J-WAVEで放送中の番組『TOPPAN FUTURISM』(ナビゲーター:小川和也・南沢奈央)。8月5日(日)のオンエアでは、メディアアーティストの落合陽一さんが登場。「現代の魔法使いが、東京に魔法をかけたら?」をテーマにトークしました。
■「デジタルネイチャー」って?
落合さんが提唱する「デジタルネイチャー」とは、「人、物、自然、計算機、データが接続され脱構築される新しい自然」と定義されるものです。
落合:いま世界は自然と人工物の二項対立に分かれているじゃないですか。でも、人工物が自然に影響を及ぼしているし、我々の体自体は自然体でそれに人工物が付与されている。環境ももちろんそうなわけですよ、電波が通じない世界が存在しないように。
全ての生物はDNAで動く情報の塊であり、それらによって構築された新しい自然のパラメーターがあります。人間が人工物を作ることは、自然に対して生物的にアプローチしていくことで、その生物的にアプローチをとった均衡点が、少し生物側に寄ってきた世界観が「デジタルネイチャー」です。それは互いに影響を及ぼしている、と落合さん。
落合:例えば、植物が生まれる前の自然は酸素がほとんどなかったわけで、人類がこんなに繁殖した後の自然は世界中に電波が飛んでいるし、賢いモノが増えている。それが持っている本性や本質を探していく作業を、コンピューターをやったりアートをやったり、テクノロジーをやったり、いろいろやりながら、探っています。
小川:今はわざわざデジタルネイチャーと言ってますけど、いずれデジタルは取れて今のネイチャーと一体化するという考え方ですか?
落合:そうですね。今のネイチャーという概念が、言葉としてよい言葉なんですよ。自然って言葉もよい言葉なんですけど、自然が計算機自然になったって感じです。
デジタルネイチャーは、「見えているものが、自然なのか造作物なのかの境界線が溶けていくような考え方ではないか」と小川。
小川:見えている景色が仮想現実だったとしても、それが現実だと思えばそれでいいじゃないか、って感覚もありますよね。
落合:(その感覚は)日本人は自然と突破できると思います。日本人は宗教上、自然と人工物の二項対立関係にないから。ハードとソフトを通貫する精神の根底概念みたいなものって宗教そのもので、日本人が持っている二項対立のない宗教性みたいなものは、おそらくデジタルとアナログの親和にも強い影響を及ぼしていると思います。
■ITがもたらす都市のデジタルネイチャー化
東京はすでにデジタルネイチャー化している、と落合さんは話します。
小川:(東京の)どのような場面でデジタルネイチャーを感じますか?
落合:東京ってグーグルマップと路線図がないとほぼ攻略は不可能じゃないですか。昔はもう少し街がわかりやすかったと思うんです。
小川:なぜ今はわかりにくくなっているんでしょうね。
落合:ITがあるから、わかりにくくても大丈夫だからじゃないですか? 今は「食べログ」がなかったらたどり着けない店がほとんどですよね。みなさん100パーセントの確率で、行ったことのない店はグーグルマップで検索してたどり着きますよね。東京は住所で言われてもわからないし、降りる駅で言われてもわからないし、前にある建物で言われてもわからない。ほぼデジタルじゃないと目的地にたどり着くことは無理なんです。
都市構造はグーグルマップ以降に複雑になったと落合さんは続けます。
小川:その複雑な構造をシンプルにするために、デジタルネイチャーはどう寄与できるのでしょうか?
