
シンガーソングライターのさかいゆうが、地元・高知県に活動拠点を移した理由や、最近注目している音楽、3月にリリースしたニューアルバム『PASADENA』、さらには話題となった「NPR Music Tiny Desk Concerts」出演の裏話について語った。
さかいが登場したのは、4月5日(土)放送のJ-WAVE『SAPPORO BEER OTOAJITO』(ナビゲーター:クリス・ペプラー)。ビールを飲みながら、クリスとゲストが音楽談義を繰り広げる番組だ。
この番組では、ゲストがビールに合う“おみや”を紹介する。さかいは、高知県の名物「ちちこ」(カツオの心臓)を持参し、ビールとともに楽しんだ。
さかいは、2024年にデビュー15周年を迎え、現在は故郷である高知県土佐清水市に拠点をもうけて音楽活動を続けている。
さかい:高知って、ライブハウスのある街だったりもしないし、ジャズシーンとかレゲエシーンとかクラブシーンみたいな感じもないんです。ほそぼそとDJに詳しい人がいたり、DJ KAORIさんも出身だったりして、単体ではちょいちょいいるんですけど、そういう人たちが頻繁に高知に帰ってライブハウスでイベントをする県ではないんですよね。
クリス:なるほどね。
さかい:だから、音楽はあんまりなかったんだけど、コロナ禍になってZoomとかでラジオとかテレビとか(出演)できるようになりだして、わりかしリモートで仕事ができるようになって。両親もけっこうな高齢になってきましたし、近くにいながら僕の生産性だけが担保できれば高知でも仕事ができるなと思って、2021年くらいに引っ越しをしました。
クリス:今はみなさん、はなればなれでも成り立つもんね。
さかい:僕、AIとか技術革新みたいなものって、ある一方では行き過ぎると怖い面もあるんですけど、いい面では、こういったミュージシャンにとってはプラスに作用してくれたなって。最新技術を使って田舎に住めるわけじゃないですか。これはパラドックスみたいなもんですけど。東京に行ったり、このあいだはワシントンとかニューヨークに行ったり、そこの人たちともミーティングできるし。テクノロジーが発展してるからこそ田舎が元気になってほしいな、もっと活用してほしいなって思います。土佐清水にいて、プライベートな飲み会をして歌うとすごく喜ばれるんですよ。普段聴かないので。そういうのも地域活動の1個かなと思ったりしてるので、ミュージシャンには二拠点生活が特におすすめですね。
さかい:あいかわらずニューヨークのジャズとか好きですけど、最新のジャズを聴けば聴くほど、同時に昔にも帰りたくなるというか。60年代とか70年代の歌謡曲とか演歌ってすごくガラパゴスなので、今のフォーマットには絶対にない音楽で、ユニークだなと思う。外で披露することはないですけど、美空ひばりさんとか前川 清さんとか和田アキ子さんの曲をめちゃくちゃ真面目に研究して。ピアノとか歌とか喉の使い方とか。ひばりさんはやっぱりすごいですね。リズムと歌の“間”がすごくて。“間”と、こぶしと、ソウルの肌触りみたいな。カラオケバーとかでみんながヒット曲を歌ってるときに、僕がひばりさんの『柔』を歌い始めるとものすごく存在感があるんですよね。
さかいの言葉を聞いたクリスは「歌謡曲はあの時代の縮図みたい」と表現し、「当時の歌詞を見ると“昭和だな”って感じがする」と笑った。
さかい:昭和コンプライアンスみたいな(笑)。
クリス:このあいだ、いしだあゆみさんが亡くなられましたけど、『ブルー・ライト・ヨコハマ』っていいよね。
さかい:めちゃくちゃいいですよね。
クリス:あと、『あなたならどうする』って曲もすごいよね。その一節だけでも深いなって。
さかい:深いです。今が劣ってるとは言わないけど、昭和の歌謡曲のほうが、もっと人間のざらざらした部分まで出してよかったんです。今も人間って変わってないけど、ざらざらしたところを音楽でやっちゃだめっていう空気感はあるので。いい世の中か悪い世の中かは置いておいて、僕は全面的に表現できてる音楽は広いし深いなって思いますね。だから、昭和からめちゃくちゃ影響を受けたいですよね。
クリス:あれが日本の高度成長期ってうなずけますよね。ギラギラで。
さかい:そのかわり、成功した人もいればその裏でたくさんの涙があり悲しみがあり、悔しさがあり。でも、その人たちも生きていく道を見つけないといけないので、その生きていく方法を歌ってくれた曲もたくさんあるし。僕はプリミティブな昭和のものを、音楽家としてはヒントにしたいですね。
クリス:このアルバムの聴きどころは?
