ」って、そのブートCDをくれたんですよ。それがめちゃめちゃ良くて、それをずっと聴いてましたね。
クリス:でもホント、Robert Glasperがちょっと1つの時代を開けた感じがしますもんね。
角田:そうですね。ジャズとロックとか、自分のもともと好きだったものを混ぜれるようになったのって、Robert Glasperの存在があったからだなって思います。


■新アルバム『RELOADING CITY』について

初のセルフプロデュース作品となった新アルバム『RELOADING CITY』への思いを聴きました。

クリス:これは何枚目?
角田:4枚目です。1枚インディーズを出して、その後から、菊地成孔さんのレーベルで2枚目出させてもらって、3枚目はセルフプロデュースで、別のレーベルから出させてもらうっていう形ですね。
クリス:セルフプロデュースはいかがですか。
角田:相方の吉田沙良は、歌も歌うし、パフォーマーなんで、右脳という感じなんです。で、僕の方は作詞作曲と編曲、ライブではベースも弾くから左脳。右脳と左脳で意見が食い違うこともあって。前作だったら「菊地さん、どう思いますか?」と訊いて、的確なアドバイスをもらっていたんですけど、今作は全部自分たちで責任を負って決断をしていかないといけなかった。そこが一番違ったかもしれないですね。
クリス:初セルフプロデュースということで、自信作?
角田:自信作でもありますし、「自分たちの今が出てるな」と。
クリス:『RELOADING CITY』は、どういう意味でつけたのでしょう。
角田:「LOADING」とか、ゲームのロードしてるときに下に出てきたりするような、あの感じで着想を得ました。今、渋谷とか再開発してるような、街がローディングしている感じっていうのを、表現したくて。

10月5日からは同アルバムの楽曲を引っさげる形で、ツアーを開始します。「総力戦という形で臨もうと思ってます」と角田さん。その活躍に注目です!

【番組情報】
番組名:「SAPPORO BEER OTOAJITO」
放送日時:土曜18時-18時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/otoajito/

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