落合:逆で、(デジタルネイチャーは)シンプルにしないと思います。だって、複雑なままでも生きていけるから。東京で不便だなって思ったことないでしょ? 携帯電話の電池が切れたら終わるだけです。携帯電話の電池が切れたら、六本木の3階にある看板のない隠れ家的居酒屋に入りたいと思っても不可能ですから。
小川:都市が複雑化するなか、デジタルのサポートがないと生きにくい街だと思います。そして良い悪いじゃなく、それに対して複雑な気持ちにはなります。デジタルがなくても人間が生きられる構造って、どこかで担保しなければいけないのかどうか……。
落合:もう戻らないでしょうね。今はグーグルマップを使いながら山に登ったりしますからね。それもまさにデジタルネイチャーなんですよ。デジタルな自然が自然にオーバーラップされているので、両方を足して変な自然ができている。だから、デジタルネイチャーって呼んでいるんです。
■東京に必要なのは部分と全体の融合
落合さんが実際に“魔法”を使えるとしたら、東京にどんな魔法をかけるか訊いてみました。
落合:東京は部分と全体のコンセプトが足りないから、部分と全体の融合がしたいですね。
小川:部分と全体って具体的にどのようなものですか?
落合:六本木ヒルズの上から見ている景色と、六本木の街中を歩いている景色が全く融合していないんですよ。昔は部分と全体が近かったと思うんだけど。スカイツリーとその街も乖離してますね。なんか(スカイツリーが)明らかに異物なんですよね。
小川:部分と全体を融合させていく方法って例えばどう考えますか?
落合:都市論としての哲学性の構築なんじゃないかなと思います。技術やアートや表現など、東京は昭和からなる合わさらないものを合わそうとして、ちょっと大衆感のあるダサいカルチャーが極まった末に、よく分からない着地をした街なんですよ。それが気持ちいいなと思うんだけど。
最後に落合さんは、「東京の美的感覚ってなんだろうと、そろそろみんな問い直した方が良くて、このごちゃごちゃ感はまさに東京の美的感覚なんだけど、ごちゃごちゃのレベルが下がってくると気持ち悪い」と独自の見解に落とし込んでいました。
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【番組情報】
番組名:『TOPPAN FUTURISM』
放送日時:日曜 21時?21時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/futurism/
■「デジタルネイチャー」って?
落合さんが提唱する「デジタルネイチャー」とは、「人、物、自然、計算機、データが接続され脱構築される新しい自然」と定義されるものです。
落合:いま世界は自然と人工物の二項対立に分かれているじゃないですか。でも、人工物が自然に影響を及ぼしているし、我々の体自体は自然体でそれに人工物が付与されている。環境ももちろんそうなわけですよ、電波が通じない世界が存在しないように。
全ての生物はDNAで動く情報の塊であり、それらによって構築された新しい自然のパラメーターがあります。人間が人工物を作ることは、自然に対して生物的にアプローチしていくことで、その生物的にアプローチをとった均衡点が、少し生物側に寄ってきた世界観が「デジタルネイチャー」です。それは互いに影響を及ぼしている、と落合さん。
落合:例えば、植物が生まれる前の自然は酸素がほとんどなかったわけで、人類がこんなに繁殖した後の自然は世界中に電波が飛んでいるし、賢いモノが増えている。それが持っている本性や本質を探していく作業を、コンピューターをやったりアートをやったり、テクノロジーをやったり、いろいろやりながら、探っています。
小川:今はわざわざデジタルネイチャーと言ってますけど、いずれデジタルは取れて今のネイチャーと一体化するという考え方ですか?
落合:そうですね。今のネイチャーという概念が、言葉としてよい言葉なんですよ。自然って言葉もよい言葉なんですけど、自然が計算機自然になったって感じです。
デジタルネイチャーは、「見えているものが、自然なのか造作物なのかの境界線が溶けていくような考え方ではないか」と小川。
小川:見えている景色が仮想現実だったとしても、それが現実だと思えばそれでいいじゃないか、って感覚もありますよね。
落合:(その感覚は)日本人は自然と突破できると思います。日本人は宗教上、自然と人工物の二項対立関係にないから。ハードとソフトを通貫する精神の根底概念みたいなものって宗教そのもので、日本人が持っている二項対立のない宗教性みたいなものは、おそらくデジタルとアナログの親和にも強い影響を及ぼしていると思います。
■ITがもたらす都市のデジタルネイチャー化
東京はすでにデジタルネイチャー化している、と落合さんは話します。
小川:(東京の)どのような場面でデジタルネイチャーを感じますか?