さかい:聴きやすいと思います。ずっとグルーヴが流れていて、今回は“NO J-POP”って感じですね(笑)。どう評価されてもいいんですけど、ゆっくりな曲でも踊れるように、グルーヴを強く作っているので、まさに東京とロサンゼルスって感じですね。ボーナストラックにはニューヨークも入ってきて。バラードの曲もグルーヴがあるので、知り合いのDJには「このまま1枚流せるわ」って言われましたね。ドライブミュージックとしてもいいと思いますし、いろんな場所で使えるんじゃないですかね。
クリス:そうか。
さかい:懐かしさと新しさに迫るような1枚で、『PASADENA』はミュージシャンとして修行した場所だし。Shingo Suzukiに4曲プロデュースしてもらったんですけど、彼は自分にわりと近い音楽的思考で、古い音楽も大好きで、かつトレンドの音楽にもしっかりアンテナがあって。自分の魂は売らないんだけど、揺れ動く心は否定せずに、自分が本当に信じている大事なものを抱きながら、自分を通り過ぎていく時代に自分の大事なソウルをつなげて、今の自分ができる最新の音楽ってなんだろって自問自答しているような人なんです。そのアティテュードがすごく好きなんですよね。
クリス:これは快挙といっていいんですけど、「NPR Music Tiny Desk Concerts」は韓国にも日本にもあるんですが、本家本元のアメリカ版に出演すると。上原ひろみとかコーネリアスとか出てますけど、そこにさかいくんが仲間入りして。
さかい:僕は単純にファンだったので出られてうれしいなって。
クリス:どういう経緯で?
さかい:トップのふたりが別の用事で日本に来ていて、僕のライブを観に来てくれていて。ライブが終わったあとに「あなたのパフォーマンスが自分の今回のトリップのハイライトだった」って言ってくれたんです。それで連絡先を交換して、メールがすぐ届きました。1年くらい前までは「Tiny Desk」に出るとはまったく思ってなかったですけど、この1年くらいは機会があったら出るのかな、ワシントンの桜が見たいなって思いながら。
クリス:NPRは「アメリカ公共ラジオ」の略で、本当にワシントンにあるNPRのオフィスに、まさに小さいデスク(Tiny Desk)があって、そこに楽器を押し込んですごく狭い空間で演奏する番組。お客さんはNPRで働いている人たちなんですよね。
さかい:そうです。スタッフはめちゃくちゃ音楽好きなんですよ。まず、トップのふたりが音楽愛にあふれていて、自分が出てほしい人たちを探すんですけど、しっかりビジョンを持っていて。そのブランディングがめちゃくちゃ好きですね。
クリス:アメリカの「Tiny Desk」に出られるっていうのは本当にすごいことで。本家には、ノラ・ジョーンズとかサンダーキャットとか、みんな出てるよね。
さかい:テイラー・スウィフトも出てるし。
クリス:今、称えるべき、広めるべき音楽に固執してるよね。
さかい:本当にそう。インディーズからメジャーまでヘッドハンティングして。音楽に対するみんなのすごく誠実な態度に感動しましたね。
さかいゆうの最新情報は、公式サイトまで。
番組の公式サイトには、過去ゲストのトーク内容をアーカイブ。オンエアで扱った音楽の情報も掲載している。
・過去ゲストのアーカイブページ
https://www.j-wave.co.jp/original/otoajito/archives.html
『SAPPORO BEER OTOAJITO』では、毎週さまざまなゲストを迎えてお酒を飲みながら音楽トークを繰り広げる。放送は毎週土曜18時から。
さかいが登場したのは、4月5日(土)放送のJ-WAVE『SAPPORO BEER OTOAJITO』(ナビゲーター:クリス・ペプラー)。ビールを飲みながら、クリスとゲストが音楽談義を繰り広げる番組だ。
この番組では、ゲストがビールに合う“おみや”を紹介する。さかいは、高知県の名物「ちちこ」(カツオの心臓)を持参し、ビールとともに楽しんだ。
ミュージシャンには二拠点生活がおすすめ?
