これからの時代に必要な「編集思考」とは? 読んでおくべき本を紹介

J-WAVEで放送中の番組『FUTURISM』(ナビゲーター:小川和也・南沢奈央)。10月13日(日)のオンエアでは、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」取締役・佐々木紀彦をゲストに迎え、新しい価値を生み出すために必要な「編集思考」をテーマに語った。

【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年10月20日28時59分まで)


■時代は編集者的な思考を求めている

佐々木が在籍するソーシャル経済メディア「NewsPicks」は、イベント開催や書籍出版、映像制作なども行い、さまざまな媒体を縦横無尽につなげる役割を担っている。

佐々木:編集者は今、時代が求めている存在ではないかと思っています。昔は「本を作る人」というイメージがあったと思うんですけど、それよりも「編集」という技能、テクニック、生き方自体が(時代に)とても合ってきている。なぜなら現代は、例えば"Amazonが本屋までやる"など、いろいろな分野が溶け合っているからです。いろんなものをつまんでつなげる、編集者的な思考が必要になってきているという意味で、時代が求めていると感じます。

一方で大企業には、いまだに縦割りの考え方がある。面白いことがたくさんあるのに実現できないという状況を壊して新しくつなげるのも、編集思考だ。佐々木には、そうした社会をイノベーションしていきたいという思いがある。

佐々木:私自身が小さい頃から、いろいろな分野をつまみ食いし、つなげていくのが好きでした。ひとつのことをずっとやると飽きてしまうんです。世の中にはそういう飽きっぽい人ってけっこういると思う。でも日本は、いい意味でも悪い意味でも職人文化が強いので、ひとつのことをきっちりやる人が尊敬されやすい。そういう方は私も大好きですが、それと同様に、いろんなことをつまみ食いし、うまくつなげられるタイプへの評価が高まると、社会自体がもっと面白くなるのではないかと思います。


■古いもの、普遍的なものを学ぶ大切さ

編集思考は、どうすれば身につくのか。佐々木によると、勘やセンスも大事だが、いくつかの法則もある。

佐々木:第一ステップで大事なのが「選ぶ」。今、よく思うのが、みんな新しいものに飛びつきではないか、ということ。悪いことではありませんが、「新しいものと普遍的なものの両方をつなげるんだ」と意識するだけで、どんなビジネスでもうまくいきやすいと思います。たとえば京都も今、古い歴史や文化があるところに新しいカルチャーやテクノロジーを入れていくことで盛り上がっています。新しい情報を得るだけではなくて歴史を学ぶと、すごく活きてきます。

次に大事な要素は「プロモート/届ける」だ。これは、SNSや手紙など、届け方がポイントになる。

佐々木:いろいろなメディアをミックスして、どの順序でやっていくか。みんな順序を考えずに全部やっちゃったりするんですけど、最初にちょっと火をつけて、これをどう燃やしていくかとか、そうしたタイムラインの設計が重要。もうひとつ、何より大事なのが方法論よりも根底にある思想(ソート)。サービスの根底にはどのような思想があるかということを深く考えていくと、より人に伝わりやすくなり、長くもつようになるということなんです。

また、佐々木は「ライフスタイルにまで溶け込んだ思想が大事」だと話す。

小川:そのためにも歴史や哲学など、一見ビジネスとは関係ないことをしっかりと学ぶと、のちのち効いてくるというか、深いところを学んでほしいと思います。


■編集思考を身につけるために、おすすめの"種本"

編集思考を磨くためには、読書が重要だ。

佐々木:自分の中のネタを増やすためにも、先ほど申し上げた「古いもの」というところで、古典などを読みましょう。たとえばコンテンツ業界で言うと、どうしたら人の心を揺さぶるストーリーが作れるかというのは、アリストテレスが書いた『詩学』にほとんど書いてあるんです。新しい本を読んでもあまり変わっていないから、"種本"を読んでしまうのがいちばん効率がいいです。
小川:種本。いいキーワードをいただきました。たしかに人間って考え方や脳の構造がガラリと変わっているわけじゃないから、僕もけっこう古いほうに立ち返ったほうが気づきがあることのほうが多いです。
佐々木:そうなんです。そして一生、活かせます。自然科学やテクノロジーは日進月歩なので、新しい本をバンバン読んでいけばいいんですけど、人文科学や社会科学となると、人間は過去からほとんど変わっていないので、種本を読んだほうがいいですよね。

佐々木おすすめの種本は......。

佐々木:先ほど言った『詩学』の他には、福沢諭吉『文明論之概略』。日本という国の構造や歴史がわかりやすく書かれていて面白いです。経営という点だと、ソニーの創業者・盛田昭夫さんと、東宝などを作った小林一三さん。小林さんは怪物級のイノベーターで、阪急電鉄を作ったあと、そこに宝塚劇場を作り、合間に住宅を作り、駅前にターミナル百貨店を作った。鉄道を契機に、日本のライフスタイルまで設計した人物なんです。こういう人が生まれてくると、日本の経済や社会はもっと面白くなるだろうと思います。

佐々木は10月4日に著書『異質なモノをかけ合わせ、新たなビジネスを生み出す 編集思考』(NewsPicksパブリッシング)を発売したばかりだ。同書には、佐々木の17年の編集生活のノウハウが詰まっている。編集思考について詳しく知りたい方は、ぜひとも読んでみてほしい。

『FUTURISM』では、「未来を創る鍵を探る」をテーマに、各分野で活躍するゲストを毎回迎えてお送りしている。時間は21時から。お楽しみに!

【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年10月20日28時59分まで)
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【番組情報】
番組名:『FUTURISM』
放送日時:毎週日曜 21時-21時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/futurism/

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