
アニメーション監督の渡辺信一郎が、アニメに興味を持ったきっかけや、衝撃を受けた楽曲、現在放送中の最新オリジナルアニメ『LAZARUS ラザロ』について語った。
渡辺が登場したのは、5月24日(土)放送のJ-WAVE『SAPPORO BEER OTOAJITO』(ナビゲーター:クリス・ペプラー)。ビールを飲みながら、クリスとゲストが音楽談義を繰り広げる番組だ。
この番組では、ゲストがビールに合う“おみや”を紹介する。渡辺は、「ハンターズ 黒トリュフフレーバーポテトチップス」を持参し、ビールとともに楽しんだ。
クリス:渡辺さんは京都府出身で、1980年代からアニメの制作現場に入られ、数々の作品を手がけてこられました。小さいころからアニメがお好きだったんですか?
渡辺:そうでもなかったんですよ。普通に観ていた感じですね。地元が京都っていうと、京都市の風景を思い浮かべると思うんですけど、ずっと山のほうのとんでもないど田舎で何もない感じで。山の中を走り回っていたので、アニメばっかり観ていたという感じではなかったですね。
クリス:当時の好きなアニメは?
渡辺:『ルパン三世』でしたね。といっても、シリーズでたくさんあるじゃないですか。最初の『ルパン三世』のテレビシリーズがもっとも大人っぽい感じなんですけど、子どもながらにいちばん好きでしたね。そもそも、いまは「泥棒が主人公とかあり得ないだろう」って感じですけど。架空のどこかわからないような国で、泥棒らしき大人たちがアンニュイな生活をしている。やっぱり原作からして日本人離れしてますよね。これ、どこの国の人が描いたんだって。もしかしたらそれが好きだったのかもしれませんね。ど田舎で育って、それが嫌だったんですね。ここではないどこかに行きたいっていう気持ちがすごく強くて、それでこういうアニメを観たり、洋楽を聴いたり、洋画を観たりしていましたね。たぶん、どこか違う世界に行きたいっていう気持ちがそうさせてたんじゃないかなと思うんです。
渡辺:キッスとの出会いでした。友だちのお兄さんのレコードを聴かせてもらったんです。当時、こういう音楽を初めて聴いて衝撃を受けまして。いままでテレビで観ていた歌謡曲と違うぞと。別の世界のものって感じがしたんですよね。それでキッスに夢中になって、近所の小学生を集めて、キッスのマネごとをしていましたね。
クリス:顔にペインティングして?
渡辺:もちろん。絵の具で顔に模様を描いて、ギターとか持ってないので板をギターの形に切り抜いてマイギターを作ってました。ラジカセで曲を流しながら弾くマネをして。エアーバンドですね(笑)。
そのあと、クイーンやエアロスミスなど、キッスの周辺のアーティストも聴き始めるようになったと話す。
渡辺:当時、キッス、クイーン、エアロスミスは洋楽御三家と言われていましたからね。エアロスミスは『Rocks』ってアルバムが大好きでしたね。クイーンでいちばん聴いたアルバムは『オペラ座の夜』です。その1曲目が『Death on Two Legs』っていう曲なんですけど、すごく好きな曲で、今回『LAZARUS ラザロ』のもうすぐ放送されるサブタイトルにも引用させてもらいました。
渡辺:中学2年生くらいのときにテレビのCMでこの曲を聴いて、それまで聴いていた日本の音楽と似ても似つかない、そもそも人間が演奏しているかどうかもわからないし、未来から来たロボットみたいな人たちが演奏しているみたいだなと思って、すごく衝撃を受けましたね。それまでのロックとも全然違うし、別次元からやってきた音楽って感じがしました。
クリス:人生を変えちゃったって感じですか?
渡辺:そうですね。さっきから言ってるんですけど、ど田舎で別世界に行きたいと思って洋楽を聴いたり、『ルパン三世』を観たりしていたんですけど、この曲で本格的に本来行くべき世界が見えたっていうか、未来から来たような、この音楽を追求したいと思いました。ちなみに、YMOでいちばん好きなアルバムは1981年にリリースされた『BGM』です。これも本当に衝撃的で。退廃的というか、暗いんですよね。音がものすごく濁っていて、突然すごく屈折した音楽になったと感じました。
クリス:彼らの進化や、彼らなりのこだわりを感じますよね。
渡辺:『TECHNOPOLIS』から2年でものすごく進化したと思うんですよ。もはや別物くらいになっていて、それがすごいと思ったんですよね。普通は『TECHNOPOLIS』や『RYDEEN』がヒットしたら同じようなものを続けるじゃないですか。でも、どんどん進化して理解されようがされまいがおかまいなしに音楽的進化を遂げている感じでしたね。音を全部自分たちで作ってるんですよね。ほとんど聴こえないくらいの音で変わったフレーズが入ってたりするんですよね。それは宝探しみたいな感じで。そういうのを探すかのように聴いていて、音楽の聴き方がすっかり変わっちゃったって感じですね。
クリス:この作品の設定やストーリーは監督の発想ですか?