トークの再生は2025年4月12日(土)28時ごろまで
さかい:高知って、ライブハウスのある街だったりもしないし、ジャズシーンとかレゲエシーンとかクラブシーンみたいな感じもないんです。ほそぼそとDJに詳しい人がいたり、DJ KAORIさんも出身だったりして、単体ではちょいちょいいるんですけど、そういう人たちが頻繁に高知に帰ってライブハウスでイベントをする県ではないんですよね。
クリス:なるほどね。
さかい:だから、音楽はあんまりなかったんだけど、コロナ禍になってZoomとかでラジオとかテレビとか(出演)できるようになりだして、わりかしリモートで仕事ができるようになって。両親もけっこうな高齢になってきましたし、近くにいながら僕の生産性だけが担保できれば高知でも仕事ができるなと思って、2021年くらいに引っ越しをしました。
クリス:今はみなさん、はなればなれでも成り立つもんね。
さかい:僕、AIとか技術革新みたいなものって、ある一方では行き過ぎると怖い面もあるんですけど、いい面では、こういったミュージシャンにとってはプラスに作用してくれたなって。最新技術を使って田舎に住めるわけじゃないですか。これはパラドックスみたいなもんですけど。東京に行ったり、このあいだはワシントンとかニューヨークに行ったり、そこの人たちともミーティングできるし。テクノロジーが発展してるからこそ田舎が元気になってほしいな、もっと活用してほしいなって思います。土佐清水にいて、プライベートな飲み会をして歌うとすごく喜ばれるんですよ。普段聴かないので。そういうのも地域活動の1個かなと思ったりしてるので、ミュージシャンには二拠点生活が特におすすめですね。
昭和の歌謡曲は、人間のざらざらした部分を出すことができた
さかいに最近よく聴く音楽を尋ねると、意外にも演歌や歌謡曲を挙げた。さかい:あいかわらずニューヨークのジャズとか好きですけど、最新のジャズを聴けば聴くほど、同時に昔にも帰りたくなるというか。60年代とか70年代の歌謡曲とか演歌ってすごくガラパゴスなので、今のフォーマットには絶対にない音楽で、ユニークだなと思う。外で披露することはないですけど、美空ひばりさんとか前川 清さんとか和田アキ子さんの曲をめちゃくちゃ真面目に研究して。ピアノとか歌とか喉の使い方とか。ひばりさんはやっぱりすごいですね。リズムと歌の“間”がすごくて。“間”と、こぶしと、ソウルの肌触りみたいな。カラオケバーとかでみんながヒット曲を歌ってるときに、僕がひばりさんの『柔』を歌い始めるとものすごく存在感があるんですよね。
さかいの言葉を聞いたクリスは「歌謡曲はあの時代の縮図みたい」と表現し、「当時の歌詞を見ると“昭和だな”って感じがする」と笑った。
さかい:昭和コンプライアンスみたいな(笑)。
クリス:このあいだ、いしだあゆみさんが亡くなられましたけど、『ブルー・ライト・ヨコハマ』っていいよね。
さかい:めちゃくちゃいいですよね。
クリス:あと、『あなたならどうする』って曲もすごいよね。その一節だけでも深いなって。
さかい:深いです。今が劣ってるとは言わないけど、昭和の歌謡曲のほうが、もっと人間のざらざらした部分まで出してよかったんです。今も人間って変わってないけど、ざらざらしたところを音楽でやっちゃだめっていう空気感はあるので。いい世の中か悪い世の中かは置いておいて、僕は全面的に表現できてる音楽は広いし深いなって思いますね。だから、昭和からめちゃくちゃ影響を受けたいですよね。
クリス:あれが日本の高度成長期ってうなずけますよね。ギラギラで。
さかい:そのかわり、成功した人もいればその裏でたくさんの涙があり悲しみがあり、悔しさがあり。でも、その人たちも生きていく道を見つけないといけないので、その生きていく方法を歌ってくれた曲もたくさんあるし。僕はプリミティブな昭和のものを、音楽家としてはヒントにしたいですね。
懐かしさと新しさに迫るような1枚
さかいは3月にニューアルバム『PASADENA』をリリース。ロサンゼルスと東京でそれぞれ4曲ずつ制作した新曲8曲に、ニューヨークで録音された3曲をボーナストラックとして加えた、全11曲で構成されている。「Pasadena」Music Video