落合:東京ってグーグルマップと路線図がないとほぼ攻略は不可能じゃないですか。昔はもう少し街がわかりやすかったと思うんです。
小川:なぜ今はわかりにくくなっているんでしょうね。
落合:ITがあるから、わかりにくくても大丈夫だからじゃないですか? 今は「食べログ」がなかったらたどり着けない店がほとんどですよね。みなさん100パーセントの確率で、行ったことのない店はグーグルマップで検索してたどり着きますよね。東京は住所で言われてもわからないし、降りる駅で言われてもわからないし、前にある建物で言われてもわからない。ほぼデジタルじゃないと目的地にたどり着くことは無理なんです。
都市構造はグーグルマップ以降に複雑になったと落合さんは続けます。
小川:その複雑な構造をシンプルにするために、デジタルネイチャーはどう寄与できるのでしょうか?
落合:逆で、(デジタルネイチャーは)シンプルにしないと思います。だって、複雑なままでも生きていけるから。東京で不便だなって思ったことないでしょ? 携帯電話の電池が切れたら終わるだけです。携帯電話の電池が切れたら、六本木の3階にある看板のない隠れ家的居酒屋に入りたいと思っても不可能ですから。
小川:都市が複雑化するなか、デジタルのサポートがないと生きにくい街だと思います。そして良い悪いじゃなく、それに対して複雑な気持ちにはなります。デジタルがなくても人間が生きられる構造って、どこかで担保しなければいけないのかどうか……。
落合:もう戻らないでしょうね。今はグーグルマップを使いながら山に登ったりしますからね。それもまさにデジタルネイチャーなんですよ。デジタルな自然が自然にオーバーラップされているので、両方を足して変な自然ができている。だから、デジタルネイチャーって呼んでいるんです。
■東京に必要なのは部分と全体の融合
落合さんが実際に“魔法”を使えるとしたら、東京にどんな魔法をかけるか訊いてみました。
落合:東京は部分と全体のコンセプトが足りないから、部分と全体の融合がしたいですね。
小川:部分と全体って具体的にどのようなものですか?
落合:六本木ヒルズの上から見ている景色と、六本木の街中を歩いている景色が全く融合していないんですよ。昔は部分と全体が近かったと思うんだけど。スカイツリーとその街も乖離してますね。なんか(スカイツリーが)明らかに異物なんですよね。
小川:部分と全体を融合させていく方法って例えばどう考えますか?
落合:都市論としての哲学性の構築なんじゃないかなと思います。技術やアートや表現など、東京は昭和からなる合わさらないものを合わそうとして、ちょっと大衆感のあるダサいカルチャーが極まった末に、よく分からない着地をした街なんですよ。それが気持ちいいなと思うんだけど。
最後に落合さんは、「東京の美的感覚ってなんだろうと、そろそろみんな問い直した方が良くて、このごちゃごちゃ感はまさに東京の美的感覚なんだけど、ごちゃごちゃのレベルが下がってくると気持ち悪い」と独自の見解に落とし込んでいました。
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小川和也&南沢奈央がナビゲート『TOPPAN FUTURISM』
— TOPPAN FUTURISM (@TOPPAN_FUTURISM) 2018年8月5日
メディアアーティストの#落合陽一 さんをお迎えしました!@ochyai
「現代の魔法使いが 今の東京にかけたいある魔法とは…?」
聞き逃した方は…https://t.co/jv9UEvNOly#jwave #FUTURISM813 #radiko #小川和也 #南沢奈央 #東京 #ラジオ pic.twitter.com/SZ49LaHotd
【番組情報】
番組名:『TOPPAN FUTURISM』
放送日時:日曜 21時?21時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/futurism/