渡辺:そうですね。本当に起きそうで怖いんですけど、そういう設定のSFになってます。
クリス:音楽を手がけているのが、カマシ・ワシントン、ボノボ、フローティング・ポインツ。渡辺さんが直接、音楽の注文をしたんですか?
渡辺:発注するときに音楽メニューがあるんですね。たとえば、スローな感じでとかメロウな感じでとか、これはバトルシーンで使いたいからアップテンポな感じでとか、大ざっぱなメニューはあるんですけど、あとは自由にやっていいと。よそ行きじゃなくて、いつも自分たちがやっているような感じで作ってくれと発注しましたね。彼らがオリジナルアルバムとまったく遜色ないくらいの曲を作ってくれたので、それがよかったですよね。特に、ボノボは「今回、俺、いい曲を作ったと思うんだ」って自分で話していたくらいなので、満足感がある仕事ができたんだと思います。カマシもそうで、彼は僕が作っていた『カウボーイビバップ』とか『サムライチャンプルー』が大好きだったみたいで、なかなかないくらいの気合いの入り具合でしたね。
『LAZARUS ラザロ』はテレビ東京系列で毎週日曜23時45分から放送中。また、各配信プラットフォームでも配信中だ。また、5月28日(水)には『別冊ele-king 渡辺信一郎のめくるめく世界』(Pヴァイン)、6月26日(木)には『渡辺信一郎の世界 「カウボーイビバップ」から「LAZARUS ラザロ」まで』(KADOKAWA)がそれぞれ発売される。
番組の公式サイトには、過去ゲストのトーク内容をアーカイブ。オンエアで扱った音楽の情報も掲載している。
・過去ゲストのアーカイブページ
https://www.j-wave.co.jp/original/otoajito/archives.html
『SAPPORO BEER OTOAJITO』では、毎週さまざまなゲストを迎えてお酒を飲みながら音楽トークを繰り広げる。放送は毎週土曜18時から。
渡辺が登場したのは、5月24日(土)放送のJ-WAVE『SAPPORO BEER OTOAJITO』(ナビゲーター:クリス・ペプラー)。ビールを飲みながら、クリスとゲストが音楽談義を繰り広げる番組だ。
この番組では、ゲストがビールに合う“おみや”を紹介する。渡辺は、「ハンターズ 黒トリュフフレーバーポテトチップス」を持参し、ビールとともに楽しんだ。
ここではないどこかに行きたい気持ちがすごく強かった
渡辺は『カウボーイビバップ』『サムライチャンプルー』『坂道のアポロン』などのヒットアニメを手がけてきたアニメ演出家。海外からの評価も高く、これまでに『マトリックス』や『ブレードランナー』などのショートアニメの制作も行っている。渡辺が原作・脚本を手がける最新作『LAZARUS ラザロ』(テレビ東京系列ほか)では、主題歌にカマシ・ワシントンを起用するなど、音楽方面からも注目されている作品だ。クリス:渡辺さんは京都府出身で、1980年代からアニメの制作現場に入られ、数々の作品を手がけてこられました。小さいころからアニメがお好きだったんですか?
渡辺:そうでもなかったんですよ。普通に観ていた感じですね。地元が京都っていうと、京都市の風景を思い浮かべると思うんですけど、ずっと山のほうのとんでもないど田舎で何もない感じで。山の中を走り回っていたので、アニメばっかり観ていたという感じではなかったですね。
クリス:当時の好きなアニメは?
渡辺:『ルパン三世』でしたね。といっても、シリーズでたくさんあるじゃないですか。最初の『ルパン三世』のテレビシリーズがもっとも大人っぽい感じなんですけど、子どもながらにいちばん好きでしたね。そもそも、いまは「泥棒が主人公とかあり得ないだろう」って感じですけど。架空のどこかわからないような国で、泥棒らしき大人たちがアンニュイな生活をしている。やっぱり原作からして日本人離れしてますよね。これ、どこの国の人が描いたんだって。もしかしたらそれが好きだったのかもしれませんね。ど田舎で育って、それが嫌だったんですね。ここではないどこかに行きたいっていう気持ちがすごく強くて、それでこういうアニメを観たり、洋楽を聴いたり、洋画を観たりしていましたね。たぶん、どこか違う世界に行きたいっていう気持ちがそうさせてたんじゃないかなと思うんです。
影響されすぎて、エアーバンドを結成!?