さかい:聴きやすいと思います。ずっとグルーヴが流れていて、今回は“NO J-POP”って感じですね(笑)。どう評価されてもいいんですけど、ゆっくりな曲でも踊れるように、グルーヴを強く作っているので、まさに東京とロサンゼルスって感じですね。ボーナストラックにはニューヨークも入ってきて。バラードの曲もグルーヴがあるので、知り合いのDJには「このまま1枚流せるわ」って言われましたね。ドライブミュージックとしてもいいと思いますし、いろんな場所で使えるんじゃないですかね。
クリス:そうか。
さかい:懐かしさと新しさに迫るような1枚で、『PASADENA』はミュージシャンとして修行した場所だし。Shingo Suzukiに4曲プロデュースしてもらったんですけど、彼は自分にわりと近い音楽的思考で、古い音楽も大好きで、かつトレンドの音楽にもしっかりアンテナがあって。自分の魂は売らないんだけど、揺れ動く心は否定せずに、自分が本当に信じている大事なものを抱きながら、自分を通り過ぎていく時代に自分の大事なソウルをつなげて、今の自分ができる最新の音楽ってなんだろって自問自答しているような人なんです。そのアティテュードがすごく好きなんですよね。
音楽に対する誠実な態度に感動
3月にさかいは、日本人シンガーソングライターとして初めて「NPR Music Tiny Desk Concerts」への出演が発表され、話題を呼んだ。映像は日本時間の4月11日(金)18:00の公開を予定している。クリス:これは快挙といっていいんですけど、「NPR Music Tiny Desk Concerts」は韓国にも日本にもあるんですが、本家本元のアメリカ版に出演すると。上原ひろみとかコーネリアスとか出てますけど、そこにさかいくんが仲間入りして。
さかい:僕は単純にファンだったので出られてうれしいなって。
クリス:どういう経緯で?
さかい:トップのふたりが別の用事で日本に来ていて、僕のライブを観に来てくれていて。ライブが終わったあとに「あなたのパフォーマンスが自分の今回のトリップのハイライトだった」って言ってくれたんです。それで連絡先を交換して、メールがすぐ届きました。1年くらい前までは「Tiny Desk」に出るとはまったく思ってなかったですけど、この1年くらいは機会があったら出るのかな、ワシントンの桜が見たいなって思いながら。
クリス:NPRは「アメリカ公共ラジオ」の略で、本当にワシントンにあるNPRのオフィスに、まさに小さいデスク(Tiny Desk)があって、そこに楽器を押し込んですごく狭い空間で演奏する番組。お客さんはNPRで働いている人たちなんですよね。
さかい:そうです。スタッフはめちゃくちゃ音楽好きなんですよ。まず、トップのふたりが音楽愛にあふれていて、自分が出てほしい人たちを探すんですけど、しっかりビジョンを持っていて。そのブランディングがめちゃくちゃ好きですね。
クリス:アメリカの「Tiny Desk」に出られるっていうのは本当にすごいことで。本家には、ノラ・ジョーンズとかサンダーキャットとか、みんな出てるよね。
さかい:テイラー・スウィフトも出てるし。
クリス:今、称えるべき、広めるべき音楽に固執してるよね。
さかい:本当にそう。インディーズからメジャーまでヘッドハンティングして。音楽に対するみんなのすごく誠実な態度に感動しましたね。
さかいゆうの最新情報は、公式サイトまで。
番組の公式サイトには、過去ゲストのトーク内容をアーカイブ。オンエアで扱った音楽の情報も掲載している。
・過去ゲストのアーカイブページ
https://www.j-wave.co.jp/original/otoajito/archives.html
『SAPPORO BEER OTOAJITO』では、毎週さまざまなゲストを迎えてお酒を飲みながら音楽トークを繰り広げる。放送は毎週土曜18時から。
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2025年4月12日28時59分まで
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番組情報
- SAPPORO BEER OTOAJITO
-
毎週土曜18:00-18:54
-
クリス・ペプラー