音楽の話題になると、渡辺は「幼いころは歌謡曲を聴いていたが、小学5年生のときに衝撃的な出会いがあった」と語る。渡辺:キッスとの出会いでした。友だちのお兄さんのレコードを聴かせてもらったんです。当時、こういう音楽を初めて聴いて衝撃を受けまして。いままでテレビで観ていた歌謡曲と違うぞと。別の世界のものって感じがしたんですよね。それでキッスに夢中になって、近所の小学生を集めて、キッスのマネごとをしていましたね。
Detroit Rock City
渡辺:もちろん。絵の具で顔に模様を描いて、ギターとか持ってないので板をギターの形に切り抜いてマイギターを作ってました。ラジカセで曲を流しながら弾くマネをして。エアーバンドですね(笑)。
そのあと、クイーンやエアロスミスなど、キッスの周辺のアーティストも聴き始めるようになったと話す。
渡辺:当時、キッス、クイーン、エアロスミスは洋楽御三家と言われていましたからね。エアロスミスは『Rocks』ってアルバムが大好きでしたね。クイーンでいちばん聴いたアルバムは『オペラ座の夜』です。その1曲目が『Death on Two Legs』っていう曲なんですけど、すごく好きな曲で、今回『LAZARUS ラザロ』のもうすぐ放送されるサブタイトルにも引用させてもらいました。
Queen - Death on Two Legs (Official Lyric Video)
「別次元からやってきた音楽って感じがしました」
渡辺は、人生を変えた1曲にYMO(YELLOW MAGIC ORCHESTRA)の『TECHNOPOLIS』を挙げた。渡辺:中学2年生くらいのときにテレビのCMでこの曲を聴いて、それまで聴いていた日本の音楽と似ても似つかない、そもそも人間が演奏しているかどうかもわからないし、未来から来たロボットみたいな人たちが演奏しているみたいだなと思って、すごく衝撃を受けましたね。それまでのロックとも全然違うし、別次元からやってきた音楽って感じがしました。
クリス:人生を変えちゃったって感じですか?
渡辺:そうですね。さっきから言ってるんですけど、ど田舎で別世界に行きたいと思って洋楽を聴いたり、『ルパン三世』を観たりしていたんですけど、この曲で本格的に本来行くべき世界が見えたっていうか、未来から来たような、この音楽を追求したいと思いました。ちなみに、YMOでいちばん好きなアルバムは1981年にリリースされた『BGM』です。これも本当に衝撃的で。退廃的というか、暗いんですよね。音がものすごく濁っていて、突然すごく屈折した音楽になったと感じました。
クリス:彼らの進化や、彼らなりのこだわりを感じますよね。
渡辺:『TECHNOPOLIS』から2年でものすごく進化したと思うんですよ。もはや別物くらいになっていて、それがすごいと思ったんですよね。普通は『TECHNOPOLIS』や『RYDEEN』がヒットしたら同じようなものを続けるじゃないですか。でも、どんどん進化して理解されようがされまいがおかまいなしに音楽的進化を遂げている感じでしたね。音を全部自分たちで作ってるんですよね。ほとんど聴こえないくらいの音で変わったフレーズが入ってたりするんですよね。それは宝探しみたいな感じで。そういうのを探すかのように聴いていて、音楽の聴き方がすっかり変わっちゃったって感じですね。
オリジナルアルバムと遜色ない曲を作ってくれた
番組後半では、渡辺さんが手がける最新オリジナルアニメ『LAZARUS ラザロ』の話題に。クリス:この作品の設定やストーリーは監督の発想ですか?
渡辺:そうですね。本当に起きそうで怖いんですけど、そういう設定のSFになってます。
クリス:音楽を手がけているのが、カマシ・ワシントン、ボノボ、フローティング・ポインツ。渡辺さんが直接、音楽の注文をしたんですか?
渡辺:発注するときに音楽メニューがあるんですね。たとえば、スローな感じでとかメロウな感じでとか、これはバトルシーンで使いたいからアップテンポな感じでとか、大ざっぱなメニューはあるんですけど、あとは自由にやっていいと。よそ行きじゃなくて、いつも自分たちがやっているような感じで作ってくれと発注しましたね。彼らがオリジナルアルバムとまったく遜色ないくらいの曲を作ってくれたので、それがよかったですよね。特に、ボノボは「今回、俺、いい曲を作ったと思うんだ」って自分で話していたくらいなので、満足感がある仕事ができたんだと思います。カマシもそうで、彼は僕が作っていた『カウボーイビバップ』とか『サムライチャンプルー』が大好きだったみたいで、なかなかないくらいの気合いの入り具合でしたね。
カマシ・ワシントン『Lazarus』
番組の公式サイトには、過去ゲストのトーク内容をアーカイブ。オンエアで扱った音楽の情報も掲載している。
・過去ゲストのアーカイブページ
https://www.j-wave.co.jp/original/otoajito/archives.html
『SAPPORO BEER OTOAJITO』では、毎週さまざまなゲストを迎えてお酒を飲みながら音楽トークを繰り広げる。放送は毎週土曜18時から。
この記事の続きを読むには、
以下から登録/ログインをしてください。
radikoで聴く
2025年5月31日28時59分まで
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
番組情報
- SAPPORO BEER OTOAJITO
-
毎週土曜18:00-18:54
-
クリス・ペプラー